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<インタビュー>中村雅俊~45年間歌い続けてきた彼が語る、歌うことへの尽きせぬ情熱



中村雅俊 インタビュー

 俳優・歌手として1974年にデビュー以来、常に第一線で活躍してきた中村雅俊。歌手としては、「ふれあい」、「俺たちの旅」、「心の色」、「恋人も濡れる街角」等多くのヒット曲をレパートリーに持ち、毎年全国ツアーを欠かさず行ってきたアーティストだ。
そんな中村雅俊が、2021年7月5日(月)6日(火)ビルボードライブ横浜、7月14日(水)15日(木)ビルボード大阪で、【中村雅俊 DAWN】と題して、初めてビルボードライブのステージに立つ。さらに8月、9月には初の全篇フルオーケストラコンサート【billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2021 ~Before DAWN~】を全国4都市で開催することも決定している。
今回、コンサートへ向けてインタビューを行い、新たな表現に挑戦する心境、意気込みを聞かせてもらった。その言葉の端々には、歌うことへの尽きせぬ情熱を感じることができた。

素でマイク無しで歌ってるような、本当に生の歌が届けられたらいいなって思います。

――中村さんは1974年のデビュー以来、毎年欠かさずに全国コンサートツアーを行ってきたわけですが、今はなかなかコンサートツアーも行えない状況かと思います。コロナ禍になってからのこの1年あまり、どんな思いで過ごしてきたのでしょうか。

中村:俺は幸運にも、デビュー曲「ふれあい」を出したその年から、45年間ず~っと1年も欠かさずコンサートツアーをやってきたので、去年ツアーがなくなったときは、いささかショックでした。ましてや今年もコンサートツアーがないという報告を受けたときは、やっぱり45年間歌い続けてきたので、「歌うことができないことはこんなにつらいものなのか」ということが初めてわかったんですよね。そんな中で今回ビルボードライブで歌わせてもらえる機会をいただいたと聞いたときは、かなり嬉しかったですね。歌うこともうれしいのですが、六本木ミッドタウンにある「ビルボードライブ東京」に関しては、お客として何回か来たこともあって、とても素敵な場所だというのは知っていたので。今回は東京じゃなくてビルボードライブ横浜と大阪でのライブですが、そういう意味では「歌える」ことと「ビルボードで歌える」という2つが重なって、今は気持ちがかなり高揚しています。

――アーティストとお客さんの距離が近いのも、ビルボードライブの魅力ですよね。

中村:そうですね。まあ、魅力ではあると思うんですけど、今の俺にはちょっと恐怖ですね(笑)。こんなにお客さんの至近距離で歌うことはそうそうないので。ましてや久しぶりに歌うというプレッシャーもあって。ちゃんと前のお客さんの顔を見れるかどうか(笑)。まあでも、照れるけれどもそれ以上に「歌うことの喜び」の方が遥かに大きいので。すごく楽しみです。


中村雅俊

――お客さんにとっても、こんなに間近で中村さんを見て歌を聴ける機会はなかなかないと思います。

中村:できればもっと若い頃に顔を見せたかったんですけど(笑)。でもじつは、近い距離の方がMCが楽なんですよ。

――えっそれはどうしてですか?

中村:だって、ホールコンサートだと暗闇に向かって「みなさ~ん、元気ですか!?」とか、そういう形式になるじゃないですか?全然お客さんの姿が見えていないし、一方通行になってしまうので。至近距離だと、今インタビューを受けているような状態ですよ。俺が話したことにすぐにレスポンスが返ってくるっていう。そういうMCの形態が取れるという気楽さはありますね。

――そういうお客さんとのコミュニケーションも含めて、ビルボードライブ横浜、大阪公演【中村雅俊 DAWN】はどんな内容にしようとお考えですか?

中村:素でマイク無しで歌っているような、本当に生の歌が届けられたらいいなって思います。実際にはマイクは使いますけど、マイク無しでもできるような空間でやれるので、そういう意味では自分の息遣いとかも聴こえるようなライブになるんじゃないかと思います。

――今の時点で、どんな選曲をされていますか?

中村:いつものコンサートより曲数は少ないんですけど、ちょっとエモーショナルな歌をあえて選んだんですよ。ラブソングの中でも別れの歌とか、そういう感情が表現できる曲を選ばせてもらったので。自分は役者でもあるので、そういう部分で表現者としての自分を乗せやすい歌をあえて選んでます。もちろん、ヒット曲もやりますけど、その間を埋める曲はあえてそういう選曲にしています。

――じゃあ、長年のファンからすると、「えっ?この曲歌うの!?」という曲もありそうですね。

中村:そうそう。今までの1500回のコンサートでも歌ったのは1回か2回ぐらいかな?っていう曲もありますね。あえて今言うと、玉置浩二さんが作曲して俺が歌詞を書いた別れの歌があるんですけど(「19 June」)、それなんかはほとんど歌ったことがないです。ちょっと練習してみたんですけど、妙にむずかしくて今の段階では上手に歌えてないですね(笑)。


――そういう曲にチャレンジするような思いもあるわけですか。

中村:そうですね。ヒット曲と呼ばれるもの以外の曲は、良い言い方をすれば「隠れた名曲」、別な言い方をすると「誰も知らない曲」をやらせてもらうので(笑)。でも、すごく自信を持っている曲なので、俺の中では大丈夫かなって思っています。

――楽器編成はどんな感じになるんですか?

中村:基本的には俺が歌とギター、ハーモニカをやって、あとはギタリストと、もう1人が鍵盤とギターを担当する3人編成でやります。だけど打ち込みも使うので、音的にはすごく幅があるというか。例えばアコギ1本でハーモニカでやる曲があったとすると、違う曲では打ち込みでホーンセクションとかがいっぱい入っている曲をやったり。そうすると選曲も幅広くできるので。「ふれあい」みたいにギター1本で歌えるような曲もあるかと思えば、それこそオーケストラが入ってるような曲もあったりします。


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コンサートの間だけは、「楽しいな」とか「幸せだな」って思える時間にできたらいいなと。

――8月、9月には全国4都市で【billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2021 ~Before DAWN~】も開催されますね。こちらは全篇フルオーケストラコンサートということですが、フルオーケストラと共演するライブはこれまでありましたか?

中村:全篇フルオーケストラは初めてです。このコンサートに向けては、フルオーケストラで歌うことを前提で、選曲しました。7月に開催するビルボードライブ横浜、大阪公演と重なる曲もあるかもしれませんが、全く雰囲気も変わると思うので、「この曲をフルオーケストラでやったらいいだろうな」とか思いながら、ほぼセットリストは決めています。

――すでにセットリストができているんですね。どんな曲が歌われるのか楽しみですが、少し教えてもらってもいいですか?

中村:あえて言うと、「アップテンポの曲」です。割とフルオーケストラに合う曲というと、バラードとかミディアムの曲になりますけど、それは普通じゃないですか?だからあえてロックっぽい曲をフルオーケストラでやったらどうだろうか?ということで、ちょっとイメージしたものを聴いてもらったら、「いいじゃないですか!」って非常に乗り気になってもらって。

――なるほど、結構攻めたセットリストになってそうですね。

中村:意外性というか、もともとオーケストラで歌うということが今までと違う表現の仕方なので。尚且つ、そういう意味では意外なアレンジ、意外な選曲を考えました。コンサートって流れがあって、レストランで言えばコースみたいなものなので。最初に前菜があってスープがあって、メインがどんな料理で、最後はデザートのような流れをある程度こちらで考えて、そのまま導いてあげられたらいいなって思っています。

――ビルボードクラシックス公演は総勢何名でのステージになるんですか?

中村:フルオーケストラは60名です。すごいですよ。もう、武将になったような気になりますよ。

――はははは(笑)。役者をやっている中村さんならではの感想ですね。

中村:だってもう、フルオーケストラをバックにすると、武将みたいな感じで「おまえらついてこい!」みたいな見た目になるじゃないですか?意識もそういう風になっちゃいますよね(笑)。

――フルオーケストラですから、ものすごい音圧を感じるのではないでしょうか。

中村:そうなんですよ。俺だけじゃなくて、お客さんたちも音圧はすごいんじゃないですかね。俺はそれを背中で受けますけど、お客さんは正面から受けるので、迫力があると思います。

――最近は地方に行く機会も減っていると思いますが、今回のフルオーケストラコンサートは兵庫、愛知、熊本と、東京以外でも行われます。

中村:毎年恒例の全国コンサートツアーが中止になったので、地方でライブをやることはむずかしいのかなと思っていました。今回お話をいただいて地方に行くということはちょっとびっくりしたのと同時に、「やれるんだ」という、喜ばしい気持ちです。

――中村さんはこれまで、シングルを55枚、アルバムを41枚リリースしていますが、そこからの選曲というと大変ですよね。

中村:今までレコーディングした曲は、300曲越えしているんですよ。だからその中から選ぶというのは大変ですけど、「今日はとんかつ食べたいね」みたいな感じで、「あの曲やりたいね」って選曲した感じです。


中村雅俊

――そうした曲の中から、今回のコンサートでやるかどうかはわからないですが、代表曲についてのエピソードをいくつかお聞かせください。まずデビュー曲「ふれあい」について。この曲は悲しいときに思わずくちずさみたくなるような、世代を越えて聴かれている名曲ですね。

中村:この曲は、100万枚以上売れて、オリコンチャート10週間1位だったんですけど、そういう事実は嘘じゃないなって思うぐらい、スタンダードになったなという感じはします。10年前の東日本大震災のときも、被災地で歌うと皆さんの心にとても響いたようで。曲は古いけど、新しいもの、普遍のものがいっぱいあるなってすごく感じています。俺の代表曲でもあるし、そういう意味ではいつまでもちゃんと歌わないといけない曲だなって思っています。


――「時代遅れの恋人たち」は、今年4月に行われた「筒美京平の世界 in コンサート」でも歌っていらっしゃいました。

中村:じつは筒美さんに作ってもらった曲は、この曲とカップリングの「海を抱きしめて」の2曲だけしかないんです。どちらも曲調は違うんですけど、とても良い曲で。特に「海を抱きしめて」は好きな曲なので、これが歌えるからトリビュートコンサートにも参加したんですよ。「時代遅れの恋人たち」は、当時『ゆうひが丘の総理大臣』というドラマをやっていて、そのときに初めてディレクターの口から「筒美京平さんに書いてもらおう」という言葉で出たんですけど、俺の中では、すごく違和感があったんです。なぜかというと、ずっと吉田拓郎さんに作ってもらったり、「俺たちの旅」は小椋佳さんに作ってもらったりしていたので。自分の中ではそういうアーティストに作ってもらうというのが常かなと思っていたんです。でも、2曲ともできあがりが良かったので、すごく良い出会いだったなと思います。

――「恋人も濡れる街角」は“馬車道あたりで 待っている”という歌詞が出てくるので、今回特に注目したい曲です。

中村:そうですよね。俺的には、大学1年のときに横浜西口のホットドッグ屋でバイトしていて。そこの会社の給料を、馬車道まで取りに行ってたんですよ。だから、俺の馬車道の思い出は「アルバイト料を取りに行く会社があったところ」です(笑)。

――あんまりロマンティックな話じゃないですね(笑)。

中村:じゃないですね。でも、横浜には大学1年、2年のときにいたけど、ロマンティックなことってあんまりなかったですよ(笑)。

――この曲は、桑田佳祐さん作詞作曲で大ヒットしました。

中村:やっぱり、桑田君が作ってくれて結果も出せたのですごく嬉しかったです。今でも、ときどきすれ違った方から「「恋人も濡れる街角」カラオケで歌ってるよ!」なんて言われると、「ああ、嬉しいな」って思いますね。ボサノバっぽい感じで好きな曲です。

――それまでの中村さんの曲のイメージと違う、アダルトなムードの曲ですね。

中村:この曲で、「歌手・中村雅俊」の評価が変わりましたからね。それまでは「ふれあい」とかスローな曲を歌っているというイメージで。良い出会いをさせてもらったと思っています。


――では最後に、今回のコンサートを通じてどんなことを伝えたいですか?

中村:色々と悲しい出来事などが周囲にたくさんありますが、このコンサートの間だけは、「楽しいな」とか「幸せだな」って思える時間にできたらいいなと。俺自身は、できればみなさんを感動させられたらいいなと思っています。


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