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2021/06/23

TM NETWORK木根尚登×久保こーじ×notall佐藤遥&片瀬成美“SAVE THE ARTIST”インタビュー公開「使命ある人たちが集まっている」

 新型コロナウイルスの影響を受け、SNSやリモートワークを活用してコラボレーションし、その活動で得た収益を分配することでアーティストやクリエイターを支援するプロジェクト“SAVE THE ARTIST”。その総括音楽プロデューサーを務める久保こーじと彼がサウンドプロデュースするアイドルグループ・notallの佐藤遥&片瀬成美、そして、同プロジェクトで広瀬彩海(ex.こぶしファクトリー)とのコラボ曲「風になれたら」を制作した木根尚登(TM NETWORK)の4名がインタビューに応えてくれた。

 3組それぞれの関係性に始まり、どのような経緯で“SAVE THE ARTIST”は発足し、彼らがこのプロジェクトに参加することになったのか。コロナ禍においてどんな想いで音楽活動をしてきたのか。そして“SAVE THE ARTIST”の活動の中で生まれた楽曲群を収録したアルバム『Unshakeable』について等々オンラインインタビューで語ってもらったので、それぞれのファンはもちろん、すべての音楽フリークにぜひご覧頂きたい。

◎TM NETWORK木根尚登×久保こーじ×notall佐藤遥&片瀬成美“SAVE THE ARTIST”インタビュー

<木根尚登×久保こーじ「TM NETWORKで木根さんの担当だった」>

--まずは3組それぞれの関係性について伺わせて下さい。久保さんはTM NETWORKのマニュピレイターや小室哲哉さんの一番弟子として有名ではありますが、木根さんは久保さんにとってどんな存在だったりするんですか?

久保こーじ:僕はTM NETWORKのチームにローディーとして元々参加していたんですが、最初の1,2本のツアーは小室さんの担当だったんですけど、それ以降は木根さんの担当だったんですよ。小室哲哉さん、宇都宮隆さん、木根尚登さんの担当がそれぞれ居たんですけど、その3人の中だったら木根さんがいちばんラクだろうなと思って。3人の中でいちばんいいかげんなおっさんだったので、「このサングラスだったら大丈夫だろう」と(笑)。それで「僕を木根さんの担当にしてくれ」ってお願いしたんです。

一同:(笑)

久保こーじ:なので、僕は木根さんのすべてを知っています。大好きな先輩アーティストですね。TM NETWORKは3人ともそうなんですけど、木根さんは特に器が大きくて。もし今の時代に僕がローディーをやっていたとしたら殴られてもおかしくないような失態も繰り返していたんですけど、まぁ木根さんは怒らないんですよ。極論を言えば、木根さんだったから僕はローディーとしてやっていけていた。そういう意味でも「このサングラスについていけば間違いない」という直感は間違っていなかったなって(笑)。

--木根さんは、久保さんに対してどんな印象を抱かれていたんでしょう?

木根尚登:今、こーじが話していたことは冗談でも何でもなく、本当にそう思って担当になってくれたと思うんですけど、僕はこーじが言っていた通り、すごく適当な人間なんですよ。きっちりしていないんですよ、音楽もプライベートも(笑)。わりと大雑把というか、アバウトというか、感覚だけでここまで来た人間なんで。バラエティ番組でも「ギターを弾いてないんじゃないか」とか「元々キーボードを弾いていたのに、小室さんに急にギターを任された」とか一瞬盛り上がりましたけど、僕はピアノとアコースティックギターを弾いていた人間なんで、エレキギターを持たされたこと自体が晴天の霹靂でしたし、そういう意味ではTM NETWORKの始まりからしてめちゃくちゃなんですよね。

--スタートからおかしかったと(笑)。

木根尚登:そんなミュージシャンのローディーですから、もうこーじは分かっているんですよ。僕がエレキギターにすごく拘りのある人間だったら、たしかにこーじのことを殴っていたかもしれないけど、僕は「こーじ、次はどれを持てばいいの?」みたいな感じだったので、そりゃ「このサングラスについていけば間違いない」と思いますよね(笑)。なので、音楽の話よりくだらない話をしてつるんでいるときのほうが多かったし、そのうちエレキギターどころか三味線とかいろんな楽器を持たされるようになるんですけど、こーじと一緒に楽しんでその楽器をぶらさげてましたし。そういう意味では、TMのメンバーもそうですけど、彼も一緒になって文化祭ノリでワイワイ楽しんでいた友達みたいな感じだったんですよ。そのままの関係性が何十年も続いている。

--これだけ長い付き合いになると思っていましたか?

木根尚登:その当時は思っていなかったけど、なんだかんだでいちばん長い付き合いになりましたね。こーじがいちばん最初だったけど、それからいろんな方が関わってくれて、でもやがて違う仕事に就いたりとか、うんと偉くなっちゃったりして離れていったので、ローディーがきっかけでここまでずっと一緒に付き合っている人は他にいないかな。

<木根尚登×広瀬彩海(ex.こぶしファクトリー)「強い意志が見える歌」>

--ゆえに久保さんが立ち上げた“SAVE THE ARTIST”にもナチュラルに参加したいと思えたんですかね?

木根尚登:先ほども言いましたが、自分は本当にいい加減な人間なので、こーじからお願いされた時点では趣旨を理解しきれていなかったんですけど、即答で参加してましたね(笑)。あとから把握した感じ。

--“SAVE THE ARTIST”の配信番組に木根さんがゲスト出演し、その場で広瀬彩海(ex.こぶしファクトリー)さんとのコラボ曲「風になれたら」を制作することになったわけですが、久保さんは木根さんを呼んだ時点で虎視眈々と「曲を書いてもらおう」と狙っていたんでしょうか?

久保こーじ:そうですね。お誘いするからには「木根さんに曲を書いて頂こう」と思っていました。TM NETWORKのアルバムの中には大体2~4曲ぐらいかな? 木根さんの書いた曲が収録されているんですけど、木根さんは小室さんの楽曲とは対比になるように作られるから、バラードを書かれることが多くて。ファンの方たちからは“キネバラ”という愛称で親しまれているんですけど、木根さんに“SAVE THE ARTIST”に参加してもらおうと決めた時点で「キネバラを書いてもらおう」と虎視眈々と思っていたんですよね。そしたら、まんまと(笑)、見事なキネバラを書いて頂けて。

木根尚登:素晴らしいプロジェクトに参加できて光栄ですよ。歌ってくれた広瀬さんも、すごくキュートで優しい声なんだけれども、そこに強い意志が見える歌を聴かせてくれましたし、何回も何回も聴きました。これまでいろんな方に楽曲を提供させて頂きましたけど、歌詞とメロディーとの相性が素晴らしいと何回も聴きたくなっちゃう。そういう歌でしたね。

久保こーじ:広瀬さんは、notallのメンバーが誘ってくれたんですよ。

佐藤遥:楓(広山楓)ですね。“SAVE THE ARTIST”に誘いたい人にメンバー6人それぞれツイッターのDMとかで連絡していたんですけど、広瀬さんが所属していたこぶしファクトリーとnotallは私たち主催のライブイベントで対バンしたこともあって、そういう繋がりもありましたし、楓がハロプロを大好きだったこともあって、広瀬さんに声をかけたら快諾してくださったんです。

久保こーじ:それで木根さんのキネバラと広瀬さんの歌を合わせたいと思ったんですよね。そしたら“SAVE THE ARTIST”から生まれた様々な楽曲の中でもいちばんメッセージ性の強いバラードになったので、予想通り良いコラボになったなと。

<久保こーじ×notall「ユーモアのあるお父さん」>

--続いて、notallにもお話を伺いたいんですけど、notallが久保さんにサウンドプロデュースしてもらうことになった経緯から教えて頂けますか?

佐藤遥:久保さんがワロップ放送局で番組を持たれていることを知って、notallのメンバーだった渡邊ちこちゃんがツイッターのDMでお声がけしたのが始まりですね。

--まさにnotallが結成時から掲げている「次世代型ソーシャルアイドル」らしいきっかけですね。

佐藤遥:そうなんですよ(笑)。私たちは“SAVE THE ARTIST”の前からそういうことをよくやっていて。で、久保さんと繋がり、楽曲をプロデュースして頂いたのが2015年。それから継続的にお世話になっているんですけど、久保さんのプロデューススタイルってすごく自由なんです。レコーディングも自由な感じで進んでいくし、先ほど「木根さんは久保さんのことを怒らない」とお話されていましたけど、久保さんもnotallのことを全く怒らない。良い意味で感情が上下することがない方なので「何やってもいいよ」みたいな感じで。なので、セリフをどんどん足していったりとか、すごく遊び心溢れる楽曲が生まれていく。

--今やnotallの皆さんにとって久保さんはどんな存在になっているんですか?

片瀬成美:お父さんみたいな感じ。レコーディングでも、歌い方の指示とかはもちろんあるんですけど、結構なんでも「いいね」って言ってくださるし、格好良い楽曲でも遊び心を入れてくるので、本当にユーモアのあるお父さんみたいなイメージなんですよね。愉快なお父さん(笑)。あと、久保さんが作る音楽は普通じゃないというか、オリジナリティがすごくあるから「面白いね」ってファンの人たちに思ってもらえる。そういう意味では、久保さんとの出逢いによってnotallの音楽性の幅も広がったと思いますし、他のアイドルグループさんにはないカラーを出せるようになったんじゃないかなと思います。

佐藤遥:特に2015年から2017年ぐらいまでが久保さんにサウンドプロデュースして頂いていた時期なんですけど、そのタイミングで「notallらしさ」みたいなものが出来上がっていった印象はありますね。今「楽しさを突き詰めているnotall」というイメージがあると思うんですけど、そのきっかけは久保さんの楽曲でもあったのかなって。

久保こーじ:そういう意味では、2015年に「JUST NOW★」という楽曲を制作させて頂いたんですけど、ちょうどnotallがそれまで以上に外へ向かっていっていた時期というか、対外試合をメインにしていた頃だったんですよね。活動の足の置き所を少し変えようとしていて、そのタイミングで僕がたまたま現れた。なので、必ずしも僕が「notallを変えよう」としてそうなったと言うよりは、自然とnotallが変わっていく流れと結果的に一致したんじゃないかなって。

--そんな久保さんから見て、notallはどんなアイドルグループだなと感じていますか?

久保こーじ:マジメなのと……えーとぉー……

佐藤遥:悩んでる(笑)。

片瀬成美:でも、すごくうれしい! いちばん最初に「マジメ」が出てきたのは!

久保こーじ:アイドルって「キャーキャー!ワーワー!」言われることが仕事で、歌とかダンスとか自分たちを磨くことが最重要じゃなく2番目、3番目になるグループが非常に多くて。そういう意味で言うと、notallは環境が良いということもあるんでしょうけど、そこを日々怠らないところが偉いなと思うんです。これまでいろんなアイドルと携わってきましたけど、頑張らないグループって本当にイヤになっちゃうんですよね。「おまえら……」って普段は優しいお父さんも思っちゃうんですよ(笑)。でも、notallはそこの部分がすごくピュア。何事に対しても正面から立ち向かう。

--せっかくの機会なので、木根さんにも、久保さんとnotallの関係性を今知ってどんなことを感じたか伺いたいです。

木根尚登:「こーじらしいな」と思いましたよ。昔から面白い人ではあるけれども、怒鳴り散らしたりするようなタイプではなかったし、今「僕がこーじのことを怒らなかったように、こーじもnotallのことを全く怒らない」という話があったけれども、それはnotallのみんながマジメで頑張っているからっていう。これはすごく良い話だね。そこが根幹にあってこその仕事ですから。才能とかはその先の話だから。なので、今のみんなの話を聞いていて「すごく素敵だな」と思いました。

<SAVE THE ARTIST「音楽に携わる我々が何かをやっていかないと」>

--そんなnotallや木根さんも参加されている“SAVE THE ARTIST”なんですが、どんな想いから発足させたプロジェクトなんでしょうか?

久保こーじ:去年の4月に1回目の緊急事態宣言が発出しましたよね。どのアーティストも大変な状況になっていたじゃないですか。なので、アーティスト側から何かをやっていかないと、或いはプロデューサーとかスタッフとか音楽に携わる我々が何かをやっていかないと、この状況に立ち向かう術がないなと思っていたんです。アイドルなんて特にそうですけど、ライブ命で活動している人たちがライブできない状況になっていたので。そんな中で「あ、notallってそう言えば、SNSのアイドルじゃないか。ソーシャルネットワークアイドルだったな。ということは、notallがやるしかないじゃん」と思ったんですよね。そこにnotallの運営でもある、ワロップ放送局の山本さんたちから「こんなことを今考えているんですけど、どうですかね?」とちょうど連絡があったんです。

--運命的なシンクロニシティが起きたんですね。

久保こーじ:それで「僕もおんなじことを考えていたんです」とふたつ返事で発足することになったのが“SAVE THE ARTIST”。とは言え、最初はコロナ禍に対して、緊急事態宣言に対して、ステイホームに対して「こうすればいいんだ、ああすればいいんだ」という具体的な処方箋や未来地図を持っていたわけでもなかったし、山本さんたちも具体的な案があったわけじゃなかったんですよ。でも「なんかやんなきゃいけないんじゃない?」という想いから突っ走った感はありましたね。そしたらいろんなアーティストやクリエイターの方々が賛同してくれて、少しずつ形になっていったんです。

--notallありきで始まったプロジェクトだったんですね。そんなnotallの2人は“SAVE THE ARTIST”の話を最初に聞いたときはどんなことを思ったり考えたりしましたか?

佐藤遥:去年の春頃からライブがどんどん出来なくなって、無観客配信も最初は人が集まる感じじゃなかった雰囲気の中で、アイドル界としてはリモートでネットサイン会とかやり出していた時期だったんですよ。でも、ライブとか歌とかダンスとかが届けられないのに、サイン会とかだけやっている状況がすごくイヤで。

--特典会はライブなどメインの活動があった上で実施するものですからね。

佐藤遥:そうなんですよ。だから私たちも「何やってるんだろう?」と思うし、ファンの人たちにも申し訳ないなと思っていて。それで「リモートでnotallのPVを作りたい」みたいなことをミーティングか何かで山本さんたちに言っていたんですよ。そしたらいろいろ考えてくれて「久保さんを呼んで“SAVE THE ARTIST”というモノをやります」と聞かされて。なので、そのときは純粋にワクワクしましたね。まだ誰もやっていなかったことだし、「家に居ながらエンタメとして届けられるモノができる」というのはすごく楽しみで。

片瀬成美:それで「毎日“SAVE THE ARTIST”の番組を配信する」と急に聞かされまして、そこで「楽曲をつくる」という話だったんですけど、最初は「え、作れるのかな?」と不安ではあったんですよ。でも、去年の4月ぐらいにアイドルたちがライブを出来なくなって、でんぱ組.incさんや乃木坂46さんが自分たちの家で撮った素材でPVを作ったりしていたので、だったら「私たちはリモートで楽曲制作をしよう。そしたらアイドル界、アーティスト界の第一人者になれるんじゃないか」と思うようになって、それで「もしかしたら新しい革命を起こせるんじゃないか」とワクワクするようになりました。

--何をしても「やっちゃダメ」と言われるような緊急事態宣言下で「これは革命になるかもしれない」と思えるようなアクションを起こせる。これは表現者としては嬉しいことでしょうし、モヤモヤしていた想いが晴れていくような感覚もあったんじゃないですか?

片瀬成美:本当にその通りでした!

佐藤遥:家に居ても何をしたらいいのか分からないし、本当に「集まっちゃダメ」みたいな空気だったからみんなで練習することも出来ませんでしたし、そんな状況下で“SAVE THE ARTIST”が動き出すことになって、これはZOOMとかがある現代だからこそ出来ることだなと思いましたし、そういうアクションを起こせることがとにかく嬉しかったですね。

<SPIN OFF T-Mue-needs「ファンの人たちと一緒に何かやりたい」>

--木根さんは、そんな状況下で宇都宮さんやTMファミリーの皆さんと全国ツアー【tribute live SPIN OFF T-Mue-needs】を開催しました。コロナ禍で今までのツアーと勝手が違ったと思うんですけど、どんなことを感じながらライブを行っていましたか?

木根尚登:僕らはもちろんファンあっての活動なんだけれども、TM NETWORKは30周年のタイミング以降ライブからも遠ざかっていたので、いろんなことがあった状況下ながらも「ファンの人たちと一緒に何かやりたい」と思っていたんです。そんな中で「そういえば、十数年前に【SPIN OFF from TM】というライブをやっていたね。小室さんは居なかったけど、そこを大ちゃん(浅倉大介)に担ってもらいながらやったよね」と思い出して、それを今回は集客制限をかけつつ配信メインでやろうということになったんですよね。で、今、いろんな話を聞かせてもらって、僕らは昭和の戦後生まれなんで、こんなことが起きるなんて考えてもいなかったいたけど、若い子たちはこの状況をまんま純粋に受け入れて活動している。これって凄いことだと思うんだよね。僕らは発表したモノに対して拍手や歓声が巻き起こったり、面白いことを言ったらそこで笑ってくれる人がいたり、そこにお客さんがいて初めてひとつの芸術が完成すると思っている。でも、これからは配信限定ライブなんかでも楽しめなきゃいけないかもしれない。そんなことを考えながら全国ツアー【tribute live SPIN OFF T-Mue-needs】はまわっていましたね。

--なるほど。

木根尚登:だって、お客さんと一緒に歌うことすら出来なかったから。会場に来てくれた人たちも全員マスクして、席はソーシャルディスタンスで離れていて、そんな状況下で「じゃあ、心の中で歌ってください」とは言うんだけど、目や耳で分かるリアクションはないわけじゃない? 拍手だけはして頂けるけど、みんなで歌うような一体感を生み出せないことには寂しさを感じましたね。だからこそ“SAVE THE ARTIST”はこれからの時代に必要なエンタメなのかなと、今回少し関わらせて頂いた中で思いました。あと、こーじはナインティナインと『ASAYAN』でメイン司会していた時期があって、僕はコーナー司会をやらせて頂いていましたけど。

--『ASAYAN』で「コムロギャルソン」を毎週放送していた時代ですね。

木根尚登:今回のプロジェクトの話を聞いてソレをすぐ思い出したんです。「こーじ、ASAYANやってるじゃん」って。で、あの時代は札幌大会から九州大会まで全国各地で物凄い労力と時間を使っていたけれど、今は瞬時にしてネット上で何でも出来てしまう。週イチじゃなくて毎日楽曲や何かが生まれるまでのストーリーをお届けすることが可能なんですよ。そういう流れを鑑みたときに今回こーじたちが立ち上げた“SAVE THE ARTIST”は「そういう使命がある人たちが集まっているのかな」という気がしましたね。

久保こーじ:『ASAYAN』の時代にインターネットが全く普及していなかったわけではないと思うんですけど、ネット創世記というかダイヤルアップとかの時代だったので、今ほど実用的ではなかった。で、notallは2014年デビューですけど、もう最初から看板に「次世代型ソーシャルアイドル」と掲げているんですよ。インターネットを使うのが前提のアイドルとして出てくるぐらい、今はネットやスマートフォンが普及している。あの頃からこの状況を具体的に予期していたわけではないけれども、音楽家がテクノロジーを上手に利用させてもらうというのは必然ですし、この1年やってきた“SAVE THE ARTIST”も行き当たりばったりでしたけど、そういうところに何か新しいことって生まれるし、面白いモノが出来るんだろうなとは思いますね。

--僕は久保さんが“SAVE THE ARTIST”を立ち上げたとき、最初に思い浮かんだのが1993年のオールナイトニッポン・パーソナリティーズ『今、僕たちにできる事』(石川よしひろ、ウッチャンナンチャン、加藤いづみ、北原ゆき&松永並子、久保こーじ、清水宏、橘いずみ、電気GROOVE、2・3'S、福山雅治、松任谷由実、裕木奈江が参加したSTOP AIDS キャンペーンソング)だったんですよね。あれも久保さんがサウンドプロデュースされていたので、一丸となって何かを形にしていくプロジェクトに向いている人なんだろうなと思いました。

久保こーじ:僕とか木根さんとかいいかげんなタイプは、人の上に立つわけじゃないんだけど、人をまとめるときに差し障りがないんですよ。だから「久保こーじにやらせておけ、木根尚登にやらせておけ」ってみんな思うんじゃないんですかね(笑)。そういう意味で“SAVE THE ARTIST”もまとめ役としては比較的相応しかったんだと思います。

<“SAVE THE ARTIST”発のアルバム『Unshakeable』>

--そんな“SAVE THE ARTIST”発のアルバム『Unshakeable』をリリースするということで、そこには木根さんやnotallの面々が参加した楽曲ももちろん収録されるわけですが、どのような経緯で完成した作品なんでしょう?

久保こーじ:“SAVE THE ARTIST”を立ち上げた時点では、必ずしも「最終的にアルバムを作ります」と旗を揚げていたわけではないんですけど、配信番組を毎日やっていて、その生配信後にnotallの6人と山本さんたちと「今日、番組でこんなこと言っちゃったけど、明日どうする?」とか「明日、誰呼ぶ?」みたいな会議を毎度やっていたんです。それで来てくれた人たちに対して「そこまで言ってくれるなら曲書いてみませんか?」とか「この人と一緒にコラボしてみませんか?」とか「こんな企画が進んでいるんですけど、加わってみませんか?」とか生放送でガンガン提案していたら、気付いたら13,4プロジェクト立ち上がっていて。それに伴って楽曲も増えていって、もちろん完成に至らなかったプロジェクトもあったんですけど、10曲は出来上がっていから「ここまで来たらアルバム出していいんじゃない?」なんて去年の暮れぐらいに話し出して。

--そうして完成したアルバムにはどんな印象を持たれていますか?

久保こーじ:もうバラバラ!

一同:(笑)

久保こーじ:何の統一性もない! だから曲順を決めるのが物凄く大変で「もう曲順はどうでもいいんじゃない?」と思うぐらいだったんですけど(笑)、なんとか今の曲順に落ち着かせました。

佐藤遥:今回のアルバムの中で、notallは1曲目に出来た「WE HAVE NO DISTANCE」を歌わせてもらっているんですけど、この曲が出来上がっていく行程はガッツリ配信していましたし、完成したときはnotallのこれまでの楽曲とはまた全然違う感動があったんです。で、この1曲目が出来たことで「“SAVE THE ARTIST”は上手くいくかもしれない」と思えたというか、そういうひとつの達成感がありましたね。

片瀬成美:私は“紅白プロジェクト”としても1曲ガッツリ歌わせてもらっていて、BCNOさんという方が作って下さったんですけど、仮歌がボカロだったり、キーも高かったからすごく歌うのが難しくて、久保さんとのレコーディングもすごく苦戦しまして。notallで7年間活動しているんですけど、今まででいちばんレコーディングに時間がかかったんじゃないかな。だからこそ完成したときは本当に感動したので、この曲で今年こそ『紅白歌合戦』を目指したいなと思います!

--壮大な目標を掲げましたね!

片瀬成美:去年は惜しくも出られなかったんですよ。

--あ、片瀬さんは去年の『紅白歌合戦』に出演できると思っていたんですね?

片瀬成美:思ってました! でも、去年はYOASOBIさんに枠を取られちゃって……

--YOASOBIと同じ枠を争ったんですか(笑)?

片瀬成美:今年こそはその枠に飛び込みたいと思います!

<TM NETWORKを早くやってくださいよ、木根さん>

--そろそろ〆に入っていきたいのですが、木根さんはこのコロナ禍においてどんな形で音楽活動をしていきたいなと思っていますか?

木根尚登:僕が曲を作れる人間じゃなかったら、TM NETWORKにも多分いなかったんじゃないかと思うんですよ。それぐらい曲づくりというのは自分を支えている部分が大きいし、それはコロナ禍においても出来ることじゃないですか。だから今はとにかく楽曲を作って、それを自分で歌う形でもいいし、楽曲提供で誰かに歌って頂く形でもいいし、なかなかライブがしづらい状況でもあるので、しばらくはそこに専念する感じになるのかなと。もちろんアノ3人組があるんで、それぞれに想いもあるし……

久保こーじ:TM NETWORKを早くやってくださいよ、木根さん。

--みんなが思っていることを言ってくれましたね(笑)。

木根尚登:いや、それは俺もね……

久保こーじ:そんなに勿体つけなくてもいいじゃないですか、木根さん。

木根尚登:「余計なこと言うな」って怒られちゃうんだよ(笑)。

久保こーじ:木根さんが最初に「やろうよ」と言ってくれないと、2人も重い腰が上がらないじゃないですか。

木根尚登:俺は言ってるよ? 俺はいつも言ってるもん。

一同:(笑)

木根尚登:断言できなくて申し訳ないんだけど(笑)。でも、これだけは言えます。3人とも気持ちはある。これはお伝えできることなんで、あとは「機が熟せば」みたいなことかなと思います。

--心から楽しみにしております。では、最後に久保さん。これからも“SAVE THE ARTIST”は続いていくと思うんですけど、どんな音楽活動をしていきたいなと思っていますか?

久保こーじ:木根さんもそうですけど、僕らはCDを売ってなんぼの世代だったじゃないですか。それが今は全然違うじゃないですか。サブスクの時代と言えばそうかもしれないけど、音楽の収益構造からして変わってしまった。アイドルもそうだと思うんですけど、随分と仕組みが変わりましたよね。そこにコロナ禍があって「なんだよ、これ。音楽家はこれからどうするんだよ。エンターテインメントに何をしろと言うんだよ?」みたいな状況に陥ってしまった。絶望的にショッキングなことが起こってしまった。ただ、ピンチはチャンスじゃないけど、いろいろ考え直す良い機会にはなったと思うんです。もう90年代には戻れないし、90年代の何かを焼き直そうとしてもソレは無理な話だから、新しいことをやっていかなきゃいけない。その中で“SAVE THE ARTIST”みたいな受け皿が生まれたことはすごく嬉しいし、これからもっと音楽活動の中で何が出来るのか、何を知ったらいいのか、いろいろ考えては発信していきたいですね。

Interviewer:平賀哲雄

◎リリース情報
2021/06/23 RELEASE
アルバム『Unshakeable』 / #SAVE THE ARTIST
WPET-5005 4,000円(税抜)
緊急事態から1年。
前代未聞のコラボが生んだ #SAVE THE ARTIST 渾身のアルバム『Unshakeable』が遂に完成!
https://www.sp.notall.jp/unshakeable

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