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<インタビュー>トム(ケミカル・ブラザーズ)とオーロラの大型プロジェクト=トモーラ 陰と陽の二人の音楽が導くものは

Text & Interview: 大野俊也
Photo: Dan Lowe
ノルウェーの歌姫オーロラと、UKダンス・ミュージックのレジェンド、ケミカル・ブラザーズの1/2であるトム・ローランズ。この二人による新たなコラボレーション・プロジェクト“トモーラ”の音楽は、各々の活動とはまた違う、無限とも言えるクリエイティヴの自由とインスピレーションから生まれた、極上のダンス・ミュージックだ。音だけではなくビジュアル面でも注目を集めている。そこには、多くの言葉で説明しなくても伝わるような、音楽の純粋な美しさが存在する。
4月17日発売のアルバム『カム・クローサー』の全貌がより気になる、二人のインタビューをお届け。トムはスタジオから、オーロラは自宅から参加してくれた。トモーラはすでに【コーチェラ】や世界各地の主要フェスティバルへの出演が決定しており、夏には【FUJI ROCK FESTIVAL】への出演も控えている。トムはケミカル・ブラザーズとして4回目の出演、オーロラは今回が初出演だ。トモーラの音楽にあるエネルギー、自由、喜び、メッセージ、ダンス、そしてスピリット……。山と森に囲まれた大自然の中、野外ステージで「RING THE ALARM」のような楽曲が大音量で鳴り響くとき、山々に潜む妖精や精霊たちまで呼び覚ましてしまいそうなほどの、圧倒的なライブ体験が待っている気がしてならない。
──トモーラの始動は、ケミカル・ブラザーズのアルバム『ノー・ジオグラフィー』(2019年)の3曲で、オーロラがシンガー/共作者として参加したのがきっかけになったんですよね。
トム・ローランズ:スタジオ入りして20分と経たないうちに、夜の闇の中を走るトラックのように、ワイルドな小旅行をしている気持ちになったんです。「うわ、これからどこに行くんだろう?」みたいな。僕はそういう感じでスタジオにいるのが大好きで。自分一人じゃ絶対に辿り着けない場所に行けるのがコラボレーションのいいところ。そこには第三の何かが生まれるみたいな感覚があります。それで、また一緒にやろうってなった時も、特に計画は立てませんでした。ただ純粋に、制作から得られる感覚のために集まっただけ。でも実際に作り始めたら、「あれ、この曲の中に何かあるぞ」って。小さな世界を作っていくような感覚になりました。トモーラはそこから生まれたんです。しかも、すべてにスゴく強いアイデンティティがあった。オーロラには強い世界観があるし、ケミカル・ブラザーズにも強い世界観がある。それで、二人が新たに始めたものにはまた特別なものがありました。
オーロラ:スゴく新しかったし、はっきりした個性がありました。これはもう、一つの世界としてちゃんと名前を持つべきだなって思ったくらい。新しいプロジェクト、新しいバンドだと言ってもいいなと思って。それくらい、自分たちが本当に楽しめる宇宙でした。
──今の話を聞くと、最初から単なるコラボレーションを超えていた感じですね。
トム:あと大事なのは、一緒に曲作りをする時は、必ず同じ部屋にいるということ。メールとかテキストでデータを送り合ったりはしない。お互いの存在を感じながらやるのが好きなんです。多くは相手へのリアクションから生まれるものですからね。部屋の中でダンスするみたいな感覚。
オーロラ:ちょっとした美しさって、心を開いてないと見逃してしまうものです。子供みたいに、世界に対してオープンで、好奇心を持って、「これは何だろう?」って探っていく感覚が大事。でも大人になると、好奇心を忘れて、判断ばかりしてしまうでしょ? でも、新しい世界を作っていると、「これって何?」って思う出来事に純粋に向き合うことになる。そうすると一緒に探っていくのが本当に楽しくなるし、自由に遊びながらも、スゴく意図的になってディテールにもこだわれます。まるで一つの人格を作ってるみたいな感覚で、生きている存在を丸ごと作っている感じになるんです。
──実際にはどのような環境で、曲作りをしているのですか?
トム:僕のスタジオです。ここには奇妙な機材がたくさんあって、僕の場合、「この機材でこれをやろう」っていう、やり方がある程度決まってたりするんです。でも、オーロラはそういうのに対して、「違う、違う、こうやるの」って(笑)。彼女がいると、この小さな遊び場が一気に大きく広がります。「COME CLOSER」という曲も、自分としては、「こういうアイデアがあって、ここから発展できるかも」って思っていましたが、彼女は「いやいや、そうじゃなくてゼロから作りましょう」って言って。正直ちょっと怖いですけどね(笑)。でも、「マジで? まぁ、やってみるか」って。スタジオで彼女が小さな音を見つけて、「これには何かがある」って言うと、そこからどんどん膨らんでいって、曲になっていく。それこそが、「うわ、これだから僕は音楽をやっているんだ!」って思える瞬間なんです。
オーロラ:これは魔法みたいなものですから。見えない糸でつながって、見えない接着剤でくっついてる感じ。命が宿ったものを生み出せることって、本当に美しいんですよね。音楽を作っていると本当に楽しいし、「なぜ自分たちが存在しているのか」に少し触れられる気がします。
トム:音楽には助けられてます。自分の中の深い部分を表現できるから。しかも誰かが隣にいて、その人の要素が加わることによって、さらに豊かになる。これはもう喜びでしかない。
──ケミカル・ブラザーズは二人組で、オーロラはソロアーティストです。この二人が一緒にやることで、自分の中の新しい“扉” が開くような感覚はありませんでしたか? もしあるとしたら、どのような扉を開けましたか?
オーロラ:スゴくおもしろい質問(笑)! ちょうど少し前に「SOMEWHERE ELSE」という曲の話をしていた時に、イメージしたことがあるんです。この曲のミュージック・ビデオでは、初めて地球に来た人が、「ここはいい場所だな。これは手? 足? これは何? 自分にはこの地球で何か目的があるはずだけど、それは何?」って考えながら歩き回ったり、(その答えを)探したりしている。「意味を忘れてしまったけど、重要なはずだから探さなきゃ」って。見つけた扉の上には「SOMEWHERE ELSE(どこか別の場所)」と書いてある。その扉って、自分の頭の中にもある気がするんですよね。今までいた場所じゃない、どこか知らないところへ向かう感じ。今おっしゃってもらった通り、“脳の中の扉” という感覚はスゴくある。トムもそうじゃない?
トム:その“扉”は、この曲のテーマになっていたよね。境界線を越えて新しい場所へ行く感じ。
いい意味で、私たちは陰と陽なんだと思います(笑)
──今こうしておふたりと話していると、不思議な感じがします。似た者同士だと思うし、兄妹のようにも見えてくるんですよね。どうやって“もう一人の自分” みたいな存在を見つけたんですか?
オーロラ:兄妹みたいな感覚は確かにあります。音楽を一緒に作る前から、「あれっ?! めっちゃ楽しくない?」みたいな感覚はあったよね? 似ているところも、違うところもあるんですけど、それがまたおもしろくて。トム、これってすごいことじゃない?
トム:うん、すごく居心地のいい関係だと思うよ。こうやって一緒に何かを作る場所を見つけられたこと自体、純粋な喜びです。上手く言えないですけど、何か不思議なつながりがあるように思います。互いに強いアイデンティティを持っているし、「これが自分の音」というのがはっきりしている。その二つの世界が、ベン図の縁のように少しだけ重なって、そこから新しい創造的なエネルギーが生まれました。二人の間にはちょっとした魔法があるんだと思います。
オーロラ:それは本当にそう! 私たちは音楽に対して真剣に向き合っているけれど、真剣な部分と遊びの部分のバランスを取っているのが素敵。必ずしも完璧じゃなくて、少しグシャっとしているくらいがいいんです。人間だって完璧じゃないし。それにトムのスタジオは本当に、変な研究所みたい(笑)。新しい機材も古い機材もあって、まるで宇宙船なんです。背が低い私と高いトムが揃った見た目もかなりおもしろい組み合わせだと思います(笑)。雑誌撮影でも、私が小さすぎて、二人がうまくフレームに入らない。似た者同士だけど、真逆な部分もたくさんあって、いい意味で、私たちは陰と陽なんだと思います(笑)。
強烈な感覚を共有して、みんなで楽しみたい
──「RING THE ALARM」という曲は非常に強い曲ですが、この曲はダンスであり、メッセージでもあり、ユニティ、反抗、目覚め、解放といったもののすべてが込められていると思ったんですね。音に流れがあるし、感情にも流れがあって。ライブでこれを爆音で鳴らしたら、会場全体が祝福みたいな感じになると思いました。
オーロラ:そう言ってもらえて、すごくうれしいです。まさに自分たちがやろうとしていることを理解してくださって、ありがとうございます。本当に、おっしゃってくださった通りの曲なんです。
──「COME CLOSER」も強い曲で、人々が分断されがちな今の時代、「もっと近くに来て」という言葉は、簡単には歌えるものではないと思って。それをすごく自然に表現しているのは、人とのつながりを信じているからこそだと思うんです。
オーロラ:その通りです。人間にとってつながりというのはとても重要なものです。この世界では何千年も前からずっと、恐怖を使って人々を分断しようとしてきたと思う。敵を作ろうとするけど、その敵も常に私たちと同じ人間。実際、私たちって思っている以上に似ている存在なんです。「COME CLOSER」(もっと近くに来て)は、「人として見てほしい。私もあなたを人として見る」という純粋な願い。そうすれば、私たちがやっていることは自然と美しくなるはず。でも、今の世界でこの言葉を言うのは重いと思います。
トム:シンプルだけど、奥が深いよね。生きていることの本質は、結局は人とのつながりなんじゃないかと思うんです。あの曲が生まれた時はピュアでリアルでした。しかも、かなり強烈な瞬間だったよね。
──曲を作っている時、オーロラはスタジオでダンスしてそうですね。
オーロラ:ずっと踊ってます(笑)! 時々二人で一緒に踊ることもありましたが、それは音がそうさせる時だけ。踊るというより、音がどう動くかを身体で表現している感じで、すごく楽しかったです。ダンスもとても大事で、迷走神経にもいいもの。歌とかダンス・ミュージックは、ある意味、スピリチュアルな儀式だと思います。私たちのライブもスピリチュアルな体験になるような気がします。踊ること、つながること、同じ瞬間を共有すること。それってスピリチュアルな目覚めになると思いますから。
トム:みんなで集まって、同じものを一緒に感じる。そういう空間を作るのが大事で、僕たちが大切にしていることでもあります。これは人間が何千年もの間やってきたことで、僕たちはそれが起こるようなスペースを作るだけ。この強烈な感覚を共有して、みんなで楽しみたいんですよね。
オーロラ:そうそう。だから、ライブが本当に楽しみです。
デビュー・アルバム『カム・クローサー』発売記念リスニング・パーティー開催
【開催日時】2026年4月16日(木)22:30~
【場所】東京・タワーレコード渋谷店6F TOWER VINYL
詳細はこちら
リリース情報

『カム・クローサー』
2026/4/17 RELEASE
<日本限定盤>
UICO-9080 5,830円(tax in.)
<通常盤>
UICO-1337 3,300円(tax in.)
来日情報
【FUJI ROCK FESTIVAL’26】
※7月25日(土)出演
会場:新潟・湯沢町 苗場スキー場
https://fujirockfestival.com
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