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2019/05/05

<ライブレポート>シルバ・オクテット、バラライカ奏者ビリュコフを迎え、東欧を巡る多彩な音楽の旅【LFJ2019】

 ヴァイオリン奏者シュムクレールが、パリ管のメンバーを中心に2003年に結成した八重奏団シルバ・オクテットが、5月3日に開始した【ラ・フォル・ジュルネTOKYO】に登場、バラライカ奏者のビリュコフを迎えた新プロジェクトで、ロシア民謡を含めたロマ、クレズマー音楽の定番曲、大衆文化に深く根差した流浪の民の響きを堪能するプログラムを披露した。

 クラシックの高度な技術をもつメンバーが中心とあって、その確固たる技術による超絶技巧で1曲目から会場を圧倒。「シルバ・オクテットは初めて東京に来ました!ラ・フォル・ジュルネのコンサート、とっても、とっても、とーっても嬉しいです!!」と喜びのコメントを日本語で伝えると、客席は大きな歓声をもって応えた。

 今回のプログラムはシルバ・オクテットが、ロシア音楽の象徴とも言える民族楽器バラライカの名手、アレクセイ・ビリュコフを迎えて送る新プロジェクト。ロマの放浪民によって書かれた名曲「ワーレンキ」(ロシアの伝統的なフェルト製ブーツのこと)など酒場の雰囲気を感じさせる曲や、日本人にはなじみ深い「カリンカ」も演奏された。

 奏者のビリュコフはクリゲンタール国際コンクールで優勝、2013年にはモスクワの国際音楽祭【バラライカの偉大な巨匠たち】から招かれた経歴を持つ名手。日本では身近とは言えない三角形の楽器を目の前にした客席は、叙情あふれるメロディーラインや、こころ揺さぶられるトレモロの響きなど、達人の技に釘付けになっていた。

 編曲を担当するシリル・レーンとヤン・オリヴォ、4人のパリ管の奏者たち、ピアニスト、ツィンバロン奏者によって結成されているシルバ・オクテットは、クレズマーやユダヤ音楽、ジプシー音楽のレパートリーを、まったく新しい世界観で見せ続けている。今回披露されたルーマニアやモルダヴィアの伝統舞曲、またドイナやシルバといった羊飼いたちの伝承歌などは、まさにLFJのテーマ『旅から生まれた音楽(ものがたり)』そのもの、東ヨーロッパを巡る音楽の旅と言えるものであった。

 本公演【さすらいの音楽:ロマ&クレズマー×バラライカ!】は、今年のLFJでは毎日公演があり、またファイナル・コンサートにも登場と大活躍。LFJに初登場とはおもえぬ連日満席の会場で、新たなファンを大いに獲得したのではないだろうか。今後の来日公演にも期待したい。text:yokano


◎公演情報
【さすらいの音楽:ロマ&クレズマー×バラライカ!】
5月4日 (土・祝) 11:15~12:00
東京国際フォーラム ホールB7:アレクサンドラ・ダヴィッド・ネール

<演奏曲目>
モルダヴィア組曲
パパ、復活祭がやってきた!
ワーレンキ(ロシアの伝統的なフェルト製ブーツ)
あなたと会った
モスクワのポルカ
黒い列で歩く
つぐみが鳴くころ
2台のギターによる組曲
カリンカ