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<インタビュー>3か国語を操るMeiMeiが語る、音楽活動の原動力とMIYAVIを迎えたコラボ曲



インタビュー

  現在18歳のZ世代華僑シンガー、MeiMeiは日本語、英語、中国語を話すトリリンガル。親の仕事の都合により、幼少期から各国を転々とし、居住した地域は11か所に及ぶ。様々な文化に触れていくなかで芽生えた「歌でハピネスを届けたい」という想い。それが原動力となり、Z世代らしく“インターネット上での発信”を続けた彼女は、日本に帰ってきた17歳のとき、ワーナーミュージック・ジャパンから念願のメジャー・デビューを果たした。

 2021年7月に1stシングル「FLOWER BOMB~花炸弾~」、同年9月に『赤ずきん』をモチーフとした2ndシングル「never ever」をリリース。そして2022年第1弾リリースとして届けられた3rdシングル「Strangers feat. MIYAVI」は、グローバルな活躍を続けるサムライ・ギタリスト、MIYAVIを迎えたコラボ・ナンバーとなっている。この世代を超えた共演の経緯、そこに至るまでのMeiMeiのヒストリーも含め、本人に話を訊いた。

様々な国を巡った学生時代

――MeiMeiさんがアーティストを志したきっかけから聞かせてください。

8~9歳の頃に映画『タイタニック』を観て、セリーヌ・ディオンさんが歌っている「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」を聴いて、ものすごいパワーとオーラを感じたんです。1曲だけで人を泣かせたり、感動させたりできる。そこで初めて音楽の力のすごさを知って。その数年後、14歳になった頃、8年生(中学2年生)のときかな。私はいろんな国を転々と回ってきたので、辛い思いもしていて。そこでふと歌詞を書いてみようと思って。自分の経験を土台に、歌で人を喜ばせたい、人にハピネスを届けたいなという気持ちになって、アーティストになる決心をしました。

――幼少期から日本、中国、アメリカなど、さまざまな土地で生活してきたそうですね。

はい。5歳から12歳までプロゴルファーを目指して、ゴルフをやっていたんです。生まれたのは日本の名古屋で、家の近くの保育園や小学校に通って。その後、中国の天津の小学校に転校して、短い期間ですけど広州もゴルフをやりながら回って。また日本に戻ってきて、女学院に通ったこともありました。そしてアメリカに渡って、フロリダのブレイデントンのIMGアカデミーでゴルフをやって、高校はカリフォルニアに行きました。オーランドにいたときにも何回も転校していて。カリフォルニアには2年いて、いまはコロナで日本に戻ってきて、オンライン・スクールになってますね。大体はいつも半年も経たないくらいで転校しちゃってました。





――転校が多いと友達も作りづらいですよね。

そうですね。小さい頃は携帯を持っていなかったので、やっとできた友達にさよならも言えずに学校が変わったりしてましたね。でも、大人になるにつれて携帯も持てるようになって。いまは連絡先があるので、昔よりは辛くなくなりましたし、各地に仲の良い友達が何人かいて。転校ばかりだったけど、楽しい思い出や辛い思い出、全部を含めて、いまはいい記憶になってますし、音楽にも生かせているので、素晴らしい経験だったなと思います。

――ご自身のパーソナリティーにはどんな影響を与えていますか?

強いメンタルを獲得できたと思いますね。最初は辛かったんですが、だんだん慣れてきて。全部がいい思い出になればいいという考えになって。ただ、その中では人種差別を受けることもあって。日本にいるときは「中国人だよ」と言われるし、アメリカに行くと、「こいつはアジアンだ」と差別されるし、中国人に「あいつは日本の文化に浸かってる」と陰口をされたこともあった。私にはどういう違いがあるのかがわからなかったし、9~10年生(中3から高1)のときは一番辛かったですね。

――新曲「Strangers」にも繋がる経験だと思いますが、当時のMeiMeiさんはどうやって乗り越えたんですか?

まずはどうしてそういうことを言うのかを勉強しました。差別の歴史も学んだうえで、私は自分の道を歩こうと決めて。そういうことを言う人たちとは、悲しいけれども遊ばなくてもいいって。私の周りにはわかってくれる友達もいたので、その人たちと仲良くすればいいという考えになって生きていけましたね。




――また、先ほどプロゴルファーを目指して12歳までやっていたとおしゃっていましたが……。

怪我をしてしまってやめちゃって。7年ぐらいやっていたゴルフをすぐに諦めることは難しかったですし、悔しいという思いもあれば、少しだけ気持ちが楽になる部分もあって。ずっとゴルフばかりだった人生には抵抗があったんですけど、この先の未来はどうなるのかなという不安もありましたね。

――14歳から作詞を始めていますが、ゴルフへの情熱が音楽に向かったんですか?

ゴルフをやめる前から、ヴォーカル・レッスンには行き始めていました。当時は日本でいう習い事のようなものをたくさんやっていて。その中でも音楽が一番好きで、パワーを持っていたんですね。自分でアーティストになると決心する前も、家で私が歌って、みんなが笑っているのを見ると、すごく嬉しいなと感じていましたし、小さい頃からあった種が少しずつ育っていって、14歳のときに花を咲かせて頑張ろうという気持ちになったんだと思います。


17歳で掴んだデビューのチャンス

――リスナーとしてはどんな音楽を聴いてました?

アメリカにいるときは、ラジオから流れてくるヒット・ソングが中心でした。私が最初にいたのは2014年だったので、ワンリパブリック「カウンティング・スターズ」も毎日聴いてましたし、デミ・ロヴァート「ハート・アタック」やPSY「江南スタイル」も流行ってました。個人的には、2017年に流行したエド・シーランとチャーリー・プースが好きでしたね。あとは、家族が好きなテレサ・テンやジェイ・チョウ、フェイ・ウォンなどのC-POPから、美空ひばりや長渕剛などの歌謡曲やJ-POPも家でよく流れていて。私は『ポケモン』『クレヨンしんちゃん』『ドラえもん』などのアニメも好きなので、アニメ主題歌も聴きながら育ってきたし、『NARUTO』の主題歌だった、いきものがかりの「ブルーバード」もよく聴いてました。

――言語だけじゃなく日本、中国、アメリカの3か国の文化もミックスされているんですね。そして、高校はアメリカのアイデルワイルド・アーツ・アカデミーに進学されています。

10年生(高校1年)のときに日本に帰ってきて。大阪に1年いたんですが、友達がその学校の存在を教えてくれて。ビジュアル・アート、フィルム・ディレクター、ミュージカル、ファッション・デザイン、オーケストラ……いろんなジャンルがあるアート・スクールなんですけど、私はソングライティング学科を選んで。もっと自分の経験を生かしたメッセージを込めた曲を書きたいなという思いで入りました。そこで初めてトップラインを書いたり、音楽理論を学ぶことができて。めちゃめちゃいい経験になりましたね。





――どんな経験を得たと思いますか?

私がそこで一番感じたのは、この世の中には歌が上手い人は本当にたくさんいるということでしたね。学校内での競争もあったし、頑張らないと置いていかれるなという気持ちが湧いてきました。ぼうっとしていたらチャンスが来たときに掴めないなって。その中で3か国語が喋れるという特徴を最大限に活かして、もっともっと頑張ろうという思いでいました。

――17歳でデビューした経緯は?

学校側がSNSでソングライティング科の動画を流していて、たまたま現在の担当者の方が私を発見してくださって。そこからアメリカと日本でのトレーニングを重ねて、コロナで私が日本に戻ってきたタイミングで一緒にやることになり、磨いて磨いてやっとデビューできたという感じでした。18歳になる直前だったので、ギリギリ17歳でデビューできてよかったですし(笑)、やっとアーティストとしての第一歩が踏み出せたという嬉しさがありましたね。

――昨年7月23日に世界配信されたデビュー曲「FLOWER BOMB~花炸弾~」にはどんな思いを込めましたか?

みんなが自分の人生に自信を持って、花を咲かせられるように一緒に頑張ろうねというメッセージを込めていて。世の中には辛いこともたくさんあるけど、この曲を聴いてストレスをなくして欲しいですし、私としてはこの曲と一緒に新たな一歩を踏み出して、自分の中の花を咲かせたいという気持ちも入ってます。



MeiMei - FLOWER BOMB~花炸弾~ (Official Video)


――MVは素顔を明かさずにイラストのみでした。

最初はビジュアルを出さずに、私の声だけを聴いたみなさんがどう感じるのかを知りたかったんですよね。

――英語歌詞ver.のMVは36万回再生を突破しました。その反響はどう感じましたか?

私が一番多く目にしたのは「こんなにいい曲なのに、なんでバズってないの?」というコメントだったんです。まったくの無名のアーティストの曲を聴いた方々が、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいと感じてくれていることが嬉しかったですし、「めちゃくちゃいいボイスしてるね」という言葉は頑張る力にもなりました。ちゃんと私の気持ちが届いているんだなと実感したし、エナジーやパワーを返してもらって、改めてもう一回、音楽の力を感じましたね。


コラボしたMIYAVIは「守護神のようなイメージ」

――同年9月25日には「never ever」を配信リリースしました。

赤ずきんちゃんをモチーフに、オオカミを大人に例えていて。イメージ・キャラクターの赤ずきんちゃんは、どうすれば困難や不安を乗り越えて、おばあちゃんのもとに無事にたどり着くことができるのか。1番はまだ迷いがたくさんあるんですけど、自分で中国語で書いたラップ・パートで<私は自分の道を行く。他の人が何を言おうが、もう構わない。ほっとこう>と決意していて。大サビではもう迷いを捨てている。他人の言葉は気にせずに、自分に自信を持って、自分の道を進んでいくんだと歌っています。それはまさに自分の経験でもありますし、自分が経験したことだからこそ、音楽を通してみんなに勇気を届けたいという気持ちがありましたね。

――サウンド的にはデビュー曲はR&Bでしたが、この曲は激しくラウドなミクスチャー・ロックになっていました。

普段アメリカにいると、ポップやR&B、ヒップホップを聴くことが多いので、私にとっては新しいチャレンジでしたけど、日本語と英語だけじゃなく中国語も混ぜた歌詞も含めて、独自のミクスチャーを試せるのは楽しかったし、それをまたいろんな方に聴いてもらえたことも嬉しかったですね。



MeiMei - never ever (Official Video)


――初のMV撮影はいかがでしたか?

朝から夜にかけての撮影だったんですが、撮影が終わったところで、現場に「きゃー」って叫び声が聞こえて。森の中だったんですけど、スタッフさんがススメバチの巣を踏んでしまったんですよ。カメラマンさんと現場指導のスタッフさんが耳と腕を刺されて、速攻で救急車に乗って病院に向かって。私は「危険だから」と言われて、メイク・ルームに閉じ込められて。最終的には皆さん、無事でよかったです。ハチでみんなが走り回っていることが一番印象に残っているという、とても不思議な体験でしたね。

――(笑)。無事で何よりです。そして、2022年1月26日にはMIYAVIさんとのコラボ曲「Strangers feat. MIYAVI」がリリースされました。

私がアメリカにいたときから、MIYAVIさんが世界で活躍されていることは知っていたし、よくニュースや曲を耳にしていて。MIYAVIさんはいろんな国で活躍されていて、いろんな言語を話せる。私もそういうアーティストになりたいので、ロールモデルという感じで目標としても見ていて。そういう方とコラボができたらなと思って、日本に戻ってきたときに自分でDMを送らせてもらったんですね。英語で「Do you wanna creat a song together?」(もしよかったら一緒に曲を作りませんか?)という感じの長文のメッセージを送って。そしたら、私の曲を聴いてくれたMIYAVIさんから「OK! Let’s do this」という返事がきたんです。まさかOKと言ってもらえるとは思わなかったので驚きつつ、とても光栄に感じて。そこから、プロデューサーのJiNさんや作詞家のシンシアさんにも入ってもらって、この楽曲ができあがりました。

――MIYAVIさんはギターで参加されていますね。

MIYAVIさんは私を助けてくれる守護神のようなイメージ。ストーリーは、18歳の女の子、MeiMeiがいて、彼女は世の中からいろんな悪意を向けられているけど、それがどうしてなのかわからない。成長していくにつれて、いろんな見知らぬ人に会うけれども、未来には不安を抱えたまま。「私は何もしていないのに、なぜbullyng(いじめ)されるの? なぜ攻撃されるの?」という戸惑いが大きくて。私が歌っているのは、その女の子がちゃんと怖がらずに勇気を持っていたいという気持ち。そして、もう一方からは、bullyngしている人たちは、なぜbully(いじめの加害者)になっちゃったのか。それは、もしかしたら小さい頃に親がずっと喧嘩していたり、愛が不足していたのかもしれない。もしくは、ずっとbullyngされ続けたことで、その人自身がbullyになっちゃったのかもしれない。だから、私はいじめる人といじめられている人、どちらもが絶望に陥る前に救いたいと思ったんです。少しでも力になりたいと思ったし、そこにMIYAVIさんが熱く燃えるギターでさらにパワーを広げつつ、気持ちを共有してくれている感じですね。




――全編英語歌詞になっていますが、「Strangers」というタイトルの意味も聞いていいですか?

知らない大人とか、初めて会う人、街中ですれ違う人。知らない人に攻撃されているという意味ですね。例えば、ネット上で写真やプロフィールもなく攻撃する人もいる。「見知らぬ人なのに、なんで攻撃するの?」というメッセージも込めてますし、最後はMeiMeiというキャラクターが攻撃されている子やアンチになる前の子の代表になって、正しい道に連れて行こうという曲ですね。ポジティブなエナジーを放っているので、聴いてくれた方がすっきりしてくれたらいいなと思うし、少しでも元気になってもらえたら、笑顔になってもらえたらそれだけで嬉しいです。私はこの曲にとても誇りを感じていますし、この曲のおかげでまた夢に向かって一歩、進めたかなと思います。



MeiMei - Strangers feat. MIYAVI(Official Video)


――その夢というのはなんですか? 最後に今後の目標を聞かせてください。

小さい頃に描いた最初の夢は、私の曲を聴いたみなさんをハッピーにしたいということで、それは今も変わっていないです。そして、歌手を始めたときからは、音楽は無国籍で無国境だということを伝えたいと思っていますし、音楽でいろんな国の掛橋になれたらいいなというのがビッグな夢ですね。そして、いつかは紅白歌合戦に出たいし、オリンピックでも歌いたいし、グラミー賞も獲りたい。東京、愛知、大阪、福岡と日本を回って、中国やアメリカも含むワールド・ツアーにも行きたい。夢はたくさんあって、未来は楽しみなことばかりですけど、まだまだ未熟なこともわかっていて。だから、地道に一歩ずつ、着実に歩んでいって、いつかたくさんの夢を叶えていけたらいいなと思います。

Interview by 永堀アツオ
Photo by Kana Tarumi

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