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Billboard JAPAN × BASS MAGAZINE タル・ウィルケンフェルド 来日記念特集

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 ビルボードジャパンとベース・マガジンがタッグを組み、来日を直前に控えたベーシストたちに迫る特別企画。第二弾は11月にファン待望の来日を果たす女性ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドをフューチャー。ベース・マガジンのライターとしてもお馴染みの佐藤英輔氏に、ジェフ・ベックをはじめ、世界のトップアーティストたちからも見初められた彼女の、ベーシストとして、そして女性としての魅力に迫ったもらった。

<Billboard JAPAN × BASS MAGAZINE 特別企画第一弾>ラリー・グラハム&グラハム・セントラル・ステーション 来日記念特集

レジェンド・アーティストたちをも虜にするジャンルを縦横するプレイ・スタイル

CD

 トッド・ラングレン、TOTOやスティーヴ・ルカサー、ジャクソン・ブラウン、ライアン・アダムス、トレバー・ラビンといったロック側にいる人たち。はたまた、ジャズ・フュージョン系のウェイン・クランツ、リー・リトナー、ハービー・ハンコック。さらには、R&Bのメイシー・グレイ。それら顔ぶれをぱっと見たら、??? これは一体、何のリストかと思ってしまう人が多いに違いない。

 それらは、ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドの参加アルバムのリーダーの名前である。音楽傾向はとっても散っているが、それが彼女のジャンルの枠を超えた注目度、オールマイティな力量を示すものであるのは間違いない。たとえば近年だとドラマーのクリス・デイヴ(ロバート・グラスパーやディアンジェロの表現に貢献し、ソロのライヴ活動でも注目を集めている)のように、音楽界は旬の注目のプレイヤーを生むが、このウィルケンフェルドもそういう存在であるとも指摘できるだろう。そして、そんな逸材は1986年生まれ、まだ20代なのである!


彗星の如く登場した女性ベーシスト、大躍進までの軌跡

CD
▲ 『クロスロード・ギター・
フェスティヴァル 2007』

 米国を拠点に八面六臂の活動をしているウィルケンフェルドだが、もともとはオーストラアの生まれ育ち。彼女は12歳からギターを弾きはじめ、2002年に自分の進む道はミュージシャンと定め、高校を中退して渡米している。当初はギターを習っていたが、もともと低音&グルーヴ好きでもあったため、17歳のときに楽器をベースに持ち替えている。そして、2004年にロサンゼルス音楽アカデミー音楽大学を卒業し、NYに活動の場を移した。すると、エレクトリック・ベースを達者に操るあの若い可憐な娘は誰と、評判を呼びはじめる。マーカス・ミラーやアンソニー・ジャクソンなどは、彼女を親身に応援したという。2006年にザ・オールマン・ブラザーズ・バンドのレコーディングにゲスト参加し、それがウィルケンフェルド初のアルバム参加作となる。

 続く、2007年は彼女にとって、ジャイアント・ステップの年。初頭にジャズ・フュージョン大御所ピアニスト/キーボーディストのチック・コリアの豪州ツアーのメンバーに抜擢されるとともに、ジェフ・ベックの欧州ツアーに誘われて、大多数の観客の前でその印象的な姿を披露した。そして、彼女を含むジェフ・ベック・バンドは、シカゴで持たれたエリック・クラプトン主宰のブルース・フェスティヴァル“クロスローズ・ギター・フェスティヴァル”にも出演。その際の模様はDVD化され、彼女の名前が広く知られるのを助けた。

CD
▲ 『エモーション・アンド・
コモーション』

 また、2007年11月のジェフ・ベックによるロンドンの著名ジャズ・クラブにおける特別ライヴの模様が『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ・クラブ』として映像商品化されており、実力派ウィルケンフェルドの様を存分に受け取ることができる。そこには、エリック・クラプトンやジョス・ストーンらがゲスト入りしていた。

 そんなウィルケンフェルドの初来日も、ジェフ・ベックとのものだった。2009年2月に、彼の日本武道館公演を含む日本ツアーに彼女は同行し、その目を引く容姿と演奏を披露。また、彼女はジェフ・ベックの2010年作『エモーション・アンド・コモーション』にも参加しており、ウィルケンフェルドと聞くと、閃き一杯の個性派大家ギタリストをしなやかに支える敏腕ベーシストというパブリック・イメージを持つ人も多いのではないだろうか。


 「Jeff Beck & Tal Wilkenfeld. @ Crossroads Festival 2007」

二十歳で創作した初のリーダー作

CD
▲ 『トランスフォーメーション』

 話は前後するが、2007年には、知名度の広がりに導かれるように初リーダー作の『トランスフォーメーション』も彼女はリリースしている。アルバムはその前年、ウィルケンフェルドがハタチのときにレコーディング(作曲やプロデュースも自身が行い、レコーディングは2日間でなされた)されたもので、ウェイン・クランツ(ギター)、ジェフリー・キーザー(ピアノ、キーボード)、キース・カーロック(ドラム)、シーマス・ブレイク(サックス)といったNYの清新系ジャズ・マンがそこに参加。甘さを排した真摯なジャズ/フュージョン・フォーマットのなかで、構成力豊かな指さばきを縦横に彼女は聞かせている。その総体は“変化”というアルバム・タイトル付けも納得の、ミュージシャン間のヴィヴィッドな対話が柱となる多彩なベース演奏をいろいろと収めたインストゥメンタルのアルバムと説明することができるだろう。小柄かつその華やかな髪型もあってどこかキャピキャピした所感も与える彼女だが、その音だけをとれば、実年齢より相当に成熟した演奏を聞かせるとも指摘できるはずだ。


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“べースと女性”が導きだす音楽のかたち

 ジェフ・ベックとの3年に渡る活動の後、ウィルケンフェルドは2010年以降、最初に記したように様々な実力者や個性派のレコーディングに参加し、より枠に収まらない姿を出すようになった。だが、関連映像作品やジェフ・ベックとの来日公演を見た人なら、やはりウィルケンフェルドはライヴ、生の姿に触れてこそ、その真価は伝わると感じているのではないだろうか。やはり、彼女は佇まい、ベースや音楽に献身していますという風情がアトラクティヴだ。音楽と真っすぐに向かい合って、太い弦を悠々と爪弾く様の魅力的なこと。また、映像作品を見ると分るのだが、彼女は演奏時の表情がとてもキュート。そりゃ、一緒に演奏し、あの笑顔に触れたいというおじさん奏者が続出しても不思議はないと思わせられてしまう。

 とともに、ウィルケンフェルドのパフォーマンスは“ベースと女性”という組合せに対する、受け手の甘美な記憶の扉を何気にノックする。昔から、なぜかベースを手にする女性は少なくなかった。英国ロッカーのスージー・クアトロ、西海岸スタジオ界の大御所であるキャロル・ケイ、トーキング・ヘッズのティナ・ウェイマス、ソニック・ユースのキム・ゴードン、プリンスと関わりを持つローンダ・スミスやイーダやニック・ウェスト、ビヨンセのバンドに入って知名度を得たディヴィニティ・ロックス、そしてミシェル・ンデゲオチェロやエスペランサ…。ぼくたちは、様々な女性ベーシストのクールネスや華やかさを思い浮かべることができるし、その<本来生理的にヘヴィな楽器>と<しなやかな女性性の発露>の重なった時の魔法が導く、音楽の素敵さを知っている。そして、ウィルケンフェルドによる“ベースと女性”というマリアージュも、ワクワクさせるロマンを聞く者にこれでもかと与えるのだ。



               「"Chelsea Hotel" performed by Tal Wilkenfeld」


間近に迫る初リーダー来日公演

 彼女の2015年10月19日付けの英語Twitterには、2012年の交通事故による来日キャンセルの謝罪と、11月の日本公演に対する心からの期待が、日本語で掲載されている。ウィルケンフェルドはすでにセカンド・アルバムの録音を終えているが、それはソングライターの側面に力を入れた内容で、彼女はそこで歌ってもいるという。そして、彼女は今度の日本でのショウで新作のマテリアルを披露することをホームページのニュース項目でも明記。ウィルケンフェルドの初リーダー来日公演は、より広い彼女の顔と創造性が引き出た、まさに“音楽の女神”が舞う内容となるはずだ。

タル・ウィルケンフェルド オフィシャルホームページ

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