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<インタビュー>ビートルズから櫻坂46まで、知識も音楽も"網目"で広がる――伊沢拓司(QuizKnock)が『十字路』で語る探究論【WITH BOOKS】

Interview & Text: 西廣 智一
Photo: 堀内 彩香
書籍や文筆と縁深いアーティスト、また音楽と縁深い作家へ、自身の書籍や音楽とのかかわりについて訊くインタビュー企画【WITH BOOKS】。今回登場するのは、「楽しいから始まる学び」をコンセプトに活動する知的エンタメ集団QuizKnockを立ち上げ、自身も“クイズ王”としてクイズ番組などで活躍する伊沢拓司。
QuizKnockの10周年を記念して出版された書籍『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』を通じて見えてきた幅広い音楽的嗜好を起点に、彼の音楽遍歴はもちろんのこと、音楽の“掘り方”とクイズの突き詰め方との共通点、さらには書籍を執筆したことで再確認できたことなど、興味深い話題についてたっぷり語ってもらった。
数珠繋ぎでたどってきた
幅広いジャンルの音楽
――『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』内の100問100答において、伊沢さんはウィルコのみならず、ドイツのフォークメタルバンド・エクリブリウムなど意外なアーティストの名前を挙げています。これだけでも、伊沢さんはずいぶんと幅広いジャンルの音楽に触れてきたことが伝わりました。
伊沢拓司:ありがとうございます。ひとつのジャンルを好きになって、そこから派生していろんなジャンルに触れていったという意味では、雑食なのかもしれません。最初は小4の頃、MDプレイヤーを買ってもらったときに親からビートルズを勧められて。MDに『赤盤』『青盤』(『The Beatles: 1962-1966』『The Beatles: 1967-1970』)を入れて、そればかり聴いていたんです。
その後、たまたま手に入ったミスチルのMDをきっかけに、ビートルズ以外の音楽にも触れるようになり、中学に入ると今度は筋肉少女帯にハマり。ちょうどその頃、『武装錬金』という漫画を読んでいまして、その中に筋肉少女帯の歌詞がよく出てきたんですね。それをきっかけに、 筋肉少女帯はもちろん大槻ケンヂさんの著書にも触れるようになり、そこに出てくるバンド……X JAPANを起点にヴィジュアル系にもハマり、さらにジャパメタ、洋メタも聴くようになった。エクリブリウムもまさにそこですね。
――すごい、ちゃんと繋がっているわけですね。
伊沢:そうなんですよ。で、中学生の頃はメタルばかりだったけど、一応イントロクイズ用にベタなヒット曲もいっぱい聴いていて、90年代から80年代とどんどんさかのぼって聴いていくうちに、クレイジーケンバンドが好きになって。で、「肉体関係 part2 逆featuring クレイジーケンバンド」という曲から、今度はライムスターにたどり着くわけです。そこから今度は日本語ラップに激ハマりして……まだ『フリースタイルダンジョン』が始まる前のことですね。なので、高校生の頃はずっとラップのコンピレーションアルバムばかり聴いてました。
――大学に入ると、また傾向が変わるわけですよね。
伊沢:ギターサークルに入ったんですけど、まず先輩方がアコギで弾いていた山崎まさよしさんにハマり、全曲聴いてアルバムを頭からコピーしていくみたいな日々でした。そこから、洋楽邦楽問わずアコースティック系のアーティストをどんどん聴いて、フェスにもたくさん行き……その時期はEGO-WRAPPIN'とかクラムボンのライブによく行っていたし、キリンジとかparis matchとかをよく聴いていました。
そのうちにシティポップとかジャズファンクとかに触れて、ベイカー・ブラザーズやニュー・マスター・サウンズに出会い、その延長線上で最近はレゲエとかダブを聴くようになった。なので、数珠繋ぎで聴いていった結果として、いろんなジャンルへと派生していったわけです。
――音楽の聴き方としては、非常に正しいと思いますよ。
伊沢:そうかもしれないですね。大学院の頃なんて、農学部生だったんですけど別の学部の授業でデルタブルースについて調査発表したりして。それこそ1920年代のロバート・ジョンソンの音源を題材に、ルーツミュージックとしてアメリカ社会にどんな影響を与えたかについて発表していたので、数珠繋ぎは自分のテーマかもしれないです。

最近ハマっているアーティスト
――そんな中、テレビ番組やSNSでの伊沢さんを拝見していると、最近は櫻坂46にハマっているようですが。
伊沢:そうなんですよ。ライブはほぼ全部、行こうとしてますからね(笑)。今、一番現場に行っているのが櫻坂46ですし。
――なぜここまでハマったんでしょう。
伊沢:物語性ですよね。そういう意味では、X JAPANに近い聴き方をしているのかな。グループが辿った運命みたいなものが面白いし、その上でサウンドは今風だけどバズ狙いでもない感じで。音楽スタイルにも一貫性があって、ウーファーのある環境で爆音で鳴らすと気持ちいい曲が多いので、「物語性×爆音」という点では中学時代の音楽体験と近しいものがあるのかなと思います。僕はその1stツアー(2021年9月〜10月開催の【櫻坂46 1st TOUR 2021】)から現場に入っていて……ってこれは自慢なんですけど(笑)、そこから観ている身としては1stツアー当時は「悲しみを乗り越えた先に希望がある」みたいな見方ではなくて、本当に闇の中でしかなかった。その頃を知っているからこそ、より気持ちが入るというのは大いにあるんじゃないかと思います。
――そのほか、最近出会った中で面白いと思ったアーティストはいますか?
伊沢:ここ1ヶ月ぐらいですけど、日本のラッパーのPEAVISともコラボしている蓬萊仙山(PengLai Mt.)という台湾のレゲエバンドが今めっちゃキテます。台湾のバンドカルチャーの中のレゲエ好きが集まって作ったバンドみたいで、すごくありきたりな言い方をするとチルな、でも明るい音で。
僕自身、もともとSunset RollercoasterとかElephant Gymみたいな台湾のバンドが好きだったので、蓬萊仙山もめちゃくちゃ気に入ってます。あとは、有田咲花さんというアーティスト。僕は1stアルバム『貉』(2024年)から聴いていたんですけど、最新アルバム『鴎』(2025年)が今すごく注目されていて。すごくミニマルなサウンドで、ボーカルのトーンはちょっと暗いんですけど曲自体はすごく明るいという、そのバランスがとても気持ちいいんです。
――そういう新しい音楽って、どんな手段で見つけていますか?
伊沢:今はありがたいことに、サブスクのプレイリストとかおすすめとか、あとはXのタイムラインに流れてきたものを、まずちょっと聴くんです。それで、好きだったらいいし、気に入らなかったらすぐに止める。すごく便利な時代になりましたけど、学生時代はディスクガイド本を買って参考にしていて。めっちゃ空振りすることもあるんだけど、あとから読み返して、たまたま聴いたものがよかったりすることもあるんですよ。あとは、音楽サークルに入っていたので、今でもSNSのタイムラインでサークル仲間がおすすめする曲とかは聴いています。
それこそ、サークルの後輩にキタニタツヤもいましたし、キタニはデスクトップミュージックとかボーカロイド文脈に強いですけど、逆に上の先輩たちは洋楽の名盤を掘るのが得意な人が多かったので、キザイア・ジョーンズとかエリカ・バドゥをおすすめされて、そこ経由でいろいろ聴いていく中でダブやレゲエに繋がっていったり。そういう、網目になる感じがすごくクイズに近いんですよ。Aを知って、Aの関連情報からBを知ると 、「この偉人とこの偉人って親族なのか!」みたいな意外なつながりを見つけることがあって、知識が網目のように作られていくことで他の知識をより受け止めやすくなる感覚です。クイズは森羅万象全ての知識で網目を作るけど、音楽はその広大な宇宙における小さな枠の中でより細かな網目を体験できる楽しさがあるんです。
- 各メンバーの視点で知る、QuizKnock10年の歩み
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リリース情報

『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』
- 2026年4月16日(木)発売
定価:2,750円(税込)
仕様:B5判/208P
発行・発売:株式会社KADOKAWA
購入はこちら- 「QuizKnock10周年プロジェクト」
- 『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』
関連リンク
各メンバーの視点で知る
QuizKnock10年の歩み

――音楽の聴き方、探究の仕方もクイズの世界と共通するものが多いんですね。お話を聞いていろいろ納得しました。ここからは『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』についても聞かせてください。この書籍ではQuizKnock10年の歴史を各メンバー視点で振り返ることで、伊沢さん自身も初めて知ることも多かったんじゃないかと思います。
伊沢:意外とみんな、冷静に物事を見ているんだなと思いました。僕はどうしても組織をドライブするという、マクロな方向性にフォーカスしがちですけど、逆にふくら(P)とかは1個1個の作品をどう作っていくか、どうブランディングと繋げていくかというミクロな目線が多かったりするので、改めて自分ひとりじゃここまで来られなかったなということを、大いに感じさせてくれるような1冊になりましたね。
あと、書籍としてまとめる際に過去を振り返ることって、意外と大事なことなんですよ。その時その時の温度感というのも思い出せますし、何よりいろんなメディアでQuizKnockについて取り上げていただいても、どうしても分量って限られているから、全部は伝えきれない。長くやっている分、ありがたいことに色んな人がいろんな面白がり方をしてくださっていますから、より多くの人が「そうなのよね~そこがいいのよね~」と思ってくれたら、作った意味がより増すのかなと思います。
――QuizKnockを知るきっかけはいろんなところに散りばめられていて、そこからYouTubeやテレビのクイズ番組にたどり着いたとき、さらに深く知りたいと思ったときに最適な、決定的な1冊があるとないとでは大きく違いますものね。
伊沢:大違いですよね。かつ、この書籍を出したことで「QuizKnockって10周年なんだ。意外と長くやってるんだね」と興味を持ってくれた人もいっぱいいますし。それだけでもありがたいですし、11年目以降がすごく戦いやすくなったなと、僕自身も思っています。
――きっと伊沢さん自身の中でも、いろいろ整理がついたこともあったでしょうし。
伊沢:今回の書籍のために5周年のときに出した本も読み返したんですけど、「忘れてることがいっぱいあるな」と今さらながら気づかされました(笑)。たぶん今後、また忘れるんですよ。でも、忘れてもここに全部書いてあるから、読み返せばいいだけで。まさしくセーブポイントなわけです。
――納得です。僕自身この書籍を読んでみて、クイズ関連のこと以上に伊沢さんがQuizKnockを立ち上げてから今日までの道のりについて、非常に興味を持ちました。
伊沢:ありがたいです。立ち上げの頃の話は、残しておいたほうがいいかなと思っていて。QuizKnockは別にクイズだけをやっているわけではなく、教育を最終目的にしているからこそ、利益を独占することには何のメリットもないので、ひとつの事例としてQuizKnockが歩んできた道のりを残す。しかも、それをポップな書籍にという。これまでもビジネスイベントとかでいっぱい喋っているんだけど、ポップな書籍の中にちゃんと入れておくことによって、まさに“十字路”から旅立っていく人の指針になったらということで、意識的に作った部分もあります。
――なるほど。
伊沢:QuizKnockの活動によって、直接的に利益を感じられる人が多くないと立ち行かないのが事実で。もちろん、僕たちはクイズをフックアップしたいって気持ちを持っていたけど、じゃあ「クイズをフックアップするため」の会社を作ってそれをミッションに掲げたところで、共感者が少ないと動かせるパイも少ない、少なくとも立ち上げ当初のクイズの受け止められ方を考えるとですけど。力点にかかる力が小さいから、作用も小さいわけですよね。
でも、教育をテーマに掲げて、そのためのツールとしてクイズを使うことで受益者も増えるから、当然応援してくれる人も増えて、力点にかかる力が大きくなる。結果的にクイズも盛り上がるわけですけど、社会のために資するという形を作っておいたことによってQuizKnockはうまくいったし、その軸がブレなかったからこそいろんな人を巻き込めたのかなと思っています。
――実際、クイズで遊びながら得られる教養ってたくさんありますし、そういうことに小さい頃から触れ続けていればいろんなジャンルに興味を持つきっかけにも繋がりますしね。
伊沢:なので、僕はクイズ自体が“十字路”だなと思うんです。クイズに出会ってほしいだけじゃなくて、クイズを通していろんなものに出会ってほしいですし、僕はまさにそうやっていろんな音楽にも出会ったわけですし、クイズを通して世の中のいろんなことをランダムガチャとして楽しんでほしいんです。なので、QuizKnockに触れることで、“知識のランダムガチャ”をいっぱい引いてもらえたらいいなと思っています。
Billboard JAPANブックチャートについて
――話題は変わります。Billboard JAPANブックチャートをご覧になった、伊沢さん視点での感想を聞かせてもらえますか?(編集部注:伊沢さんには2026年5月21日公開の総合書籍チャート“JAPAN Book Hot 100”をご覧いただきました。)
伊沢:数年前の本屋大賞系の作品が、リバイバル的に売れてますよね。『リカバリー・カバヒコ』なんて2、3年前の本屋大賞にノミネートされていたと思うんですけど、7位までジャンプアップしてるんですね。
――文庫化されたことが、ランクアップの要因みたいですね。
伊沢:ああ、なるほど。確かに文庫化は大きいですね。全体的に、とにかく小説がすごいなあという感じがします。実際、電車の中にも小説の広告がいっぱいありますし。僕は新書とかビジネス本を読みがちなので、改めて「ここにはまだ、私が面白がれていないけどきっと面白い世界があるんだな」みたいなことを感じました。
――ちなみに、『君のクイズ』が11位にあります。
伊沢:あ、本当だ。こういう盛り上がり方は嬉しいですね。若林(正恭)さんの『青天』もずっと売れてるなあ。こうやって見てみると、『十角館の殺人』とか『黒牢城』とか新発売以外の作品もランクインしてるんですね。すごいなあ。これだけ小説がたくさん売れているという事実は、「本離れ」とか「書店離れ」と言われる中ですごいことだなと思います。僕自身は、別に本を読めとは全然思わないけれども、本があることの意味みたいなことは常に感じるので、勝手に嬉しい気持ちになっちゃってますね(笑)。
――伊沢さん自身、読書は結構するほうですか?
伊沢:そうですね。とはいえ、本も音楽と一緒で無限じゃないですか。いろんなメディアを見て気になるものはチェックしてみたいなと思うものの、なかなか時間がないので、どちらかというと昔出た名作を読んだり、気になる作家さんの新刊が出たら読むぐらいかな。 僕は綿野恵太さんの本をよく読むんですが、それこそ最近だと『「逆張り」の研究』を読んだばかりで、やっぱり面白かったです。“ジャケ買い”ならぬ“表紙買い”をすることも多くて、最近はふらっと 『仮放免の子どもたち 「日本人ファースト」の標的』を購入しましたが、これは非常に意義深い読書体験でしたね。
――やっぱり人それぞれ、本の手の取り方って個性が出ますね。
伊沢:僕はもちろん本屋に行って“表紙買い”もするけど、「仕事上これを話さなきゃいけない」ことが突発的に出てきたときには電子で買うことが多くて。ネット検索ではうまく情報が出ないこともたくさんあって、AIでもうまくいかない時は、本を頼れば何かあるんじゃないか、という感じで常に選択肢として持っていますね。
なので、僕の中ではひとつの駆け込み寺というか。もちろん、本を全面的に信用しているわけではないですけど、気になったことを調べたときに相対的に時間をいっぱいかけて、頑張って調べた人の意見が聞けるっていう意味で書籍というのは、僕はすごくありがたいものだなと思っています。
――最後の質問になりますが、伊沢さん個人、QuizKnockの未来に向けた展望を聞かせてもらえますか?
伊沢:僕自身いろんなところでアウェーゲームをしたり、各地の会館とかビジネスイベントで講演会をすると、まだまだQuizKnockのことが知られていないなと感じる瞬間もあって。より多くの人、多くの世代に届けていくことは大事ですし、世の中を変えるために「楽しいから始まる学び」というコンセプトを掲げているので、一番はそれをどんどん広めていくことかなと思っています。そして、新規の方だけじゃなくて今まで応援してくれた人たちも含めて、10周年が終わったあとも「ここまでいろいろ美味しかったけど、なんだかまた今めっちゃお腹が減っていて。もっと食べたいな」と思えるようなワクワクを繋げていきたい。それが組織としての大きな目標ですかね。
個人としては、QuizKnockを大きくすることと同時に、ただ単に強いクイズプレーヤーであり続けたいし、もっと強くなりたいって気持ちは今も変わらず持っていて。いまだにクイズ大会にも出ているし、クイズの過程でいろんな面白いことをまだまだたくさん知れるので、まったく飽きることもない。なので、長生きしたいですね。そしていっぱい音楽を聴いて、出会ったことのない新譜を見つけて、「俺、○○の頃から知ってるんだよ」っていろんな人に自慢したいですね(笑)。
リリース情報

『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』
- 2026年4月16日(木)発売
定価:2,750円(税込)
仕様:B5判/208P
発行・発売:株式会社KADOKAWA
購入はこちら- 「QuizKnock10周年プロジェクト」
- 『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』




























