亀田誠治擁する“今のDo As”のバンドとしての凄み

－－先日、Do As Infinityファンによる伴ちゃんの結婚を祝う会に参加したんですけど、男性より女性ファンの方がショックを受けていて意外でした。

伴 都美子：えぇ～～！？ そうなんだ（笑）。

大渡 亮：普通は逆だよね？

－－そんな男前の伴ちゃんから結婚報告もあった、先日のアニバーサリーライブ【Do As Infinity 13th Anniversary -Dive At It Limited Live 2012-】は、2人の中ではどんな公演になりました？

伴 都美子：短い期間にすごく集中して作り上げたので、やりきった感がありました。最高に楽しかった。

大渡 亮：このライブに合わせてバンドメンバーを一新したんです。思うところあっての人選だったんだけど、それが本当に功を奏し、Do As史上最もアンサンブルの良い面子で新旧ナンバーを表現することができて。僕の中でひとつ到達しちゃった感がすごくある。物凄く集中力の高い、高レベルな内容だったと自負していますね。これを継承していくのは大変だぞ……って思うぐらい、完璧。この充実感や手応えはお客さんも感じ取ってくれていると思うんですけど、作戦がすべてが上手くいったライブでした。本当に最高でしたね！ 演奏してて楽しかった。

－－観客側からしてもあの公演は何もかも衝撃的で。亀田誠治を加えたバンドの凄まじさ。冒頭から超絶テクニックと爆発的なエモーションによる、Do Asの歴史から見ても最大級にダイナミックな合奏だったと思います。

大渡 亮：そうなんですよ。言いたかないけど、近年はちょっと……そうしたくないけど、結果として予定調和になってしまったことが多くて。フィジカルなところとエモーショナルなところ、あと偶発的なものをもっと高次元に昇華できる手はないものかと思っていたので、それをこのタイミングで実現できたっていう喜びがありますね。

－－そこで歌っていた身としてはいかがでした？

伴 都美子：リハーサルからワクワクして歌っていたし、本当にただただ純粋に楽しくステージに立てましたね。

－－実際、楽しそうでしたし、今年観たバンドでナンバーワンでした。あれだけのライブができた要因って、伴ちゃんの歌や亮さんのギターにこれまで以上に爆発力が出てきているからだとも思うんですけど、そこは自覚的ですか？

伴 都美子：私の場合はどれだけ歌に集中できるかだから、それがちゃんと出来ていたのかな？

－－集中力の高さもありますけど……前ってあんなにシャウトしまくってましたっけ？

伴 都美子：（笑）

－－ここ最近、めっちゃ叫んでます。

伴 都美子：自分のノリに合ってるんですかね（笑）？

－－あそこまで叫ばれたら誰でも高揚しますよ。亮さんはDo Asの爆発力についてどう思いますか？

大渡 亮：無駄を廃して個々の役割をより明確にした結果なんだと思います。ずっと「なんだかなぁ？」って不安定さを感じていたけど、ギターが2本いて、ベースがいて、コード楽器が3人いるということでパートの割り振りを「この人はこの為に、自分はこの為に」ってもっと明確にしていったこと。それが爆発力というところに結果として繋がってるんじゃないかな。作戦勝ち。で、それが手に入ったのは、ひとりグルーヴマスターがいてくれたから。亀田さんはプロデューサーやアレンジャーとして長けているってだけじゃなく、やっぱりベーシストとして誰よりも正確なグルーヴを持っているから、みんながその幹に集まれる。今まではみんなが良いところ取りをしようとして、組み合わせによってはその人の良さが引き出されないで、むしろ悪さばっかりが目立っちゃったりした。だけど、ひとり確固たる軸ができると、それにみんな寄り添ってひとつのものを作れる。正直、今回は亀田さんの存在が一番デカかった。

伴 都美子：亀田さんとはずーっとアルバムを作ってきてるんですけど、ああやってDo Asのステージに立ってくれたのは初めてで。いやぁ～……素晴らしい方ですよね。って改めて実感しました。

－－ちなみに今後も亀田さんはDo Asのステージに立ってくれるんですかね？

伴 都美子：「出たい」って言ってましたよ（笑）。

大渡 亮：楽しんで頂けたみたいで「次の14周年ライブもこのメンバーでやろう」なんて言ってたけど、まぁでも実現できるならそうしたいって本当に思いますね。

－－あの日はどの楽曲も鳥肌モノだったんですけど、凄みという意味では「科学の夜」の全身全霊ぶりは半端なかったですね。亀田さんの独創的なベースソロから始まって、終盤にビートが走り出して亮さんのギターで締め括るまで、ずっと「これは凄い」って言ってましたよ、俺。

大渡 亮：前回も前々回も曲調やメッセージでそういうムードになってるんだけど、よりまた凄い感じになったなって。僕もかなりエモーショナルに展開できるというか、やり甲斐があって、結果を残せた感がありますね。最近、実はそのライブの映像を観たんですけど、「科学の夜」からの流れというのは、自分で言うのもアレだけど……凄い。凄い高次元ですべてのパートが噛み合ってる。今まで自分たちのライブを食い入るように観ることはなかったんですよ。やっぱりライブ中は楽しいけど、二次元になってしまうと「ふーん」っていう感じが正直あって。でも今回は「あのとき、俺が感じた衝動や衝撃は間違いじゃなかった」って映像でも、しかもスウィッチングアウトのものでも感じられたんで、これはお客さんにビシビシ伝わっていただろうなって改めて思いました。

－－で、その「科学の夜」のアウトロからクロスオーバーさせて「冒険者たち」のイントロを亀田さんが弾き出すという、あの演出。よく考えられてるなって思いました。

大渡 亮：あれはリハーサルでは何度か失敗してたんですけど、本番はすべて完璧に。俺もそこの映像観ていて「格好良いな！」って思っちゃって（笑）。そういう意味でもあの日のライブは、これまでJ-POPという枠組みの中で活動していて、初めて紛う事なきロックを見せられたライブだったんじゃないかなって思います。かなりロックしてましたから。

伴 都美子 結婚による影響「確実に変わってる」

▲Do As Infinity / Do As Infinity X（Digest Movie）

－－また、アンコールでは伴ちゃん自ら結婚の報告をしました。ファンに直接伝えたくてあの日を選んだと思うんですけど、言い出すまでってどんな気分だったんですか？ ソワソワしたりしたの？

伴 都美子：周りの皆さんが思っている以上に私は普通でした。

－－一番落ち着いてた？

伴 都美子：そう、周りがソワソワしてる（笑）。結婚のことはちゃんと自分の口から皆さんにお伝えしたいと、スタッフとメンバーの皆さんには言っていたんですけど、まさかあんなに歓声が飛んでくるとは……嬉しかったですね。

大渡 亮：ライブで伴ちゃんが発表することはリハの段階から知っていた訳なんですけど、どんな反応があるのか予想がつかなかったですね。そこが一番気になってた。で、どよめきだと思っていたんですけど、蓋を開けてみたら歓喜の声だったんで「あー嬉しいな」って。自分のことのようにリアクションが嬉しかったね。

－－で、その報告を経てのラストナンバー「あいのうた」。観客のハンドクラップ含むすべての音が“祝福の音”として響き渡っていて、まるでこの瞬間の為に作られた楽曲みたいでした。

大渡 亮：発表のタイミングと曲の並びは完璧でしたね。非常にハッピーな終わり方。

伴 都美子：「あいのうた」は節目節目で歌うと、本当にいろいろ感じ方が変わるなと思って。あの日も良かったです。

－－ちなみに伴ちゃんは「相変わらず「うらぁっ！」とか言って（笑）ライブは続けていくし、皆さんによりよい音楽を届けられるように頑張っていきたい」と言っていましたが、結婚が音楽活動サイドに影響を与えたりはしていないの？

伴 都美子：いやぁ～まだ結婚したばかりなので。これから出てくるのかな～？ どうなっていくんですかね（笑）？

－－結婚すると表現力が落ちるっていう人と、上がるっていう人がいるじゃないですか。そのどちらかがあるとしたら、伴ちゃんって完全に後者だと思うんです。

伴 都美子：そうですか！

－－明らかに歌もステージングも振り切れてますから、今。

大渡 亮：レコーディングで感じたんですけど、歌の立ちっぷりが本当に良いんですよ。そのときはまだ結婚前だったけど。

伴 都美子：それは今回のアルバムのレコーディング？

大渡 亮：そうそう。例えば、本チャンの歌がギター録りの前に完成しているときがあって、それ聴きながらエンジニアと「最近、良いね。」みたいなことを話してて（笑）。だから確実に変わってる。パンチがあるというか、艶があるというか、そういう感じだったんでね。

伴 都美子：……だそうです。

－－で、あの日のライブは、バンドとしての凄さ、伴ちゃんのモード、それらに加えてもうひとつ、今のDo Asの魅力と面白さを感じさせるトピックがありました。発売前のアルバム『Do As Infinity X』収録曲をいち早く、すべて曲順通りに生披露。この前代未聞の企画、実際に挑戦してみていかがでした？

大渡 亮：無理難題な目標を掲げて、集中せざるを得ない状況に追い込んだ感じだったんですけど、それが良いことになったと今は思いますね。自分に負荷を掛けるというのは、時として大事だし、有効だなって。ただ、まだ曲をそこまで飲み込んでないので、来年2月からの全国ツアーのときはもうちょっといろんなアイデアが出てきて化けそうだなと。

伴 都美子：曲順通りにやることは……今回は特別だったので、ウチら的にはもうしばらくやんなくていいかな！

一同：（笑）

－－セットリストに初披露の曲が10曲もあるって普通ないですからね。

伴 都美子：お客さんがどういう反応するか不安でしたけどね。ファンクラブ限定イベントだから大丈夫かな？と思って。

－－アルバムの曲順通り、ノンストップ……ではなかったですけど、変に格好付けないで休憩（MC）入れるのもDo Asらしいなと思いました。

大渡 亮：あれは僕が「これ、10曲ノンストップは無理でしょ？」って言ったんです。ノンストップだとMCの数が少なくなるし、13thアニバーサリーライブなので、ただ曲だけツーってやって「はい、さよなら」って訳にはいかないからね。伴ちゃんや僕の身近な感じを楽しみたくて来る人もいるし、そういうのも表現の一部だと思うので。で、5曲やってMC入れることにしたんです。あと、歌詞をスクリーンで流すのもすごく有効な手段だったと思っていて。これはステージをパッケージした者の勝利というか、すべてが高次元で勝利した感じですね。

－－アルバム『Do As Infinity X』の仕上がり自体にはどんな印象、感想を持たれているんでしょう？

大渡 亮：流れ的に聴きやすく仕上げられたんじゃないかと思います。曲順もサイズも。パーッと最後まで聴けて、また頭から聴きたくなる感じにはなってるんじゃないかな。

伴 都美子：前作のリリースから短いスパンだったけど、私たちの音楽の特性がちゃんと詰め込まれた一枚になったなと。無駄がないというか、自分たちらしさが濃縮されてる。曲調もそうだし、歌詞もそうだし、J-POPにあるようでないような切り口になってて面白いなって思います。

－－前作から僅か8か月というインターバル、しかもシングルを1枚も切らずにアルバムリリース。このような展開に至った経緯を聞かせて頂けますでしょうか？

大渡 亮：毎年同じような月にツアーをやって、イベント出て、レコード作って……っていう流れだったんで、そのサイクルを変えようと。で、変えるなら、秋の周年ライブの付近にアルバムを出そう。というのが先に決まって、付加価値を上げる為にスタッフから「周年ライブで全曲初披露ってどうだろう？」って提案があったんです。そこにどれだけ利点があるかどうかは考えずやったんだけど、周年で全曲披露は刺激的だと思えて。新しい風が吹かせそうなだなって。何かを変える上で不都合があったとしても、そこに刺激があるならやるしかねーかっていう感じでしたね。

酒だけは……酒を呑む為に健康に気を遣ってるので（笑）

－－ちなみに『Do As Infinity X』の制作過程の中で「これは挑戦だったな」と思える楽曲や要素ってありますか？

大渡 亮：個人的には前2作ぐらいから芸風が変わってきたというか、音楽やコードの考え方が変わってきて。さすがに40近くなって「もうちょっとまともなことを言えるようになりたいな」ってちょっとは思ってきたってことなんでしょうね、楽器的に。それが今作では無理なく形になってきたなって思います。背伸びしているだけの自分じゃなくて、自分の血になっているもので表現できた楽曲が多い。「Work!」「蓮華」「mannequin」とかは自分を殺さず、新しい表現ができてると思います。

伴 都美子：毎回そうなんですけど、どの曲を歌うのもチャレンジ。「仕上がり、どうなるんだろう？」と思いながら歌って、最終的に「おー、こんな感じになるのか」っていう。ただ、結果的にチャレンジして良かったなって思う楽曲が今回は多かったかな。変な先入観を持たずトライして良かったなって。

－－また、今作は全収録曲の作詞を"川村サイコ"が手掛けています。どのような経緯や理由からこうなったんでしょう？

大渡 亮：前作『TIME MACHINE』を作った後に、今後についての話をしていて「次のアルバムでは、川村サイコの分量を増やす必要があるんじゃないか」って提案したんです。創られた世界観の曲や短編小説みたいな作品を復活させたいと思いまして、ディレクターに進言して。全曲になるとは思ってなかったけど、川村サイコの持っている感じを今復活させるべきだと思ったんですよね。結果、今作の説得力が増したと思います。特に「蓮華」は見事。今後ずっとやっていく曲になるんじゃないかな。「ヨアケハチカイ」「東京亜熱帯」もいいな。「mannequin」もいいな。「コペルニクス」も……

伴 都美子：川村さんには「お手数をお掛けしました」と思います（笑）。短い間にこれだけの歌詞を量産できるとは……。

大渡 亮：かなりタイトなスケジュールで「書いて、書いて」ってお願いしちゃったからね。申し訳なかったねー。

伴 都美子：古くから私たちを知っている方だけに、歌詞の内容的にも「さすがだな」と思いました。

－－知らない人の為にも、川村サイコが何者かの説明をお願いできますか？

伴 都美子：何者なのか……1人じゃないです。作家プロジェクトみたいな。

大渡 亮：まぁ中心人物がいて、その人が大半は書いているんですけど、別の人も書いてて。チームで活動されている。

－－個人的に「送電線」は、それこそ短編小説的で印象に残りました。

伴 都美子：母娘の情景が見える歌詞ですよね。たしか「「遠雷」の中の人たちは今何してるんだろうね？」みたいな発想から書かれているんですよ。映画のワンシーン的という意味では「ブランコ」「ナイター」にも近い、私たちの特色のひとつが出てますよね。

－－ちなみに、10枚、オリジナルアルバムを出し続けられたことに関しては、どんな感慨を持たれていますか？

大渡 亮：感慨深いね～。10枚、オリジナルアルバムをリリースするぐらいまでちゃんと続けられているとはな……っていう風には思いますね。途中、ブレイクありましたけど、また復活してるっていうね。で、そこから4枚もアルバムを出している。しぶといグループだなって思います（笑）。

－－そんな『Do As Infinity X』、どんな風に世に響いていってほしいですか？

伴 都美子：シングルが先にあってのリリースじゃないし、マニアックなことをやっている、面白い人たちがいるなって思ってもらえれば（笑）。でもアルバム自体は聴きやすいので、気軽に聴いてほしい。

大渡 亮：今まで3曲ぐらいはシングルで、8.9曲ぐらい新曲っていう感じだったから、全曲アルバムの為に作ったのって初なんですよね～。新鮮で良いですよね。俺は結構好きだな。

－－あと、今作のリリース後にはカウントダウンライブや全国ツアーも控えていますが、そこで挑戦してみたいことがあったら教えてください

伴 都美子：（小さい声で）私がエレキで弾けそうな曲、ある？

－－打ち合わせ、始まりましたね（笑）。

大渡 亮：「Right now」ならコード的には少なくていいかも。他は結構難しいんだよな～。

伴 都美子：「Right now」でエレキ弾きます。……いつか（笑）。

－－では、最後に人生や生活の中で新たに挑戦したいことを聞かせて下さい。

大渡 亮：休肝日を設ける。呑まない日がないんです。家でもウーロンハイ作ってだらだら呑んでるんで。昨日は何回作ったかな？ 2階の部屋からリビングに降りてきて作るんだけど、6往復ぐらいしてるんですよ。だから結構な量を呑んでて。

－－一時期、健康に気を遣ってましたよね？

大渡 亮：今でもそうなんです。食事管理やマラソンはやってるんですけど、酒だけは……酒を呑む為に健康に気を遣ってるので（笑）。そんな感じなので、飯だけ食って酒を抜く日を作ることが挑戦です。

－－伴ちゃんは休肝日を要するほど呑んでないんですか？

伴 都美子：最近は抜いているときもあるし、毎日呑まない。前は帰ったらプシュッ！でしたけど。

大渡 亮：すごいじゃん！ 結婚して変わったね。いやぁ～、伴ちゃんが酒を抜いている日があるとは……。

伴 都美子：（笑）。楽しいときとか、上がっているときとかは、そこにプラスお酒が欲しくなるけど……まぁそれはいいとして。生活の中での挑戦ですよね？ なんだろうなー。まずはもっといろんなところに興味を持つこと？

－－挑戦する以前の話ですね（笑）。

伴 都美子：そう。交友範囲も狭いし、活動範囲も狭いし……なんか資格を取る？ いやいや、ないな。うーん……次までに考えておきます。

－－わかりました（笑）。

大渡 亮：伴ちゃん、お酒呑まない日あるのかー。俺は無理だなー。毎日呑んじゃうんですよ。まぁでも……

※この後、休肝日を作れない言い訳が延々と続いた。