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<インタビュー>ドイツの歌姫LenaがTikTok大ヒットに驚きと感謝「夢を見ているかのよう」



Lenaインタビュー

 インスタグラムのリールで突如ブレイク、おしゃれ系動画のバックグラウンドに使われるなど、今年だけで3.8億回以上の再生数を突破した楽曲「life was a beach」。ダンスインフルエンサーのローカルカンピオーネの同曲を使ったTikTok動画は9月30日現在で560万回の再生を記録し、派生動画も続々登場した。

 その曲を歌っているドイツ人のシンガーソングライターのLena(レナ)が来日。2010年の【ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト】で優勝を飾って以来、本国ドイツでトップ・アーティストとして活動を繰り広げる彼女。突然の異国でのブレイクの心境などを語ってもらった。(Interview & Text: 村上ひさし)

――「life was a beach」が大ヒット中の日本でのこの状況を、どのように受け止めていますか?

Lena:言葉で言い表せないくらいとても嬉しいです。感謝しています。SNSから全てが始まって、こんな状況になるとは、今でも信じられない気分です。夢を見ているかのようで……。私の音楽を聴いて、日本の人たちが楽しんでくれて、とても嬉しいですし、私が音楽をやっているのも、まさにそのため。昨日、ローカルカンピオーネのメンバーとも初めて対面して、すごく楽しかったです。

@localcampione なんとlife was a beachを歌っている @LenaMeyerLandrut さんが来日してインターナショナルコラボレーション🌏🔥めっちゃ優しくてオーラもハンパなかった🥹たくさんお話もできて楽しかったです🧚 #lifewasabeach #lena #ローカルカンピオーネ ♬ オリジナル楽曲 - ローカルカンピオーネ🗾👑

――なぜこの曲が突然、これほど日本で大人気になったのか、ご自身ではどのように分析を?

Lena:私にもまったく分かりません。たまたまこの曲が、その時に、その場にピッタリハマったということでしょうか。成るべくして成ったというか。シングルでもなかったし、特に推し曲でもなかったのですが。

――以前からTikTokは使用されていましたか?

Lena:少しだけ、月に1~2回は投稿していました。でも私にとっては仕事の一環という感じで、プライベートでは使っていませんでした。でも、この曲のブレイクをきっかけに、「私もやらなきゃ!」と思って参戦しています。

――実はこの曲では別離が歌われているわけですが、どういう内容なのか教えていただけますか?

Lena:ええ、もちろん。楽しい曲にも深い意味合いが欲しいと思っています。この曲は失恋の歌ですが、悲しんでばかりいるわけではなく、それを受け入れている心境を歌っています。ピンクの眼鏡という表現をご存じでしょうか。ドイツでは恋に落ちて夢中な時は世界がピンク色の眼鏡を掛けているように見える、という言い方をします。つまり全てがピンク色で素敵に見える。でも、一旦関係が悪化したら、実際は全然そうじゃなかった、と気づくわけです。現実に目覚めてしまう。私にもそういう経験があります(笑)。


――“beach(ビーチ)”というのは、特別な日を指しているのですか?

Lena:ええ、美しい特別な1日です。ドイツにはあまりビーチがなくて、私が育った街もビーチからは遠くて、休暇や旅行で訪れていました。“人生がビーチ”というのは、つまり全てがパーフェクトということ。ヤシの木、砂浜、海があって、全てが完璧な状態。でも人生って常にそうではありませんよね(笑)。

――新たにクリス・ハートとのデュエット・ヴァージョンも制作されました。彼との共演はどのような経緯で?

Lena:クリスとはZoomで意気投合しました。話しているうちに一緒にデュエットしようという話になって、日本語歌詞のパートを入れたら「もっと日本の人たちにも分かってもらえるのでは?」と考えたり、母国ではない国での成功について意見を交わしたり。私たち2人は、どちらもオーディション番組の出身者という点でも共通しています。他の人にはなかなか話せないような体験もいろいろと語り合えました。

――2010年の【ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト】で優勝された直後は、まだ音楽の道だけを考えていたわけではなかったと聞きました。

Lena:アート関係の道に進みたいと、ずっと考えていました。アートを介して自己表現をしたいと思っていたので、ステージに立って演じるのか、歌うのか、描くのか、どのようなアートをクリエイトしたいのか、漠然とした状況でした。ただ自分を表現する手段が欲しいとは自覚していました。子どもの頃から家に来客があると、必ず歌やダンスを披露していました。「みんな見て、見て。みんなのために準備しました」とか言って(笑)。

――生まれながらのパフォーマーですね(笑)。

Lena:ええ、生まれながらのパフォーマーだったのかもしれません(笑)。直感に従って、自分の好きなこと、愛することをすれば間違いないと、いつも信じていました。オーディション番組に出場したのも、きっと楽しくなりそうという予感があったからです。でも良い結果が得られなくても、それはそれで仕方がないと思っていました。実際に挑戦してみたら、良い結果が得られて驚きましたが。

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9月17日【J-WAVE INSPIRE TOKYO】
Photo by Tetsuya Yamakawa

――【ユーロヴィジョン】で優勝した当時の思い出の中で、特に印象深かったのは?

Lena:多くの人から愛情を感じて感激したのを覚えています。突然みんなから応援されて、すっかり別人になったかのようでした。異なる人生を与えられたようで……。と同時に、有名になったことで苦労したのも確かです。当時の私は18歳、まだ子どもでしたから。突然全てが押し寄せて、それに浮き沈みも常に激しかったです。「本当に自分がやりたいのはこれなのか?」「これをやってハッピーなのか?」と自問自答していました。でも、自分が幸せなら、他の人も幸せにできるということに気づいてからは、これが私の使命だと感じました。よく尋ねられます。「あなたはどうしていつも、そんなに前向きなの?」と。でも私はいつもポジティブなわけではありません。前向きでいようと努力しています。そして少しでもみんなにも幸せな気分になってほしいと願っています。


――長年にわたって『The Voice Kids』やドイツ版『The Best Singers』などのオーディション番組にも積極的に関わられています。

Lena:『The Voice Kids』は『ザ・ヴォイス』のキッズ版です。子どもたちが対象なので、それほど厳しいものではなく、楽しむことを目的としています。大切なのは勝ち負けではなく、その体験です。子どもたちが歌って楽しむ、そこに重点が置かれています。一緒に時間を過ごして、ヴォーカルの指導をして、質問に答えてあげて。私自身にとっても非常に有益で興味深い体験です。

――2019年リリースの最新アルバム『Only Love, L』では、以前よりもUKやUSの現行ポップシーンを意識したサウンド作りが為されていると感じました。

Lena:嬉しいですね。きっと私自身の進化もあるのだと自負しています。デビュー当初の私は、まだアーティストではありませんでした。シンガーの中には、アーティストとして長くやっている、その中で何かのタイミングで認められる人が多いと思うのですが、私は全てを一から学ぶ必要がありました。もちろんいつも上手く行くわけではありませんが、自分で挑戦することが大切だったと思います。ポップ・ミュージックを愛するポップ・ガールとして、少しずつ前進していきたいです。


9月17日【J-WAVE INSPIRE TOKYO】
Photo by Tetsuya Yamakawa

――周囲の音楽シーンから影響を受けることも多いですか?

Lena:そうですね、常に周囲の音楽から影響を受けています。常にインスパイアされたいと思っています。音楽を聴く時、私は「このギターの音色がいい」「フレーズが最高」「メロディが素敵」といった感想を抱きます。そして私自身の解釈で、私の音楽スタイルでやってみたいと考えます。ちょうど今なら私は60年代後期から70年代初期の音楽に夢中で、インスパイアを受けています。ザ・ビートルズはもちろん、イーグルスやフリートウッド・マックなどです。特にフリートウッド・マックは、私にとって女神のような存在ですね(笑)。「ドリームス」が入っている彼らのアルバム(『噂』)は特に大好き。とってもクールで、彼らの曲を聴くと、我が家に帰ったような気分になります。

――最近ではフューチャーベースなどのエレクトロニック系サウンドも取り入れられています。

Lena:あまりDJ系には詳しくないのですが、カルヴィン・ハリスが大好きです。全てが大好きです。彼の音楽性、コラボするアーティスト、それにフックが全て素晴らしい。私は特にフックに弱いんです。いいフックを耳にすると、もう夢中になってしまって(笑)。一緒に歌って踊れるフックほど、幸せにしてくれるものはありません。気分を高揚させてくれます。カルヴィン・ハリスの音楽がまさにそうだと思います。


9月17日【J-WAVE INSPIRE TOKYO】
Photo by Tetsuya Yamakawa

――次のアルバムの準備にも取り掛かっていますか? プレッシャーを掛けたいわけではありませんが、前作からそろそろ3年……(笑)。

Lena:はい、「プレッシャーを掛けたいわけじゃないけど〜」というのは、私のマネージャーの口癖なんですよ(爆笑)。既に取り掛かっています。2023年のリリースを目指しています。フリートウッド・マックのようなカントリー風の要素も取り入れたいと考えています。もちろん私らしいポップセンスも加えるつもりです。

――最新シングル「Looking For Love」もポップですよね。

Lena:とてもポップですし、みんなに共感してもらえるのではないかと思います。耳触りの良いサウンドですが、悲しい感情も込められています。ロマンチックな恋愛を求めている曲ではなく、理解や寄り添う心を求めている曲です。SNSなどで悩むティーンエイジャー、プレッシャーで押しつぶされそうな人たち、戦争で心を痛める人たちなどにインスパイアされています。なぜ人間はお互いに優しく接することができないのでしょうか。素晴らしい時代が長く続いていましたが、ここから全てが崩壊していくような、そんな予感もあって、この曲を作りました。


――母国ドイツではファッションやライフスタイルのモデル/スポークスパーソンとしても活躍されています。将来的には音楽以外の分野にも比重を置かれるのでしょうか?

Lena:いいえ、とんでもないです、それは絶対にありません。音楽が全ての基盤ですから。音楽無しには、私は活動できないと思っています。全ては音楽に付随してきたもの。ただファッションやメイクアップが大好きですし、大きな会社と契約もしているので、いろいろとチャンスを与えてもらっています。せっかくの機会なので、大いに楽しませてもらっています。

――以前から映画の吹替えの分野でも活躍されています。同じく声を使うお仕事ですが、歌とは共通点があったり?

Lena:音楽と同様、映画の吹替えの仕事をとても愛しています。音楽の次に愛している仕事だと思います。ワクワクさせられます。例えば映画『トロールズ』の1作目と2作目では、主役ポピーの吹替えを担当させてもらいましたが、吹替えの仕事をした日は、家に帰ってからもずっとウキウキしていて、楽しくて、仕方がありませんでした(笑)。私の声と体と感情の全てを使って、そのキャラクターに成り切った時、本当に幸せを感じます。

――最後に今回日本で発見したこと、何か思い出に残りそうな体験はありましたか?

Lena:ええ、みなさん、とても礼儀正しくて親切ですよね。それに全てが綺麗で、整頓されていて、とっても素敵だと思いました。そんな日本の人々についてもっと知りたいですし、感じていること、思っていることにも興味を持っています。もちろん素晴らしい文化にも驚かされました。ドイツとはまるで違っていて、もっともっと知りたいです。日本についていろんなことを学びたいです。呼んでもらえれば、私はいつでも来日したいです。ええ、すぐにでも飛んできちゃいます(笑)。

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