Special
<コラム>Uruが響かせる、春が運ぶ“出会いの奇跡”――新曲「春 ~Destiny~」で出会える彼女の新たな表現
Text:森朋之
シンガー・ソングライターのUruが、3月および4月に2か月連続でデジタル・シングル「春 ~Destiny~」「フィラメント」をリリースする。この2曲から伝わってくるのは“Uruの音楽の世界が豊かに広がり続けている”という確かな手ごたえだ。
昨年2月にリリースしたシングル「アンビバレント」が、TVアニメ『薬屋のひとりごと』の第2期オープニング・テーマに起用。5月には日本赤十字社新CMソングとして「夜が明けるまで」がオンエアされ、メジャーデビュー8周年記念日である2024年6月15日には、過去3つのアルバム『モノクローム』『オリオンブルー』『コントラスト』のCD初回限定盤に付属のカバー盤を全曲網羅したコンプリート・エディションをデジタル・リリースしたUru。“うるう日”の2月29日にYouTubeで公開されたスタジオライブ『Uru Premium Studio Live ~Uru-u Year 2024~』では宗本康平(Pf.)、金原千恵子ストリングスとともに豊かなボーカル表現を響かせ、音楽ファンの大きな注目を集めた。
Uru Premium Studio Live 〜Uru-u Year 2024〜
そして2025年春、Uruから新たな楽曲が届けられた。3月18日にデジタル・リリースされた「春 ~Destiny~」(作詞・作曲:Uru/編曲:小林武史)は、『キリン 午後の紅茶 おいしい無糖』新CMソングとして、すでにオンエアされている楽曲。この季節にぴったりのポップチューンに仕上がっている。
「春 ~Destiny~」は、鮮やかなドラムのフィルに導かれ、爽やかなイントロが広がるアップテンポの楽曲。まず印象に残るのは、起伏に富んだメロディライン。心地よい解放感、切ない感情の揺れを表現した旋律は、春の空気感ともしっかりとつながっていると思う。
タイトル通り、運命をテーマにした歌詞も素晴らしい。言うまでもなく春は、新しい出会いのシーズン。期待と不安のなかで、初めての場所(学校、職場など)へと足を踏み入れるときの繊細なエモーションをUruは、抒情豊かな表現で描き出しているのだ。
キリン 午後の紅茶 「春の午後の出会い」篇
特に心に残るのは〈ねえ、僕ら出逢う前は/互いに違う世界を生きていて〉から始まるDメロのリリック。それまではまったく知らなかった人と出会い、会話を交わし、少しずつ距離が縮まる。そしていつの頃からか、自分の日常や人生になくてはならない大切な存在になる。ずっと仲良くしている人のことをふと見つめ直して(または思い返して)、どうして一緒にいるんだろう?と不思議な気持ちになる――そんな経験をしたことがある人も多いだろう。そう、「春 ~Destiny~」は10代の若い人たちだけに向けられた楽曲ではない。出会いや別れを体験してきたすべての人の思い出と重なり、心地よい感情の揺れへと誘ってくれるはずだ。
この曲の制作に対して彼女は、こんなコメントを発表している。
「実は昔、別れや環境が変わる春という季節が少し苦手でした。
歳月を経て、春の内向きさだけでなく、違う世界で生きてきた者同士が交わる、出会いの奇跡を感じるようになりました。
春は環境が変わる方も多いと思いますが、そんな誰かをそっと応援できるような曲になれば、と思って作りました」
このコメントを読めば、「春 ~Destiny~」がUru自身の“春との距離感”に裏打ちされていることがわかるはず。CMをきっかけに制作された楽曲ではあるが、この曲にはシンガー・ソングライターとしての彼女の意志やスタンスが明確に示されていると言っていい。
日本を代表するプロデューサー、小林武史によるアレンジにもぜひ注目してほしい。華やかなオープニング、80年代のフュージョンを想起させるシンセ、ラテンのフレイバーを感じさせるピアノのフレーズ、そして、全体を包み込む流麗なストリングス。Uruのメロディを際立たせる編曲、そして、高い音楽性と独創的なアイデアを内包したサウンドメイクは流石のひと言。「あなたがいることで」(ドラマ『テセウスの船』主題歌)、「それを愛と呼ぶなら」(ドラマ『マイファミリー』主題歌)などでもタッグを組んできた両者。Uru×小林武史のケミストリーは、この曲でさらに深みを増しているようだ。
さらに特筆すべきは、Uruのボーカリゼーション。軽やかなリズム、感情の機微とリンクした旋律を生き生きと描き出す歌声こそが、この楽曲の軸であることはまちがいない。爽やかさ、憂い、明るさ、切なさといった、相反するエモーションを同時に感じさせてくれる彼女のボーカルはまさに唯一無二だ。
大学のキャンパスを舞台に、さまざまな出会いの瞬間を映し出したMVも話題を集めている。バラードの印象もあるUruだが、この曲のようなアップナンバーも彼女の魅力。「春 ~Destiny~」「アンビバレント」をはじめ、“Uruのアップテンポ楽曲”を集めたプレイリストも公開されているので、こちらもぜひチェックしてほしい。
春 ~Destiny~ / Uru
また、4月4日にはデジタル・シングル「フィラメント」がリリースされる。映画『おいしくて泣くとき』主題歌として制作されたこの曲は、リスナーの涙腺を刺激し、深い感動へと導いてくれるバラードナンバー。Uruの真骨頂と呼ぶべき名曲だ。爽やかな心地よさをまとったアップチューン「春 ~Destiny~」、切なさを色濃くにじませるバラードナンバー「フィラメント」。この2曲は、Uruの多彩な音楽性をさらに多くのリスナーに浸透させることになるはずだ。
リリース情報
関連リンク
関連商品

