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<インタビュー>Virgin Music Group ピーター・ヴァン・レイン(Downtown Music CEO)×クリスティアン・クローナー 両者が描く、アーティスト支援の未来

インタビューバナー

Interview & Text:ジェイコウガミ
Photo:Kaori Murai

 2026年2月、Downtown MusicはVirgin Music Group(VMG)との合併を完了した。急速な成長と音楽ビジネスの国際化が進む中、両社はなぜ手を組んだのか。合併の背景と目的、そして統合後に描く未来のビジョンについて、【Billboard Global Power Players 2026】【Billboard Indie Power Players 2026】に選出されたDowntown Musicのピーター・ヴァン・レイン氏と、【Billboard Indie Power Players 2026】に選出されたクリスティアン・クローナー氏に聞いた。

※本インタビューは2026年4月に実施し、公開前に一部コメントを追加したものとなります。
※7月よりクリスティアン・クローナー氏はVirgin Music Groupの EVP, Virgin Music Group Global Operationsに就任し、Virgin Music Group、Downtown、FUGAのオペレーション事業を統括しています。


*写真左から、クリスティアン・クローナー: EVP, Virgin Music Group Global Operations、 ピーター・ヴァン・レイン: COO, Virgin Music Group / CEO, Downtown Music

Downtown MusicとVirgin Music Groupとの合併の目的とは

――まず最初に、Downtown Music とVirgin Music Group(VMG)との合併についてお聞きします。音楽業界内で大変大きな注目と議論を呼びました。そもそも合併した理由と、目的は何だったのでしょうか?

Pieter:大きな理由は、Downtownがここ数年でかなり急速に成長したことがあります。過去数年で、私たちは多くのサービスを統合してきました。権利者、レーベル、アーティスト、ディストリビューター、パブリッシャーなど多くのクライアントに対して、明確な音楽市場に合わせた提案ができる、そのようなサービス提供の組織を作ってきました。


――なるほど。

Pieter:その上で、私たちのビジネスも大きく成長してきました。そして、音楽ビジネスの国際化がどんどん進む中、ビジネスの内容も複雑化してきました。自社の成長と業界内の環境の変化の両面から将来を考えた時、会社に「新しい居場所」を見つけることが良い決断だと考えたのです。


――新しい居場所ですか?

Pieter:Downtownの株主は17年近く、私たちを支援してくれました(Downtown Music Holdingsは創業が2007年)。株主や経営陣は、今後もアーティストや起業家精神あるクライアントにサービスを提供し続ける上で、別の会社とパートナーシップを組むことで、最終的に私たちのサービスを強化できると考えたのです。

私たちは、今後も、小規模なアーティストからエンタープライズ規模のクライアントまで幅広くサービスを提供し続けてまいります。今回の提携は株主や私たちと共に働いてくれるメンバーにとっても、そして何より私たちのクライアントにとっても意義ある決断だったと考えています。


Downtownの提供するサービスと価値

――VMGとはどんな対話が行われたのでしょう?お互いのサービス内容で競合することもあるかと思います。

Pieter:VMG のチームは、当初から私たちが築き上げてきたものに、深い敬意と強い関心を寄せてくれました。VMGとの対話を通じて、今回の合併において私たちが対等なパートナーとして重要な役割を担えると実感しました。VMGは、私たちがこれまで国際的なスケールでサービスを発展させてきた歩みを深く理解してくれています。そして、私たちが掲げる、クライアントに最高のサービスを提供するという目標を継続しつつ、幾つかのサービスやメリットを加えることも考え始めました。それが今の状況です。

取引が終わったのが2月ですので、今後の詳細な展望をお話するにはまだ早い段階ですが、全体的な目標は、アーティスト、起業家、クリエイター、権利保有者といったクライアントを成功に導くこと。そして、彼らの野心を達成できるようにサポートするため、最高品質のサービスと、先見性あるテクノロジーを提供することです。これらは以前から私たちのミッションですが、より一層大きなスケールで実現できると考えています。


Christiaan:VMGチームは長年にわたり、インディペンデント音楽領域に向けて、素晴らしいサービスを構築してきました。ツールやテクノロジー、マーケティングを提供するというサービスへの考え方、市場の見方、マインドセットは、私たちと同じで、両社は非常に高い親和性があります。近しい考え方を持つ2社が合併することは、良いマッチングだと感じています。VMGの共同CEOのNat(Nat Pastor)とJT(JT Myers)とは、最初の対話ですぐに打ち解けて、同じ情熱とDNAを共有できると感じることが出来ました。


――VMGとは、どんなトピックが議題に挙がりましたか? 業界における共通の課題解決でしょうか?それとも、もっと未来的な大きなビジョンの話でしたか?

Pieter:多くの時間を費やしたのは、「強化」する部分の可能性についてです。Downtownのサービス・ポートフォリオはかなり幅広いサービスを提供していますが、VMGは、私たちと似たサービスを提供する一方、私たちが手薄な分野を得意としていたりします。その逆のパターンもあります。彼らが関わっていない領域で、私たちが強い領域もあります。これらを組み合わせることで、サービス・ポートフォリオをより完全なものにし、結果的に全体的なサービス提供の強化に繋がると考えています。

私たちは、テクノロジー、プロダクト・イノベーション、マーケティング・サービス、オーディエンス・マネジメントをクライアントに提供できるスタッフを多く抱えています。これらの領域で、お互いから学ぶ環境を整えていく予定です。追加のサービスの提供についても、考えることが可能になりました。他にも成長が見込まれる領域はいくつかあり、それらを的確に見極め、実現へと力強く推し進めていくための推進力も得ることができます。


FUGAが提示する音楽テクノロジー企業の役割

――テクノロジーを背景に持つ企業として、特にFUGAのようにテクノロジー主導に定評ある企業がある中で、合併後はどのように強みを打ち出していくつもりですか?今後もテクノロジー主導の企業であり続けるのか、それともより統合的なサービス企業に変わっていくのでしょうか?

Christiaan:私たちのテクノロジーはこれまで同様に重要であり続けます。それこそがVMGとDowntownが連携した魅力の一つです。FUGAでは、プラットフォーム全体で、拡張性、柔軟性、応答性の高いテクノロジーの構築に注力していきます。そして、Downtown、FUGA、VMGのチームもお互いがソリューション主導であることに加えて、音楽への情熱、クライアントへの高品質なサービス提供という共通認識があります。私たちはクライアントがいかにイノベーターになれるかを常に考えています。今後は、クライアントにより大きなインパクトを与えるテクノロジーを、戦略的に向上させることが実現可能になります。


――合併にあたって、異なるチームをグループとしてまとめるには、最大の課題は何だとお考えですか?

Christiaan:課題よりもチャンスの方が多いですね。注力すべきは統合です。チームが同じ働き方、同じツールやインフラを使えるようにしなければなりません。これには時間がかかるでしょう。お互いのベストプラクティスから学べることはあります。2つのビジネスの統合には、注力しなければならないことが多くあります。しかし、お互いの働き方から見えてくるものがありますし、どうすれば良くなるかの改善点を見つけることもできます。その意味では、チームにとって新しい価値を生み出すチャンスだと考えています。


――働き方を知ることは、お互いを理解する意味でも重要ですね。

Pieter:DowntownとVMGは、両社はともに、複数のビジネスを統合してきた経験を持ち、幾多の変化を乗り越えてきました。統合を通じて得られる教訓を熟知しており、変化への適応力も備えています。時に変化を牽引し、時に素早く追随しながら、常に前進してきました。それこそが、音楽業界における本質なのです。


――特に、皆さんとVMGのここ数年の変化は、音楽業界のあり方を象徴する動きでしたね。

Pieter:私たちのクライアントもまた、常に変化の中に身を置いてきました。新たな収益化の機会や課題に絶えず向き合ってきたことも、音楽業界ならではの姿と言えます。こうした変化の中で、クライアントを成功に導くことがサービス企業である私たちの責任であり、仕事です。

私たちは常に業界内でのアーリーアダプターであり、知識の提供拠点であり、教育啓蒙者として業界の変化をクライアントに分かりやすく説明し、彼らの生活とビジネスを向上させるソリューションを提供する必要があります。


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グローバルから見た日本の音楽市場

――日本市場には、今後どのような機会があるとお考えですか?変化を受け入れるという意味で、日本の音楽業界では、ストリーミングの収益化を始め、様々な領域で慎重な考え方や見方が多くありますが、これらをどう捉えていますか?

Pieter:私たちが日本市場に参入した当時、フィジカル市場がまだかなり大きく、デジタル市場は世界の他の国々から遅れていました。ですが、過去数年間で、日本で多くの変化、様々な動きを見てきました。日本の業界が大きな変化に適応してきたことが実を結んでいます。興味深いことに、今や欧米企業の視線が日本に向けられています。その焦点は「ファンエンゲージメント」です。日本が培ってきたそのアプローチこそ、今まさに世界が必要としているものだからです。


――そこには、どういった背景がありますか?

Pieter:ストリーミングは今や、音楽消費の基盤となりました。世界の音楽業界は、私たちを含め、いかにファンとの深い繋がりを築き、より豊かな体験を提供できるかを模索し、その答えを求めて学び続けています。そしてこの領域において、日本は世界の最前線に立っています。他国に先駆けて数多くの革新的な取り組みを生み出してきたからです。「日本は世界に遅れている」という見方は、もはや実態を反映していません。


――グローバルでサービス展開するFUGAから見て、日本はどのように感じますか?

Christiaan:私も100%同意見です。参入当初、私たちが日本のクライアントと会って話をすると、デジタル導入に関して、他の国とは少し違う考え方があることが感じられました。ただし、それらは導入への抵抗というよりも、デジタルに対する全く新しい考え方だったと表現した方が適切かもしれませんね。


――結果的に振り返ると、意味が合ったということですね。

Pieter:昨今どのクライアントでも、議論の中心は、デジタルが最重要課題であることは非常に明白です。ただし、これまではデジタル・ストリーミングでしたが、今はソーシャル、そしてファンダムです。その中でも、日本の業界は、他の市場と比べて、独自の特性と知見を持っていると言えます。


――そうした日本ならではの独自性は、6月に東京で開催された【MUSIC AWARDS JAPAN】にも表れていたかと思います。実際に授賞式に参加されて、どのような感想を持たれましたか?

Christiaan:お招きいただき、大変光栄に思っています。あのイベントに参加したことで、日本の音楽業界の圧倒的な規模感を一度に実感することができ、大きな刺激を受けました。授賞式は非常に素晴らしい内容で、さまざまなジャンルを代表するアーティストが一堂に会していたのが印象的でした。先ほどソーシャルメディアやファンダムについてお話ししましたが、今の日本の音楽は国内にとどまらず、世界に向けても大きな勢いを増していると強く実感しています。

実際に数多くのアーティストのライブパフォーマンスを目の当たりにしたことで、日本の音楽がなぜこれほど急速に海外で存在感を高めているのかを改めて実感しました。加えて、先ほどお話しした日本ならではの強みや専門性が、あのような大きな舞台でも発揮されていることを実感できたのも、非常に印象深い経験でした。


――最後の質問ですが、グローバルな展開を目指す日本の音楽企業、アーティスト、クリエイターに向けて、今後の成功のビジョンを描くためのアドバイスはありますか?

Pieter:以前は、ファンやオーディエンスを開拓するために、レーベルと契約することが一般的であり、必須と考えられてきました。しかし今は、自分たちが自立した体制を続けながら、信頼できるパートナー企業を見つけることが重要になっています。つまり、自分たちのファンやオーディエンスを築き上げ、その影響力を広げてくれるパートナーです。アーティストやレーベルの起業家が目指す方向性を支持し、活動をさらに広げ、強固なものにしてくれるパートナーを探すことが成功の鍵です。


――なるほど。他の視点ではいかがですか?

Pieter:過去に比べて、海外市場へアクセスする機会もはるかに増えました。私は今後、どの市場にも新たなタイプの人や、新進気鋭な人が台頭すると確信しています。これは、音楽市場が常に流動的に進化していることを意味しています。ブラジルなどの市場では、国内のアーティストが大成功する事例を見てきました。日本のように、独自のローカル音楽が数多く生み出され、広く聴かれる活発な音楽市場であれば、さらに多くのアーティストが活躍できる余地が十分にあります。


――Downtownでも、音楽の輸出が熱いトピックということですね。

Pieter:私たちも現在、音楽輸出について考え、それを実現するためにクライアントと対話するために多くの時間を割いています。自国以外へ目を向けるチャンスはより大きく広がっています。一つ言えるのは、日本市場は、海外に対してよりオープンになり、多くの繋がりを求めているということです。他国の文化を柔軟に受け入れられるようになれば、日本からの海外展開、文化輸出もさらにスムーズで簡単になっていくはずです。


――インディペンデント・アーティストやレーベル経営者は昨今、日々の業務に追われ、作業の負担が増えてしまうケースが多いかと思いますが、そうした状況の中で、どんなことに注力すれば良いでしょうか?

Pieter:私からは、どんなアーティストやレーベルに対しても、まずは自分たちの信じる道とビジョンを明確に定義することをアドバイスしたいです。その上で、自分たちの競争力を高めるための能力(コア・ケイパビリティ)を磨き、ニッチな市場を確立して独自のポジションを見つけてください。さらに、その市場のオーディエンスと繋がりを築き、そこからの広がりを支援してくれるパートナーを見つけることです。これは、日本国内に活動を留める場合も、日本以外に活動を広げる場合も、同じことが言えます。


――Christiannはいかがでしょうか?

Christiaan:Pieterと少し違った視点になりますが、私は必ずしも海外に行くことばかりが正解だとは思っていません。日本には、すでに非常に大きな音楽市場があります。もし日本国内で確固たる成功を収め、その実績で海外のオーディエンスを引きつけることができるなら、どうでしょう?それは圧倒的な強みになりますよね。


――海外に出ていくのではなく、日本に海外からオーディエンスを呼び込むアプローチですね。

Christiaan:はい・グローバルな広い視野とデジタルでのアプローチのおかげで、特定のジャンルが世界中で多くのオーディエンスから共感・共鳴を集める成功事例を数多く見てきました。日本の皆さんも、こうした成功例を知ることで、レーベルやアーティストの海外市場進出に強い関心を寄せていると思います。

しかし、だからこそアーティストやレーベルは、まず「どうすれば日本国内でオーディエンスを強固に作れるか?」を真剣に考えることが大事になっていきます。自国の文化を海外輸出することは、以前よりも容易になりました。まずは国内市場でしっかりとした成功の基盤を築いた上で、複雑なグローバル・エコシステムを上手く導いてくれるパートナーを探してみてください。


――それを実現するには、どんなことが大切になってくるでしょうか?

Christiaan:ファンと繋がり、どの地域のどの都市にどんなファンがいるか、しっかりと理解することです。今はデータが豊富に揃っています。そうした実態を分析するのは容易になりました。データを賢く活用して、何が起きているか、現状を正確に把握してみてください。自分たちの楽曲がラジオで流れたり、特定の地域でライブをした際には、日々のデータの変化を活動の効果として追うことができます。そして、そのデータを基に新たなキャンペーンや施策を打ち出してください。そうした取組がファンの反応をさらに引き出し、ファン層の成長へとつながるはずです。


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