私、毎年、9月9日の自分の誕生日には、気の合うフレンジャーたちに野音で祝ってもらってんねん。ていうか、もうそう決めてんねん。と、大塚さんが言ってるか言ってないかは知らないが、世界人口60億人居るとは言えど、「誕生日は毎年野音で」なんて人はこの人ぐらいしか知らない。今年の【a-nation'07】では、正しく革命を起こし、自身のツアーでもそのアイデンティティを振り切れるだけ振り切った、今表現者として誰よりもアツい彼女が最も素を出しやすい誕生日にどんなライブを魅せてくれるのか、実に楽しみである。ちなみに開演前のSEは『BABASHIのテーマ』。

　 そんな開演間にファンの一人がでかい声で何かをメガホン越しに叫び出す。すると、一人、また一人と、何かのメロディを口ずさみ出す。そして徐々に歌う人が増えていき、そのメロディの輪郭を露わにしたこの曲は、大塚 愛の『Birthday Song』！そんなファンの自発的なサプライズを受けてか、バンドメンバーがバースデーケーキを持ってステージに登場。そしてチャーリーのピアノ伴奏付きで、みんなは再び『Birthday Song』を歌い出す。そこへ照れくさそうに今日の主役、25才の誕生日を迎えた大塚 愛が登場！ローソクの火をひとつずつ消してゆく。「こんばんは！大塚 愛です！ラブ・イズ・ボーン！！」と叫ぶと、なんと！ド頭から『さくらんぼ』が。全員揃って大はしゃぎの大合唱＆ハイジャンプで、いきなり去年のバースデーライブのクライマックスが再現される。そして久々にライブで聴く『Strawberry Jam』をすげぇハッピーな空気の中で漂いながら堪能する僕ら。この曲、ここ野音の陽が落ちて夜になっていく刹那によく似合う。「みんな今夜はもっともっと楽しもうね～！」そう彼女が言って聞こえてきたナンバーは、まるで今年の夏をもう一度頭からやり直すかのような開放感を持つ『PEACH』。唸る藤井のギター！踊るオーディエンス！ほんとに真夏のど真ん中みたいに汗だくになる僕ら。そして正しく野音が夜に包まれた瞬間、蜩（ひぐらし）の鳴き声と黄金（こがね）色の光、みんなのハンドクラップが抜群の相性で絡み合った『HEART』と『扇子』の披露。なんなんだ？この浮遊感、気持ち良さは。『扇子』はライブで披露されること自体がサプライズだったりもするわけだが、あれから3年以上の歳月が流れているからこそより分かるこの楽曲の魅力。それはもしかしたらここにいる誰にとっても想像以上の感動を生んでいたかもしれない。とにかくめちゃくちゃドラマティックであった。

「なんやろ？この幸せ。台風9号が来るとか言うから「シャレかな？」と思って（笑）。（でも）空気読んで早々に去ってくれて良かった」と、大塚。そしてたくさんの「おめでとう」に「ありがとう」を返し、「みんなが目を閉じたときにたくさんの星が見えますように」と、まるでキャンプファイヤーのように優しく燃え上がる炎とアコギの音色だけをバックに彼女は、『プラネタリウム』をゆっくりと歌い、その後、一人残ったステージでピアノの前に座り、黄色い光に包まれて『夏空』を歌った。その切なくも穏やかな音楽に飲み込まれる野音と僕ら。最高。そして更なる感動がこの後、待っていた。「何回季節が巡っても、私はずっと変わらぬ想いを持ち続けているだろうな。あなたの笑顔を隣で見つめながらずーっと生きていきたいと思います」と、涙ぐみながら彼女が歌い出したのは『ポケット』。あなたの重荷とかじゃなくて、荒れやすいあなたの手を温めてあげよう。いつもすぐそばにいるから。彼女は100％自身の気持ちだけをスパークさせた。そして『ポケット』の世界ともシンクロする『キミにカエル。』『甘えんぼ』と、曲は続く。『キミにカエル。』では、大塚の頭上に季節はずれの粉雪が舞い降り、『甘えんぼ』は生ストリングス付きという、豪華演出が。更には「この4年間、たくさんの方が集まって、たくさんの方が観に来てくれました。そんな奇跡を、良いことも悪いことも含めてこの4年間、幸せだなぁと思います！」、そして「契約は分かりませんが（笑）、明日からもよろしくぅ！！」と笑顔で告げ、みんなへ贈りたいと、珠玉のラブソング『恋愛写真』を歌ってくれるのであった。

　「さて、どうする？こっから今日どうする？」と、訊ねてくる大塚さん（笑）。「いやぁ～、25才になって、四捨五入で30才。いや（でも）、まだ私は高校生と言い通せるよ」と、虚勢を張る大塚さん（笑）。客席に居た、2才のお子さんとその母と個人的にコミュニケーションを取り出す大塚さん（笑）。そして「イレギュラーなもんをどんどん挟んでいくよ！！」と言って、自らファンに自分への質問を訊ねる大塚さん（笑）。まぁ誕生日だからね（笑）。調子に・・・じゃなく、勢いに乗った彼女は「みんな立ち上がれぇ！！」「乗り込んで『U-ボート』！」と、声出しの練習を兼ねたコール＆レスポンスからクライマックスの畳み掛けに突入。そして『フレンジャー』のイントロと共に急にバットを持ち出した彼女は、いきなりノックを始める（笑）。最後の「ダッ！」までノックをし続けた後、すかさず曲はノンストップで『Happy Days』へ！で、奇跡の（！？）『ポンポン』で「ポンポン」叫び続けながら必死に大縄飛びを飛び続けた後、素で「めっちゃしんどい」と、笑い出す大塚。そしてあの振り付けの先生をステージに招き入れ、「例のポーズ」と彼女が口にすると、異様なポーズを取る人×ここにいる人、全員（笑）。若干さっきの『ポンポン』での疲労も否めないはずのみんなだが、やっぱりここは笑顔でダンス！あの【a-nation】に革命を起こした伝説のナンバー『CHU-LIP』を全員で披露！俺も関係者席でたった一人でその例のダンスを妙な汗をかきまくってダンス！でもやっぱりどんなに恥ずかしかろうが、今年で三十路を迎えようが（私的なことですみません）、ここで踊らなきゃ何のために大塚 愛のライブに来てるのか分からない（笑）！最後はなぜか『くるみ割り人形』を踊りながら大塚さんご一行、退場。

　 夏の終わり、秋の始まり、日曜の日比谷の夜空に向かって響き渡る「もう一回！」コール。そして大塚さんご一行の再登場に心底喜ぶみんな。「みんなありがとうなぁ」と大塚が感謝を深々してると、去年の悪夢、もう一度。「何あれ！？」何らかの昆虫がステージの上を舞って、大塚、大パニック（笑）。が、なんとか気を取り直して、汗を拭いながら「来年、4枚目のアルバム（『LOVE PiECE』）を引っ提げたツアーが決定しました！」と、発表。そして今日はそのアルバムから『クムリウタ』を初披露。決して私は弱くない人間、まだまだ強くなっていける人間、そんな意思、あらゆる絶望に耐えてでも突き進みたいという想いを、独特の世界観で彼女は表現していた。
　「感謝しきれへん」「ほんまにほんまにありがとう」と、ファンにもスタッフにもバンドメンバーにも告げて、「最後、アンコール、楽しんどかなきゃアカンやん！」と、パンパンパパパン！と繰り返し繰り返しハンドクラップを続けた先に待っていた曲はもちろんこれ！『SMILY』。お子さんからお年寄りまで楽しめるナンバーで、文字通り、スマイリーな空間を生んでいく大塚。幸せそうに右へ左へと揺れるたくさんの、たくさんの腕。

　「もう別れの時間です」「この続きは来年のツアーで」「みんなからの素敵な素敵な誕生日プレゼント、ありがとう」「最後の曲にすべての感謝を込めて歌いたいと思います」と、大塚。そしてバイオリニスト・岡村美央の名を呼んで、なんと！その彼女が教えてくれたバイオリンを手にする。なんだ？この妙な緊張感は。しかし彼女のs手元から聞こえてきた音色は、不器用ながらも、やっぱりって感じはしたけれど、すごく想いが溢れていた。そんな懸命なサプライズをイントロダクションに彼女はなんと！オーラスに『ハニー』を披露。「ララララララ～ 愛してるよ ハニー♪」の大合唱！！最後は「愛してるよ みんな～」という気持ちがいっぱい込められた大塚さんからのメッセージ。そしてマイクレスの精一杯の「ありがとう」で、【【LOVE IS BORN】 ～4th Anniversary 2007～】の幕は閉じた。