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<インタビュー>水瀬いのりと“仲間”の10年――【Travel Record】の舞台裏を語る

インタビューバナー

Interview & Text:一条皓太
Photo:筒浦奨太


 水瀬いのりが2025年11月末まで、全国7都市8公演を巡った【Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record】。同ツアーより11月30日、神奈川・横浜アリーナにて開催となったファイナル公演の模様が、3月11日にライブ映像作品としてリリースされた。

 本インタビューでは、収録内容について尋ねつつも、ボリュームとしては程々に。それよりも気になったのが、鑑賞時に知っておきたいステージの裏側や、映像内では語られていない補完的な情報の数々。ツアー期間中、最もブチ上がった瞬間は? ソウルメイトこと、大西沙織と過ごしたファイナル当日の夜とは? はたまた、筆者が本公演のライブレポート(https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/156837)に記していた「テクノ4時間セット」の可能性はいかに。トークにエンジンがかかってきた取材後半、水瀬らしいワードセンスが次々と飛び交い始める点にも注目である。

 そして、取材全体を通して滲み出た、ファン、いのりバンド、長年を共にしてきたスタッフに対する溢れんばかりの想い。彼女がたくさんの人に慕われる、愛情に満ちた人だとつくづく思わされる時間となった。本稿を読み終えたとき、読者各位がきっと優しい気持ちになってくれていることを心から祈っている。

「寝かすつもりはなかったんです。本当に!」

――最初に報告なのですが、前回の取材でお聞きした「パスポートは5年派 or 10年派?」の質問が、ファンの方々から大変好評でした(参考:水瀬いのり、アーティストデビュー10周年を迎えた今何を想うのか――2ndハーフアルバム&ベストアルバムを深掘り)。

水瀬いのり:あれが!?(笑)


――はい(笑)。当時もした“爆盛れ写真”の流れを受け継いで……ではないですが、最新のアーティスト写真を見て、改めて「この人、めっちゃかわいいんだ」と認識した次第です。

水瀬:あはははっ(笑)。これまでとは雰囲気を変えて、今回はポートレート感を出すものになりました。世界観を作り込まず、10周年イヤーの旅を終えて、みんなと撮った写真を見返しているような。デビューシングル『夢のつぼみ』のアートワークに原点回帰ではないですが、ふとした瞬間の表情を切り取る写真になっているので、それを身近に、かつ好意的に受け取ってもらえたのはとてもうれしいです。


――年々、衣装もナチュラルになっていますよね。

水瀬:そうそう。今回のライブでも軸となったハーフアルバム『Turquoise』制作時、ロケ撮影で南フランスを訪れたのですが、この衣装のスカートも実際に現地で購入したものなんですよ。後ろにある小物にも、個人的に買ったお土産がちらほら。なので、パッケージ表面のみならず、背面やブックレットにも注目をしていただけたらと思います!



――くまなくチェックしたいところです。早速、作品の中身について聞かせてください。ライブ開幕を飾ったのは「夢のつぼみ」。こちらは最後に披露したのが、今回と同じく横浜アリーナにて、2020年12月に開催した無観客ライブ【Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes】。語弊を恐れずに言うと、“寝かせ”がすごいといいますか……。

水瀬:いや〜、これはですね、寝かすつもりはなかったんです。本当に!


――(笑)。

水瀬:何気ない瞬間に歌うことだって、もちろんできたんです。でも、あれよあれよと時が流れるうちに「せっかくなら、10周年まで取っておかない?」となって。いつだって歌いたかったのは当たり前。そのうえで「夢のつぼみ」がもっと輝くステージが絶対にあると信じていたし、逆にそこで歌えない曲に出番を預けていたまでです。実際、みんなからの歓声も桁違いでしたよね。


――仰る通り。2017年12月開催の【Inori Minase 1st LIVE Ready Steady Go!】での登場シーンをオマージュした、シルエット演出も懐かしかったなと。

水瀬:私のライブって、監督さんをはじめ、舞台演出家さんや照明さんがずっと一緒で、水瀬いのりの成長も変化も、すぐ近くで見守ってきてくださった方ばかりなんです。それに自分で言うのもアレですが……みなさん、私のことをすっごく好きでいてくれて。そんな想いが映像や照明の端々から伝わってきたし、舞台演出家さんがあのシルエット演出を提案してくださったときも、すごく感動したのを覚えています。





水瀬いのり「夢のつぼみ」ライブ映像(Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record)


――そもそも、裏方のみなさんが変わることなく、10年単位で支えている時点で驚きです。

水瀬:本当、チームに恵まれていますよね。照明さんのマルチタスクぶりにも支えられていて。私自身もバンドリハのとき、音出しの様子を照明・PAさんの席から拝見しているんですけど、事前にプログラミングされている演出もありながら、手作業でリアルタイムに操作している部分も多く。むしろ、そっちの方が要(かなめ)ってくらい。動いている照明をただ眺めるのではなく、手元で操作して、それでも目線はしっかりとステージを向いていて。その間もまた、レシーバーでも色々な音が飛んできて。


――まさにマルチタスクですね。

水瀬:それぞれのセクションを信頼しあっていないとできないし、どんなことが起きても臨機応変に対応してくださるのが本当にカッコいい。そんな頼もしい仲間たちがいる前で「緊張する」なんて言ってしまったら、すごく寂しい想いをさせてしまうし、申し訳ないです。


――というと。

水瀬:本番を目前に緊張はするけれど、それはあくまで自分が心のうちで感じているもの。それを言葉にしたら「自分たちが作ったステージに、なにか不安があるのかな?」と思わせてしまうかもしれないじゃないですか。だから私自身、「こんなに支えてもらっているんだから、なにが起きても大丈夫!」って気持ちでステージに臨んでいるんです。



――とても素敵です。私もライブ当日、さまざまな演出に目を奪われていたうちの一人でしたが、特に「まだ、言わないで。」の照明と音の同期がクールでした。曲自体も打ち込み主体なはずなのに、“いのりバンド”による生音での再現度合いが圧巻でしたね。

水瀬:そうなんです。音周りはバンマス(バンドマスター)のみっちーさん(島本道太郎/Ba.)にお任せをしているので、バンドリハをワクワクしながら待っていたんですけど、そうしたら想像していた以上にドラムの音がするなと……。


――いや、現地でもめちゃめちゃ思いました。

水瀬:フッフーさん(藤原佑介/Dr.)がこの曲を大好きなのは知っていたんです。それでも、大好きすぎるがゆえに、ステージでも「もうわかった、わかったから!(笑)」ってくらい、愛が溢れんばかりの名プレイが光っていて。フッフーさんの鼓動が遺憾なく発揮されていました。


――他方、水瀬さんはというと。

水瀬:私のボーカルはミステリアスで、体温をあまり感じすぎないように。ディーバ的な気持ちに徹しつつ、間奏なんかではフッフーさんに「OK、ありがとう。わかってるからね、構えなくてごめんね」って気持ちでいて。本当なら、後ろの階段を駆け上がって、一緒に「まだ、言わないで〜」って歌いたかった。


――今度はぜひ、フッフーさんボーカルver.も。

水瀬:ぜひぜひ、カバー大歓迎なので! これは余談ですが、「いのりバンドで担当楽器をシャッフルするなら?」なんて話題になったとき、ボーカルの有力候補はフッフーさんでした。で、私がドラム。


――アンコールで披露された「夢のつづき」では、実際にドラムスティックを握っていましたものね。

水瀬:そうでした。なので、フッフーさんが「まだ、言わないで。」を歌う世界線もあるかもしれない。うーん、ファンクラブイベントとかでやるのかな?(笑)


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  1. 「“私って、モンスターなの?”みたいな」
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「“私って、モンスターなの?”みたいな」


――少し飛んで、本編終盤の「Innocent flower」までの数曲からは、特に強いメッセージを感じました。

水瀬:4着目のドレスで歌ったブロックは、ビカビカな演出や迫力のバンドサウンドもありながら、それをどこか削ぎ落として、アーティストとしての根幹を見せたかった部分といいますか。「これぞ、私が伝えたいもの!」な時間になっています。大団円に向けて、アンセム続きのハートフルゾーンは涙なしには歌えなかったし、私自身はステージにいながら、みんなの客席に降りていました。気持ちだけは(笑)。


――こちら側にいたと。

水瀬:はい。というより、ステージにいるのが嫌でした。別に歌うのが嫌だったんじゃなくて、もっとみんなの近くに行って、握手をしたり、ハイタッチをしたり。あるいはマイクを渡してみたりしたかった。頭のなかでは、そんなふうにライブをしていました。


――我々としてはうれしい限りです。

水瀬:ここ数年、大きなステージで歌わせていただく機会が多いぶん、ふとした瞬間に「ちょっと心細いけど、大丈夫だよね?」って、歌いかけてしまう癖があるんです。離れている気はしないけど、それでもみんなの気持ちがちゃんと届いていることを伝えたいから、動きを大きくして、手もたくさん振ってみて。そんな「大丈夫だよね?」から、「みんなを信頼しているね」って安心できるくらい、大きな人になるのが次の目標です。


――その片鱗は、Wアンコールでの「僕らは今」に表れていた気がします。直前のMCでは、こんな言葉も。「大きいはずの横浜アリーナが、なんだか小さく見えて」。この日と同じ会場で、約3年前に開催された『Inori Minase LIVE TOUR 2022 glow』も拝見していますが、たしかに当時は横浜アリーナを、3,000人規模のライブハウス程度に見間違う感触はなかったなと(参考:水瀬いのり、“当たり前の尊さ”を伝えた【Inori Minase LIVE TOUR 2022 glow】神奈川公演)。

水瀬:ねー、すごくわかります! 遠い席はちゃんと遠かったんですよ。今は横浜アリーナでライブハウスくらいになっちゃうので、地方公演のホールなんてもうビッタビタ。ぎゅ〜って圧縮されてる感じです(笑)。「マイク要らないよな?」ってくらいの距離感でお話ができるアットホームぶりで、実際にMCでみんなと会話をしてから次の曲に進むことなんかも。でも、いままでの私があまりそういうことをしてこなかったせいで、みんなの方がなぜか怯えるという変な現象が起きてしまい。「私って、モンスターなの?」みたいな。


――コミュニケーションモンスターの自覚、ちゃんと持ってたんですね。

水瀬:私って、里に降りてきた山男とかなんですか? みんなと仲よくしたいだけなのに、「あれっ、どうして?」ってなっちゃう。でも、みんなも次第に慣れて、だんだんとお話してくれるようになりました。最初に指された方とかはすごく焦っていましたよ。「えっ、えっ、自分ですか?」「はい、あなたです」みたいな。


――ご自身としては「こんなはずでは?」と。

水瀬:距離の詰め方、間違えていたのかな。難しいです。でも、みんなも私をモンスターだと思ってたんだ(笑)。


――水瀬さんなら、流れで肩パンとかしても許してもらえそうですね。

水瀬:あはははっ(笑)。私自身が楽しいし、みんながどこから来たのかとか教えてほしいので、今後も果敢にコミュニケーションを取っていきますよ! MCというのは、“みんなもMC”の時間です。


――気は抜けませんね。先ほどの照明などの話に戻りますが、今回の披露曲のなかで、水瀬さんの個人的な“演出大賞”を教えてください。

水瀬:「NEXT DECADE」です。あの演出のなかで歌い切れたときに「今日のライブはもう大丈夫だな」って確信できたくらい、物凄い手応えがありました。今回のBlu-rayで改めて確認してほしいくらい、とめどない情報量と、感性を研ぎ澄まされる映像の数々。<ごちゃ混ぜの気持ち>という歌詞の通り、本当にごちゃ混ぜの視覚攻撃をみんなに仕掛けながら、私は映像を後ろにどっしりと歌い切る。あと、この曲を歌っている途中、みんなの脳内がオーバーヒートしている様子が見えて、めっちゃかわいかったです(笑)。



――思考をリアルタイムに処理できず。

水瀬:盛り上がり方がわからず動けなかったわけではない、ってちゃんと知ってるからね。でも、あまりの負荷がぐーって掛かって、“整った”みたいな気持ちになれましたよね? タイトルに「NEXT DECADE」とある通り、次の10年間を前借りして浴びてみるって、そういうことだと思います。


――映像の話題繋がりで、同ブロックに入る前に投影された「Short Movie」にも触れておきましょう。映像内では、水瀬さんが10年間の歩みを手書きでポップな年表にしたためていました。陳腐な感想で恐縮ながら、最初に思ったのが「これ、書き損じのプレッシャーが半端ないだろうな」と……。

水瀬:そう(笑)。ちゃんと一発書きなので「ヤバい!」となったところは大体がハートか星の塗りつぶしに。ほかにも、ステッカーなどのコラージュ用品を使って、まるで最初からそうだったかのように仕上げました。


――なるほど(笑)。

水瀬:これは“絵が描けない人あるある”だと思うんですけど、空間把握能力が鈍いせいで、余白とかの逆算ができないんですよ。だから、最初の方の文字を大きく書きすぎて、後ろがギチギチになっていたり。えー、大きく書いたつもりはなかったんだけどなぁ。なにより、私のチームとしては珍しい撮影スタイルで、OKを出すのが私次第だったこともあり、最後の方は“考えるな、感じろ”の時間に突入していました。そのせいか、普段より動き回っていないはずなのに、なぜかみんな肩が凝ったみたい(笑)。映像で楽しんでいただきたいです。


――Blu-rayならば、一時停止で細かな部分も読めますからね。

水瀬:一緒に撮影したオープニングムービーの方もそう! あの旗、刺すのがめっちゃ難しくて。毅然とスッとした顔で目標を見ないように、それでもちゃんとそこにミートさせないといけなかったんです。メイキングでは、グリーンバックを使った収録の模様や、私が書いた年表の赤いラインが道の白線になり、そこにシンクロして木々が生まれる裏側も観てもらえると思います。


――ライブ当日、あの映像を観て「この人、自然も出せるなんて、新世界の神じゃん」と思っていましたが、まさかその裏側も。

水瀬:そうなんです。あの映像、色々と超越してますよね。


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「その“テクノ4時間セット”ってなんですか?」

――そもそもなのですが、今回のセットリストはどのように組んでいったのでしょう。軸となったハーフアルバム『Turquoise』、ならびにベストアルバム『Travel Record』の収録曲数から考えるに、おそらくは披露順で悩むのがメインの作業だったかと思いますが。

水瀬:そうですね。衣装や演出の兼ね合い、あとはたとえばクールな曲はまとめて歌うなど、大枠はお任せをする形となりました。そのなかで、私がちょっとしたアレンジをしたり、メドレーに挑戦したいと申し出たりしてみましたね。


――「ちょっとしたアレンジ」とは具体的に?

水瀬:プロットの段階では、アンコール1曲目に「夢のつづき」を歌う予定だったんです。でも、私のなかではあの曲でステージに登場するのって、気持ちを作るのが難しかったというか。これはきっと、プレイヤーにしかわからない感覚だとは思うものの、もっと違う曲が相応しいと考えたんです。


――実際の1曲目は「Calling Blue(overture) ~ Turquoise」でした。

水瀬:逆に「Turquoise」を本編に入れる案もあって。ここも言葉にするのが難しいのですが、あの曲たちはまさに11年目に向けた切符のような。みんなから“もっともっと”と呼びかけられて、アンコールで手拍子が増えていって、私はその海に飛び込んでいく。そんな感覚にぴったりだと思ったので、曲順を入れ替えることに決めました。結果的に「夢のつぼみ」からライブが始まって、本編ラストを「夢のつづき」で飾る綺麗な形にパッケージできてよかったと感じています。





水瀬いのり「Turquoise」ライブ映像


――自身初となる「メドレーに挑戦したい」と申し出た理由についてもお願いします。

水瀬:今回のアルバム2枚の収録曲をすべて披露しようとすると、余裕で30曲を越えてくるので現実的ではなくて。セットリスト会議で、直近に歌った曲たちが自ずと脱落していく流れだったんですよ。そんな子たちを見て「いやでも、ベストアルバムに入っているのに〜」って涙ぐむ想いに。


――心中お察しします。

水瀬:あと大きかったのが、私のラジオ番組『水瀬いのり MELODY FLAG』に、みっちーさんとじっじーさん(植田浩二/Gt.)がゲストで来てくださったときのこと。「いつかメドレーとかもやってみたくて」なんてお話をしたんですけど、みっちーさんに「ねー!」って笑いながら軽く流されまして。「あれ、私は絶対にやるんだぞ?」と密かに思っていたので、切り出すなら今しかないなと。こうした経緯を経て、当初の脱落組をメドレーとして蘇生させられました。


――チケット追加当選分みたいなご説明でした。

水瀬:いや、本当にそう。機材席開放みたいな。


――ファンの方々も、今回の蘇生措置の裏側を知れて感謝している頃だと思います。

水瀬:実は、ツアー初日は「えっ、もう次の曲に行っちゃうの!?」って、驚きの表情が客席にちらほらと浮かんでいたんですよ。「あっ、これはやっぱり間違えたか……」と一瞬だけ脳裏をよぎったんですけど、「メドレーにすることで、1コーラスだけでも届けることができたんです!」と思いつつ、その経緯が伝わるのはもう少し先の未来のこと。とはいえ、それ以降の公演ではみんなの方が対メドレー用に気持ちを作り込んできてくれたおかげで、ファイナルでは安心して歌い上げることができました。



――私自身、大好きな「glow」を少しでも浴びれて、救われた気持ちになったのをよく覚えています。それにしても、メドレーって歌唱時間が長いので、マラソンのような体力を使いませんでしたか?

水瀬:楽しかったのでもう全然! 戦隊モノとかでよく、ロボットが最終形態に変わるとき、車や飛行機それぞれが四肢のパーツを担うじゃないですか。


――はい。

水瀬:なんか「超合体!」みたいな。めっちゃ強くて、なんか最強で、ここだけにしかない、『Travel Record』バージョンの最強編成をこの4曲がなしていて、「もう、めっちゃかっこいいぞ、君たち!」って思いながら歌っていましたね。


――解説の熱量がものすごい。ちなみに、右腕パーツを担う楽曲を選ぶとしたら?

水瀬:「フラーグム」かな。日替わり曲なので映像収録はないですが、その対になる「heart bookmark」もそう。最近のリリース曲なので、ぜひ頑張ってほしい。


――「heart bookmark」の方も聴きたかったのが本音です。

水瀬:いや〜、本当にそうなんですよ。でも「この曲を聴きたかった!」というのがまだまだある10周年を迎えられたのが本当にありがたい話で。私自身も歌いたい曲、まだまだたくさんあるし、それがきっと“NEXT DECADE”で表現されていくはずなので、またライブに来てくださいね!





水瀬いのり『Travel Record』全曲試聴動画


――もちろんです。ところで、今回の披露曲のなかで、横浜アリーナの中心で歌っていて最も気持ちよかったのはなんですか?

水瀬:うわぁ、どれだろう……。あっ、でも意外なのかな? 「スクラップアート」でした。


――たしかに意外でした。

水瀬:あの曲の“主導権を握った感”は桁違い。横浜アリーナが、我のなすままになる瞬間があるんですよ。私のライブって、みんなと気持ちを交換する“らしさ”があると思っている一方、それとは真反対に、みんながちょいワルになる雰囲気というか。新しい自分を見られる感覚があるし、これは私がMCでどんなに喋ってもなれない自分なんです。


――新しい自分になりたいんですか?

水瀬:というより、「スクラップアート」みたいにカッコいい曲にもっと挑戦してみたいです。この曲は近未来感というか、デジタルっぽさもありながら歌詞は泥臭くて、無骨で。表現が難しいんですよね。ライブで歌うときも照明は暗くて、私の表情も笑っているように見えれば、悲しそうにも見える。それで最後は答えを示さず、「あれってなんだったの?」みたいにモヤモヤを残す。私自身、考察しがいのあるステージを作るのが好きだし、それってアーティストじゃないとできない表現だと思っていて。


――前回の取材でも、“考察オタク”の一面が発露していましたものね。Wアンコールでは“ここからはボーナスタイムで、本当に好き放題をしていく”という旨も宣言されました。個人的には、今回とは対をなすB面限定ライブ、あるいは野外ライブなども見てみたいです。

水瀬:めっちゃやりたい! もちろん、私の活動にはプロデューサーもいますので、全てが採用されるわけではないものの、少しずつ形にしていく気持ちをちゃんと持っていますよ。それにやはり、この5年間はコロナ禍で実現できなかったことを取り戻す期間だったので、11年目以降はめちゃくちゃ自由に、前例のないことに次々とチャレンジしていきたい……と、ここに記します。


――記してくださいました(笑)。ちなみに当時、本ライブのレポートも執筆したのですが、そこに「急にライブ演出にサンバを取り入れるでも、なぜかテクノ4時間セットを組むでも」と私も記しておりまして。実現性としてはどうでしょう?(参考:水瀬いのり、10年間の歩みを刻んだ集大成ライブ「ちゃんと歩き続けた自分を褒めてあげたいです」

水瀬:あはははっ、サンバかー!


――どうですか、テクノ4時間セットとか。

水瀬:あの、その「テクノ4時間セット」ってなんですか? そういう言葉があるんですか?(笑)


――いえ、特には……。

水瀬:“僕が作ったやつ”ですか?


――あっ、はい。勝手にすいません……。

水瀬:ビックリした、なんか“マシマシ”みたいな音楽用語があるのかと思いました(笑)。


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「日常のなかにライブがあったって言えるのかも」

――このあたりで、本ツアーの総括に入って参りましょう。ステージ内外と問わず、ツアー期間中に最もブチ上がった瞬間は?

水瀬:北海道公演でのライブを終えて、いのりバンドと深夜2時に締めパフェを食べたこと! 青春すぎて、意味もなく泣けそうでした。


――アツいエピソードですね。

水瀬:入ったお店が2階建てだったんですけど、屋根裏部屋みたいな隠れ家感もあって。しかも夜も深くて貸切状態。みんなでパフェをつつきながら「そっちも食べてみたいー!」とか盛り上がり、そこにいたのはもう家族、仲間……。『ONE PIECE』になった気分で「私もう、ルフィじゃん」ってなりました。



――先ほどオープニング映像で刺していた旗が、急に海賊船の意味合いを帯びてきました。

水瀬:間違いない(笑)。みんな違ってみんないいけど、その“みんな”が私という同じ旗のもとに集まってくれて。にゃんちー(若森さちこ/Per.)に聞かれた「歌と演技の声で何か違いはあるの?」なんて質問に、なんの照れもなく熱く語れる自分がいたり、「このアプリゲームにいのりちゃんのキャラがいてね。今度、サイン色紙のキャンペーンに応募しようかなー?」みたいな冗談にも「サイン、全然今書くよー!」とか言ってみちゃったり。


――なんとも微笑ましい。

水瀬:このプロジェクトを全員一丸で楽しんでいるんだと感じられる瞬間こそ、「水瀬いのりが水瀬いのりでいてよかった」って思えるんですよね。これがもう、私が歌を続けてきた意味なのかもしれないです。


――誰も船を降りない、と。

水瀬:大人になってからこんなに仲間が増えるなんて、学生時代は思ってもみなかった。今はちょうど季節的にも春で、卒業や入学シーズン。これを読んでくださっているみなさんも、生活が変わる時期だと思います。「私が証明です」とまでは言わないですが、人は変われるし、大人ってすっごく楽しい。そんな様子、そしてこの旅の軌跡を、メイキング映像などからも感じてもらいたいです。


――水瀬さんはすごく変化していますよ。現に、ツアーを終えて久しぶりにお会いして感じていました。なんかちょっとだけ、以前よりも輝いてますもん。

水瀬:あれ、本当ですか?


――本当です。

水瀬:とってつけてないですよね?


――とってつけてないです。

水瀬:よかったよかった。


――実際どうなんでしょう。10周年イヤーを終えると、これまで以上にごはんを美味しく感じられるとかは?

水瀬:いや、10周年イヤー中も、ごはんはずっと美味しかったですよ(笑)。



――ツアーファイナル当日も、帰宅後に夕食を食べ、お風呂に入ったことかと思います。私がもし水瀬さんなら、たっかい入浴剤とか使ってしまいそうですが。

水瀬:翌日がお休みだったので気持ち的には羽を伸ばしつつ、遅めの時間帯に普通のお風呂に入りました。


――夕食に、Uber Eatsで頼めるいちばん高いごはんを配達したとかは?

水瀬:あの日の夕食は、会場で少し食べていたものと、封印していたカップ麺だけ。それこそ日常でしたよ。むしろ、日常よりも堕落していた日常を過ごしたかもしれないです。


――そんな……。なにか特別なエピソードを聞きたいところでした。

水瀬:それでいうと、私はすぐに会場を出られなかったんですけど、ライブに来てくれていた大西沙織がごはん屋さんにいると聞いて、「えっ、ちょっと凸っていい?」と連絡してみて。ただ残念なことに、そのお店はもうラストオーダーが終わっていたんです。


――ソウルメイトの大西さんですね。

水瀬:ライブには私の両親も来てくれていたんですけど、そちらも外食をしていたので、実家にも私のごはんはなく。なので急遽、私の家に沙織を呼んで、彼女に見守られながらカップ麺を啜りました。お互いに「ライブのこと、まだ話したいよね!」って言って、ひとしきり語り終えてから、アイソレーションの練習を鏡に向かってやってみて。「あれ、できないな……」みたいな変な感じになった後、沙織は深夜3時すぎに帰っていきました。


――これもこれで青春模様です。

水瀬:沙織もライブの感想をたくさん持ってきてくれて、あっという間に時間が溶けていきました。そういう意味では日常のなかにライブがあったと言えるのかもな。もちろんライブ自体は特別なもの。でも、くたびれて寝てしまうはずのパワーを使った後なのに、集まってくれたみんなから、“まだまだまだ”起きていたいと思える高揚感をもらうことができたことがすごく嬉しい。それに、我ながら頼もしくなったものだなって、自分で自分を誇らしく思えます!


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