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<Unbound Japan vol.3>「ブルーノ・マーズとの共演が人生を変えた」――日本人として初のCAA契約ダンサーMiyuが切り拓く新しい景色

インタビューバナー

Interview & Text:Sakika Kumagai

 エンタテインメント業界で、海外を拠点に活躍している方や日本の音楽を世界へ発信している方たちをインタビューする連載企画『Unbound Japan』。今回は、ダンサーのMiyuが登場。19歳で世界最高峰のストリートダンスバトル大会『JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL』のハウス部門で優勝し、そこから国内外へ活躍の場を広げ、2025年9月には日本人ダンサーとして初めてCreative Artists Agency(CAA)とエージェント契約を結ぶに至った。そんな彼女に、これまでのキャリアで得てきたこと、そしてダンサーとして目指す未来など、話を聞いた。

人生を変えた共演

――6月12日に開催された【Billboard Global Power Players 2026】では、プレゼンターとして登壇されました。<Artist Advocate Award>を受賞したマリーン・ツチイさんの名前を呼ばれましたが、彼女との出会いについて教えていただけますか?また、授賞式に出席されていかがでしたか?

Miyu:マリーンとは、出会ったのは最近ですが、彼女のおかげでCreative Artists Agency(CAA)と契約させていただいたり、視野が広がったり、やりたいことへの想像が膨らみました。あの場でマリーンの名前を呼ばせていただけたのはすごく光栄ですし、ダンサーであのような授賞式に出席することはなかなかないことなので、すごく貴重な機会だと思い、楽しませていただきました。



Photo: Viola Kam (V'z Twinkle)


――そのCAAとのエージェント契約でいうと、日本人ダンサー初という快挙でした。これはどういったきっかけで契約締結に至ったのでしょうか?

Miyu:日本だとダンサーはアーティストを輝かせるための役割が多かったり、先生として活動する方が多いんですけど、LAや韓国ではもっとダンスと音楽が近くにあって、ダンサーが一人のアーティストとして認められている、世の中から認知されているなと感じる部分がすごくありました。以前、一緒にお仕事させていただいたアーティストの方に、「そういう世の中を目指していきたいし、もっと海外に出て行きたい」という話をしたら、紹介してもらうことができて。そこからもいろんなご縁があって、契約に至りました。


――CAAとのエージェント契約は大きなニュースだと思いますが、そこから変わったことはありますか?

Miyu:今はまだ大きく変わったことはないですが、自分の気持ちはすごく変化しました。これまで、私はやりたいことを1つ決めて、そこからやるべきことを逆算して少しずつ達成して叶えてきました。ですが、今回はいきなり大きなステージであり、未知の世界に飛び込んでいるような感覚があります。



Photo: Viola Kam (V'z Twinkle)


――様々なキャリアを積まれているMiyuさんにとっても、これは大きなことだったんですね。

Miyu:レディーガガさんやビヨンセさんなど、誰もが知っているアーティストの中に自分の名前を連ねていただけるというのは、すごく自分のキャリアにとって大きかったし、多分皆さんの中でも「え?ダンサーが?」みたいな感覚はあった気がしますね。


――キャリアを振り返ると、19歳のときにパリで開催された世界最高峰のストリートダンスバトル大会『JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL』のハウス部門で優勝されました。それまでも海外の大会に出場されていたんですか?

Miyu:出ていたのですが、優勝したことはなかったと思います。


――この大会で優勝できた理由は何だったと思われますか?

Miyu:審査員の方の判断もあるので実際は分かりませんが、一番練習したというのは自信を持って言えると思います。そのおかげで本番は緊張もなく、あの大舞台で自分を解放しながら今までのベストが出せたのかなとは思いますね。

私はもともと緊張しやすいタイプだったのが、これをきっかけにしなくなって。これだけ練習をすれば緊張しないんだっていうのに気がついたのも、この大会がきっかけでした。


――19歳でその経験ができるのは、貴重ですね。『JUSTE DEBOUT』での優勝はその後のキャリアに影響しましたか?

Miyu:もちろん、嬉しいとか信じられないとか、そういう気持ちはあったし、周りからの見る目もすごく変わったと思うんですけど、自分自身の活動としてはあまり変わった感覚がなくて。19歳だから、「ダンスの世界大会で優勝したら、もっとキラキラしてる世界が待ってるのかな」みたいなことはぼんやり思っていたんですけど、実際に優勝しても、そんなこともなく。逆に、ダンサーってこんなに世の中から認められてないんだっていうのを実感しました。


――ダンサーが裏方としてだけでなく、表舞台でも輝けるようにという活動を意識し始めたのはその頃からでしょうか?

Miyu:そうですね。19歳の時に思ったのは、これだけ時間を費やして人生をかけて挑んでるのに、日本に帰ってきたら誰も知らないって悲しすぎない?っていう、それが率直な感想でした。


――日本だと、今お話にもあったように、まだダンサーとしての地位は確立されてないところはあると思いますが、それは海外だと異なりますか?

Miyu:ここ数年で一番変化したのは、韓国だと思います。ダンサーが出演する番組の視聴率がすごく高いそうですね。あとはアーティストと対等にコラボしたり、バックダンサーではない立場で出ているダンサーさんがすごく増えました。でも日本も19歳の時と比べたら、少しずつ地位は高まっていると思います。まだまだ理想とはかけ離れていますが、ダンサーの人が広告やコマーシャルに起用されたり、雑誌で取り上げられるというのは、昔ではなかったことなので、今はそういう機会がすごく増えました。


――2024年夏に公開されたドン・キホーテのTVCMでは、ブルーノ・マーズからのオファーで共演を果たしています。アーティストから直接オファーを受けるのは珍しいことだと思いますが、このコラボレーションはどのように進んでいったのでしょうか?

Miyu:アーティストから直接オファーされたのは、この時が初めてでした。ブルーノがハウスダンスをやりたいって言ってくれて。日本で一緒に練習して振り付けを作って、衣装もみんなで考えました。私の人生を変えた共演でしたね。彼に会っていなかったら、アメリカに行こうと思っていなかったかもしれません。




――ブルーノから何かアドバイスがあったんですか?

Miyu:彼に言ってもらって、大切にしている言葉はたくさんあります。これまでブルーノや彼以外でも、活動している中で自分が見てきたものより大きいものを見せてくれる人が本当にたくさんいて。だったら私ももっと大きいところに飛び込んでみようかなって自信が湧いてきました。LAに行くのも、急に思いついたのですが、あっという間に話が進みました。


――すごい経験ですよね。そういった海外アーティストの方とお仕事されることも多いかと思いますが、日本人であることの影響はあると思いますか?

Miyu:日本人は、世界中でとてもリスペクトされていると思います。食事、街の綺麗さ、マナーとか。LAでも、Uberの人と話しているときに、「私は日本人です」って言うと、「僕の息子が大好きなんだよね」とか「アニメのこれを見てるんだよね」とか、日本に興味を持っている人が本当に多くて。それはどの国に行っても、感じますね。


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どこまで遠くに行けるかを証明したい


Photo: Little Shao


――各国でダンスのワークショップもされていますが、国や文化によって向き合い方や現地の方たちの印象は違いますか?

Miyu:どの国もオーディエンスの反応が全然違うなと感じます。それに、日本人のダンサーはすごく動きが繊細だったり、練習を繰り返すのでクオリティが高いという特徴がありますが、海外のダンサーは、大胆でパッションがあって、すごく自分のポリシーを持っていて、それを前面に出している方が多いです。あと、良いものに対してはちゃんと良い反応が返ってくるし、良くないものには反応しません。良い意味でも悪い意味でも正直ですね。


――日本では初心者向けのワークショップも開催されていますが、どのような思いで取り組まれているのでしょうか?

Miyu:ハウスダンスを広げたいという気持ちもありますが、単純にダンスってこんなに楽しいんだよっていうのをみんなに知ってもらいたいという思いでやっています。なので初心者入門クラスでは、みんなで一緒に体を動かしたりアイコンタクトしたりして、たとえダンスが上手く踊れなくても楽しいということを伝えています。


――社会的なメッセージの発信として、ダンスを通じたダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクト「INCLUSIVE DANCE FES」も牽引されています。こちらはどんなきっかけで始めたのでしょうか?

Miyu:3年前に障がいがあるダンサーとアーティストが一緒に一つの作品を作り上げるプロジェクトに、メンターとして参加させてもらいました。ダイバーシティや生きやすい世の中に向けて数多くの取り組みが行われていますが、自分が参加したことで、まだまだ挑戦できる場の差や、分断されている感覚があるなと感じました。

一方で、みんなと一緒に踊っていると、「分けられている」という感覚がなくなっていくのをすごく感じて、それがとても印象的でした。海外での経験から、国や言語、宗教の違いを越えて繋がれるのがダンスの魅力だと思っていましたが、このプロジェクトをきっかけに、年齢や障がいの有無も越えてダンスで繋がれるんだという新しい発見もあって。何かを学んだというよりも、ダンスの新たな可能性や素晴らしさを発見できた経験だったと思っています。



Photo: Little Shao


――それがダンスの本質の一つなのかもしれませんね。Miyuさんは、ファッション分野などのいろんな分野をまたいで活動されてますが、その中で自分の軸として大切にしてることはありますか?

Miyu:毎日少しでも成長したいと思っています。ずっと同じことをやっているのは退化しているのと同じですから、毎日アップデートして新しい自分でいたいと思っています。


――目標達成のためにやっていることはありますか?

Miyu:15歳から、目標をノートに書いています。天才肌の人もいますが、私は地道に努力を積み重ねて目標を達成していくタイプなので、ノートがないと何も叶えられないと思っていて。「今、自分に何が必要か」「目標に向かって正しい努力ができているか」をノートで確認しています。そこからブレてしまうと目標は遠のいていきますし、逆に、正しい計画を立てて行動ができていれば、必ず叶うと信じています。世界大会もその後の目標も、ノートを書きながら全部叶えてきました。人によって合うやり方は違うと思いますが、私にとってノートは本当に欠かせないものですね。



Photo: Little Shao


――参考にさせていただきます。「不可能を、可能に。」というモットーを掲げていますが、これはご自身の経験からの考えですか?

Miyu:これまで、私は世界大会など、周りから「無理だよ」と言われてきたことを叶えてきました。否定されていたわけではないけれど、あまり期待されていないところから色々と実現することができて。そういった経験を振り返ると、人生に不可能なことはないんじゃないかと思うことができました。それこそ、ノートに書き続ければ、どんなことも可能にできると信じています。

世の中には「これは無理だから諦めよう」「自分にはできない」と感じている人が本当にたくさんいると思っていて。そういう人のパワーになりたいですし、自分自身も不可能に思えることに挑戦し続けているからこそ、誰かに勇気を与えられる存在でありたいと思っているのでモットーにしました。


――これから海外でチャレンジしたいと考えている方にアドバイスをするとしたらなんて声を掛けますか?

Miyu:とりあえず、「やってみてください」って言いたいですね。まずは行動を起こす。もうちょっと上手くなったらやろうとか、これが整ったらやろうと思っていたら一生やらなくなってしまう。ダンスバトルもそうなんですけど、私は昔、ダンスバトルがすごく嫌いだったんです。「なんで出ないの?」って言われていたんですが、「まだスキルが足りないから」とか、「勝てると思えないから」と思っていて。でも、そもそも出てなかったら勝てないし、出てないから自信はつかないし、とりあえず踏み出さないと勝てるようにもならないですよね。環境を変えたり、海外にチャレンジすることって本当に大きい選択だと思うんですけど、ちょっと勇気を振り絞って足を踏み入れちゃえば、やらないといけない環境になるので、動くしかなくなる。勇気を振り絞って一歩踏み出すのはすごく大事だなと思います。


――今後についてもお聞かせください。これから挑戦したいことはありますか?

Miyu:ダンサーという肩書きでどこまで遠くに行けるかを証明したいという思いがあります。ダンス講師、バックダンサー、振付師……もちろんそれも素晴らしい道ですが、ダンサーがアーティストとして、俳優や歌手の方たちと対等に並べるような世の中を作っていきたいと思っています。そのためにも、ダンス界だけにとどまらず、自分の好きなファッションや音楽、取り組んでいるインクルーシブ、テクノロジー、教育といった分野とダンスを掛け合わせながら、より多くの人にダンスの魅力を知ってもらえるような活動をしていきたいと思っています。


――【MUSIC AWARDS JAPAN】にもダンサーを表彰する部門ができたらいいですよね。

Miyu:本当に、それを願っています。今回、初めて参加させていただいて、ミュージックビデオの監督の席があって表彰されていることにすごく感動しました。それと同時に、ダンサーもそうやってスポットを当ててもらえるような世の中が来てくれたら嬉しいし、自分がそういう世の中を作っていきたいと強く思っています。



Photo: Viola Kam (V'z Twinkle)


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