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「何らかの形で自分を表現しないと頭がおかしくなってしまう」―ヤエル・ナイム 来日記念インタビュー&藤原さくらからのコメントも公開



ヤエル・ナイムインタビュー

 2008年にリリースしたシングル「ニュー・ソウル」がApple社のCMに起用され、米ビルボード・ソング・チャート9位をはじめ、世界的で大ヒットを記録し、一躍スターとなったイスラエル出身、パリ在住のシンガー、ヤエル・ナイム。

 2016年3月23日に、約5年ぶりのスタジオ・アルバム『Older』の国内盤を発表、同作は“フランス版グラミー賞”とも言われる【ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュージック】も受賞した。11月には、今作を引っさげた来日ツアーを行うヤエルに、「自分が抱いている感情を受け入れて、それらについて曲を書くことは、まるで鏡のように機能」したと語る今作や日本の印象について聞いてみた。

さらに、以前からヤエルのファンと公言していた、シンガー・ソングライター藤原さくらからのコメントも公開!

生と死、そして、ヤエル&ダヴィッドたち二人の私生活

−−アルバム『Older』のテーマは?

ヤエル・ナイム:生と死、そして、ヤエル&ダヴィッドたち二人の私生活。

 アルバム・タイトルの『Older』は、人生を終えて去ってゆく人に関する曲Tr.10のタイトルでもあります。ダヴィッド・ドナスィアンと私はアルバムのレコーディングを終えた時、全ての曲が、生と死と私たち自身を中心に展開していることに気づきました。“older”という言葉は、このアルバムを通して私たちが伝えたかったこと全てを言い表していると感じました

−−祖母の死と出産を経て、このアルバムで死と生という壮大なテーマと取り組むにあたって、どんなヴィジョンを抱いていましたか?

ヤエル:音楽は私にとって、自分の人生に起きるあらゆる出来事と向き合うための、自然で無意識な手段です。祖母が亡くなった時、私は当然のごとく悲しみを抱きました。でもそれは、すぐには表面に表れない、深い場所を流れる水みたいな感情で……私の曲の中に祖母はゆっくりと姿を見せ始めました。もしかしたら私は、死後も彼女と対話をし続ける、或いは彼女について語り続ける必要を感じていたのかもしれません。

 出産前私はいつも、自分の子供のことを曲にしたりは決してしないと断言していたものです(笑)。それに、ある意味で子供のことは書いていないんです。……でも私は、こんなにも混乱した極端な感情を抱くとは予想していませんでした。例えば、歓喜と怖れが混在しているかのような感情だったり。自分が体験していることを曲に書かなければ、という欲求を抱きました。というのも、私はそうやって物事に対処しているんです。Tr.4「カワード」とTr.2「メイク・ア・チャイルド」を始めとする数曲で、出産前に、初めて母親になるにあたって私が抱いた気持ちを表現しています。従ってこれは私にとって難しいことではなく、何らかの形で自分を表現しないと頭がおかしくなってしまうという、私の人生のリアリティなんです(笑)。




−−ご自身の恐れや不安、或いは勇気、気持ちを曲にすることで、どんな答えを得ましたか?

ヤエル:自分が抱いている感情を受け入れて、それらについて曲を書くことは、まるで鏡のように機能しました。自分の強い部分と弱い部分を私は確認し、それが、自分自身を抵抗なく受け入れるよう私を促してくれました。そしてさらに、私を変えて前進させ、進化と解放をもたらす手助けをしてくれたんです。

これらの感情を表現し、分かち合うことで、私は自分が独りきりではないのだと悟りました。ひとりの人間の人生において、ふたつの最も大きな未知なる変化、つまり死と誕生を体験するにあたって、不安を抱くのは珍しいことではないのだと。

−−母親になったことは、アーティストとしてのあなたにどんな影響を与えましたか?目的意識や、表現したいこと、音楽が持つ意味合いは、以前とは変わりましたか?

ヤエル:私に一種の勇気と力を与えてくれたと思います。もしかしたら声と歌い方にも、何らかの影響を与えたかもしれません。時間の使い方もうまくなりました。商業的成功を追い求めたり、宣伝マシーンと化すのではなく、新しい音楽を作ることと、家族と一緒に過ごすことを最優先して。




−−サウンド・プロダクションにおいてこだわったことは?サウンド面のインスピレーションを教えて下さい。

ヤエル:従来とは異なる手法で作ったため、このアルバムが帯びている色彩はこれまでと異なります。私とダヴィッド(プロデューサー兼アレンジャー兼コンポーザーであり、ヤエル・ナイムというプロジェクトにおける私の対等なパートナーです)は、Tr.2「メイク・ア・チャイルド」、Tr.1「アイ・ウォーク・アンティル」、Tr.5「トラップド」、Tr.9「テイク・ミー・ダウン」を私と一緒に作曲しました。ひとりで作曲すると、色彩はより親しみやすいものになりますが、ほかの人と一緒に作曲すると新しい音楽的色彩、新しい可能性の領域が加わります。プロデューサーとしてのダヴィッドと11年間コラボしたのち、私は彼の音楽的影響にドアを開けました。彼はデンジャー・マウスやマイルス・デイヴィス、ジョン・バリー、ケンドリック・ラマーといったアーティストたちの作品を聴く人です。私も彼も聴いていて、ふたりの橋渡しをするアーティストはニーナ・シモンなんですが、彼女の音楽にはアメリカの黒人のソウル・ミュージックとヨーロッパのクラシック音楽がミックスされていて、どこまでも誠実で親密なのです。

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最新作『Older』では一緒に親になって、4つの曲を初めて一緒に産み出しました

−−ダヴィッド・ドナスィアンとあなたのパートナーシップはこの10年間にどのように変化しましたか?

ヤエル:ファースト・アルバムを制作した時、ダヴィッドは、彼と出会う前に私がひとりで密やかに書いた曲の数々を、“敬う”ことにこだわっていました。その結果彼の役割は、私の音楽的世界の中に入ってきて、私の曲をプロデュースして成長させることにあったんです。セカンド・アルバム『She was a boy』では、私たちはお互いの音楽の世界をミックスしました。プロデューサー兼ミュージシャンとしてのダヴィッドは、「ゴー・トゥ・ザ・リバー」などの作曲に関わり始め、私たちの作品にリズム面のアイデアをたくさん与えてくれるようになりました。ブラジルへ旅したことも、ダヴィッドの音楽的宇宙をもっと掘り下げたいという欲求を、私の内に植え付けました(ダヴィッドはクレオールなので)。




 最新作『Older』では一緒に親になって、4つの曲を初めて一緒に産み出しました。もしかしたら私たちは、自分たちの音楽の中でより成熟したのかもしれません。それぞれが音楽の中で自分を表現できるように。

 作業をしている時の私たちは、今もしばしば衝突します。でも以前ほどではなく、音楽的な意味でお互いへの理解を深めて、お互いの長所も短所もよく知っています。ふたりとも自分のスタジオを持っているので、必要に応じて一緒に作業をすることも、バラバラに作業をすることもできるんです。

−−Tr.6「イマ」ではレイラ・マッカラをフィーチャーして、英語とヘブライ語とクレオール語、3つの言語で歌われています。この曲が生まれた経緯を教えて下さい。

ヤエル:アルバムではそのレイラからザ・ミーターズのジガブー・モデリストまでの参加を得た上に、『Older(Revisited)』(リミックス・アルバム)ではフロー・モリッシーやカミーユほか多数のアーティストと録音したリミックス・ヴァージョンが収められ、いつになくコラボレーティヴなモードにありました。それはなぜでしょう?

−−アルバムではそのレイラからザ・ミーターズのジガブー・モデリストまでの参加を得た上に、『Older(Revisited)』(リミックス・アルバム)ではフロー・モリッシーやカミーユほか多数のアーティストと録音したリミックス・ヴァージョンが収められ、いつになくコラボレーティヴなモードにありました。それはなぜでしょう?

ヤエル:私たちは常に、たくさんコラボレーションをしたいと望んでいるのですが、それを完全に成し遂げたのは今回が初めてです。ほかのアーティストが私たちの音楽をどう再解釈するのか、すごく興味があります。最初のコラボレーションはブラッド・メルドーとのセッションでした。夢が叶ったようなものです。それが、ジュールズ・バックリィの指揮によるメトロポール・オルケスト(Metropole Orkest)とのふたつ目のコラボレーションのアイデアをくれました。ドビュッシー・カルテットとのコラボレーションと、「カワード」をリミックスしたRONEとのコラボレーションも。そしてしばらく経つと、私たちはそのままどんどん続けたくなったんです!ダヴィッドによるリミックスで歌ってもらうためにシンガーのカミーユを、若く才能あるミュージシャン兼プロデューサーのジム・ヘンダーソンがリミックスした、新しいヴァージョンの『Older』で歌ってもらうためにフロー・モリッシーを招きました。ジェネラル・エレクトリックス(General EleKtriks)や20sylといった著名なミュージシャンともコラボしましたが、ほかにもラグ・アンド・ボーンズ(Rag and Bones)やシティ・スクエア(Circle Square)のような無名のリミキサーたちも、非常にクリエイティヴなヴァージョンで私たちを驚かせてくれました。これらのコラボレーションは、私たちが通常作っているものとは異なる音楽を体験する機会を提供し、次のアルバムでの新たなコラボレーションに向けてインスピレーションを与えてくれたんです。

−−「カワード」でのブラッドとの共演は、どんな経緯で実現したんですか?

ヤエル:私たちはブラッドの音楽と、クラシック音楽の影響を即興音楽やジャズに持ち込む彼の手法が大好きなんです。私の夢は、「カワード」という曲に対して心を開いてもらって、彼にしか思いつかない方法でプレイしてもらうことでした。彼とのミーティングと、私たちが一緒に行なった演奏は、想像を超える素晴らしい体験でした。端的に言って、現時点でダヴィッドと私が体験した中で、最もパワフルな音楽的体験です。

−−アートワークに用いたフクロウは何を象徴しているのでしょう?

ヤエル:フクロウは様々な国の文化において、生と死をつなぐ通路を象徴しています。つまり、アルバムが何を物語っているのか示唆しているんです。同時にフクロウは、夜間でもずば抜けた視力を誇っていて、暗い時期にも目をしっかり見開いていることを、表してもいます。

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もっとたくさんの共感と思いやりを持って、お互いと接するべき

−−このアルバム制作を通じて、自分について何か新たな発見はありましたか?

ヤエル:自分の声に関して、何かふっ切れたところがあるような気がします。怖れを感じることなく、自分を解放できたのではないかと。また、音楽にまつわるダヴィッドの尽きせぬアイデアとヴィジョンに、幾度も幾度も新しい側面を発見しました。

−−聴き手にはこのアルバムからどんなことを感じ取ってもらいたいですか?

ヤエル:私たちの人生は短いものです。もっとたくさんの共感と思いやりを持って、お互いと接するべき。自分たちに可能な限り、たった一度だけの人生を楽しんで、お互いに助け合う努力をするべき。私がそれをできているとはまだ言えませんが、学んで実践しようと努力しています。

−−昨年11月末にはパリで起きたテロ事件の公式追悼イベントで、ジャック・ブレルの「愛しかない時(Quand on a que l’Amour)」を歌いました。その時にどんな感情があなたの心中を巡っていたのでしょうか?

ヤエル:私の心の中では、様々な異なる感情が渦巻いていました。犠牲者たちに対する深い悲しみ。プレッシャーと名誉、そして、あのような重要な場でデリケートな感情を代弁するという、途方もなく大きな責任を感じていました。




−−2008年、2009年、2012年と3回来日していますが、日本の印象はどのようなものでしょうか?

ヤエル:日本で演奏することができるのは、私たちにとって信じられないくらいの贈り物です。毎回海外ツアーが始まると、日本へ行く日程を楽しみにしています。本当に待ちきれないのです、まるで子供のように!

 日本は私たちにとって魔法が生まれる場所です―毎回必ず興味深い人に出会い、たくさんのことを学んで帰ります。私たちの音楽に対する謙虚さと敬意が入り混じった感情には、常に関心させられます。日本は、ブラジルに並び、私たちがツアーをするのが一番好きな国です。

−−今回の来日で行きたいところややりたいことはありますか?

ヤエル:東京の街を何時間もかけて歩き回り、様々な場所へ行くのが気に入っています。渋谷のエネルギーや原宿にある公園の持つ独特な静けさに魅了されます。

−−来日公演はどんなステージになりますか?差し支えなければ披露しようと思っている曲を教えてください。

ヤエル:最新アルバム『Older』の収録曲はほとんど演奏する予定で、他にも過去の2作品からの楽曲を披露します(「ニュー・ソウル」、「ゴー・トゥ・ザ・リヴァー」、「トクシック」など)。

 新曲はすべて、近年心を動かされた、様々な大切な瞬間にインパイアされたものなので、私たちにとってとても意味があるものです。

 ベースにダニエル・ロメオを迎えたトリオだと、とても冒険的になり、即興性が生まれるので、この編成で演奏するは大好きです。

 大好きな日本の観客のみなさんとこの音楽を分かち合うことが待ちきれません。

−−最後に、ライブを楽しみにしている日本のファンに向けて一言お願いします。

ヤエル:日本のファンのみなさんへ伝えたいのは、みなさんに再び会うことが待ちきれないということ。みなさんは私たちにとってインスピレーションの源であり、日本への旅はいつも多くの感情を喚起させる体験となってきました。

 私たちの新たな音世界をみなさんと分かち合えるまで、もうあと数週間あまりです。




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コメント from 藤原さくら

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コメント

 CDショップで「She was a boy」のジャケットを見てビビッと来て手に取ったのが私のヤエル・ナイムとの出会いでした。家に帰って一曲聴く毎に、しまった…とんでもなく良い音楽を見つけてしまった…と感動して感激してベッドで暴れたのを覚えてます。

 その後、昔のアルバムも買ってアップルのCMに使われている事も知り…その時が2013年だったので、前年に来日してたんだ…と落ち込み…笑

 今回、最高の新アルバム「Older」がリリースされビルボードでライブがあるということで、どのような編成で観れるのか、そして日常の色んな場面に寄り添って元気をくれた大好きなヤエルナイムを生で観れることが本当に楽しみです!!

 オシャレでそしてポップで、絶対に全人類が観るべき聴くべきアーティストだと思います。ぜひ!

藤原さくら

藤原さくら Special Live 2017

【大阪公演】 
2017年2月3日(金)
会場:NHK 大阪ホール(大阪市中央区大手前4丁目1番20号)
開場:18:00 / 開演:19:00

【東京公演】
2017年2月18日(土)
会場:Bunkamura オーチャードホール(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)
開場:17:00 / 開演:18:00

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藤原さくら オフィシャルサイト

 

ヤエル・ナイム「Older」

Older

2016/03/23 RELEASE
VITO-126 ¥ 3,024(税込)

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