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「香水」がチャートを席巻中の瑛人へインタビュー 「気付いてくれる人にだけ、気付いてもらえたら良いなって」

インタビュー

 2020年5月に、突如Billboard JAPAN HOT100で総合首位を獲得し、多くの人にカバーされるなど、ダウンロードやストリーミングを中心にヒットし続けている瑛人「香水」。2020年6月28日に開催されたTikTokとBillboard JAPANの初のコラボ生配信ライブ【Billboard JAPAN|TikTok Special Live Streaming #MusicCrossAid】
では「香水」の他に、未配信曲も披露するなど、肩ひじ張らないパフォーマンスを披露してくれた。そんな瑛人にインタビューし、普段の歌詞づくりや「香水」のヒットについて、語ってもらった。

いざステージに立つと、
ワクワクする気持ちの方が勝って良かった

ーー6月28日に開催された生配信ライブ 【Billboard JAPAN|TikTok Special Live Streaming #MusicCrossAid】
にご出演ありがとうございました。常に笑顔で歌っておられる姿が印象的でした。

瑛人:とにかくずっと楽しかったです。僕は、音楽を始めたのが2~3年前なので、ライブ自体まだ10回くらいしかやったことがありません。場所もバーのようなところがほとんどで、ライブハウスには一度だけ出演したことがあるんですが、緊張してガチガチになっちゃって…。なので、ビルボードライブ横浜で歌うことが決まった時は、緊張してヤバイかもなって思ってたんですが、いざステージに立つと、ワクワクする気持ちの方が勝って良かったです。

ーー憧れの平井大さんと、同じステージに立てましたね。平井大さんの演奏も客席で聴いてらっしゃいましたが、いかがでしたか?

瑛人:もう、最高でした!これまでにもライブには行ったことがありましたが、今回は距離もすごく近いし、他のお客さんもいない中で聴かせていただいて。終わった後も、挨拶させていただいたんですが、アーティストとしてのオーラもすごかったし、強さと優しさをすごく感じました。

ーー「リットン」という未配信曲も、披露していただきました。

瑛人:あの曲を作ったのは、僕のおばあちゃんがきっかけです。おばあちゃんの足音をイメージしながら、寝ている横で「リットン、リットン…」って歌いながら、作りました。(6月28日のライブに出演する)2週間くらい前にできて、急遽ライブで歌わせてもらったので、まだ配信するかどうかも決まってなくて。

ーーでは、あのライブ配信だけの幻の曲になるかもしれませんね。

瑛人:(笑)。

ーーでは、改めて瑛人さんが音楽を始めたきっかけから教えてください。

瑛人:僕には兄が2人いるんですが、僕が小学生の頃に3人のうちの誰かにって、おじいちゃんが自分のギターをプレゼントしてくれたんです。でも誰も触らなくて、押し入れにしまわれたままでした。そのあと高校を卒業して、19歳になった頃、僕は大学に行かなかったので、「みんなが大学に行ってる間に、何をしようかな」って、考えていて。昔から歌は大好きだったんですが、喉がそんなに強くないので、歌手になるのは無理だって諦めていたんです。でも清水翔太さんとか、平井大さんとか、色んな方の演奏を聴くうちに、自分の感じたことを歌で表現するシンガーソングライターになれたらなって思うようになって。そのタイミングで、押し入れからギターを出して、音楽学校に通い始めました。その学校は1年で辞めてしまったんですが、そこで教わったルンヒャンさんというアーティストの方に、今も楽曲制作を手伝ってもらっています。

ーー「香水」の歌詞は実話ですか?

瑛人:ほぼ実話ですね。恋人と別れてから3か月くらい経った時に作りました。歌詞の通り彼女のことを思い出したり、お酒をいっぱい飲んで遊んじゃったり…という駄目な時期があって。でも、どうやって話したら良いのかな…。ドルチェ・アンド・ガッバーナの香水を付けていたのは彼女じゃなくて、男性なんです。

ーー??

瑛人:すみません、説明が下手で(笑)。僕は、これまで大さん橋にあるハンバーガー屋さんで働いていたんですが、ドルチェ・アンド・ガッバーナの香水を付けていたのは、そのオーナーなんです。オーナーには、すごく可愛がってもらっていて、失恋した後も一緒に遊んでもらったりしていたんですが、ある日、オーナーと遊んだ帰り道に「ちょっと、持ってて」ってドルチェ・アンド・ガッバーナの香水を渡されて。その足で、オーナーと別れたあと、友達とセッションしに行ったんです。それまでも、定期的にギタリストやシンガーの友達と、演奏しながら、思いついた言葉を歌っていくっていうセッションというか、遊びをやっていて。会場に着いた時に、店長の香水を持ったままだったことを思い出したので、勝手に、その香水を使ったんです(笑)。それで、良い匂いだなって思いながら、歌ってたら、ふと「ドルチェ・アンド・ガッバーナのその香水のせいだよ」っていうフレーズが浮かんで。その場で、ヴォイスメモにも録っていたので、それをルンヒャンさんに聴いてもらいながら、曲を仕上げていきました。

ーーじゃあ、彼女の香水の香りではないんですね。

瑛人:彼女も香水は何かつけてたと思うんですけど、僕はあまり鼻がよくないので、何の香りかは分からなかったです…(笑)店長の香水を預かった時期は、ちょうど別れて3か月くらいして、彼女の香りを思い出していた時期でもあって、その2つがつながって、「香水」ができました。



▲ 「香水」


ーー瑛人さんが、「香水」が話題になってきているなと感じたのは、いつ頃?

瑛人:4月の半ばくらいですね。「香水」を発表してから1年くらいだったんですが、YouTubeの再生数が10万回を超えて。「やったー!」って喜んでたら、そのまま1週間たつごとに、100万回単位で増えていって、驚きました。

ーーコロナの影響で、3月末以降ライブができないなど、音楽業界は大きく変化しましたが、瑛人さんの場合は、コロナの影響もありつつ、「香水」のヒットもあり、生活が一変した数か月だったのではないでしょうか。

瑛人:コロナの影響が出始めた頃は、まだ「香水」は話題になっていなかったので、バイトがほぼ全部休みになって、家で映画を見たり、お酒を飲んだり、遊んですごしていました。その後、「香水」が話題になり始めて、色んな方との打ち合わせが始まって。どこかに所属する日がくるなんて、想像もしていなかったので、嬉しかったですが、どうしたら良いか分からなかったですね…。これまでとは、全然違う数か月でした。

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すごくハッピーな曲って、少ないんです

ーービルボードでは、「香水」が2020年5月25日付(2020年5月11日~17日集計)のHOT100で初の総合首位
となり、大きな話題となりました。普段から、チャートはご覧になりますか?

瑛人:これまでは、全然見なかったです。「香水」が1位になったチャートは、どのチャートだったんですか?

ーービルボードではダウンロードチャートやストリーミングチャートなど、単独のチャートもありますが、「香水」が首位になったのは、CDセールスや、ダウンロード、ストリーミング、Twitterなど8種類のデータを合算した総合チャートです。

瑛人:そうだったんですね…。「香水」がチャートインしてからは、ビルボードさんのチャートも見るようになりました。他にどんな曲がチャートインしているのかなって見てみたり、知らない曲だったら聴いてみたりしています。

ーー「香水」はTikTokで色んな人がカバーしたことをきっかけに、大きな話題となりました。以前、インタビュー(https://magazine.tunecore.co.jp/stories/62144/#i-3)で、「色んな聴き方ができる歌詞を意識している」とおっしゃっていました。今、TikTokでは自分の普段の生活に、共感した音楽を乗せて投稿するという動きが流行っていて、瑛人さんの「色んな聴き方ができる歌詞を意識している」という作り方が、香水のヒットの鍵ではないかと思っています。そういった歌詞づくりをされるようになったきっかけはありますか。

瑛人:なんだろう…。ハンバート ハンバートさんの「おなじ話」かもしれません。初めて聴いた時は、「可愛い曲だな」っていう印象だったんですが、よくよく歌詞を聴いてみると、「君のそばにいるよ」っていう歌詞のあとに、「どこへ行くの?」っていう歌詞だったり、すごく不思議な内容で。目の前にいるはずなのに、「どこにいるの?」「どこへ行くの?」っていう歌詞なのは、なんでなんだろうって。それで友達に話していたら、「この曲は目が見えない人の歌なんだよ」って言われたんです。本当は、どういう意味の歌詞なのかは、分かりません。でも、そういう解釈の仕方もあるんだって、その瞬間 ぞくっとして。その時に、一つの歌詞で色んな解釈の仕方ができるのって、面白いなと思いました。

 僕自身、いつも笑顔だって言われますが、こう見えて実はネガティブな部分もあるし、すごくハッピーな曲って、少ないんです。「HIPHOPは歌えない」も「香水」も、ハッピーな曲ではないですよね。ネガティブな部分もあるんだけど、でもあまりネガティブな部分は人には見せたくなくて。みんなに分かってもらいたい気持ちもあるけど、自分の心の中にだけしまっておきたい気持ちもあるというか…。そういう性格が、歌詞にも表れているのかもしれません。

ーーあまり大きな声では言いたくないけど、自分の弱いところも分かってほしいみたいな?

瑛人:そうですね・・・。どう言えば良いか難しいけど、そういう弱いところを気づかれたくないっていう感じかな。で、ハンバート ハンバートの曲を聞いて、「あれ?」って思ったみたいに、気付いてくれる人にだけ、気付いてもらえたら良いなって。もちろん、そこに気付かずに ただ良い曲だって思って聞いてもらえれば、それで嬉しいですし、全ての曲作りをそうしているわけではないんですけど、そうやって作ることもあります。

ーー先ほど、最近はチャートを見て知らない曲があれば聴いてみるというお話がありましたが、他にはどのように新しい曲を知ることが多いですか。

瑛人:お店とか街中で流れている曲を聴いて、Shazamして知ることが多いですね。僕は、ハマったらずっと聴き続けるタイプなので、ストリーミングでもプレイリストで知らない曲をいっぱい聴くというより、検索した曲を毎日ずっと聴いてます。それで好きになったフレーズを、移動中の車の中とか、道で歩いている時とかに歌っています。変な人だなって思われてるかも。今日は、森山直太朗さんの「人間の森」を、移動中にずっと歌ってました(笑)。

ーーこれまでに、CDをリリースしたことはありますか。

瑛人:TuneCoreで作ったことがあります。これまで、イベントに出ていた時って、色んな人のギャラとか経費を払ったら、自分の分が残らないことも多くて。それで、なんとかしようと思って、TuneCoreのサービスを使って、イベントで販売するためのCDを作りました。でも、ちょうど作った後にコロナが広がってしまったので、作ったCDはみんなにあげましたけど。でも、ちゃんとしたパッケージじゃないし、いつかCDをちゃんとリリースしてみたいです。やっぱり、物として渡せるCDは、良いなって思います。

ーー最後に、これからの目標があれば教えてください。

瑛人:色んな曲も作ってみたいし、あいみょんさんみたいに、CMで女優さんと共演してみたいし(笑)、全国ツアーも。何でも挑戦していきたいです。

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