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三浦祐太朗『Blooming Hearts』インタビュー



三浦祐太朗インタビュー

 初の47都道府県ホールツアー【三浦祐太朗 Live Tour “47 MELODIES”】を開催中の三浦祐太朗が2019年10月2日にニュー・アルバム『Blooming Hearts』をリリースした。「しなやかに歌ってー80年代に向ってー」、「横須賀ストーリー」といった山口百恵のカバー曲、本作のために制作されたオリジナル曲によって構成された本作は、彼のルーツと現在のモードを共存させた作品に仕上がっている。

 今年7月にプロモーションの一環で開設した中国最大のSNS「微博(Weibo)」のアカウントのフォロワー数が2週間で5万人に到達するなど、国内のみならず中国でも人気・認知度が高まっている三浦。そんな彼に新作の制作の裏側や曲に込められた思いなどを語ってもらった。

フィルターをあまり通さず、そのときに感じていることを真っ直ぐ書いている

――新作『Blooming Hearts』は山口百恵さんの名曲のカバー、そして、三浦さんが作詞したオリジナル曲の両軸による作品ですが、このコンセプトはどういうところから出てきたんでしょうか?

三浦祐太朗:今年の初めから47都道府県ツアーを回っていて、一昨年(2017年)に出した『I’m HOME』(山口百恵の名曲をカバーした作品)の曲を歌っているんですが、お客さんの熱量や反響がすごくて。「こんなにも求められているんだ」と改めて感じられたし、その期待に応えたいというの思いがひとつの理由です。それだけではなく、もっと自分のオリジナルを聴いてほしいという気持ちもあったので、こういうハイブリッドな作品になりました。カバー曲に関しては、母親の楽曲をセールス順に並べて、みなさんに浸透している曲をメインにしています。

――カバー曲のリアレンジは、『I’m HOME』と同じく宮永治郎さんが担当されていますね。

三浦祐太朗:今回も大変だったと思います(笑)。前回と同じように、ハッとするようなアレンジもいくつかあって、「このサウンドで歌いたい」と思わされたし、制作もスムーズでしたね。たとえば「しなやかに歌って」にはマンドリンの音が入ってるんですけど、このアイデアは絶対に僕から出ないし、楽曲の世界観にもすごく合っています。あと、「ロックンロール・ウィドウ」の原曲にはカウベルが入ってるんですけど、今回のカバーには使ってないんですよ。「ちょっとイナタすぎるかな」と思って外してもらったんですが、そういうやり取りはかなり密にやりました。

――山口百恵さんの楽曲に対する解釈や表現が深まっている手ごたえもあるのでは?

三浦祐太朗:だいぶ研ぎ澄まされていると思います。主観的に歌ったほうがいい曲、ストーリーテラー的な立ち位置で歌ったほうがいい曲があるんですけど、その判断も自分でできるようになってきて。「横須賀ストーリー」と「ありがとうあなた」は、どちらかというと俯瞰的に歌っていて、「ロックンロール・ウィドウ」は主人公の女性になり切って歌ってるんです。

――そのあたりのニュアンスも聴きどころのひとつですよね。もちろん、原曲の良さもしっかり伝わっています。

三浦祐太朗:原曲の良さを伝えるというのは、『I’m HOME』のコンセプトでもあったんです。母を知らない世代の方にも、「昭和にはこんなにいい曲があった」ということを伝えたいので。いま聴いても素晴らしい曲ばかりですからね。

――オリジナル曲も普遍的なテーマを持った曲が中心ですね。

三浦祐太朗:ど真ん中に向かって投げているような感じはあります。今までは間接的というか、“自分の気持ちを他の誰かが歌っている”という表現が多かったんですが、今回は“自分の気持ちを自分自身で歌っている”という感じですね。

――そういう変化が起きたのは、どうしてだと思いますか?

三浦祐太朗:それもライブの影響が大きいんですよね。自分で言うのもおかしいですが、心の成長をさせてもらっている感覚があって……。“心が花開く”というタイトル(『Blooming Hearts』)には、そういう意味もあるんです。聴いてくれる方の心に花が咲くようにというメッセージもあるんですが、それよりも自分自身の心が開花している実感を表しているので、歌詞もフィルターをあまり通さず、そのときに感じていることを真っ直ぐ書いているものが多いんですよ。

――1曲目の「Tell Me Now」の<聞かせてよ 本当の気持ち全部>というフレーズもすごくストレートですね。

三浦祐太朗:確かに直球ですよね。これはリスナーのみなさんに向けているというより、自分自身への宣言なんです。「自分が思っていることをそのまま歌います。もう遠慮はしません!」っていう。「Tell Me Now」というタイトルも、自分に向けて言ってます(笑)。

――なるほど。シックで大人っぽい雰囲気の「RAINY SLUMBER」にも、本心が描かれているんですか?

三浦祐太朗:そうですね。この曲は「大人っぽい感じの曲を歌いたいです」と宮永さんにお願いして作っていただいたんですが、歌詞のテーマは喪失なんです。大事な人や大事なモノを失ったときに、(一般的には)それを引きずるのは良しとされていないと思うんです。早く切り替えて、次に進まないといけないという雰囲気があるけど、僕は「ずっと引きずることも大切なんじゃないかな」と思っていて。そこにはある種の情けなさもあるんですけど、そのことを真っ直ぐに歌ってみたいなと。

――三浦さん自身も引きずるタイプ?

三浦祐太朗:どっちかというと、そうだと思います。以前はそういう自分がイヤだったし、カッコ悪いと思っていたんです。でも、引きずっている期間に成長できることもあるし、それが歌詞にも繋がるとプラスに捉えられるようになって。そう考えると、20代の頃には書けなかった歌詞かなと思っています。


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いつか中国でもライブをやってみたい 発音が難しいので、苦労しそうですけど


――「MELODY」はシンプルで奥深いメロディが印象的なミディアム・チューンですね。

三浦祐太朗:この曲はゲーム音楽などを手がけている作曲家の小野秀幸さんが作曲されています。以前、小野さんにトランペットを習っていたことがあったんですが、そのときにこの曲のデモを聴いて、「仮歌を歌わせてください」と自分から言いました。シンプルなメロディで、すごくいいなと思ったんですよね。歌詞はラブソングで、実体験がベースになってます。

――ここまで真っ直ぐなラブソングも、今までなかったですよね。

三浦祐太朗:そうですね。今までは俯瞰で書くことが多かったし、体裁を気にしていたところもあったのかなと思います。この先もそういう歌詞を書くこともあるかもしれないけど、今は「自分をそのまま見せてもいい」と思っていて、少し主張できるようになったというか……。“和して同ぜず”じゃないけど、同調しすぎないようになりたいなと思います。

――日本語の美しさを活かされているのも印象的でした。これはやはり、山口百恵さんの楽曲をカバーしたことが影響しているんでしょうか?

三浦祐太朗:そうかもしれないです。特に宇崎竜童さん、阿木燿子さんが作られた歌には、無意識のうちに影響されていると思います。カバー曲に関しても、日本語の美しさを意識しています。『I’m HOME』を制作したときに、母から「鼻濁音をきれいに歌ったほうがいい」というアドバイスをもらって、それはずっとテーマになってますね。


――アルバム『Blooming Hearts』の制作を通して、ボーカリストとしてもさらに向上できたと実感されましたか?

三浦祐太朗:実は最後までどういうアルバムになるか想像できなかったんですよ。「カバーとオリジナルが混ざってる作品って、どうなるんだろう?」って。最初はカバーとオリジナルを完全に分けようかと思ってたんですが、レコーディングが終わったときに「曲順も混ぜて、1枚にまとめたほうが楽しめる」という確信が持てたんですよね。大きなチャレンジでしたけど、通して聴いたときに違和感がなかったので、自分のなかでガッツポーズでした。挑戦してよかったと心から思えましたね。

――「ありがとうあなた」は中国語バージョンも制作され、現地で大きな反響を呼んでいますね。

三浦祐太朗:「ありがとうあなた」はドラマ『赤い疑惑』(山口百恵、三浦友和が共演したドラマ/1975年~1976年)の主題歌なんです。『赤い疑惑』は1980年代に中国でも放送されて、知らない人はいないというほどヒットしました。「ありがとうあなた」も知られているので、中国語でカバーして配信してみようと思ったんです。ミュージックビデオも上海で撮ったんですが、ランキングの上位に入っていて、思った以上に聴いてもらえているみたいですね。いつか中国でもライブをやってみたいです。(中国語の)発音が難しいので、苦労しそうですけど(笑)。



――最後に、47都道府県ツアーの後半に向けた意気込みを聞かせてもらえますか?

三浦祐太朗:今回のツアーは“初めまして”の方がかなり来てくださっているんです。テレビなどで僕を知って会場に来てくれた方に、自分のファンになってもらえるかどうかの勝負なんですが、それは後半も変わらないだろうと思っています。アルバムの新曲も披露しているので、それをさらにブラッシュアップしたいという気持ちもあって、とにかく自分を知ってもらって、好きになってもらうというか……。

――人となりを伝えることも大事ですよね。

三浦祐太朗:そうですね。それをやっていかないと、みなさんにも受け入れてもらえないと思うので。

――今後の活動にも期待してます! ソングライターとしてもシンガーとしてもインプットは必要だと思いますが、意識してやっていることはありますか?

三浦祐太朗:外にめっちゃ出るようになりました。引き続きアニメもがっつり観てるんですけど、人に誘われたら、できるだけ行くようにしています。出会いが仕事に繋がることもあるし、自分とは違うフィールドの人たちから受ける刺激もすごくて、ちょっとはフットワークが軽くなりましたね(笑)。

三浦祐太朗「Blooming Hearts」

Blooming Hearts

2019/10/02 RELEASE
TYCT-60146 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Tell Me Now
  2. 02.しなやかに歌って -80年代に向って-
  3. 03.横須賀ストーリー
  4. 04.小さな手
  5. 05.RAINY SLUMBER
  6. 06.ロックンロール・ウィドウ
  7. 07.MELODY
  8. 08.ありがとうあなた

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