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ピーター・ブロデリック来日記念インタビュー「生きているうえで経験する全ての出来事が、何かしら音楽へと変貌していく」

インタビュー

 ポスト・クラシカルを軸に、フォークやアンビエント、エレクトロニカまで幅広い要素を融合させ、ジャンルに捉われない豊かな音楽を表現してきた、米ポートランドの作曲家/シンガー・ソングライター、ピーター・ブロデリック。映画やダンス作品に向けて数々のスコアを担ってきたソロ活動の他、ニルス・フラームやアルバム・リーフら幾多のアーティストとのコラボレーションなどを通じてキャリアを積み上げてきた。直近では、アーサー・ラッセルの楽曲で構成したコンセプチュアルで美しいカバー・アルバムを発表したばかりである。そんな音楽の世界を自由に旅する才人の3年ぶりとなる来日公演の直前に、本人へのインタビューを敢行した。

「生きているうえで経験する全ての出来事が、何かしら音楽へと変貌していく」

−−デビューから10年以上の活動をされていますが、これまでのキャリアを振り返ると、どのような時間でしたか?

ピーター・ブロデリック(以下:ピーター):2007年にデンマークのバンド、エフタークラングに参加したことが僕のキャリアの大きな分岐点になった。好きなバンドと一緒にツアーを廻れて、しかもそれがソロとしてサポートメンバーになれるという、僕にとっては絶好のチャンスで、僕の音楽の道に飛び込む第一歩となった。それよりも前からオレゴンで一緒にプレイしていた人達には感謝の気持ちでいっぱいだ。僕が子供の頃に音楽を教えてくれたリズ・クロケットと彼女の息子のネイサンは、僕がティーンだった頃に一緒に音楽を作った仲で、今でも仲良くしてもらっている。姉のヘザーは僕の面倒をみてくれたし、素晴らしい音楽とポートランドのミュージシャンを引き合わせてくれた。タイプ・ファウンドリー・スタジオのアダム・セルザーと彼のバンドのノーフォーク・アンド・ウェスタンは、僕が初めてアメリカで長期ツアーを行った時に一緒に廻った仲間だ。ロッホ・ローモンドのリッチー・ヤングやホース・フェザーズのジャスティン・リングルにも恩がある。

あと、僕にとって最高に特別な出来事となったのが、2014年にラトビアの首都リガで行ったコンサート。40人もの聖歌隊と弦楽四重奏と共演したあのコンサートは、本当にスペシャルだった。過去10年以上で行った最高のライブやコラボレーションはもっともっとあって、それを話そうと思えば永遠に語れるよ!

−−ユニークな街づくりが特徴の故郷ポートランドはあなたの音楽に何かしらの影響を与えていますか?

ピーター:ポートランドは僕という人格を形成してくれた大切な場所。でも、あの場所を離れたのにはワケがあって…なぜだか僕の音楽はポートランド以外のほうが随分とウケたんだよね。でもそんなことは関係なく、これからもポートランドは僕にとって大切な存在だろうね。

−−様々なジャンルの作品を作られていますが、曲作りはどこからインスピレーションを得て、どのようなプロセスで行っていますか?

ピーター:インスピレーションはどこからでも湧き上がるよ! 尊敬する音楽のメンターからは、それまで知らなかったことを吸収できるし、ラジオから流れるポップソングからパッと浮かぶこともあれば、大道芸人を見てインスピレーションを受けることもある。生きているうえで経験する全ての出来事が、何かしら音楽へと変貌していくわけだけど、たまたま、僕はいろいろなテイストの音楽が好きなタイプで、いろんなジャンルを試したいと思うし、違ったスタイルにしたほうが、よりその曲が引き立つんじゃないかと感じることがあるんだ。



▲Peter Broderick - And It's Alright [Nils Frahm Remix] (Late Night Tales: Jon Hopkins)


−−ニルス・フラームやアルバム・リーフなどのアーティストとのコラボレーションを通じて、音楽面でどのような発見がありましたか?

ピーター:ニルスはスタジオの魔法使いで、彼からレコーディングやミキシングについて学んだことは全て僕の糧になっているし、そのことにすごく感謝している。昔のことなんだけど、僕たち、仲良し2人組っていう時期から、少し経って、それが嘘みたいに、二人の間に隔たりが生じているのが見え見えっていう時があったんだ。でも、これってとても自然なことでもあるよね。
アルバム・リーフのジミーとの音楽制作は半端なく楽しかった。LAにある彼のホーム・スタジオで一日だけ一緒になったんだけど、インスピレーションの閃光が走って一曲作ったんだ。その曲は今でも気に入っている。彼は、そういう勢いを止めさせない曲作りの持って行き方が上手いんだ。



▲Never Held a Baby (feat. Peter Broderick)


−−昨年はアーサー・ラッセルのカバー・アルバムをリリースされましたが、そのプロジェクトに取り組むことになった経緯を教えてください。また、そのアルバムでは、アーサーの未発表曲もカバーするという特別な試みもされていますが、どうやって実現できたのでしょうか?

ピーター:僕はかれこれ十数年アーサーの音楽の大ファンで、僕の音楽がアーサーを連想させると言われることも多かった。デンマークの音楽フェスで彼の曲をカバーするショーの出演依頼を受けて、そのショーの準備として彼の曲をたくさん練習したんだ。そのショーのおかげで、世界各地からアーサーの曲を演奏してくれというオファーが絶えなくなった。ひとつひとつこなしていったら、いつの間にかアーサーの長年の音楽パートナーであるトム・リーと、彼の遺産を管理するマネージャーのスティーヴ・ナットソンと会うことになった。彼らからアーサーの未発表曲を聞かせてもらったり、彼の家族と面会したりすることもできた。各地で彼の音楽をプレイしていて、彼の音楽に対する計り知れない愛情を感じたよ。何とも楽しい経験になった。



−−2016年以来、3年ぶりの来日公演です。ライブ以外に日本で楽しみにしていることはありますか? これまで日本であった印象的な出来事もあればお聞かせください。

ピーター:久しぶりの日本をすごく楽しみにしているんだ。個性豊かな日本の文化が大好きで、前回訪れた時のことを振り返ると、おいしすぎる料理のことばかり思い出すんだ。実はその前にも日本に行ったことがあって、山で温泉に浸かったんだ。今では日本に友達もいるから、彼らに会えるのも楽しみにしている。

−−今回のライブで注目して欲しいポイントや、どんな曲を演奏するか見どころを教えて頂けますか?

ピーター:最近、ギターとピアノで新しい楽曲に取り組んでいるんだけど、その中から出来たばかりの未発表曲をいくつか披露しようと思っている。それにアーサー・ラッセルの曲とか、自分の昔のアルバムの中からもプレイしようかと考えているところ。前回のライブは、ギターがほんの少しで、大半はピアノでパフォーマンスしたんだけど、今回はバイオリンとエレキ楽器も持っていくつもり。前回よりもバラエティに富んだショーになるから、それをみんなとシェアできるのが楽しみ。

−−日本のファンへのメッセージをお願いします。

ピーター:日本のみんな、もうすぐそっちに行くからね! 一緒に2019年の最高のメモリーを作ろう!!!



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