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<対談>小波津志×Lola Amour――日本とフィリピンの国境を越えて響き合う音楽の化学反応

インタビューバナー

Interview & Text:小松香里
Photo:Hiroki Abe
Interpreter:飯田千春



 2023年にリリースした山下達郎の「Sparkle」から大きな影響を受けた「Raining In Manila」が、母国フィリピンをはじめ、いくつもの国でヒットし、フィリピンを代表するバンドとなったLola Amour。昨年2025年には「アジア版グラミー賞」とも呼ばれるMusic Awards Japanでフィリピン・ポピュラー音楽特別賞を受賞している。

昨年リリースした「The Moment」にはPSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEの小波津志が参加し、ポップ、ファンク、ロック、ジャズ等をミックスしたLola AmourらしいメロウでムーディーなサウンドにLola Amourのボーカル、ピオ・ドゥマヤスと小波津のソウルフルな歌が乗り、ロマンチックな恋愛のときめきをしっとりと描いた。両者のコラボレーションは楽曲だけに留まらず、マニラ、マカオでのLola Amourのステージに小波津が参加。そして、今年1月に開催されたLola Amourの初の来日公演にも小波津がサプライズ出演し、より濃密になったパフォーマンスを見せた。来日公演時に実現した両者の対談を掲載する。

共演する度に「本当に良い出会いだったな」と思います

Lola Amour - The Moment (WITH KOKORO) Official Lyric Video


――「The Moment」に小波津さんが参加することになったのはどういう経緯があったのでしょう?

ピオ・ドゥマヤス(Vo./Gt.):僕らは同じWarner Musicなんですけど、偶然PSYCHIC FEVERの「Gelato」を知って。それを聞いていたら楽しくなっちゃってメンバーとアカペラで盛り上がったんだ。その動画をストーリーズに投稿したらPSYCHIC FEVERが反応してくれて。それがきっかけでオンライン上での交流が始まり、僕らが制作していた楽曲「The Moment」に志に参加してもらうことになりました。


――小波津さんはLola Amourからコラボのオファーが来てどう思いましたか?

小波津:PSYCHIC FEVERはフィリピンに行ったことはなかったのに、お声がけいただいてとても嬉しかったですし、曲も僕の好みだったので、良い化学反応を起こせるよう全力で臨もうと思いました。「The Moment」以外の楽曲も好みですし、代表曲の「Raining In Manila」をショート動画にアップさせていただいたこともあります。ライブでも何度かご一緒させてもらいましたが、聴き手が純粋な気持ちで楽しむことのできるステージも魅力だと思ってます。


Lola Amour全員:(満面の笑顔を浮かべる)




マヌ・ドゥマヤス(Tr./Gt./Ba.):「The Moment」への参加オファーをした時、志はすごく乗り気で「何でもやるよ」というムードが出ていたので、すごくやりやすかったです。しかも馬がすごく合ったし、ユーモアのタイプも近くてコラボするのがとても楽しかった。


デイヴィッド・ユヒコ(Key.):最初のうちはわからないこともあったと思うのですが、すべてに対して快く引き受けてくれたんです。とにかくフレンドリーで制作がしやすかった。歌声も素晴らしくて才能に溢れる若者です。志の歌声のおかげで「The Moment」が完成したと思っています。


――「The Moment」はロマンチックな恋愛を歌った楽曲ですが、小波津さんが歌唱の際に意識したことというと?

小波津:大人の魅力が出るよう、マイクをワインに見立ててみたり、普段やらないようなアプローチを取り入れてレコーディングしました。


ピオ:会ったことないアーティストとコラボレーションをするのはリスクもあると思うのですが、僕たちは日本の音楽が大好きで影響も受けてきたので、日本のアーティストである志とコラボレーションすることを楽しみにしていました。最初はデータでのやりとりだったのですが、送ってもらったデモの段階から志の歌声は素晴らしかった。「お願いして本当に良かった」と思いました。最初はネット上の交流しかなかったけれど、そこから約一年ぐらい経って、今では4回も一緒にステージに立っていて、どんどんいい関係値になっている。共演する度に「本当に良い出会いだったな」と思いますね。




――最初にライブで共演したのは2025年9月のマニラでの【Lola Amour Presents Love on Loop ALBUM CONCERT】でした。

ピオ:あのライブのリハーサルのためにマニラに来てもらった時が初めての対面でした。他のアーティストともそういう機会がなかったですし、僕たちはシャイなので会う前は緊張していたんです。志に会って、まず自分たちのグッズを渡したら、志もPSYCHIC FEVERのグッズを持ってきてくれていて交換して。タガログ語(フィリピンの言語)を教えたり、ご飯を食べに行く中ですっかり打ち解けて、今では仲の良い友達です。


デイヴィッド:リハのためにスタジオに来てもらってタガログ語の歌詞を渡したんですが、志は覚えるスピードがとても速いんです。「タガログ語なので難しいかな?」と思っていたのに本当にすぐ覚えて、想定より早く作業が進んで、「このコラボレーションは絶対成功だな。ライブもきっとうまくいくな」と確信しました。


小波津:初めてお会いしてすぐにリハーサルに入ったのですが、僕はバンドとのリハをしたこともなかったし、初めましてなので僕もすごく緊張してたんですが、すごく温かく受け入れてくださって、どんどん楽しくなっていきました。タガログ語も教えていただいて、すごく良い雰囲気でリハの初日に臨めて嬉しかったですね。


――その後、ライブで「The Moment」だけでなく「Gelato」と「Raining In Manila」を一緒に歌っていました。

ピオ:僕たちは「Gelato」をSNSに投稿したし、志は「Raining In Manila」を歌えるのでライブでやろうということになったんです。


小波津:僕がタガログ語を話したり歌唱するとお客さんが一緒に歌って踊ってくれて、体全身で楽しんでくれてるということが伝わりました。


ピオ:志はある程度緊張していたと思うんだけど、全く緊張してるように見えなかったのが一番良かった。一緒にライブをやるのは初めてなのに、アドリブを入れてきたり、いろんなポーズを決めたりするので驚きましたね。僕も志の影響でその場でいろいろアレンジするようになったんです。


小波津:僕がピオさんにそんな影響を与えていたとは知らなかったです(笑)。「Raining In Manila」は僕とピオさんと交互に歌うパートがあったのですが、ちょっとアレンジしてみたら良くて、昨日の大阪でのライブではブラッシュアップされてより良い感じになってました。


ジェフ・アブエグ(Sax./Cl.):「志ってフィリピン人?」という書き込みがあるくらい、完璧なタガログ語なんです。アクセントも上手ですし。


ラフィ・ペレス(Dr.):フィリピン人だけでなく他の国のリスナーも志とのコラボレーションに良い反応をしてくれてます。僕たちが一緒にパフォーマンスすることをとても愛してくれている。「大成功のコラボレーションだったな」と思います。


ピオ:ビジネス的な要素が強いコラボレーションではなく、相性が良くて良い関係性が築けているからこそのコラボレーションだということが伝わっていると思うんですよね。


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国境を越えたパフォーマンスができる場所は限りがない

――日本でのライブはどうでしたか?

ピオ:初めての日本公演なのですごく緊張しました。フィリピンのオーディエンスはすごく賑やかでわかりやすく盛り上がってくれるのですが、「日本のオーディエンスは静かだよ」と聞いてたので「どんな感じなんだろうな」と思ってました。でも、実際はフィリピンと同じように盛り上がってくれました。僕たちがデビュー当時ライブをやっていたような小さめの会場でのライブだったので、懐かしさを感じながら楽しむことができた。とても良い経験ができて楽しい日本ツアーでしたね。


マヌ:ピオが今言ったようにデビュー当初のライブを思い出して懐かしかったです。お客さんとの距離が近くて表情がはっきり見えるのが良いですよね。そういう景色を海外で見ることができたことに感動しました。


デイヴィッド:僕はフィリピンのオーディエンスより歌ってくれてるように感じましたね。フィリピンでライブをやることは珍しくないので、軽い気持ちで観に来てくれる人もいると思うんですが、日本のオーディエンスはあの日のライブがとても特別だと思ってくれた上で全曲歌ってくれてるような雰囲気だったので驚きました。


ピオ:タガログ語で歌うだけじゃなくて話しかけてくれたのでびっくりしましたね。


――母国での小波津さんのパフォーマンスはどうでしたか?

ピオ:母国だからなのか、僕たちとのライブの回数を重ねているからなのか、いつも通り全く緊張していないように見える上にとてもリラックスしているなと。あと、オーディエンスを乗せるのがすごくうまいんです。「Gelato」を歌う時も志が僕をリードしてくれて、曲中でアイコンタクトをしたり、僕が苦手なところをうまくカバーしてくれたので本当にありがたいです。


小波津:「Gelato」を僕ひとりでバンドと一緒にパフォーマンスするのは珍しいので、自分なりにどう盛り上げるかいろいろとシュミレーションして臨みました。何よりも「僕とLola Amour自身が楽しまないと」と思ったのでアイコンタクトを取ったりしつつ、お客さんにもコール&レスポンスを求めたり、手を上げてもらったり、ハンドクラップしてもらったり、体も使って一緒に楽しんでもらうよう意識しました。リハの時にそういうアプローチを試してみたらLola Amourのメンバーの反応がとても良かったので、本番もやろうということになったんです。自分だけでは一体となって会場全体が盛り上がる感じは作れなかったと思うので感謝しています。


――2組のコラボライブを見た音楽関係者の方が「アジアのシルク・ソニックみたいだ」と言っていたらしいです。

ピオ:とても光栄です。約10年間バンド活動を続けてきて、志に出会ってコラボレーションをして、そんなことを言ってもらえるなんて、「本当にこのコラボは正解だったんだな」と思います。その言葉に見合うようなバンドになれるよう頑張って成長していきたいです。


――初コラボライブから約半年間で何度も共演する中で関係性はどう変化してきたと思いますか?

ピオ:冗談を言い合う回数が増えましたね(笑)。志がタガログ語で言ってくる冗談もすごく面白いんです。一緒にいると時が経つのがすごく早くて本当の友達みたいな仲ですね。志はバンドの一員であり家族のような存在です。


小波津:最初にお会いした時から、本当に音楽が好きな人たちなんだなということを感じています。メンバー同士とても仲が良いし、ずっと雰囲気が良い。すごく好きなグループです。なので、何度もコラボさせてもらえるのがとても嬉しいですし、また一緒にステージに立ちたいし、曲も作れたら嬉しいなと思っています。


――このコラボレーションによって一番財産になったことというと?

ピオ:友情が芽生えたことも大きいですし、日本とフィリピンでは文化の違いがたくさんあるので、お互いいろいろなことを教え合えたんじゃないかなと思います。アーティスト同士だからこその意義もたくさんありました。先ほども話しましたが、志はオーディエンスをコントロールするのがとてもうまい。Lola Amourのファンを前にしてもオーディエンスのエネルギーをしっかり増加させるのですごく勉強になりました。あと、たくさん食べるのも一緒にいて楽しい理由のひとつです(笑)。唯一無二の体験がたくさんできました。自分たちがこれから成長するための財産をたくさんもらえた。一緒にライブをやってから約半年間という短い期間でしたが、ずっと先の未来に繋がるようなものを手に入れさせてもらいました。


小波津:国境を越えてこのような関係性になれるのは人生を通してもなかなかないことだと思っています。音楽に対する真剣さも勉強になりましたし、ステージ上で特定のメンバーがフォーカスされるというよりは、一人ひとりが主役に見える。一人でも欠けると成立しないようなステージだと感じたので、PSYCHIC FEVERにも活かしていきたいなと思いました。言葉の壁を越えて音楽を届けることができたのも嬉しかったですね。最初のフィリピンでのライブもその後のマカオでのライブも現地のオーディエンスの方たちがすごく盛り上がってくれた。日本でのライブも盛り上がりましたし、国境を越えたパフォーマンスができる場所は限りがないんだなって。これからも音楽のみならず、食事なのか何らかの異文化交流を発信していきたいですね。


ピオ:日本のライブで「Gelato」をフルバンドでカバーしたんです。それはスタッフの方からのリクエストだったので、今度はどの曲をカバーするかっていうところから志と一緒に考えていきたいですね。そうなるとまた新しいものが生まれる気がします。あと、じっくり時間をかけて1から曲を作ってみたいですね。


小波津:僕もそう思います。良い関係性が築けているアーティスト同士だからこその新たなコラボが実現できたら嬉しいなって、今ピオさんの話を聞きながら想像してました。お互い幅広いジャンルの音楽をやってますし、いろいろとできそうだなって。


フィリピンと日本という、国境を越えた音楽の可能性を広げた今回のコラボレーション。さらなる展開を予感させる今後のLola AmourとPSYCHIC FEVERの動向に注目だ。


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