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<インタビュー>チャートは悪循環を断ち切れるか――トーハン近藤敏貴会長が語る出版の現在地【WITH BOOKS】

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 ビルボードジャパンが、2025年11月よりスタートした総合書籍チャート“Billboard JAPAN Book Charts”。本チャートは紙の書籍(書店/EC)と電子書籍、サブスクリプション、図書館での貸し出しなどを合算した総合ブックチャートだ。本シリーズでは、アーティストや作家、書籍業界関係者へチャートへの期待をインタビュー。今回は、株式会社トーハンの会長であり、一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)の理事長も務める近藤敏貴氏に、出版業界の現状や課題、そしてチャートが果たすべき役割について話を聞いた。(Interview & Text:高嶋直子 / Photo:板場 俊)

本を読まないから書店が減っていくのか、書店が減るから本を読まないのか

――先日、出版科学研究所が紙と電子を合算した出版市場の推定販売金額を発表し、4年連続で減少、紙に関しては9,647億円で1兆円を割り込んだことが大きく報じられました。どのような課題がありますか。

近藤敏貴:先日、フランスに行って出版文化について学ぶ機会があったのですが、国が出版産業を文化政策として手厚く支援している様子を肌で感じました。韓国や台湾、中国でも様々な支援が行われている中、残念ですが日本は非常に遅れています。顕著な例が、書籍は消費税等の軽減税率制度の対象外であること。先進国において、そのような国は他にないのではないでしょうか。また韓国には韓国出版文化産業振興院、フランスには文化省といったように、それぞれ出版を管轄し統計をとって政策に繋げる政府組織がありますが、日本にはありません。その点においても諸外国と比べて遅れを感じます。


今、日本の市町村のうち約28%には書店がありません。その地域に住む人は、リアルな本と出会い、手にする機会がほとんどないということ。とても恐ろしいことですよね。書店が減少している理由の一つには、利益率の低さが挙げられています。もちろん売上全体も減っていますが、そもそも書物の利益率が低いので、家賃や人件費なども上がる中、経営を維持するだけの収益も立てられない。本を読まないから書店が減っていくのか、書店が減るから本を読まないのか…。両方に原因があると思いますが、今の日本はその悪循環が続いています。


――解決策はあるのでしょうか。

近藤:フランスやドイツ、アメリカなどの状況を見ていると、中~大規模の書店は日本と同じく減少している一方、独立系書店が増えてきています。ですので、我々も小型書店の開業をサポートする少額取次サービス『HONYAL』を立ち上げました。初期費用をはじめとした取引のハードルを引き下げたことにより、リリースから約1年半で開店予定も含め全国に約80店、書店を増やすことができました。まずは書店を再び増やすための支援を行うことで、業界の活性化に繋がると思っています。



――我々は2025年11月に総合書籍チャートを立ち上げました。チャートが出版業界の活性化に貢献できる可能性については、どのように感じますか。

近藤:我々、出版業界は音楽業界をベンチマークにすることがよくあります。最近ですと、昨年開催された【Music Awards JAPAN】のような業界団体の連携は非常に刺激を受けました。文化庁も音楽業界の取り組みは評価しているようですね。出版業界でもビルボードのチャートが、一つのきっかけになれば良いなとも思っています。


実際のチャートを見てみると、コミックが上位を占めつつ、宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』や朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』といった小説もトップ10内に入ってきていて興味深いですね。あとは、村田沙耶香『コンビニ人間』も上位にチャートインしていたり、新刊一色とも限らない。日頃から本を読まない人も、このチャートを通じて「こういうものが流行っているんだったら、読んでみようかな」と感じ、書籍の売上に繋がることに期待をしています。


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コミック以外の翻訳率は、諸外国と比べてとても低い

――我々は、Book Chart Insightというサービスで、各指標(店舗/EC/電子/サブスク/SNS)別の順位やポイントを公開しています。各指標別に並べ替えもできるのですが、SNSでソートすると小説が上位を占めていました。売上はコミックが多いですが、内容について語られているのは小説であるという点は非常に興味深かったです。またコミックは新刊が人気ですが、小説は平成の作品の人気が根強いです。ただ実際に書店へ足を運んでみると小説も含めて新しい作品が売上のメインを占めており、チャートとの乖離を感じます。

近藤:トレンドの移り変わりは非常に早いので今後、ビルボードのチャートの影響力が高まると、多様な作品への対応が必要になってくるでしょうね。せっかくチャートで1位になっても、在庫がなかったら読めませんから。先日、デジタルショートラン(DSR)によって、少部数を短期間で印刷して届ける仕組みを拡大するべく、業界団体で共同宣言を発表しました。日本は今、安価に大部数を印刷できるオフセット印刷が主流ですが、デジタル印刷の割合を増やすことによって、絶版や品切れを減らし、よりスピーディーな供給が可能になるでしょう。
昭和以前の作品などに関しては、当社が権利を買い取って制作するというやり方もあると思っています。書店側からオーダーがきたら、すぐに提供できるようなスキームにしていかないと、読者の皆さんの多様なニーズには応えられません。



――すぐ読むことができるという点では、電子書籍の市場は成長を続けています。どのような可能性が考えられますか。

近藤:我々の事業は紙書籍がメインではありますが、読者の裾野を広げ、出版物をアクセシブルにするためにも、共存していくべきだと思っています。我々の筆頭株主は電子取次であるメディアドゥですし、一緒にやっているビジネスもあります。
現在、電子書籍で人気のあるのはコミックで、それらが映像化され世界中に広がっています。非常に期待ができる分野だと思いますが、一方でコミック以外の翻訳率は、諸外国と比べてとても低いという課題も存在します。出版業界では現在、日本における【国際ブックフェア】の開催を復活させようと動いています。先日、コンテンツ産業を輸出するための様々な政府支援が発表されましたし、2025年末には活字文化グローバル展開協議会も立ち上がりました。これを追い風に取り組みを加速していきたいと考えています。


――我々も、海外で売れている本を可視化した書籍のグローバルチャートにも取り組んでいく予定です。音楽と書籍の両方のチャートを発表することで、様々な作品をシームレスに楽しんでいただけるきっかけを提案していきたいと思っています。

近藤:そうですね。我々も、面白くて新しい作品が生まれ、それを世界に遍く届けられるような環境づくりに、取り組んでいきたいと思っています。


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