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2018/04/07

古代エジプトの悲恋を描く、豪華絢爛な歴史スペクタクル『アイーダ』圧巻の舞台

 新国立劇場が4月5日にヴェルディによる『アイーダ』を開幕、世界的スター歌手を迎え繰り広げられる豪華絢爛な舞台を見ようと多くの観客が詰めかけた。

 1998年に新国立劇場開場記念公演として上演された『アイーダ』。古代エジプトの戦士ラダメスと敵国エチオピアの王女アイーダの悲恋を描いたヴェルディの祝祭的大作を彩るのは、巨匠ゼッフィレッリだ。圧巻の舞台美術と重厚な衣装で、見る者すべてを圧倒するこのプロダクションは、上演以来絶大な人気を誇っており、今回は開場20周年記念特別公演として5年ぶりの上演とあって、初日前に完売日が続出する人気公演となっている。

 タイトルロールのアイーダ役には、ウィーン国立歌劇場やヴェローナ音楽祭などで活躍するイム・セギョン。ラダメス役には近年ヨーロッパの一流歌劇場に次々と出演する注目の若手ナジミディン・マヴリャーノフ。そしてアムネリス役には世界的トップスターであるエカテリーナ・セメンチュクを迎えた。3名とも新国立劇場には初登場だ。

 イム・セギョンの驚くばかりの声量は、その怒りや慟哭が音圧となって観客の体全体に迫ってくる程だ。一方で悲しみを表現するピアニッシモは、静けさを際立たせる絹糸のように響く。エカテリーナ・セメンチュクのパワフル・ボイスは、相手を怯ませ、足下にかしずかせるだけの自信と威厳に満ちている。愛する男を巡る二人の“王女”の戦い(重唱)は、さながら大蛇と虎の睨み合いのような迫力だ。

 主要3役以外は全て日本人キャストが脇を固める。特に、アイーダの父親で、ラダメスの裏切りを焚き付けるアモナズロ役の上江隼人は、そのクセのあるキャラクターを演技と声で活き活きと表現しドラマをリードしていた。『アイーダ』を彩る、民衆の叫びや審判の声など、大人数による、また男声のみ、女声のみの合唱アンサンブルの精緻さもまた、舞台を奥行きのあるものにしている。

 新国立劇場 会場20周年記念特別公演、ヴェルディ『アイーダ』は残り6公演。伝説の大スペクタクルを見逃さないようにしたい。 text:yokano

◎公演情報
新国立劇場 会場20周年記念特別公演
ヴェルディ『アイーダ』
2018年4月5日(木)~4月22日(日)全7公演