大澤誉志幸＆山下久美子『＆ Friends II 』　インタビュー

Special

山下久美子＆大澤誉志幸

大澤誉志幸&山下久美子

　ともに80年代の邦楽ポップス／ロックを代表する存在として数多くのヒット曲を放ち、楽曲提供などを通して当時から親交の深かった大澤誉志幸と山下久美子。昨年に続いて5月にリリースされたコラボ第2弾アルバム『& Friends II』では、前作とはまた違った観点で大澤がチョイスした山下の80年代の代表曲を中心に、大澤が02年に発表したレア作の収録曲のリメイク、そしてリンダ・ロンシュタットが取り上げて76年にヒットしたウォーレン・ジヴォンの名曲『Hasten Down The Wind（邦題：風にさらわれた恋）』のカバーを収録。元バービー・ボーイズのいまみちともたか（g）もゲストに迎えてより充実した仕上がりとなった新作、そして7月11日（金）に行われるライブについて2人に語ってもらった。

全アルバムを聴き直してまで選んでいるとは思わなかった（笑）

??昨年にリリースした作品の続編ということになりますが、前作とはまた違ったアプローチの内容になっていますよね。

大澤：そうですね。前作では僕が80年代に久美子に提供した楽曲を中心に取り上げていましたけれど、今回は彼女の一番良質でポップな部分を僕がピックアップして。一応、久美子の80年代の全アルバムを聴き直して曲を選びましたけど、結構たいへんでしたね（笑）

山下：ホント？（笑）

大澤：ちゃんと聴き飛ばしもしないで、全部聴き直しましたよ（笑）。で、僕が吟味して曲を選んでいきましたけど、どちらかというとまず直感力で僕の好きな歌を選んでいって、曲順やアレンジのことを考えながらさらにセレクトしていった選曲になっていますね。

??山下さんは、その大澤さんが選んできた曲リストを見ていかがでした？

山下：自分で選んでいないから、とても面白みがありましたね。ほう、この曲を、みたいに。自分で選ぶと、どうしても曲に対する主観みたいなものも入ってきちゃうから、そこはお任せしました。全アルバムを聴き直してまで選んでいるとは思わなかったですけど（笑）

??そして、大澤さんが最終的に選んだ6曲は、1曲目の「SO YOUNG」は佐野元春、5曲目の「シャンプー」は山下達郎、6曲目の「赤道小町ドキッ」は細野晴臣など。作曲者の顔ぶれの豪華さにも改めて驚きました。

大澤：そこは僕も結果的に後追いで気付いたことだったんですけど、やっぱり名を残している人たちはいい曲を書くなと改めて思いました

??アレンジに関しては自作曲が中心だった前作とはまた違ったと思うのですが、いかがでしたか？

大澤：今回は昔のアレンジをベースにしながら、音色などを差し替えていくという作業が多かったですね。とは言っても、時代が変わってまったく同じものを再現することができなくなっている部分もあるので、そこは違うモノを選んだり、「SO YOUNG」ではギターでいまみち（ともたか）にも入ってもらったりして。オリジナルとはまた違ったニュアンスが出ている曲も、昔から聴いてきた人には楽しんでもらえるんじゃないかな。

??オリジナルとはガラッと変えた曲では、ミッド・スローなボサノバ風アレンジを施した「赤道小町ドキッ」にはかなり意表を突かれました。

大澤：コレはライブでボサノバ・セットでやってみたら意外としっくりときたので、それをまたレコーディング用に少しアレンジを考えて録音したものですね。最初にボサノバでやりたいと言った時には“エッ!?”という顔をされましたけど（笑）

山下：やっぱりヒット曲の持っているイメージって大きかったりもするから、聞いた人がどう思うかなという心配もあったし、私自身がボサノバのようなゆったりとした独特の空気感やニュアンスを歌で表現できるのかなというのもありました。でも、そういうトライアルは面白いと思ったし、私は小野リサさんのようには歌えないので、自分なりの歌い方で折り合いをつけましたね。

??ボサノバといえば、今回の大澤さんの楽曲は3曲とも02年にミニ・アルバム兼CDブックとして発表された『Nova-Bossa Nova』の収録曲で統一されています。

大澤：このアルバムは発売当時にブックレットのような形で出したんですけど、曲もいいので、いつかちゃんと作り直したいと思っていたんです。それが今回は功を奏した感じですね。7曲目の「突き刺さる太陽」とかは、かなりサンバ色の強い感じに生まれ変わりました

??なので、アルバム全体としては、お2人の個性が交互にスムースに浮き立ってくる流れの良さもあって。

大澤：そこは、僕と久美子の歌のキーが似ているのも大きいと思います。通常の男女デュエットだと、オクターブを変えたり曲の中で転調を入れたりするんですけど、同じキーで歌っているので。

山下：個人的には1作目よりももっと深く、自然な状態でできるようになったと思いますね。

??レコーディングを終えてみて、特に意外な仕上がりになったなと思う曲などはありますか？

山下：「赤道小町～」はさっき話した通りですけど、9曲目の「LOVERステッカー」が本当にデュエットの曲のようになっていて、原曲を知っている人なら“へぇ～、こんな風にもなるんだ”と意外性が大きいと思います。「SO YOUNG」も基本のイメージは変わらないですけど、タタミ込むように歌っていく感じになって、原曲とはまた違った疾走感がうまく出ているんじゃないかな

??そして、7月11日（金）には新作を携えてのライブがビルボードライブ大阪で行われますが。バックを固めるメンバーもレコーディングと同様の実力派ぞろいの面々にいまみちさんも加わって、アルバムの音をより強力に再現＆発展させた夜になりそうです。

大澤：そうですね。ベースの千ヶ崎くんはキリンジのメンバーとしても活躍しているし、キーボードの伊藤くんやドラムの椎野くんもいろんなところで演奏していて。ギターの後藤くんはもうひと回り若い世代だけど勉強熱心で渋いギターを弾くし。どんなニュアンスでもツーカーで伝わるから助かっていますね。MCもこの2人で付き合いも長いですから夫婦漫才的にもなりますし（笑）、今回も聞かせてノらせてという感じで、楽しんでもらえるライブにできればと。

山下：私は、今回もまた1stステージから全力でやってしまって…2ndステージが終わった後には燃え尽きていることと思います（笑）