Special
<わたしたちと音楽 Vol. 69>前田敦子 デビュー20周年で語る 最後の写真集、子育て論、“あの頃の私”に伝えたいこと

米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。
今回登場してくれるのは、AKB48の初代センターとしてグループを国民的な存在へと高め、現在では俳優として幅広い作品で存在感を放っている前田敦子。昨年12月8日に芸能デビュー20周年を迎え、それを機に写真集『Beste』を2026年2月13日発売することを発表した彼女に、話を伺う機会を得た。(Interview:Kazuharu Kato[SOW SWEET PUBLISHING] l Photo:Shinpei Suzuki l Stylist: ミナミマリィ l Hair & Make-Up: 高橋里帆)
この節目を逃したら
写真集を一生やらないだろうと言い切れる

――まずは写真集について、どういう思いを持って作られたのかを聞かせてください。芸能デビュー20周年の節目にリリースする写真集になるわけですよね。
前田敦子:そうですね。今までだったら絶対もう写真集をやろうとは思っていなかったです。
――調べてみると、最後に写真を出したのは2012年(『AKB48卒業記念フォトブック「あっちゃん」』)とのことで。想像以上に時間が空いていることに驚きました。
前田:すごく悩んだんです。「私が30代で写真集を出すって、何のメリットがあるんだろう」「私なんかの“今”を見たい人なんて、いるの?」って。もちろん、いろいろ仕事が動いている中だったので、時間がないから無理だなという気持ちもありました。しっかり準備ができなきゃやれないとも思っていたので。だから全然前向きではなかったのですが、「タイミングが合って、本当にやりたいと思ったときにやらせてもらえたら嬉しいです」と言ってもらえたので、半年ほどずっと考えてやることに決めました。
――意味は見出せたのですか?
前田:自分の中のきっかけとしては、今年の前半くらいにアウトプットし過ぎてしまって、「もうこれ以上は無理だな」って思ったタイミングがあったんです。それで、自分のルーティンを1回止めたんですね。そうしたら3カ月くらい時間が空いて。そのときに、「今だったらいけるかもしれない」「作品作りに向き合えるな」と思えたんです。しっかり準備できるのであれば、やろうって思えました。
――準備というのは、体作りだったり、テーマを決めたり。
前田:テーマとしては、「30代でしか出せないものってあるよな」と思って、だったら包み隠さず出したいじゃないですか。ピラティスにずっと通っているのでメンテナンスすることは嫌いではなかったのですが、それからさらに基礎作りに取り組みました。何もやってないわけではなく、本当にたくさんいろんなことやって、ちゃんと準備してから撮りました。“ありのまま”ではありませんね。
――“作り上げた作品”なんですね。
前田:そうですね。大人になっちゃうと、さすがに簡単に露出はできないです。AKB48を卒業してからは1冊も写真集を出していなくて、当時は毎日ずっと歌って踊っていたので、鍛えるという感覚がなかったです。当時の日本は美容大国ではなかったので、人がそういうところに対してあまり注力しない時代で、私も何もやってなかったです。今はもう、10代の子も基本的にみんな自分でしっかりケアをしています。クリニックに行ったりして、ちゃんと作り上げていく。私がアイドルの頃はそういう時代じゃなかったので何もやらずにいましたが、今はそういう時代じゃないし、みんなの目が肥えてしまっているんだと思います。私自身もそうですけどね。だから生半可な気持ちではやれなかったので、気合いを入れてやれるんだったらと思って決意しました。それに、今回の20周年という節目を逃したら、私は一生やらないだろうって言い切れる。意味がなきゃほんと出すつもりはないので。「20周年で、ちゃんと向き合えるんだったら」っていうのが絶対条件でした。もう、写真集を出すのもこれが最後になるんじゃないですかね。そう思っています。
清純派でも、何者かになりたいわけでもないから
出し惜しみは全くない

――衣装についてもこだわりがあるとのことですが、そのポイントを教えていただけますか。
前田:ランジェリーですね。衣装は本当に、一番大事にしました。本当に良いものを着なきゃ意味がない。写真集はランジェリーが可愛くないとダメだと思っているので。大人の人の何が見たいかを考えたときに、私はそこが大事なんだと思いました。
――それは、男性目線ですか? 女性目線?
前田:どっちもです。私自身も、ランジェリーが可愛いと見たいなって思います。だから3回ぐらいフィッティングして、テストシューティングをさせてもらって、すごくちゃんと準備しました。「妥協は絶対しないでやりたいです」って。
――ほかにこだわったポイントがあれば、ぜひ教えてください。
前田:私の中で思っていたのは、今回は“自分らしさ”みたいなものを見てもらうのは違うなって。作品として作り込みたかった。だから、すべて新しいスタッフさんと作っていったんです。「初めまして」の人たちと一緒に。これまでご一緒した人たちとやってしまうと、どうしても“今までの私”とか“普段の私”でしかないなと思いました。「それを見てほしいのであれば、インスタで良いんじゃない?」って思ったんです。写真集を作るのであれば、そういったものとは全然違う“作品”として出さなきゃやっぱり意味がないなと思ったので、今回のような体制をとらせていただきました。
――ウィーンを舞台に、“大人の恋”をテーマにしたということですね。
前田:はい。1つひとつのシチュエーション、とても意図を考えて作っています。自然体でキャッキャと動き回ってるというよりは、テーマに沿って、流れとして、作品として見てもらえるようにすごく考えました。それに、出し惜しみは全くしていないです。この年齢になってくると、もう隠すってものもないなと思って。私は清純派女優でもないし、何者かになりたいわけでもなく、本当に密な世界観になっていると思うので、男性であれば自分に照らし合わせて妄想してもらうのもいいですし、女性からは「自分に時間とお金をかけるって素敵だな」って思ってもらえたら嬉しいです。例えば旅行ってお金がかかるけど、思い出がとても残るじゃないですか。それに、私としては「もうこれ以上は無理」ってくらい頑張って体作りをしたので、そういう意味でも、自分にかけた時間が自分に返ってくるって楽しいなって思ったんですよね。
――本当にしっかりと準備されたのが伝わります。
前田:ウェディングドレスを着る前の女性の気持ちで撮影に臨みました。ウェディングドレスを着る前って、女性の皆さんとっても大変だと思うんです。気合いを入れて準備されて、すっごい綺麗になって出てくるじゃないですか。そんな気持ちでしたね。だから、写真を見て「わあ、この人頑張ったんだな」って思ってもらえたら嬉しいです。改めて、「私のありのまま、自然体です」じゃなくて、「あえて狙って作りました」です。普段の私ではまったくないです(笑)。若い子にも「年上の女性って、生き物として素敵だな」って思ってもらえたらいいですね。最近の若い子たちって、2.5次元だったり、アニメの世界だったりに行っちゃう人も多いじゃないですか。生身の人に理想を抱くことが、以前より少なくなっているんだろうなって感じます。昔なら、例えば小池栄子さんやMEGUMIさんなどが活躍したグラビア時代みたいなものがあったけれど、今の若い子たちって何を見て「女性って素敵だな」って思うんだろうって。だから、そういう対象にもなれたら嬉しいなっていうのも、正直ありますね。
週末の夜は夜更かしOK
お菓子とスプラトゥーンで大フィーバー

――この連載は、エンタメ業界の女性の活躍を後押しすることをテーマに続けているものです。現在では育児をしながら芸能活動を続けている前田さんから見て、より女性が活躍しやすい未来を作るために必要なものを挙げるとしたら?
前田:例えば出産などを経ても、それまでキャリアを築いてきた人は、辞めずにまたガンガン動いてほしいですよね。もちろん、「私は辞めるほうが幸せだ」って思った瞬間、そちらを選ぶのは全然良いと思います。けど私自身そうではないので、諦めの気持ちであれば“辞める”って選択はしてほしくない。“そうではない”人たちにとっては、出産って人としての成長の1つであって、キャリアを諦める要因では全くないと思うんです。むしろそれをパワーにして、グングン発言してほしいですね。「私、全然やっていくんで」「(子供を)抱えながら働くんで」みたいな。私は今でも子供を現場に連れていって仕事をすることがあるんですよ。「今日は子供を連れていきますね。子供が一緒ですけど、全然やりますよ」みたいな。周囲に対して申し訳ないと思うこともありますが、でも、それはあまり言わないようにしています。なんか、子育てしていて「すいません、すいません」って言いすぎるのも……電車の中で子供が喋っていたら「うるさい」と怒られたり、子供と一緒にいるときに嫌味を言われたりしたことがあるんですけど、私はそういう人たちに絶対に負けたくないって気持ちがあります(笑)。一方で、助けてくれたり、隠してくれたりする人もいて、電車の中って、天使と悪魔が混在してますよね。山手線とかで、私、いつも戦ってます(笑)。
――お母さんとして山手線で戦いながらも、俳優として数々の作品に出演されて、写真集までお作りになって。多忙を極める中で、プライベートとお仕事を両立させるコツは?
前田:“後悔することをしないこと”だと思っていますね。例えば、「なんでこんなに忙しくしちゃったんだろう」と思わないようにしたい。そうなっちゃうと、子供に「ごめんね」って思ってしまうじゃないですか。私としては、子供にも将来自分の好きなことをやってほしいから、「私は好きなことをやってるけど、生活も一緒に楽しもうね」という気持ちで接しています。「頑張った分だけ、こんな良いことできるよ」とか話しながら。忙しくて子供との時間が作れなくて、「なんか、私ってママ失格かな」って思うとキリがありません。どんな仕事をしていても、そういうのって絶対出てくるじゃないですか。「ごめんね」という気持ちになるとキリがないから、「その分楽しいことをいっぱいしようね」って。ただ、「寂しくない?」と聞くことはあるんです。それで「寂しい」って言われたら、「じゃあもう、今日は夜更かししちゃおうぜ!」とか言って一緒に遊ぶ時間を作る。金曜日と土曜日は、夜更かしするって決めてるんです。だから今日はもう、大フィーバーですよ(編注:このインタビューは金曜日に行った)。一緒にスプラトゥーンをやっているんですよ。お菓子食べながら(笑)。
――楽しい教育方針ですね(笑)。
前田:それはもう、本当に人それぞれだと思うんで。普段いっぱい我慢をさせているなって思うので、メリハリを作っていますね。
大人の世界に入ったんなら
大人を信じな

――前田さんは多くの人に憧れられる存在ですが、逆に前田さんご自身が憧れるアーティストだったり、ロールモデルにしたいと感じる存在の女性はいますか?
前田:ずっと好きなのは、テイラー・スウィフトです。デビューしたときから曲がすごく好きです。自慢なんですけど、自分のラジオ番組に彼女が来てくれたことがあるんですよ。それから3回ほど会ったことがあるんですが、最初から「好き」って言ってて良かった……って思うくらいとても良い人でした。そして、何より彼女の生き方が大好きですね。強くて、諦めない感じ。女性として声を上げることも続けつつ、歌手としてあんなに成功してる方ってなかなかいないので、大好きです。婚約もされたし、次のステージでの彼女がすごく楽しみですね。どうなってくんでしょうね。テイラー・ベイビーになりたいです(笑)。
――アイドルや俳優などの立場から、ある種の“女性像”を背負いながら第一線でやってきた前田さんですが、キャリア1年目のご自分だったり、あるいは現在キャリアをスタートさせたばかりの若者たちに何かアドバイスができるとしたら、どんな声をかけたいですか?
前田:どうでしょうね。最初の私は、本当に何にもない……人前に立つのも大っ嫌いで、引っ込み思案などうしようもない子だったんで。なんかもうちょっと、最初から自信を持ってやれていたらもっと強かったのにって思うので、「もうちょっと大人を信じてごらん」って言ってあげたいですね。大人の人たちばかりで慣れないところに、子供の頃にいきなり入ってしまったので、大人の人たちに対する不信感がすごかったんですよ。それがもっと早く解消されていたら、もうちょっと自信が持てたのにな。それくらいですかね。「大人の世界に入ったのなら、大人を信じな」って言ってあげたいです。
プロフィール
1991年7月10日生まれ、千葉県出身。2005年にAKB48の第1期生としてデビューし、“絶対的センター”として国民的な人気を獲得。2012年にグループを卒業したあとは、俳優として表現活動を続けている。2025年10月公開の映画『恋に至る病』、11月から東京芸術劇場で上演された舞台『飛び立つ前に』に出演したほか、2026年2月13日には芸能活動20周年を記念した写真集『Beste』を発売予定。
衣装クレジット
ジャケット:hue DAY TO EVENING/ヒュー・デイ・トゥ・イブニング(Harumi Showroom/ハルミショールーム)
パンツ:hue DAY TO EVENING/ヒュー・デイ・トゥ・イブニング(Harumi Showroom/ハルミショールーム)
シャツ:RhodolirioN
ピアス:Miina.gems/ミーナジェムス(Rhodes Showroom/ロードスショールーム)
リング①:four seven nine(Rhodes Showroom/ロードスショールーム)
リング②:フィーユ(Rhodes Showroom/ロードスショールーム)
リング③:ヘンカ(Rhodes Showroom/ロードスショールーム)
リリース情報
関連リンク
ビルボード・ジャパン・ウィメン・イン・ミュージック 関連リンク
関連商品






























