Billboard JAPAN


NEWS

2026/09/16 11:45

ユニバーサル ミュージック グループ、ストリーミングにジャンク楽曲をあふれさせたとしてDistroKidを提訴

 ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)が、音楽配信代行サービスのDistroKidを提訴した。Spotifyなどのストリーミング・プラットフォームに“AI生成されたスロップ(低品質コンテンツ)”をあふれさせ、“リスニング体験を汚染している”との申し立てだ。

 現地時間2026年9月15日に米連邦裁判所へ提出された痛烈な訴状の中で、UMGはインディー・アーティストのストリーミング配信を助ける評価額20億ドル(約3,100億円)超の巨大ディストリビューターであるDistroKidが、“違法、詐欺的かつ不当な慣行”によって成長を遂げてきたと主張している。

 とりわけこの音楽大手は、DistroKidが“AIで生成され、検索エンジン最適化され、著作権を侵害している大量のスロップ”を市場に飽和させる一助となっており、それが一見人間の創作による音楽であるかのように装われていると指摘する。「被告自身の利益のために原告らを欺いて市場を混乱させるDistroKidの慣行を止め、同社による大規模な著作権侵害と、原告およびその所属アーティストの成果にただ乗りし続けようとする行為を是正するため、本訴訟を提起する」と、米ビルボードが入手した法廷文書でUMGの弁護団は記している。

 DistroKidは自らを“アーティスト主導リリースを支える大手ディストリビューター”と謳っているが、UMGによれば実態は別物だという。すなわち、真のアーティストとファンに害を及ぼすAI主導のジャンク楽曲の主要な導管だというのだ。「DistroKidはAI生成の“スロップ”をプラットフォームに氾濫させ、正当なアーティストや権利者から収益とリスナーを吸い上げている。この欺瞞の代償は、アーティスト、消費者、デジタル・サービス、そして原告らを含む音楽経済圏の正当な担い手にのしかかっている」とUMGの弁護団は記している。DistroKidの広報担当者は9月15日にコメントを拒否した。

 今回の新たな訴訟は、音楽業界各社とデジタル・プラットフォームがAI生成音楽の波と格闘する中で提起された。ストリーミングのロイヤリティーは有限の収益パイから分配される仕組みであるため、AI楽曲の大量流入は、人間のクリエイターやそのレーベル・音楽出版会社が受け取る取り分が相対的に減ることを意味する。AI利用への幅広い反発が強まる中、こうした楽曲をかき分けて聴くことへの不満の声を上げるファンも増えている。

 Spotifyは先月、AI生成アーティストにラベルを付与すると発表した。Apple Musicはさらに踏み込み、“実質的にAIを用いて生成された”楽曲すべてにラベルを付けると発表している。アメリカレコード協会(RIAA)をはじめとする業界各社は、ストリーミング・サービス上でAI生成楽曲にタグ付けを行う新たな仕組みを計画しており、今週には幅広いメジャー・レーベルと流通業者が、AIを利用したストリーミング詐欺の抑制を目指す新たな<ストリーミング・インテグリティ・イニシアチブ>に署名している。

 UMGは9月15日の訴状で、DistroKidがこうしたより広範な問題の重要な歯車であると主張している。同社の不正行為とされる具体例として、Lofi Chillというアーティストが12か月間で4,562曲をリリースしたケースを挙げている。「これはフルアルバム20~30枚分に相当する量を毎月出しているということであり、人間のミュージシャンには到底なし得ないペースだ。これら“アーティスト”はアーティストでも何でもない。その名称自体が、各サービスの方針やガイドラインに違反する形で検索結果に表示されることのみを目的として設計されており、他の正当な楽曲を押しのけている」とUMGは記している。

 訴状はまた、DistroKidがAIに限らず、単純な著作権侵害そのものも助長しており、明らかに違法な楽曲のアップロードを許していると主張している。既存のUMG楽曲をスピードアップまたはリミックスしたもの、既存の録音に新たなボーカルを重ねた楽曲もその一例だとしている。

 法的には、この訴訟はDistroKidを連邦著作権法違反だけでなく、米デラウェア州の<不正取引行為防止法>違反でも訴えている。UMGは、同社が真正な人間による音楽の供給元であるかのように広告しながら実態はそうではないとして、公衆を欺いたと主張している。「これらの楽曲が [中略] 正当なアーティスト主導のリリースであり、ボット生成のAIスロップではないと消費者は当然期待している。しかしDistroKidはこうした基準を満たさない音源で市場を氾濫させ [中略] デラウェア州の消費者に実在のアーティストと関わっていると誤信させ、実際にはAIボット・ファームに騙されている状態に陥らせている」とUMGの弁護団は記している。

 UMGはAIの無断利用に対して強い姿勢を取る一方で、自社が“倫理的”と呼ぶアプローチで新技術を取り入れてきた経緯があり、訴状でも今回の提訴がAI全般を対象としたものではないことを慎重に断っている。「本訴訟は、AI生成音楽であると明確に開示された上での流通を問題にするものではない。本訴訟が問題にしているのは、DistroKidが実態とは異なるものを装い、その誤った印象から利益を得ていることだ」と同社は記している。