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ジョージ・クリントン来日記念特集~久保田利伸が語るジョージ・クリントン「総帥の下で生まれる『自由』なグルーヴ」



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 「2019年を最後にツアーから引退する」。 昨年の春に届いたジョージ・クリントンのこの決断はファンク/ソウル・ファンのみならず、音楽シーンに大きな衝撃をもたらした。もう日本で彼の姿を見ることはできないのだろうか……。そんなすべての音楽ファンの想いに応えて、まさに奇跡と呼びたい来日ステージが2019年4月末に実現する。80年代の来日公演からその真髄を体感してきた久保田利伸が「ファンクの総帥」の魅力を語ってくれた。

混沌に感じた「ミュージシャンシップ」

 P-FUNK =ジョージ・クリントンという、僕にとって「神様」のひとりに出会ったのは、大学に入った1981年頃。ジョージ・クリントン率いるパーラメントの「フラッシュ・ライト」とファンカデリック名義の「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ」の大ヒットが1978年ですから、その辺りのナンバーを先輩から教えられて、そこから遡って聴きまくりました。



▲Parliament - Flashlight


 時代的にはブラック・コンテンポラリーが流行っている一方で、ディスコ寄りのファンクも全盛だったんですよ。リック・ジェームス、ロジャー(ZAPP)、D・トレインとか、ダンスフロア仕様のファンクなんだけど、それを聴いていても、 「あ、この根っこにはジョージ・クリントンがいるんだ」って気づき始めたんですね。




▲Zapp&Roger - So Ruff, So Tuff


 初めてライブを見たのは、80年代末か90年代頭の来日公演です。とにかくそのライブの「自由さ」が強烈。ファッションもバラバラだし、何時間も演奏するから途中でドラムが交代したり、ジョージ・クリントンも出たり入ったり歌ったり歌わなかったり。もうどの曲のどの部分かもわからなくなるんだけど(笑)、でも、その混沌をずっと聴いていられる。「あ、これがミュージシャンシップなんだ」って思いましたね。メンバーも変わるし、リハーサルをどれくらいやっているのかも怪しいんですけど(笑)、でも、総帥の指揮下でひとつのグルーヴになれる。バンドの編成やライブの構成、ファッションも含めて、お約束に縛られていない「自由」がある。




▲EXIT 2016 | George Clinton Live FULL Concert HD Show


 それは、ジョージ・クリントンの生き方でもあるんだと思うんです。僕は「ファンキーって何ですか?」と質問をされたら、ひとつの答えとして「ジョージ・クリントンのように自由であること」を挙げますね。

CD
▲『BONGA WANGA』

 僕の1990年のアルバム『BONGA WANGA』で、ジョージ・クリントン、ブーツィー・コリンズ、そしてEU のドラムのJUJU に参加してもらっているんですけど、ジョージ・クリントンにデモを渡したら、「まず、テンポをくれ」って言って、そのテンポでなんだかつぶやき出すんです。そのウニュウニュしたつぶやきに、いつの間にか集まってきたメンバーのチャットが乗ってきて曲ができあがっていく。A メロだのサビだのも関係ない。その様が本当に凄かった。


「自由」から生まれた「本物感」

 その後、セントラル・パークでのライブに行ったことがあって、楽屋を訪ねたら「よし、オレが呼び込むからステージに出ろ」って言われたんですよ。勇気を出してステージ袖で待ってたんだけど、結局は呼ばれなかったという体験もしました(笑)。

 こうしてジョージ・クリントン自身は、コアな「オレ流ファンク」を突き詰めてきたわけですけれど、チャート・アクションが証明しているように、それはいわゆるロック・ファンにも届いて、さらにグローバルな影響力を持つようになったわけですよね。それこそ彼の音楽が生み出した「ファンクの本物感」がそうさせたに違いないと思っています。

 今回、最後の来日になるわけですが、個人的には「長い間、ありがとうございました。お疲れさまです!」という気持ちです。彼の唯一無二の存在感、世界の共通言語としての「ファンク」は、これで消え去るわけじゃありませんから。




▲One Nation Under A Groove - Funkadelic (1978)



ジョージ・クリントン「コンピューター・ゲームス」

コンピューター・ゲームス

2018/12/05 RELEASE
UICY-77154 ¥ 1,100(税込)

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Disc01
  1. 01.ゲット・ドレスト
  2. 02.マンズ・ベスト・フレンド/ループジラ
  3. 03.ポット・シェアリング・トッツ
  4. 04.コンピューター・ゲームス
  5. 05.アトミック・ドッグ
  6. 06.フリー・オルタレイション
  7. 07.ワン・ファン・アット・ア・タイム

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