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<インタビュー>「わかったこと」と「わからないこと」を経て――SOMETIME'Sが『Hope EP』で見つけた希望



インタビューバナー

SOTA(Vo.)とTAKKI(Gt.)による音楽ユニット=SOMETIME'Sが『Hope EP』を12月7日にリリースした。本作には、年内にデジタルリリースされた3曲に、ゴスペルテイストの多幸感に溢れたリードトラック「Hope」、80'sにとことん振り切った「Drug cure」の新曲2曲を加えた計5曲が収録されている。
2021年8月に1stフルアルバム『CIRCLE & CIRCUS』でデビューしてから1年。試行錯誤を繰り返して、見えてきた“希望”とは。EPを完成させたばかりの2人に話を訊いた。(Interview:天野史彬)

いち人間としての部分を切り取った「Hope」

――新作EP『Hope EP』は2022年を総括する作品とも言えると思いますが、SOMETIME’Sにとって2022年はどのような1年でしたか?

SOTA:今年でメジャーデビューから1年経ったんですけど、IRORI Recordsと一緒にやってきた期間を振り返りながら、わかったこととわからないこと、できるようになったこととできないことが、なんとなく見えてきた感じがあって。そこでトライ&エラーを繰り返した1年という感じですね、個人的には。

――「わかったこととわからないこと」というのは?

SOTA:音楽との向き合い方というか。僕らは二人組なので、アレンジャーの藤田(道哉)含めて、サポートミュージシャンたちの手を借りながら制作を進めていくんですけど、音楽を一緒に作る人間との向き合い方は、1歩ずつどんどんと踏み込んでいけている感覚はあるんです。でも、自分たちはいろいろやりたい二人組だし、「フレキシブルに動くことができるように」という意味でも二人組でいるんですけど、「いろいろやりたい」の中でも「本当に今一番やりたいことはなんなのか?」ということが、よくわからなくなっていく感覚があって。「こういう曲がやりたいのかな?」とか、「こういうことをやればいいのかな?」とか……そういう部分は、今までメンバーやサポートの人たちに頼っていた部分が往々にしてあったんだなと思うんです。

――なるほど。

SOTA:「やりたいことがない」わけじゃなくて、全部やりたい中で、本当に自分の興味がどこに向いているかわからないという感じがあったんですよね。

――TAKKIさんはどうですか?

TAKKI:制作や曲作りに関しては、プレッシャーがかかる1年だったと思います。去年1年間はやみくもにやることを許された1年だったと思うんですよ。自分たちがインディーズ時代に出した作品をアップデートしたり、『CIRCLE & CIRCUS』も、やりたいことを詰め込んで作ることができた。でも、今年はそういう作品たちが比較対象にあったうえで、過去の自分たちがやっていないことを探したり、やりたいことを新たに探していかなきゃいけなくて。「あの曲に似ちゃいけない」とか、「こういう曲調はもう作った」とか、そういうことも頭をよぎりながら制作していった。やみくもにやることが許されない1年だったんですよね。もちろん、それが自分たちの成長に繋がったとも思いますけどね。配信シングルで出した「Somebody」も、「Clown」も、「夏のMagic」も、それぞれ色のある曲を作ることができたと思うし。

「夏のMagic」ライブ映像

――産みの苦しみもありましたか?

TAKKI:デモはほとんどSOTAから出てくるので、僕自身はあまり産みの苦しみは感じていないですけど、アレンジに関しては今までよりも密にアレンジャーと意見交換したと思います。今年はツーマンイベントをたくさんやらせてもらいましたけど、ライブで肌で感じるリアクションが、今までの自分たちにとっては大きかったんです。でもIRORI Recordsに入ってからは再生回数みたいな数字とか、自分たちの肌感覚とは違うところでリアクションが上がってくるようになって。そういうことも自分たちには初めてのことだったし、そこがあまりリアルに感じることができない感覚も強くあって。リスナーが求めているSOMETIM’S像がどういうものなのか、自分たちにどんな武器があるのか、わからなくなってしまう状態だったというか。「俺らのやりたいことってなんなんだろう?」って、内々に向かっていく期間が結構長かったんです。そういうところが、アレンジの苦しみにも繋がっていったような気がします。

SOTA:産みの苦しみでいうと、僕が作ったデモをTAKKIに持っていって指針を決めてもらうことが多いんですけど、去年までだと、1コーラスぐらいしかデモを作っていなくても自分の中で最終的なゴールが見えていることがほとんどだったんです。「この曲は、こういう場所に着地してほしい」みたいなことが見えていることが多かった。でも、今年作った楽曲に関してはそれが自分でもわからないことが多くて。TAKKIに「これがいいんじゃない?」と言ってもらったものの、そこから「この曲のどこを伸ばしていけばいいのかわからない」となってしまう……そういうことが多かった1年でした。

――先ほどおっしゃっていた「自分の興味がどこにあるのかわからない」という話に繋がることですよね。そんな中で、「Hope」という希望のあるタイトルの曲がEPの表題曲として年末に届けられるわけですが、この曲はどのようにして生まれたんですか?

SOTA:「Hope」は本当に自分と向き合った曲なんですけど……このEPで、自分がデモを出した「Somebody」や「Clown」に比べても、一番ゴールが見えなかった曲かもしれないです。目の前に広がる霧の密度がすごかった。「なんとなくブラスが鳴っていてほしい」とか、「音数がどんどんと増えていってほしい」みたいなイメージはあったんだけど、最初は本当にゴールが見えなくて。プリプロのためにスタジオをとってもらって、サックスの永田こーせーさんと揉んだりしながら、全体像を作っていきました。

「Hope」MV

――TAKKIさんは、SOTAさんが「Hope」を作るうえで苦しんでいることは感じていたんですか?

TAKKI:「Hope」に関しては相当悩んでいるなって感じてましたね。今までのSOTAから出てくるデモに対しては、「こういう旋律で、こういうブラスが入って……」みたいな、全体的なアレンジが結構具体的に見えたうえで「これで行こう」と僕から言うことが多かったんですけど、「Hope」は「どうとでもなるな」っていう感覚があって。デモの完成度が今までも曲に比べても骨組みしかない状態だったんです。でも、霧がかっているとはいえ、SOTAの中にイメージはあるんだろうなと感じたので、あまり僕から手を出さないように気を付けましたね。SOTAが言語化するまで待っていたというか。

――TAKKIさん的にも、今までと少し違う向き合い方をした曲だったんですね。

TAKKI:そうですね。SOTAも今までと違う壁にぶつかっているんだろうなと思って。それは、今までできていたことができなくなったわけじゃなくて、今後、SOTA自身がイメージの具現化をもっとやっていかなきゃいけないフェーズに来たということなんだろうなと思ったんです。作曲家として、一人で向き合わなきゃいけないことというか。今回はチームがプリプロという機会を与えてくれたし、一旦、この曲はSOTAに任せしようかなと思いました。

――制作過程を聞くと、そこに苦しみがあったことがわかるんですけど、曲としては前を向こうとするポジティブなエネルギーに溢れた曲ですよね。歌詞でも〈Don’t be pessimistic〉と歌われているし。この曲が持つメッセージ性というのは、SOTAさん的にはどういったところから生まれたものなんですか?

SOTA:めちゃくちゃ個人的なことなんですけど、今年の夏に子供が生まれて。制作の部屋のすぐそこに子供が寝ている環境での曲作りだったので、「大きい愛」みたいなイメージもあってできた曲でもありました。ポジティブなコードワーク感のブラスと、壮大なコーラスみたいなイメージがあったので、自然とテーマが大きくなっていった感じですね。

――このEPは1曲目の「Somebody」が〈What I learned from mother〉というフレーズから始まって、最後の「Hope」がお子さんへの思いを歌った歌で、世代を繋いでいく思いで始まり、終わるEPですよね。

TAKKI:たしかに。でも、これはたまたまだよね?

SOTA:たまたまですね(笑)。でも、今までは歌詞を書くときに主観で書くことはあまりしてこなかったことなんですよ。僕は、どうしても自分のことを書くのがこっ恥ずかしい気持ちもあって。間口を広く持たせて、どう捉えられても自分が傷つかない立ち位置から歌詞を書くことが多かったんですけど、「Hope」は、アーティストとかも関係ない、自分のいち人間としての部分を切り取って書いた曲なので。この曲の存在は、今後の足しになっていく感じはしていて。

――今後も、こういうSOTAさんの人間的な部分が歌詞になっていく可能性はある。

SOTA:昔より作詞に対しては興味が出てきましたね。自分の原体験として、Queenを聴いたときに意味がわからなくても魂が震えたっていう感覚があるので、「大事なのはメロディだ」っていうのが頭にずっとあったんです。でも大人になるにつれて、心が落ちているときに聴いた歌詞によって奮い立つっていう経験もしてきたので。音楽だけじゃない、言葉の創作をやりたい気持ちにはなってきています。

――「Hope」はSOTAさんがご自身に向き合って作られたという意味ではすごくパーソナルな曲だと思うんですけど、でも、そういう曲がこうしてゴスペル的な要素もある楽曲になっているのがいいですよね。僕はまだ見ることができていないですが、MVもたくさんの人が参加した壮大なものみたいで。

SOTA:そうなんですよ。MVの監督が持ってきたのが、「日本人版ハッピーゴスペル」というテーマで。エキストラの方も含めて30人くらいの方が出てくれました。老若男女、いろんなキャストの方が来てくれて。自分の子供の大して年齢の変わらないくらいの子がいたり、お年寄りもいたり、そういう方々が一緒になって作品を作ってくれたことで、僕ら自身としても曲の世界観の解像度が高まった気がして。「こういうことなんだなぁ」って。

TAKKI:このインタビューも最初から暗い話をしているし(苦笑)、ネガティブなこともあった2022年でしたけど、こういうゴスペルで今年を締めくくるのは、個人的には心地がいいです。ゴスペルとかブルースって、抑圧されたものを解放に向かわせる力があると思うし、それは僕らだけじゃなくて、コロナとかいろんなことがある今の世の中的にも大事なことだと思うから。そういうものを2022年の最後に残せたのはよかったです。

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「俺らはレアル・マドリードじゃない」

――EPの中のもう1曲の新曲「Drug cure」は、作詞がTAKKIさんで、作曲がSOTAさんと藤田さんがクレジットされていますね。

SOTA:「Drug cure」は、藤田がデモを出した曲なんです。曲名「藤田道哉」なんじゃないかっていう感じのデモで(笑)。

――藤田さんの音楽的な志向性が濃密に出ているような?

SOTA:そう、80年代のシンセオタクここにありみたいな(笑)。それをSOMETIME’Sでできるようにしようっていうところが起点にあった曲でしたね。

TAKKI:今年は藤田もだいぶ悩んでいたと思うんですよね。僕らの要求が上がったというのもあるし。……やっぱり藤田道哉っていう存在は、僕らにとってすごく特別な存在で。普通のアレンジャーとは一線を画す関わり方をしてきたんですよ。インタビューでも常々「第三のメンバー」と言ってきたし、この1年間、僕らがIRORI Recordsと歩んできたのと同じくらいの近い距離で、藤田は僕らのことを見てきた。そういう中で、藤田自身にもやりたい音楽があって。元々作家志望だったぶん、描きたい音像がしっかりある人間なので。そういう部分で生まれるストレスっていうのは……きっとあったと思う(笑)。

SOTA:そういう反動はすべて「Drug cure」に出てるね(笑)。藤田なりに俺らの要求に応えようとして努力してくれたけど、それは彼自身が100%やりたい努力ではないだろうし、その反動はすべてこの曲のデモに出ていた気がする。

TAKKI:そうだね、いざデモが出てきたらすごかった(笑)。僕らも藤田がやりたいことを優先させてあげるほどウェットな感情でもないんだけど、藤田から出てきたものは悪いものではないし、これを僕ららしく仕上げることができたらいいなと思って。それで、「どうやってデモの80年代感を今っぽいサウンドにしようかな?」と思ってレコーディングに入ったんです。「Hope」と「Drug cure」は照内(紀雄)さんにレコーディングからミックスまでしていただいているんですけど、照内さんのひと言が大きくて。変に「今っぽさ」を目指すんじゃなくて、行き切って80年代っぽい音を録ってしまって、あとはミックスでなんとかするのがトレンディかもしれないっていう。それを聞いて、「なるほど」と思ったんですよね。「逆に80年代っぽくすればするほど、今っぽくなるんですよ」という照内さんの言葉に勇気をもらいました。なので、まずは80年代っぽい音で録って、あとは照内さん任せだったんですけど、結果としていい曲になりましたね。


――今年は様々なストラグルがあった1年だったということですけど、来年からSOMETIME’Sはどうなっていくんでしょうね?

SOTA:ちょうどこの間、「来年どうしようか?」みたいな話し合いをしたんですけど、僕の中では諦めがついたというか。自分たちのやりたいことを表現するだけではダメだと思って今年1年はトレンドを追いかけてみたり、必要とされているファクターに躊躇なく手を伸ばしてみたところもあるけど、無理なものは無理なんですよね。そういうことがすごくわかった年だったと思います、2022年は。

――はい。

SOTA:終わってみれば「こんなことだったのか」っていう感じでもあるんです。最初に「トライ&エラー」と言いましたけど、このトライによって得られたことって、道端の石ころくらいのものだったのかもしれなくて。でも、その石ころを見て「こんなものだったのか」と気づくためにためには、大きなチャレンジもしなきゃいけなかった。自分たちは気づくのに時間がかかる人間だなと改めて思います。なので、来年以降は、今年1年のチャレンジで見えた部分に向き合いながら、もうちょっと正直に、音楽に向き合いたいなと思います。なんでもかんでも手を出すというよりは、自分たちに合った、自分たちの強みが生きるようなことをやっていきたいなと思いますね。

――「諦めがついた」というのは、ポジティブな意味でということですね。

SOTA:そうですね、いい意味で折り合いがついた感じがします。


――TAKKIさんはどうですか?

TAKKI:この1~2年間、活動をやってきたことで、自分の中の保険ラインが生まれた気がするんですよね。「このアレンジにすれば80点を下回ることはない」みたいなラインというか。実際に作業をしていると、そういうアレンジが頭をよぎることのほうが多いんですよ。でも、最近うちのバンマスの佐々木恵太郎や一番年長の清野雄翔と意見交換することが多くなって、彼らが言っていたことで印象に残っているのが、「自分たちは、いかに奇跡を起こすのか?をやっているんだ」っていう。

SOTA:うん。

TAKKI:実際、今年はライブを重ねながら僕自身、奇跡の起きる編成や奇跡の起こるアレンジは存在するっていうことが、見えてきた感覚があるんです。音楽で奇跡が起きるような体験って、10代や20代の頃にはたくさん経験してきたはずなんだけど、いつの間にか知らず知らずのうちに頭でっかちになって、理屈っぽく音楽を捉えていたんだなって。でも、今年は「音楽って奇跡が起きるんだな」ということに改めて気づいたので。来年はそれを忘れずにいたいです。「ここがブレるといけないんだ」ということがわかったから、それを真ん中に置いてやっていきたい。


SOTA:……今TAKKIが言った、佐々木や清野さんと喋っていたことで、僕も感じたことがあって。

――はい。

SOTA:清野さんが言っていたのは、「俺らはレアル・マドリードじゃないよ」って。「俺たちはレアルじゃないから、いつでもスーパープレイを生み出すのは無理なんだよ」とおっしゃっていて。今サポートしてもらっているミュージシャンたちって、僕が過去にバンドをやっていた頃のメンバーに比べても遥かにスキルがあるし、引き出しがあるし、僕の中では超強豪を従えているような感覚があったんです。
僕は本当にバックにレアル・マドリードがいるくらいの気持ちでいたんですよ。そのときに、「あ、この人たち、レアルじゃないんだ!」と思ったんですよね。彼らはレアルじゃなくて、アルゼンチンを倒しに行くサウジアラビアの気持ちで音楽をやっていた。……ちょっと、サッカーの例えが多くて申し訳ないですけど(笑)。

――いやいや(笑)。でも、大事な発見ですよね。

SOTA:清野さんに、「俺は、毎回スーパープレイはできないけど、たまに大金星みたいな奇跡を起こせると思ってる」っていう話をされたときに……「それだよな!」って、めっちゃ思って。今年1年は平均点を上げることばかり考えて、本来目指さなきゃいけないところをちょっとないがしろにしていたなと思うんですよ。でも、清野さんや佐々木とディスカッションしたことで、ハッとしました。

――希望がある気付きも手に入った1年だったんですね。

SOTA:本当にそう思います。

SOMETIME’S「Hope EP」

Hope EP

2022/12/07 RELEASE
PCCA-6162 ¥ 1,650(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Somebody
  2. 02.Drug cure
  3. 03.Clown
  4. 04.夏のMagic
  5. 05.Hope

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