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<インタビュー>礼賛 予測不能の化学反応――ミニアルバム『キラーパス』で更新される、5人の“バンドマジック”

Interview:小栁大輔(Interview inc.)
Photo:堀内彩香
礼賛が、ミニアルバム『キラーパス』を3月18日にCDリリースした。同作は、川谷絵音によるソニー・ミュージックレーベルズ内の新レーベル“Daphnis records”への移籍後第1弾作品。この節目となるリリースを機に、Billboard JAPANでは礼賛へ初めてのインタビューを実施。バンド結成の経緯からサーヤの歌との出会い、そしてこの5人で作り上げる礼賛ならではの音楽の魅力まで、メンバー全員で語ってもらった。
“鉄壁の布陣”で始まったバンド
――礼賛の始まりから聞いていこうと思うんですが、サーヤさんと川谷くんは、もともとお付き合いがあったの?
サーヤ:最初は美的計画でお世話になって、そのまま「一緒にやりたいですね」っていうお話をしたという流れでした。
――川谷くんから見ても、サーヤさんと音楽をパーマネントにやってみたら面白くなるんじゃないかっていう、そういう感覚があった?
川谷絵音:そうですね。美的計画の時も歌がすごかったから。それに、自分でメロディも歌詞も絶対作れる人だと思ったので。だから、鉄壁の布陣を揃えて。昔から同じライブハウスに通っていたメンバーで。そういう意味合いでも鉄壁です。
サーヤ:「メンバー決まりました」「ドラムは誰々で」って随時報告がくる、みたいな。ダイレクトメッセージでずっとやりとりして。で、メンバーが揃って、グループLINEができた気がします。
――バンドって大変じゃないですか、集まらなきゃいけないし。加えて、サーヤさんはサーヤさんでとても忙しいわけですよね。
サーヤ:でも、忙しいのは全員だと思います。これまでひとりでネタを考えていたし、みんなで作り上げるっていうことがこんな楽しいんだなって。頼れるし、悩みも話せる環境ってすごいな、楽しいなと思いました。
――これまで、曲は作っていたんですか?
サーヤ:フリートラックでラップしたりっていうことはやっていたんですけど、完全に作るのは本当にこれが初めてです。最初にスタジオに入って、「とりあえず一回やってみよう」と。でも、緊張して、「お酒、買いに行かせてください」って、近所のコンビニでいろいろ買って。
――川谷的にも「これはいける」と思えた?
川谷:うん。1曲目にできたのが「愚弄」っていう曲なんですけど。適当に弾き始めて、そこにサーヤちゃんに歌を乗せてもらった時に「あ、もうこれいけるな」って思ったんですよ。
――そこからバンドという形で動き出して。これまでのバンドは基本的に川谷くんがイニシアチブを取っていっていたと思うんだけど、このバンドはやっぱりちょっと違うの?
川谷:そうですね。歌がどうやって入ってくるかもまったくわからないから。サーヤちゃんが最後に蓋をしないと曲にならないんですよ。「ここがサビです」と言いながら全然サビじゃないメロを入れてきたり、突然サビが入ってきたり、その化学反応的な部分が礼賛の面白いところでもあって。礼賛は、みんなで作り上げるという自由さがあるなと思うんですよね。
サーヤ:逆に言うと、私はそこらへんが本当にわからなくて恥ずかしいっていう気持ちです(笑)。

――さっき「鉄壁」と言ってくれたけど、まさに鉄壁のメンバーじゃないですか。これは川谷にとっての、「今の僕が考える最強のバンド」ということ?
川谷:最初は「ヒップホップ的なバンドをやりましょう」というところから始まったんですよ。誰にしようって思った時に、最初に思いついたふたりがごっちゃん(GOTO)と哲くんなんです。彼らはサポートミュージシャンをやっている割に良い意味で不真面目で、ぴったりだなと。
木下哲:最初の出会いは20代前半かな? 川谷と課長は売れてライブハウスからいなくなり、俺はバーカン(バーカウンター)にいて。
GOTO:僕は課長のことはあんまり――。
サーヤ:苦手?
全員:あはははははは!
休日課長:ここで知るんだ!(笑)
GOTO:あんまり知らなかったんですよ(笑)。
休日課長:GOTOとはずいぶん昔に飲み会で顔を合わせた時、「いつか一緒にバンドやったら面白いんじゃない?」ってKenKenが言ったことがあって。本当に一緒にやるとは思わなくて。もう何年も前ですけど、DADARAYのえつこがつないでくれて、レコーディングに参加したことがあったんです。
GOTO:うん。そこからですね。
――バンドのルックス的にも面白いよね。
川谷:同じ人が誰もいないっていう。
サーヤ:キャラ選択がバラバラ。
木下:たしかに(笑)。
――そのキャラ選択の感じがすごくいいなあと。で、哲くんも合流して。
木下:はい。
川谷:哲くんのギターは、ほかには替えられないというか。礼賛の色になっているんですよね。哲くんは、かなり過小評価されていると思っていて。バンドで「ギターがかっこいいな」って思うことは意外と多くないんですけど、彼は別格にかっこいい。

――課長はどの流れで参加することになったの?
休日課長:いつの間にか決まっていたような気がします。
川谷:美的計画の時に、YouTubeでパフォーマンスさせてもらって。
サーヤ:初めましてで。
休日課長:しかもカメラが回るっていう。歌うますぎて、「マジでミスれねえ!」って。あの記憶はやっぱり鮮烈だったので、嬉しかったですね。「一緒にできるんだ!」と。
――サーヤさんの音楽体験はどこからきているものなんですか? とんでもなく歌えてしまうわけじゃないですか。
サーヤ:ありがとうございます! 音楽体験……なんだろう? でも、人前で歌ったのはたぶん中学生の時。カトリックの女子校で、担任がシスターのような感じの学校だったんです。みんなで『天使のラブソング』みたいに歌ったんですよ。そこでソロパートをもらったところから、「あー、楽しい!」ってなったのは覚えているんですけど。親が家でマイケル・ジャクソンばっかり流しているかと思えば、松田聖子さんがかかったりして。で、中高生の時にK-POPが急にきて、KARAと少女時代、BIGBANG一色になり。ぐっちゃぐちゃになったんですよね、自分が10代の時に聴いた曲が。そこからJ-HIPHOPとか聴くようになって。いろんなタイミングでいろんなものを聴くから、「これ!」みたいなものがそんなになくて。全部「好きだな」って思っていたし、「この一曲」みたいなきっかけは正直そこまでないです。なんなら、ゴリエがいちばん最初に買ったCD。
川谷:ははははは!
サーヤ:『Pecori♥Night』ですね、最初は(笑)。ミニモニ。とかも聴いていたし、ぐっちゃぐちゃなんですよね。
――なるほど。でも、本当に骨がある、背骨がしっかりある歌ですよね。「歌う人だなあ」と思います。「歌ってみました」ではなくて、「歌うように生きてきた人なんだな」っていう。
サーヤ:芸人がやる「歌ってみた」に見えるのがいちばんヤバいと思っているから、そう見えないように頑張らなきゃって思いました。

――僕自身、礼賛がこんな長く続いていくものだとは想像してなかったんだけれども。みんなのなかでは、そのへんはどういう実感があるの?
川谷:僕は長く続けたいなと思っていて。ライブもどんどんどんどん変わってくし。サーヤちゃん、最初はマイクの握り方がわからないくらいだったんだけど。
サーヤ:あははははは! ハウリングしてね。
川谷:バンドとしてもどんどん成長していって。でも、ふたり(木下、GOTO)は最初、どうしてもサポートミュージシャン然としていたんですよ。どうしても遠慮がちで。でも今は、バンドっぽくなってきたと思います。こんなに打ち上げするバンドもないよね。打ち上げができるバンドは長く続くので。
――それはそうかもしれない。
川谷:キュウソ(ネコカミ)を見ていて思いました。47都道府県ツアーで45回打ち上げしたって言っていて。
サーヤ:かっこいいな!
川谷:僕らもそれに近いし、長く続くんだろうなと思ってました。楽しい。
予測不能の化学反応が生む
“バンドマジック”
――川谷はたくさんバンドをやってきているけど、やっぱり特別なのかな?
川谷:だって、こんなに打ち上げするバンド、ないですよ(笑)。
――川谷はソロでも音楽を作ることができるわけだし、好きなものを作り上げられるわけじゃない? でも、なんでわざわざバンドを組むんだろうっていうのはいつも思っていて。これまでもこの話をしたことはあるけれど、この問いに関して、礼賛についてはどう答える?
川谷:礼賛は、バンドマジックというか。本当に自分が思ってなかった結果になるんですよ。ほかのバンドは、最後にはやっぱり僕が蓋を閉めるわけだし、歌と歌詞は自分でどうにでもできるから。でも、礼賛に関してはどうなるかわからないっていうのが、全然今までやってきたバンドと違う。ジェニーハイではギターだけでしたけど、歌もやっていたし、やっぱり自分が蓋をするバンドだった。それはそれで楽しいんですけど、礼賛は原点みたいなものが詰まっているバンドというか。みんなに安心して任せられるし、何が起きるか本当にわからない。礼賛は、サーヤちゃんの人生観が反映されているバンドだから、サーヤちゃんの人生とともにバンドが動いていく感覚もすごくある。
サーヤ:事件を起こしたいですね。
休日課長:どういった類いの?(笑)
サーヤ:事件という事件を起こしたいです。
GOTO:ひとつじゃないんだ(笑)。
――純粋にみんなの音を楽しんでいる人たちによるバンドという感じがするよね。どうしたって手練れになっていくじゃない、作り方も決まっていくだろうしさ。
川谷:ああ、たしかに。作り方が壊れたのは、礼賛かもしれないですね。
――そういう感覚はある? 自分の作り方、メソッドじゃない部分でやっているというか。
川谷:全然ありますね。やっぱりサーヤちゃんの歌と歌詞は、自分のなかの理論っぽいところを完全にぶち壊してくるんですよね。ほかの楽器も、「普通はこういうの入れないでしょ!」みたいなことのオンパレードなので。ライブも、アレンジも、それぞれの色があるからいろんなことができるし。ギターにしたって、哲くんがずーっとギターソロ弾いて、僕らが入るまで一生終わらない、とかね。ライブは、サーヤちゃんが前にいればもう何でも大丈夫ですから。その信頼がある。「バンド」です。本当に。

――その信頼感はライブを観ていても伝わるんだけれども、その信頼というのは歌い手としての信頼なの? それとも存在自体として?
川谷:どっちも。本当にマンパワーがすごい。人を惹きつける力が、やっぱり群を抜いている。それは歌にも出るじゃないですか。ただうまいだけの人はいくらでもいると思うんですけど、そういうことじゃないんですよね。サーヤちゃんの場合は、うまいし、一歩先でちゃんと人間力が備わっているから、「この人の歌を聴いていたい」と思える。【第68回グラミー賞】で、ジャスティン・ビーバーがパンツ一丁でセットも何もなしで、鏡だけを置いて、ビートも全部自分で打ち込んで弾き語りで歌っていたけど、(それが成立するのは)やっぱり人間力がすごいから。そういうマンパワーが、サーヤちゃんにはある。去年(日本武道館で)アデルのカバー(「Rolling In The Deep」)をやった時もやっぱりすごくて。なんだろうな、「魂がこもってる」って言うのかな。震えるような歌というか。心にくる歌をちゃんと歌える人って稀有だと思うんですよ。いろんなことをやっているなかに歌があるんじゃなくて、もともと歌がある人っていう感じ。本当に歌うために生まれてきた人っていう感じがします。
――そう言われてどうですか。
サーヤ:ありがとうございます。いやあ、びっくりですね。嬉しいです、素直に。最初は、どうしても片手間だと思われる部分があるし、「そこは長く続けていけば変わっていくから」っていう話を最初に絵音さんがしてくれて。本当に続けていくと「ちゃんと理解してもらえるんだな」と思える場面も増えてきて。自分のマインドとしても、ちゃんと本気でやっている姿勢を見せたいフェーズでもあるし、音楽をやりたくなれているのはよかったな、って。
――「はいはい、歌ってみたのね」と受け取られる可能性だってあったわけじゃないですか。でも、サーヤさんは、「このバンドの音と自分の歌を聴けば、片手間じゃないってわかるでしょ」っていうある種の自覚、自負のようなものがどこかにあったんじゃないのかなっていう感じがしていて。そう言われるとどうですか。
サーヤ:ちゃんとみんなと作る体験をしてきたから、何を言われても大丈夫だったところはあるかもしれないですね。
――バンドの見え方として、“サーヤ with 礼賛”じゃなくて、サーヤさんをファイブピースのひとつにできたということが、礼賛の勝因のひとつだと思う。
サーヤ:コメント欄でいまだに「これ、サーヤなんだ!」「サーヤに顔似てるなあ」とか言っていただけるわけですよ。それが嬉しいです。「礼賛から知ってラランドのネタを初めて観ました」という人も多いし。「芸人がやっている」っていう入りが強くなくなっている感じがあって、純粋に礼賛を聴いてくれる人がいるのが嬉しいですね。
――GOTOくんもたくさんのボーカリストとやってきているわけで。そこを踏まえて、どう見えていますか。
GOTO:サーヤちゃんは、天才だな、と。
サーヤ:ひゃー、恥ずかしい記事になりそう(笑)。
全員:あはははははは!
GOTO:普通は書けないじゃないですか、歌詞もメロディも。すごい数の無茶ぶりをどんどん渡していて。本当に尊敬してます。いないんですよ、こんな人は。
――うんうん。哲くんから見たサーヤさんはどう?
木下:最近思ったのは、「ソロ避け」できるんだなって。「ホレタハレタ」の最後は、ソロと歌がガッチャンコするアレンジなんですけど、冷静に聴くといいソロをいい感じに避けているんです。それが自然とできるのがすごい。AマイナーからGマイナーに一瞬移した時に、ちゃんとそこから歌が下がっていくんですけど。「すご!」って思った。感覚が野生的にできている。
――サーヤさんは今それを言われて、どう思った?
サーヤ:いや、何言ってるかマジでわかんない(笑)。
全員:あはははははは!
サーヤ:どう言う意味?
川谷:読んでる人もわからない(笑)。
“作詞家”サーヤの魅力
――今回はミニアルバムという形で作品を作ったわけだけど、極めて音楽的な作品だよね。聴いていてピュアに面白い。曲の生まれ方はそれぞれ全然違うの?
川谷:種を最初に作ってから、スタジオでサーヤちゃんが歌詞とメロを書く流れは大体一緒で。そこからみんなでバーって作りました。
――川谷がやっているどのバンドにも、やっぱり濃密な川谷成分を感じるんだよね。濃密な世界観を感じる。そこは揺るがないし、ジェニーハイにしても、あれだけ強い個性が入っても、出汁がちゃんと“川谷味”になっているというかね。でも、礼賛は少し違う。下味自体が変わっていて、今までの川谷亭では食べたことのない味だなという感じがする。
川谷:たしかに、かなり(自分の要素は)薄いかもしれないです。やっぱり、歌が全然違うので。自分のメロディで蓋をすると、自分汁みたいなものが出てきたりするんですけど、本当にサーヤちゃんの色は全然違う。自分が入っていっても、結果的に新しいものになっていく。僕らは僕らでかなりオルタナティブだし、そこにサーヤちゃんの歌が入るっていう、このフュージョン感が新しいのかな。
――メロディと歌詞は、ほぼ任せているの?
川谷:はい。だから、何がくるかわかんないですよ。
――完全に作詞はひとりでやっているんだ。
サーヤ:そうですね。しこたまタバコ吸いながら(笑)。
――サーヤさんの作詞家としてのバランス感覚は特にすごい。自分が歌うわけだから、自分が感情移入できて、自分が面白いと思える言葉を探すわけですよね。でも、自分の心の叫びを出しすぎると、それはそれで“芸人さんが書いた”みたいなことになる。そのあたりのバランス感と、自分で書いた言葉をシンガーとして成立させる能力がすごい。
サーヤ:ありがとうございます。歌詞は、基本的に何かしら経験したものベースではあるし、その時リアルタイムで思っていることではあるんですけど……基本は、リアルなことを書こうっていう感覚はずっとある。だから、その時の自分のマインドにすごく持っていかれるし、もし自分に面白いことが起きていたらそういう歌詞が書ける。でも、ちょっと達観した部分が出てきたような気がしていて。客観視すると、なんでも落ち着いたうえで遊べるというか。もう威嚇してないっていう、それが面白いですね。
――メロディを強く出したいところにちゃんと強い言葉が入ってくる。メロディに対して気持ちいいと思える言葉がちゃんと乗ってくるのがすごい。それはセンスでしかないんですよね。
川谷:うん。歌詞ってちょっと軽く思われがちというか。歌詞なんて誰でも書けると思ってる人も多いんじゃないですかね。でも、難しいんですよ、歌詞って。強い言葉をただ書けばいいだけじゃないし、メロディとぴたっとはまって、それがその人の歌に合ってるかどうか、まで関わってくるから。サーヤちゃんはそこがめちゃくちゃうまい。わかりやすくもあるし、ちゃんと比喩的でもある。比喩っぽくなりすぎてもダメだし、直接的すぎてもダメで、そのバランスがいちばん難しい。そこが本当にうまい。歌詞を分析する円グラフがあったとしたら、全部マックスみたいな。足りないものがないし、どんな歌詞でも書ける。真面目にやってもふざけてもいいし、何があってもサーヤちゃんになる。すごく面白い。これからいろんな曲を書くと思うんですけど、その都度引き出しが増えるんだろうし、これだけ忙しく生きていると引き出しも勝手に増えていくと思うし。生きているだけでずっとインプットしている状態なんでしょうね。そのなかで、ネタには落とせない部分が、礼賛の曲になっていると思う。生き方としてはものすごく正しいですよね。
――うんうん。
川谷:音楽をやってなかったらやってなかったで、この感情はどうしていたんだろうなとも思うし。
サーヤ:いや、もう考えられないですよ。ずっと、ネタに消化できないものをどうするかっていう感情があったので。礼賛ができてからずっと言っているのは、本当に“フードロス削減”ができてるというか。何かしら起きたら、ネタか礼賛かどっちかに振り分ける。ただただおもろいことはネタにして、説明がつかない感じを全部礼賛に持ってこられる。それがものすごくストレスフリー。何に出くわしても全然大丈夫になったのが大きいですね。

――「フードロス削減」は、とても伝わりやすくていい言葉だけど、それに気づいたのはいつなんですか。やり始めた時から?
サーヤ:最初のアルバムがちゃんとできてからかもしれないですね。あの時はちゃんと尖っていたなと思います。逆に威嚇してないとやってられない時期だったと思うんです。向かい風が強すぎて。今はそのフェーズが落ち着いて。ツアーと武道館も経て、「礼賛が楽しい!」っていう気持ちがフルに出てきた感じがします。
川谷:自覚的じゃないのかもしれないんですけど、難しいことをずっとやってる。作詞家に必要なものって、それなんですよ。わかりやすさと、気持ちと、比喩と、芸術性の真ん中がいちばん難しいから。それをずーっとナチュラルにできているっていう。
サーヤ:(小声で)酒飲みたいです。
――(笑)。でも、本当にすごいことをやっているよね。
サーヤ:初期の頃はMCする時も、どっちに行ったらいいのか悩んだりもしたんですけど。そこのいいチューニングがわかった感じはあって、歌詞を書く時もその感じがつかめてきたなっていうのはあります。「ホレタハレタ」は課長のフィルターを通して書いたんですけど、礼賛にいると、まわりで起こることも面白い。インプットの質が高まっている感じがします。そういう、何か起こることも全部サポートしてもらっているくらい。いいインプットだなといつも思いますね。
新たな“名曲”「果てない」、
そして礼賛の現在地
――なるほど。今回の作品に収録されている「果てない」という曲は、本当にとてつもなくいい曲で。この曲は、ちゃんと世間に評価してもらおうよ。どういうふうに生まれたの?
川谷:僕のなかでは名曲にしようという意図もあったから、自分の中での名曲コードを使っているし、エモーショナルさもある。でもバンド感がすごくあって、歌も乗せやすいっていう。オルタナティブなトラックを作ったんですけど、サーヤちゃんの歌が想像を超えてきて。メロディが本当に良い。最初に聴いた時から「もうこれだ!」ってなった。「めっちゃいい!」って何回も言ったのを覚えていますね。歌詞もいい、歌もいい。これは礼賛の中での、新たな代表曲になる予感はありました。
休日課長:(サーヤに対して)鳥肌が立つこと多いんですけど、その場で初めて聴いて、「何だ、これ!」みたいな。これだけ聴いていても、まだ慣れてなくて、いまだグッとくる。すごいと思います。本当にいろんな人に聴いてほしいと思う曲のひとつですね。すごく好きですね、僕は。
――GOTOくんは聴いた時、どうでしたか?
GOTO:本当にすごい曲ですよね。ライブならではのよさが出る曲だし、音源は音源で良さがある。すごい曲ですね。

――哲くんはどう?
木下:「果てない」は、自分のなかでも、たしかに今までにないバランス感でできた曲かもなと思います。サーヤちゃんのメロディが入ったものがLINEグループで送られてきて、「これだな」という感覚があって。なんて言うんだろうな、言い方が難しいですね。僕的には、“最高の形の無印良品”を作ってくれたというか(笑)。どこにも寄らないパラメーターの、素朴でピュアで神聖な場所にポンって置かれた感じがして。
川谷:普遍性?
木下:そう、普遍性があるなって。
休日課長:たしかに、「このバンドでこんな曲もできるんだ!」って。
――サーヤさん、これができた時のことを覚えてます?
サーヤ:たぶん、サビが最初に浮かんだんだったかな。
――「果てない」という言葉ありき?
サーヤ:そうですね。〈窮屈なままで空腹になる〉ですね。武道館でライブをやることが決まっていて、フェスのステージもちょっとずつ大きくなっていくことを体感して。一個一個クリアしていくなかで、まだまだやりたいことは出てくるし、まだ達成したいことが尽きない感じがあって。そのいい言い方をずっと探していたんですけど、それが「果てない」だったなっていう。まわりはリタイアしていっても自分は果てない、という意味でもあるし、目標も尽きないっていう意味での「果てない」。しっくりきたワードから作りましたね。こなそうと思えばこなせてしまうぐらいになった時に、ちゃんと緊張感を忘れないようにしなきゃいけないと思ったタイミングだったので、こういう歌詞になったんだと思います。
――あぐらをかかずに、図に乗らずにやらなきゃいけないなという心が、「果てない」という言葉に変換されるところがすごいよ。
休日課長:ほんとそう思います。その感情から出てきた言葉なんだとびっくりした。

――その概念が、しっかり歌詞用の言葉になっている。その変換能力、翻訳能力が作詞において必要なものほぼすべてだと思うんですが。川谷からすると、「やられたな」みたいな感覚もあるの?
川谷:うん。この曲は本当に感動しましたね。〈窮屈なままで空腹になる/なら集中集中〉のところがすごいなと思いました。このメロとこのリズム、歌ってもすごく気持ちいいんですよ。韻の踏み方がわざとらしくなくて、でもラップとも歌とも取れない部分が一瞬あったり。サーヤちゃんは歌もラップもうまいから、その中間に行った時に、本当にサーヤちゃんにしか出せないものが出てくるんですよね。ただのJ-POPでは全然ない。かなりキメラな感じですよね。
――人としての、根本的な出力が高いよね、サーヤさんは。レディー・ガガを観た時にもまったく同じことを思ったんだけど。
サーヤ:うっそだー!
――いや、本当に(笑)。出力自体が違うんですよ。あのレベルになると、体調不良とかないんだろうな、っていう。そういう感じがサーヤさんの歌にもある。
川谷:サーヤちゃんは、フェスの前の日にガンガン酒を飲んで集合時間にこなかったことがあって(笑)。それで別の場所から行く、みたいな。それでもライブバチバチにやりますからね、どんだけ飲んでようがほぼ関係ないっていう。
サーヤ:ヤバいかも。おっちゃんか、私は。
川谷:体調不良とかあんまり関係ないタイプなんだろうなと思います。
サーヤ:コンタクトもどっかに飛んで、何にも見えない状態で【SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025 30th ANNIVERSARY】に出て。大雨だし(笑)。
川谷:最悪(笑)。
サーヤ:でも、気持ちがいちばん乗れた日ではあったんですよね。楽しかったんですよ。
――これからどうなっていくのか楽しみでしょうがないね。
川谷:着々とステージも大きくなってきて。3年半で武道館っていうのも当たり前ではないと思うんだけど。本当にドームでライブをやるのも夢物語でもない感じにはなってきたと思うので、目指せたらいいなと。
――このバンドが音楽集団のままデカくなっていくっていうのは、日本の音楽シーンにおいて夢があるよね。実験と成熟とポピュラリティが同じだけ存在しているっていう。
サーヤ:たしかに。
――頑張ってください。本当に素晴らしい作品で、「こんな音楽がまだあったんだ!」っていう気持ちになった。すごいポテンシャルだと思いました。
川谷:ありがとうございます。
――サーヤさんも慣れちゃわずに頑張ってほしい。長いこと音楽を聴いてきたけど、まだこういう気持ちになるんだと思いました。
サーヤ:嬉しいです。慣れそうにはないです。頑張ります。

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