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<コラム>3か国語を操る謎の新人シンガー、MeiMeiとは何者か



コラム

日本語、英語、中国語を操る次世代シンガー

 日本からもついに世界に通用するシンガーが出てきたようだ。今年7月23日、YouTube上にMeiMei「FLOWER BOMB~花炸弾~」のミュージック・ビデオが公開された。映像はイラストのみ。全編英語歌詞のR&B。歌っているのは女性シンガーであるということ以外の情報はなし。まったく無名の新人アーティストながらも、なんと36万回再生(9月21日現在)を突破し、コメント欄には英語による絶賛のメッセージが並んでいた。その後、8月23日には新たなピアノ・アレンジが加えられた日本語歌詞による「FLOWER BOMB~花炸弾~ (Japanese ver.)」が公開され、日本語と中国語のコメントがついた。こちらはまだ約8万回再生となっているが、日本よりも先に海外のリスナーの耳に届いたということだろう。



MeiMei - FLOWER BOMB~花炸弾~ (Official Video)


 MeiMeiは2003年7月28日生まれの現在18歳。幼少期より日本、中国、アメリカで生活を送ったことで、3か国語をネイティブに話せ、3か国のパーソナルを備え持っているという、Z世代のトリリンガル・シンガーだ。「FLOWER BOMB~花炸弾~ (Japanese ver.)」を聴くと、日本語と英語に加え、サビで少しだけ<花炸弾(フゥア・チャー・ダン)>という中国語も発している。また、英語歌詞の<Turn on the screen>は、当然ながら流暢な英語で歌っているが、日本語歌詞の同じメロディラインの部分<スクリーン越しに>は、変な言い方だが、しっかりとした日本語の発音になっている。ちなみに同曲の英語歌詞を手掛けたのは、アメリカ出身で、2009年に日本に移住し、2017年に帰化したシンガーのクリス・ハートと、フランス人の父と日本人の母の元に生まれた元モデルでラジオDJ、現在は作詞家して活躍する岡田マリア。作曲には、彼女の夫で元ROCK'A'TRENCHのギター&ヴォーカルの山森大輔(ルーツは沖縄民謡)が参加しており、編曲はUVERworldやONE OK ROCKのプロデュースで知られる平出悟が手掛けるなど、国際色豊かな音楽クリエイターが名を連ねている。

 これまでは全貌を明かさずに、イラスト・ビジュアルのみで活動を行なってきた彼女だが、9月15日にリリースされた2枚目のデジタル・シングル「never ever」をもって、謎の新人からベールを剥がし、その素顔を解禁した。

 日本語、英語、中国語をミックスした歌詞は前作に続き、岡田マリアが担当。MeiMeiが歌う主人公は<赤いフード>を被った少女、赤ずきんちゃんだ。親、大人、学校、社会など、今の世の中を取り巻く環境の全てを獲物に目をギラつかせる狼に例え、そんな狼に屈することなく、自分が信じる道をまっすぐに歩んでいくという強さを表現している。作曲はRYUICHIとINORANとのユニット、Tourbillionのメンバーで、w-indsなどへの楽曲提供も多数手掛けている葉山拓亮。編曲は前作同様の平出氏によるもので、荘厳かつ妖艶なストリングスから始まり、エッジの効いた激しいミスクチャー・ロックへと変化していくサウンドとなっており、MeiMeiはファルセットと地声を混ぜたミックス・ヴォイスに加え、中国語によるラップも披露。そのパワフルな歌声を通して、彼女のティーネイジャーらしい等身大の繊細さや儚さ、大人や社会に対する不満や戸惑いといったパーソナリティまで伝わってくるようで、きっと今後は同世代からの共感や憧れを呼ぶことだろう。



MeiMei - never ever (Official Video)


 そして、ミュージック・ビデオでは、霧が立ち込める深い森の中を彷徨いながら髪を振り乱して歌い叫び、時に大人びた表情も垣間見せている。<Once upon a time(昔々あるところに)>で始まり、<Live Happy Ever After(幸せに暮らしました)>ではなく、<never ever believe(絶対に信じない!)>で終わるMeiMeiの物語の続きはどうなっていくのか。21世紀のティーネイジャーの代表として、日本からアジアへ、アジアから世界へと駆け上がっていく姿を見たいと期待している。

Text by Atsuo Nagahori

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