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<インタビュー>今年25周年の平野綾、表現者として歩み続けた歴史/4年ぶりのビルボードライブ公演を語る

インタビューバナー

 平野綾が2019年以来4年ぶり、自身2度目のビルボードライブ公演を開催する。子役時代からキャリアを築き、声優としては『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『DEATH NOTE』など様々なアニメ作品に出演、近年はミュージカルやドラマで活躍しており、ジャンルを越えた表現者として大きな存在感を放っている平野。今回のビルボードライブ公演では、そんな多彩なバックグラウンドを持つ平野ならではのセットリストが用意されるとのこと。子役としての活動開始から今年で25周年。その進化の歴史と、7月に控えるビルボードライブ公演について、話を訊いた。(Interview & Text Takuto Ueda)

25年間のキャリアを振り返って

――声優や音楽はもちろん、ミュージカルや映画、ドラマ出演など様々な表現の場を持っている平野さんですが、まずはこうした幅広い活動をするようになった経緯を教えてください。

平野綾:キャリアの始まりは子役なんですけど、ドラマに初めて役付きで出演したとき、同時に主題歌も歌ったんです。そのドラマにはアニメパートがあったりして、その頃からすでに幅広いジャンルのお仕事に携わらせていただいていたのは大きいと思います。もともとミュージカルがやりたくて児童劇団に入ったんですけど、その頃から何かに特化するわけではなく、歌もダンスも演技も全て満遍なくレッスンしていました。


――とはいえ、産みの苦しみは毎回付きまとったと思います。その活動のモチベーション源は?

平野:いろんなジャンルのお仕事をさせていただくとき、毎回いい意味で“よその人”と思われがちで。人によって“舞台の人”、“声優さん”、“テレビの人”と持たれるイメージが様々なんです。はじめましての環境で、それが嫌というわけではなく「もっと知ってもらわなきゃいけない」とエンジンがかかるんですよ。やっぱり目立った活動の印象が強いので、だったら新しいお仕事のジャンルでも評価してもらえるよう頑張ろうって。そういう気持ちがモチベーションになっているかもしれないです。


――常にチャレンジャーでいたい?

平野:もちろん初めて挑戦することに怖さはあるけど、それでやめようとは思わない。とりあえずやってみようとするし、ただやるだけで結果が出なかったら意味がないので、無鉄砲にならずちゃんと努力して、自信を持ってみなさんにお見せできるようなレベルまで頑張るのは当たり前だと思っています。


――これまでを振り返って、特に挑戦だったと思うお仕事を挙げるとしたら?

平野:今につながっているという意味ではやはり、先ほどお話しした子役時代のドラマだと思います。監督の三池崇史さんに「声が面白いね」と言っていただけなかったらアニメの仕事に挑戦していなかったし、主題歌オーディションで選んでくださった作曲の後藤次利さんと出会わなければのちの歌手デビューもありませんでした。今の私がいるのはそのときの経験があったからだと思っています。


――平野さんといえば、やはり『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒ役が大きな転機になったかと思います。一方で、アニメ放送が開始した2006年には1stシングル『Breakthrough』で歌手デビューも果たしました。ソロ活動と並行してキャラソンなどを歌う機会も多かったと思いますが、ご自身の中で“平野綾としてのシンガー像”が固まってきたタイミングはいつ頃でしょうか?

平野:やっぱり『涼宮ハルヒの憂鬱』の印象ってすごく強いと思うし、平野綾とは切っても切り離せない役だったので、当時は皆さんが私を見ているのかハルヒを見ているのか分からないことが多かったんですよね。なので、ソロ名義の楽曲もハルヒのイメージに寄ったりして。ただ、当時からパンクやロックは好きだったし、高校生のときにはギターを買って、流行っていたアヴリル・ラヴィーンを弾き語りしていたので、自分の中の音楽とハルヒのイメージが合致してできあがっていったような感じです。


――2008年にリリースされた1stアルバムのタイトルは『RIOT GIRL』。平野さん自身が好きだったパンクやロックの精神性でもあり、破天荒でパワフルなハルヒのイメージとも重なりますね。

平野:『涼宮ハルヒの憂鬱』に“ライブアライブ”という回があって、ハルヒがピンチヒッターとして文化祭ライブにバンドで出るというお話なんですけど、そこで歌った楽曲「God knows...」と「Lost my music」が私の代表曲になりました。なので、そのイメージをソロ名義にも活かせないかという話になって、ハッピーなパンク楽曲として作っていただいたのが3rdシングル表題曲「明日のプリズム」だったんです。でも、まだアイドル寄りというか、可愛らしさが強く出ていた曲で、もっと振り切っていいんじゃないかと。それで4thシングル『LOVE★GUN』からは自己プロデュースのスタイルになって、楽曲制作にも立ち会わせていただくようになりました。


――声優としての代表作が平野さん自身のクリエイティビティ形成のきっかけにもなっている。

平野:『LOVE★GUN』からは作詞もするようになりました。ファンの方も私が何を伝えたいか、自分の言葉で届けてくれるのが嬉しいと言ってくださって。実はアニメ・タイアップ曲が少ないので、平野綾楽曲っぽさを伝えやすく、自分のイメージを固められたんだなと思います。


――様々な分野での活動が互いに影響しあっている感覚ってあります?

平野:アニメと音楽は密接で。キャラソンもありますし、常にどこかで音楽のことを考えていたというか。同時に、それらの楽曲との違いを出しつつ、平野楽曲らしさと、キャラソンで“キャラクターで歌う”ということの難しさを知りました。だったらその技術も習得しちゃおうと思って、自分なりの訓練みたいこともしてました。


――訓練というと?

平野:演じるキャラクターそれぞれに声の音域があるじゃないですか。セリフを喋るときは簡単なんですけど、歌うときにその音域から外れた音符が出てきたときに、その役ならではの発声にしなきゃいけない。このキャラクターだったらどんな発声かな、どの音までキャラクターを損なわずキャラ声で歌えるかなと、役作りの一環として取り組んでいました。『らき☆すた』はキャラソンが多かったので、かなり鍛えられたと思います。すごく印象に残っているのは『DEATH NOTE』。原作の漫画や映画にはない歌唱シーンがあって。しかも普通の楽曲ではなく、アカペラでささやくように歌う感じで、監督のオーダーがすごく難しかったんです。でも、「これこそが芝居歌だ」と思いました。


――演じる役、キャラクターとして歌う。それってミュージカルにも通じるアプローチだったりしますよね?

平野:役として歌うということだけでも、ジャンルによってアプローチの仕方が変わりますが、声優のお仕事で培ってきたものもミュージカルで得た技術も、演じるというものがベースにあったうえでの歌という意味では通ずるものがあると思います。



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ビルボードライブ公演への想い


――2019年、平野さんが初めて開催されたビルボードライブ公演では、ミュージカルの楽曲も多く歌われていました。当時、構成はどのように決めていったか、覚えていますか?

平野:セットリストには自分の出演しているミュージカル、自分が担当している役の代表的な歌などを入れました。あとは、これから挑戦したい役の楽曲とか、まだ日本では上演されていない作品の曲もいち早くやっちゃおうという感じで。


――ミュージカルの曲をミュージカルではなく、自身のライブで歌う。それはそれで難しさがありそうですが。

平野:そうですね。衣装やメイクも違うし、芝居をしてきたなかの歌ではないので、演じているときと同じテンションで歌うと、オーバーな表現になってしまいがちで、その加減がすごく難しいです。もちろん芝居歌として歌うんですけど、単純に楽曲として聴いてほしかったりもするので、いつも歌い手としてどう届けるかを考えて臨んでいます。


――会場の規模感も違いますもんね。ビルボードライブは300人キャパシティ。

平野:劇場とは違う空間の作り方が難しくて。大きな劇場で歌っている曲をあの規模感にぐっと凝縮すると、届け方が全然違う。そこはすごく勉強になった部分でした。いい意味で仰々しくしないというか、より一層音楽に寄り添って、自分にフィットさせるように歌う感じ。


――それから4年ぶり、2度目のビルボードライブ公演が控えています。どんなステージになりそうですか?

平野:前回のビルボードライブ公演以降、一度もワンマンはやっていなくて。おかげさまで前回のライブがすごく好評だったので、同じ曲をセットリストに入れてもいいんじゃないかという案もあったけど、あれもやりたい、これもやりたいと選曲していたら、初めて歌う曲ばかりになっちゃいました(笑)。


――やはりミュージカルの曲?

平野:それもありますし、今回は25周年ライブということで、歌謡曲からアニソンまで、平野綾のこれまでの道のりを感じていただけるセットリストになっています。昼夜で変える曲もありますよ。


――前回よりも幅広い選曲になりそうですね。

平野:そうですね。もちろん平野綾の楽曲もやるので、本当にごちゃ混ぜです。4年ぶりなので、歌いたい曲も4年分増えているんですよ。どれを削るかという話し合いでした。最終的にきれいにまとまった感じはするけど、今でもどんどん歌いたい曲が出てきちゃって。


――あははは。それは本番直前まで続いちゃうんじゃないですか?

平野:いや、そうなんですよね(笑)。前回のライブでウィーン・ミュージカル・メドレーをやったんですけど、私が関わらせていただいた作品が多かったということもありつつ、やっぱり歌いたい曲が多かったんですよ。だったらメドレーにしちゃえって。そしたら7分強の大作になっちゃって。バンマス大変だったと思います。


――ビルボードライブはステージと客席の近さも特徴です。前回を振り返って、このあたりの印象は?

平野:涙と鼻水の処理が大変でした(笑)。自分が演じた役の楽曲だと、歌っているときに自然と役に入り込んでしまうので、涙が出てくる楽曲もあって。お客さんが近いので、歌い終わったら後ろを向いて鼻をかむ、みたいなことがすごく多くて、復旧が大変でした。一挙手一投足を見られているのが分かるので、良い緊張感がありますよね。


――直近数年間はコロナ禍もあり、直に歌を届けられる機会の感動は前回以上にありそうです。

平野:もちろん歌をうたうんですけど、聴いてくださる皆さんに語りかけるような感じで、すごく身近なコンサートになればいいなと思っています。歌唱もその瞬間の雰囲気で変わると思うので、会場全体で空間を作っていけたらうれしいです。


――平野さん自身の活動に関して、今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?

平野:今年は25周年なのでいろんな音楽を聴いていただける機会を作れたらいいなって。あと、コロナ禍のときに作曲もしていたので、それもうまくかたちにできたらいいなと思っています。


――では最後に、公演に来てくれるお客さんにメッセージを。

平野:もしかしたら「アニメの楽曲を歌わないなら行かなくていいか」と思う方もいるかもしれないけど、今の平野綾を知っていただく機会として、ぜひ足を運んでいただけたらうれしいなと思います。前回のビルボードライブ公演では、終わったあとの達成感がすごくあったので、今回も皆さんの期待に応えられるよう、4年間で成長した私を見ていただければと思います。



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