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<コラム>CORTISの大胆で荒削りで実験的なクリエイションから見えてくる新時代の幕開け



コラム

Text: 照沼健太
(P)&(C)BIGHIT MUSIC

「今、自分は何を聴いているんだっけ?」「これは本当にK-POPなのか?」

 これが、CORTISのデビューEP『COLOR OUTSIDE THE LINES』を初めて再生した時のファーストインプレッションだった。リラックスした感覚と荒削りさが同居するビートに、トラップのヴァイブスが乗った「GO!」。ギターサウンドが印象的な「What You Want」。これらの楽曲が持つ荒々しいテイストは、それまでのK-POPにはあまり見られなかったものだ。そして極め付けは「FaSHioN」。ハードなサウンドにモッシュするライブの光景が浮かぶようなラップ曲だ。

 CORTISは、BTSとTOMORROW X TOGETHERを擁するBIGHIT MUSICが、TOMORROW X TOGETHER以来、6年ぶりに送り出した新人ボーイグループだ。自らを「ヤングクリエイタークルー(YOUNG CREATOR CREW)」と呼ぶこの5人、2025年9月にリリースされたThe 1st EP『COLOR OUTSIDE THE LINES』が米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で15位を記録し、累計209万枚を超えて5月9日付のCIRCLEチャート集計でK-POPデビューアルバム最多販売記録を更新。続くThe 2nd EP『GREENGREEN』はリリース初週に231万枚を売り上げた(HANTEOチャート集計)。デビュー1年足らずで、2作連続のダブルミリオン達成という地点に到達している、次世代K-POPの大本命だ。Billboard JAPAN総合アルバム・チャート“Hot Albums”では初登場4位、米ビルボード“Billboard 200”では初登場3位、アーティスト・チャート“Artist 100”ではマイケル・ジャクソン、ノア・カーン、モーガン・ウォーレン、エラ・ラングレーというチャートトッパーたちに続いて5位と、輝かしい功績も残した。

 そんな彼らの最大の特徴は、「ヤングクリエイタークルー」という宣言通り、作詞作曲・振付・MV制作すべてにメンバー自身が関わっている点にある。つまり、このK-POPのど真ん中にいながらも「K-POPかどうか疑わしい」方向性には、彼ら自身のキャラクターや嗜好、作家性が多分に含まれていると考えて間違いないだろう。


MARTIN, JAMES, JUHOON, SEONGHYEON, KEONHO


 K-POPといえば、この10年近くアメリカのメインストリームサウンドを、グループパフォーマンスのフォーマットで研ぎ澄ましてきた音楽だ。非常に高性能なビートと、ハイファイなサウンドメイク、スキルフルな歌唱とダンス……。しかし、このCORTISがおもしろいのは、そのモデルのど真ん中にいながらも荒削りでローファイな感覚/サウンドを大胆に取り入れている点だ。

 そして、その特徴は2026年5月4日にリリースされたThe 2nd EP『GREENGREEN』でより先鋭化を見せた。まず耳を惹きつけるのはギターサウンドだ。1曲目「TNT」のイントロで鳴り響くのは、The 1st EP収録の「What You Want」のリリックでもメンションがあったニルヴァーナを思わせるギターだが、この音が見事にくぐもって薄っぺらい。さらにそこに重なるブームバップビートのキックは重く飽和し、ひび割れている。これまでのK-POPなら、こんなプロダクションは採用していないはずだ。まるで血気盛んな若者が父親のクローゼットから色褪せたバンドTシャツを拝借し、それまでにないエキサイティングな組み合わせでコーディネートしているかのようだ。

 リードシングル「REDRED」にも注目したい。やはりここでも、ありふれたサウンドが新しいバランスで組み合わされている。「ACAI」もしかり。最先端のサウンドシステムが揃ったクラブではなく、地下の古びたガレージで鳴っていそうなプロダクションだ。「REDRED」と「ACAI」はスタジオでの実験/遊びそのものといったところか。



 自らをレペゼンする「YOUNGCREATORCREW」では、ヨーデルとヨンクク(ヤンリエイタールー)をかけるという「流石にそれは無理があるのでは?」と突っ込みたくもなるフックが飛び出すが、それでいい。いつだって若いキッズは自分たちの中でしか通じないギャグや悪ふざけをして、連帯と拒絶を両立させるのだ。

 リーダーのMARTINが練習生時代に書いたという「Blue Lips」は、6曲のなかで最も静かで、最も個人的な手紙のような曲だ。「ACAI」や「Wassup」のような日記めいた言葉が飛び交う楽曲と合わせれば、彼らがクリエイションを神聖視せず日常の延長で創作に取り組んでいることがはっきりと見て取れる。シンプルに「好きなものは好き」なのだ。

 思えばThe 1st EPの「GO!」のパフォーマンス・フィルムは、LAの路上を編集なしのワンテイクで撮り抜いていた映像だった。「Lullaby」のMVでは、コカ・コーラの空き缶にスマートフォンをテープで固定して、自ら欲しいアングルを実現したという。彼らの「ヤングクリエイタークルー」というキャッチは、抽象的なブランディングでも過度な自己顕示でもなく、等身大の制作プロセスそのままのことなのかもしれない。


MARTIN, JAMES, JUHOON, SEONGHYEON, KEONHO


 ただ、彼らが粗削りなのは決して未熟だからではないはずだ。なぜなら、MARTINはデビュー前からすでにILLIT「Magnetic」、TOMORROW X TOGETHER「Beautiful Strangers」、ENHYPEN「Outside」に参加しており、ハイファイで研ぎ澄まされたK-POPにも関わってきた人物だ。彼以外のメンバーもK-POP式の育成を経てきた以上、“未熟”はありえないだろう。

 おそらくCORTISは、あえて未完成に見える「エネルギー」を選んでいるのだ。MARTINは英Dazedのインタビューで、デヴィッド・ボウイの「制作中にすべてが安全で正しく感じたら、何かが間違っている」という言葉を引用していたが、まさにCORTISの姿勢はここに表れている。

 スマートフォンとSNSで誰でもクリエイターになれる、と言われて10年以上が経った。だが現実には「何をしたらいいかわからない」で止まる人のほうが圧倒的多数だ。しかし、CORTISは「思いついたらやる、仲間と形にする」を鮮やかに実践してみせる。自由の前に立ち尽くすことなく、走り出している。


MARTIN, JAMES, JUHOON, SEONGHYEON, KEONHO


 そして、その姿勢は実績にもはっきりと表れている。Apple Musicの『GREENGREEN』ページに表示されるFeatured Onプレイリストは「Global Pop」「A-List Pop」「New Music Daily」。つまり彼らは今、K-POPの棚ではなく、グローバル・ポップの編集導線に乗っていると考えられる。2026年2月 、NBAは彼らをK-POPアクトとして初となるNBAクロスオーバー・コンサート・シリーズのヘッドライナーとNBAオールスター・セレブリティー・ゲームのハーフタイムショーに迎えた。さらに現地時間7月30日から8月2日にはクリプス、リル・ウージー・ヴァート、ウェット・レッグ、エセル・ケインら米インディーとラップアクトの数々が出演する【ロラパルーザ・シカゴ】への出演が控えている。そして、ついに初の単独ワールドツアー【2026 CORTIS TOUR〈PUT YOUR PHONE DOWN〉】もアナウンス。待望の日本公演は9月4日~6日の3日間、場所は神奈川・ぴあアリーナMMで、その名のとおり、ライブ中は「スマホを下ろして」彼らのパフォーマンスをじっくりと堪能しよう。

 K-POPのど真ん中で鳴らす、K-POPの外側のサウンド。それはもしかしたら、新しいムーブメントの始まりなのかもしれない。

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