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ビラル来日直前特集:コモンからマック・ミラーまで ゲスト参加曲でその魅力を紐解く&ビラル本人からのビデオコメントも到着!

 2017年1月、約10年ぶりの来日公演を行うシンガー/アーティストのビラル。自身もオリジナリティに溢れる作品をリリースしつつ、ブラック・ミュージックからポップスまで、数多くの話題作にゲスト参加することでも、そのキャリアを築いてきた。ビルボードジャパンでは、来日を前に、彼が2007年の最後の来日の“後”に参加した楽曲を中心に、その豊富なゲスト・ワークをおさらい。その見事な仕事ぶりを通して、この“天才”の魅力に改めて触れてみたい。

ビラルとゲスト・ワーク

 ビラルというミュージシャンは、日本の多くの音楽ファンにとって“知ってるようで案外知らない”存在なのではないだろうか。音楽ファンなら誰もが知っているビッグ・ネームであるにも関わらず、自身の活動はマイペース。だが、その歌声は時代の/シーンのスターたちに常に渇望されてきた。

 自由気ままなのは活動ペースだけではない。特に『Airtight's Revenge』(2010年)以降のアルバムは、時代の流れとリンクし、時には先行するような先見性も垣間見せつつ、どこか超然とした佇まいも備えている。熱烈なファン以外にとっては、手に取るには少しだけ“遠い”。だが、一度手にすれば決して手離せない蟲惑的な魅力を備えているのだ。

 日本のリスナーにとって10年ぶりとなる今回の公演は、そういった意味から言っても、まさに待望のライブだと言える。そして、それに備えるために、このタイミングで彼の主要なゲスト・ワークを振り返っておくのも一興なのではないだろうか。

with コモン~ラップ世代の“ブラック・シンガー”

 ビラルのキャリアを振り返る上で、やはり欠かせないのがラッパーのコモンとのコラボレーションだ。1990年代末~2000年代初頭、ザ・ルーツのクエストラブやディアンジェロ、故J・ディラが所属していた音楽集団、ソウルクエリアンズの一員として、その名を馳せるようになったビラル。そして、コモンもまたソウルクエリアンズの一員だった。コモンの2000年の傑作4th『Like Water for Chocolate』から、2007年の7th『Finding Forever』まで、ビラルは常に客演を飾ってきた。


▲Common - The 6th Sense ft. Bilal

 そして、今年リリースされたコモンの最新11thアルバム『Black America Again』でも、ビラルは重要な役割を果たしている。カリーム・リギンス、そしてロバート・グラスパーといった現代ジャズとブラック・ミュージック・シーンを繋ぐ要人がプロデュースした同作で、ビラルは4曲にフィーチャー。 シリアスなアルバムのメッセージに、リズムと音程の絶妙な揺らぎによって、時代も性別も超越するような、詩的な歌声の魅力を振りかけている。


▲Common - Letter To The Free (Audio) ft. Bilal


▲Home feat. Bilal (Official Audio)


with ロバート・グラスパー~ジャズ・シンガーの出自

 ビラルの資質の一つに、ソウル~ヒップホップといったブラック・ミュージックの継承者であると同時に、サイケデリック・ロック的なオルタナティブな感性が挙げられる。これはポスト・プリンス世代的な感覚でもあり、前述のソウルクエリアンズの中心人物であったディアンジェロや、(かつてコモンの恋人であった)エリカ・バドゥとも共通する。ヒップホップ/ラッパー的な歌のリズム感を備えたうえに、良い意味で脱力した、あるいはエクセントリックな節回しも得意とする(もちろん、その支柱には圧倒的な歌唱力がある)。ビラルという歌手の奥行きは、こうした様々な資質のプリズムのような反射から生まれている。

 ビラルのそんな特徴を「ブラック・デヴィッド・ボウイ」という、これ以上無く適切なキャッチ・コピーで表すのが、学生時代からの盟友であるロバート・グラスパーだ。 ジャズ・シンガーという音楽的な出自は、ビラルにとって、その魅力を語る上で絶対に外せないポイントの一つ。 ジャズはあらゆるブラック・ミュージックにとってルーツの一つでもあるが、ビラルはその要素がかなり前景化したシンガーの一人だと言える。アコースティック状態に近いサウンドでも煌めきを失わないその歌の表現力は、今回のクラブ・ライブでも注目したいところだろう。


▲Robert Glasper - Letter to Hermione (Live) ft. Bilal

 グラスパーは今年ビラルを、自身のマイルス・デイヴィス・プロジェクト作『Everything Is Beautiful』に起用。また、 ビラルの2013年作『A Love Surreal』にはグラスパーが起用されており、お互いがお互いを認めあっていることがよく分かる。また、グラスパーだけではない。2009年には、ジャズ界の大御所、テレンス・ブランチャードもビラルを起用し、彼が2001年に発表した「When Will You Call」を、限りなく美しいジャズ・アレンジでアルバム『Choice』に吹き込んでいる。


▲Miles Davis, Robert Glasper, Bilal - Ghetto Walkin'


▲Terence Blanchard & Bilal - When Will You Call

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with ケンドリック・ラマー~西海岸との繋がり

 そんなビラルにとって、キャリアを代表するコラボレーションの一つとなったのが、ケンドリック・ラマーとの「These Walls」だ。2015年のケンドリック・ラマーの傑作アルバム『To Pimp A Butterfly』(以下『TPAB』)に収録された同曲は、【第58回グラミー賞】で<最優秀ラップ/サング・コラボレーション賞>を受賞。同じくゲストでフィーチャーされたアナ・ワイズ、そしてラマー自身にとっても代表曲の一つとなった。

 『TPAB』へのビラルの参加は、直接的にはグラスパー経由でのことだが、同作の制作の大部分を支えたプロデューサーのテラス・マーティンを中心としたチームは、あのソウルクエリアンズと比較された。そう、ソウルクエリアンズと『TPAB』を結ぶ隠れた一本線こそ、ビラルだったのだ。


▲Kendrick Lamar - These Walls (Explicit) ft. Bilal, Anna Wise, Thundercat

 ビラルと西海岸の繋がりは、古くは、1stアルバム『1st Born Second』にドクター・ドレが参画したことまで遡れるが、『TPAB』への補助線はむしろSa-Raやデイダラスといった2000年代中盤以降に頭角を表したプロデューサーとの関係にあると言えるだろう。また、ビラルは、やはり西海岸アーティストが中心となって遂行された故・J・ディラへのトリビュート・プロジェクト『Suite For Ma Dukes』にも参加。Miguel Atwood-Fergusonのアレンジした「Reminisce」で素晴らしいライブ歌唱を聴かせている。

 そして、その最新の成果の一つが、エイドリアン・ヤングがプロデュースしたビラルの最新作『In Another Life』。西海岸的なサイケデリック・ロックと元々相性の良いビラルは、今後も彼の地の音楽家達と傑作をリリースして行くだろう。


▲Suite For Ma Dukes - Reminisce feat Bilal (Live)


with キンブラ、マック・ミラー~後輩世代へ拡がる影響

 ビラルの声を欲する若手は西海岸だけに留まらない。彼と同じくペンシルバニア出身で、最近はアリアナ・グランデとの熱愛でも注目を集めているラッパー、マック・ミラーの最新作『The Divine Feminine』にもビラルは参加している。ジ・インターネットやアンダーソン・パックともコラボし、近年西海岸の音楽シーンに接近しているミラーにとって、そのキャリアの上でも、ビラルは先輩と言える。


▲Mac Miller - Congratulations (feat. Bilal) (Official Audio)

 国境を超えて、2014年、ビラルとコラボレーションを果たしたのが、ニュージーランドのアーティストであるキンブラだ。彼女のアルバム『The Golden Echo』は、ミューズのマシュー・ベラミーや、ジョン・レジェンド、フォスター・ザ・ピープルのマーク・フォスター、サンダーキャットらが演奏やソングライティングなどの豪華アーティストが“裏方”として参加した異色作。その中で、唯一のフィーチャリングアーティストとして参加しているのがビラルなのだ。その楽曲「Everlovin' Ya」は、強烈に変調された声がヘヴィなリズムとともにうねりながら進行する、いまだかつて聴いた事のないフューチャー・サイケデリック・ソウル。ビラルというアーティストのフリーキーな側面が全開になった一曲だ。

 世代もジャンルも超えて、様々な音楽にフィットし、無二の魅力を放ち続けているビラル。その煌めきが、ライブという場で再び日本のリスナーの前に現れる。その最大の機会をどうか見逃さないで欲しい。


▲Kimbra - Everlovin' Ya (feat. Bilal)

ビラルからのコメントが到着!

▲Bilal Video Message for Billboard Live 2017

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