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ちゃんみな『PAIN IS BEAUTY』インタビュー 「すべての痛みが美しく見えるんです」



 次世代を代表する女性アーティスト、ちゃんみなが11月30日、新作配信シングル『PAIN IS BEAUTY』をリリースする。彼女の2017年のファースト・アルバムのタイトルが、まさにそのまま『未成年』というタイトルであったように、これまで、その若さとそれゆえの葛藤を創作の最大のポイントとしてきた彼女が、今年20歳を迎えるにあたって「どうしても作っておきたかった」という楽曲が、今回の「PAIN IS BEAUTY」だ。『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』以降の強いインパクトもあり、ラッパーというイメージも強い彼女だが、改めて“シンガー”として、“アーティスト”としての自身のあり方に対する考え方や、創作の原点、原動力についても話を聞いた。

チャイコフスキーは「ホラー・チックな曲をたくさん作っている」

――ちゃんみなさんは、お母さんがバレエダンサーなんですよね?

ちゃんみな:はい。それもあって子供の頃からいろんな国に行ってましたね。小さい頃は私もバレエをやっていました。でも、全然普通の家庭ですね。共働きの家庭で、超裕福ってこともなくて。私、一人っ子なんですけど、他に兄弟がいたら、もうちょっと厳しかったかも知れないです。1人で良かった……みたいな。

――1人で遊ぶのは好きな子どもでしたか?

ちゃんみな:そうですね。そのせいで、今でも一人の時間が必要ですし、黙々と何かをやるのは好きですね。その集中力は、幼少期に生まれたのかな。1人で打ち込む……私はそれが音楽だったんですけど。

――1歳半の頃にはもう「歌手になりたい」と思っていたそうですね。

ちゃんみな:お母さんは、本当はバレエより歌がやりたかったみたいで、小さい頃は作曲もしていたみたいです。私がお腹にいるときから「この子は歌が上手になりますように」ってお願いしていたらしいです。一歳くらいの時、私がお母さんに「歌手になっていい?」って聞いたら大賛成で(笑)、ピアノとかバレエを習わせてくれました。

――子供の頃、最初に「これだ!」ってなった歌手は誰だったんですか?

ちゃんみな:それが全然覚えてないんですよ。TVで観ていて、日本人だったのか韓国人だったのかも分からなくて。茶髪のソロシンガーで、2000年頃の雰囲気のピンクっぽいキラキラした衣装を着て、踊っていたのは覚えているんですけど、それ以上は分からないですね。

――では、学生の頃などに、意識的に好きになったアーティストは?

ちゃんみな:お母さんが韓国出身なので、実家ではいつも韓国のTVが流れていたんですよ。そこではライブ番組も流れていて、K-POPのアーティストがよく出ていました。歌も踊りもあって華やかで。それがすごくかっこいいなと思っていました。

――ちゃんみなさんは『高校生RAP選手権』に出場していたこともあって、ラッパーというイメージもありますが、特にそういうスタイルを意識したのは?

ちゃんみな:K-POPって普通にラップのパートがあるんですよ。だから特別“ラップ”としては意識していなくて、「ちょっと早い歌」みたいに捉えていました。楽曲を作る上でのプラス・アルファの要素みたいな。


▲ちゃんみな - Doctor

――曲作りはいつ頃から始めたんですか?

ちゃんみな:ちゃんと打ち込みで音楽を作るようになったのは高校生になってからですね。それまではピアノでちょっとした録音をするくらいで。でも、歌詞は小学校の頃から書いてました。

――小学生の頃はどんな歌詞を?

ちゃんみな:話にならないような歌詞ですね(笑)。“歌詞っぽい言葉”をノートとかテスト用紙に書いていただけです。本格的に歌詞を書くようになったのは高校生からで、自分の書いた歌詞と好きな曲の歌詞を照らし合わせて「私の曲はストーリー性が足りないな」とか「ここはもっと具体的に書いてあったほうが、客観的に聴いても意味が伝わり易いんだろうな」とか色々と考えていました。

――子供の頃、ピアノを習っていたことは自分の曲作りに影響を与えたと思いますか?

ちゃんみな:もちろんです。ピアノを習っていなかったら、たぶん曲も全然作れなかったと思います。

――ちなみにピアノはどんな勉強をしていたんですか?

ちゃんみな:最初は楽譜からですね。「ドレミ」から始まって、普通に音楽記号の勉強もして。その後は基礎。バイエルっていう教科書から段階的に練習して、ある程度知識がついてからは「ここのコードがどうだ」とか、そういうことを勉強しました。

――その頃に特に好きだった作曲家は?

ちゃんみな:ベートーヴェンとチャイコフスキー。特にチャイコフスキーは好きですね。ちょっと怪しい感じの曲調というか、ホラー・チックな曲をたくさん作っている作曲家なので、一番好きでした。「くるみ割り人形」とかも、めちゃくちゃ好きでした。(歌いだす)「チャララン・チャン・チャチャチャン・チャララン♪」って、ちょっとずつ近づいてくる……みたいな。そういう“ダーク・ファンタジー”みたいな曲が多い気がします。

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「すべての痛みが美しく見える」

――ダーク・ファンタジーの要素があるものが好きなんですね。

ちゃんみな:大好きですね。

――そういう意味で、音楽以外に、映画や本などで好きなものは?

ちゃんみな:やっぱりディズニーの作品ですね。特にディズニーの悪役が好きで。昔から、ディズニー・チャンネルを観て育ったということもあると思います。『シンデレラ』とかも元々はグリム童話で、すごく怖い話じゃないですか? そういうのがすごく好きですね。「踵を切る」とか。「うわぁ…」って少しテンションが上がっちゃう感じです(笑)。

――なるほど(笑)。そう言われてみると、「PAIN IS BEAUTY」のジャケットも、白いドレスを着ていて、少しプリンセスのようなイメージですね。

ちゃんみな:そうですね。それで、虹色の花を持っているんです。私、虹色の花が大好きなんですけど、花言葉が「無限の可能性」なんです。バラって色によって、色々な花言葉があって。赤いバラは「情熱」、ピンクだったら「女の子らしさ」、オレンジだったら「無邪気な子供心」……とか。私、虹色の花のタトゥーも入れているんですけど、その色合いも、花言葉からイメージしてデザインしてもらったんです。だから今回のジャケットは、私には「無限の可能性」があるんだ!っていう意味で。写真も地元のゆかりのある場所で撮っていて、「この街でこれだけの可能性を取ってやった」みたいな。その花を目立たせたくて、白いドレスにした部分もあります。

――新曲の「PAIN IS BEAUTY」は「痛みが自分を綺麗にした」というテーマの曲ですが、この「PAIN」は、具体的には何をイメージしているのでしょうか?

ちゃんみな:小さいことから大きいことまで、本当に全部ですね。「PAIN IS BEAUTY」って私の座右の銘でもあるんです。例えば、直接的に美しさにつながることなら、ダイエットして汗を流すことも「苦」じゃないですか? それを成し遂げたら結果がついてくる。そういうダイレクトなものから「テストの点を取りたいから勉強する」みたいな努力とも「PAIN」に入ってくるのかなと思います。

――先ほどの話でいうと、曲作りのための勉強とかも、ある種の「PAIN」だった?

ちゃんみな:そうですね。だから「経験」ですね。悲しい経験をしても「あら~すごく悲しかった~トラウマだわ~ヒロインみたい~」みたいに片付けるんじゃなくて、それは将来、絶対にその分だけ綺麗になると思うし、その分だけ強くなれると思う。そういうメッセージです。


▲ちゃんみな - PAIN IS BEAUTY (teaser)

――「PAIN IS BEAUTY」の「BEAUTY」の方も、単なる外見上の美しさだけじゃなくて、様々なニュアンスを含んだ言葉なんですね。

ちゃんみな:“すべての痛みが美しく見える”んです、私には。友達の女の子が彼氏と喧嘩して傷ついている姿とかを見ても、私は「美しいな」って思っちゃう。それだけ彼女に心があるってことだし、それが絶対に次の経験につながるから。すごくアートだなって思うんですね。私のファンの子達にも(Twitterの)DMで「こんなことがあったんです!」って教えてくれる子がいるんですけど、それも新しい経験をして、それが次につながるんだと思うと、すごく綺麗だなと思うんです。それに、そういう人たちの目とか心も、すごく綺麗だったりするんですよね。歌詞の「綺麗」っていう部分もそういうことで、男の人だったら「痛みが俺をカッコよくしたんだ」って言っても同じことだと思います。

 私の曲も、過去に経験した悔しかったことや悲しかったことが源になっているものが多くて。結局、私が経験した「痛み」が作品になって綺麗になって世に出ているんだなって。それに、それを歌っているステージから見た景色が、すごく綺麗だったんですよ。(フロアに)ペンライトが広がっていて。私の好きな人たちが、笑っていて、嬉し泣きしていて、その光景がすごく美しくて。だから「美しいんだな、本当に」って思ったんです。その源は本当に私の「PAIN」だったから。それから何年か経って、こういう景色を生み出せるなんて、素晴らしいことだなって思います。

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「色んな人の変われるきっかけになりたい」

ちゃんみな:別の話だと、最近、嬉しいことに「かわいくなったね」って言われることが増えたんですよ。インスタのコメントとかでも「痩せたね」って言われたりして。でも、確かに自分でも思うんです。昔の写真と比べたら、本当に綺麗になったなって。

 昔から、お母さんとかおばあちゃんにはずっと言われてたんですよ。「いま辛いことも将来、綺麗になるから」とか「今大変でも将来はうまくいくから」とか。だからずっと頭の中にはあって。でも中二の時に友達と揉めて「本当に辛いな…」みたいなことがあって。その時は「なんだこれ?」「もう絶対に傷つきたくない」みたいに思ってたんです。でも、高校二年生の時とかに振り返って、「あれがあったから今につながってるんだな」みたいに思えて。その時に「“PAIN IS BEAUTY”って本当なんだな」って思ったんです。今は年々、時を重ねるごとに身を持って感じているというか。ライブの時に見た美しい景色も、中学生の時の辛かったことも、同じこの目が見ている。そう考えると、すごく感慨深くて。18か19歳になった頃「この言葉は私の座右の銘だな」と思いました。

――10月に二十歳になって初めてのシングルですが、このタイミングで、自らの座右の銘である新曲を出すということは……

ちゃんみな:決めていました。二十歳になる時に、そういう曲を出したいっていうのは、デビューした頃から思ってましたし、移籍したタイミングでも、ずっと会社の人たちに言っていました。「新曲です!みんなで聴いてヒットさせてね!」みたいな曲というより、自分のためにも出しておきたい、っていう曲ですね。

――改めて二十歳というタイミングにこだわったのは?

ちゃんみな:やっぱり節目だったからですね。ずっと『未成年』ということを掲げて活動してきて、それがなくなるということは、大人への第一ステップみたいなものなので、すごく大事にしたかったんです。


▲ちゃんみな 1st Live 未成年〜To be QueeN〜

――10月14日の誕生日当日には、二十歳を記念したライブも開催して、アクロバティックなステージ演出や和をイメージした美術も話題になりました。ライブ演出の面で影響を受けたアーティストなどはいますか?

ちゃんみな:演出の部分だと、ライブよりも映画とか舞台から刺激を受けることが多いですね。あとはテーマ・パーク。(ディズニー・ランドの)『イッツ・ア・スモールワールド』とか。そういう場所の方が「ちゃんと演出されている」感じがして、すごくテンションが上がります。あとはサーカスとか、バーレスクみたいな雰囲気も好きですね。

――そういう部分も、どこかダンサー的?

ちゃんみな:だと思います。自分の舞台でも、ダンサーの振り付けとかは、すごくこだわりますね。

――なるほど。音楽的な面にしても、リズムに対する捉え方とか「ダンスをできる人にしか歌えない歌」というものがあるような気がします。

ちゃんみな:確かにあると思います。「踊っている時に、ここでこういうフレーズが来たら気持ちいいな」とか「こういう音が入ったら気持ちいいな」とか、曲を作る時も、結構そういう感じに考えているかも知れません。

――パフォーマンスのイメージが、サウンドの方にも影響している?

ちゃんみな:そうですね。表れていると思います。

――「PAIN IS BEAUTY」はダンス的というより、バラードっぽい曲調ですが、そういう時はどこから着想を得るのでしょうか?

ちゃんみな:今回は「ミュージック・ビデオがこんな感じだろうな」みたいところですね。単純に音だけでどうこうというより、全体的にどう見えるかを考えています。「Doctor」もそうで、PVで出てくる振り付けがプリプロの段階からあって、「絶対にここはこういう振り付けだよね」みたいなのがあって、それが一番気持ち良くなるところに持っていこうと思って音をつけました。プロデューサーさんもそういう感覚を分かってくれたし、ダンサーさんにも好評で、嬉しかったですね。

――ライブ演出の進化も楽しみです。今後、韓国やアメリカでもライブをしてみたいと思いますか?

ちゃんみな:もちろんです。実はいま、韓国語だけの曲とか、英語だけの曲とかを出したいと思って、色々と企んでいるところなんです。そういう幅の広がったことも、今後は色々挑戦してみたいなと。先日、ロシアのダンサーさんたちが、私の曲で作品撮りをしてくれたんですよ。本当にちゃんとシューティングしたもので。それを観た時に「ロシアまで届いてるんだ!」と思って、すごい感動して。言葉も通じないような人たちが、私の曲で盛り上がってくれているんだ、と思うと、すごい可能性を感じますね。「全然知らない国だから……」とかじゃなくて、受け入れてくれる人もいるんだって思うと、もっと頑張って行きたいなと思います。色んな人の変われるきっかけになりたいというか、音楽を届けるだけじゃなくて、私の経験したこととか、ありがとうっていう気持ちが届くようなことをしていきたいですね。

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