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スティーヴン・ビショップ来日記念特集~ウェストコースト随一の粋なシンガー・ソングライターの魅力とは?

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 ウェストコースト随一の粋なシンガー・ソングライター、スティーヴン・ビショップが歌う「オン・アンド・オン」や「エヴリバディ・ニーズ・ラヴ」といった洗練されたヒット曲に代表されるように、彼が生み出す言葉とメロディは極上だ。ジェイムス・テイラーほどアーシーではないし、ポール・サイモンのようなテクニシャンでもないが、その自然体で飾らない歌声や楽曲は、まさに都会派ならではの魅力に満ちている。今も変わらぬ歌世界を紡ぎ出す職人シンガー・ソングライターの魅力に迫ってみたい。

 スティーヴン・ビショップは、1951年にカリフォルニア州のサン・ディエゴで生まれた。幼い頃から音楽には興味はあったようだが、大きく目覚めたのはビートルズのアメリカ上陸だった。1967年にテレビの人気音楽番組『エド・サリヴァン・ショー』に出演したビートルズを観て、ギターを手にとった。そして、14歳で結成したザ・ウィーズというグループで、ブリティッシュ・ビートに影響を受けたポップスを演奏し始める。

 その後、プロのミュージシャンを目指してロサンゼルスに拠点を移したスティーヴンは、様々なレコード会社や出版社などに売り込みに行く。しかしなかなか認めてもらえず、細々と音楽活動を継続していった。そんな中、セッション・ドラマーとして有名なラス・カンケルの当時の妻であり、シンガーとしても活動していたリア・カンケルと出会う。彼女との共作曲「Under The Jamaican Moon」がニック・デカロのアルバム『Italian Graffiti』(1974年)に取り上げられたことから徐々に運気が好転。さらに、アート・ガーファンクルの名盤『Breakaway』(1975年)にもスティーヴンの楽曲が2曲も収録され、ようやくソングライターとして認められるようになった。

CD
▲『ケアレス』

 そんなスティーヴンに目をつけたABCレコードは、ソロ・アルバムをオファー。1976年にはついにファースト・アルバム『Careless』でソロ・デビューを果たす。エリック・クラプトン、ラリー・カールトン、アート・ガーファンクル、チャカ・カーンと、これまでに培った人脈をフルに活かした豪華なゲスト・ミュージシャンが集った本作だが、あくまでもスティーヴンのスタイリッシュな歌と楽曲の良さを伝える名盤に仕上がった。ブルー・アイド・ソウルの傑作「Save It For A Rainy Day」(ビルボードHot100で22位)と彼の代名詞といってもいい「On And On」(米ビルボード・ソング・チャート“Hot100”で11位)というヒット・ナンバーも生まれ、西海岸の音楽シーンで確固たる地位を築く。



▲ 「On And On」


CD
▲『Bish』

 1978年にはセカンド・アルバム『Bish』を発表。本作にも、前作に引き続きチャカ・カーンやアート・ガーファンクルが参加した他、デヴィッド・フォスター、ナタリ・コール、マイケル・マクドナルド、レイ・パーカー・Jr.などがクレジットされている。音楽的にもさらに洗練度を高め、米ビルボード・ソング・チャート“Hot100”で32位を記録した「Everybody Needs Love」や、後にアート・ガーファンクルが自身のアルバムでカヴァーした「Looking For The Right One」などが収められた。

CD
▲『哀愁マンハッタン』

 その後も、フィル・コリンズやフィービー・スノウらも参加した『Red Cab To Manhattan』(1980年)や、スティングをゲストに迎えたことで話題になった『Bowling In Paris』(1989年)を筆頭に、多作とは言えないが地道にアルバム・リリースを重ねてきた。なかには、日本オンリーのライヴ・アルバムなども含まれている。ここ近年では『Be Here Then』(2014年)や『Blueprint』(2016年)といった力作を発表し、その変わらない歌声を聴かせてくれた。

 スティーヴンがユニークなのは、映画界との関係だ。ジョン・ベルーシが主演したコメディ映画の傑作『アニマル・ハウス』(1978年)では主題歌「Animal House」を提供。また、1983年にはダスティン・ホフマン主演の『トッツィー』の主題歌「It Might Be You」が、米ビルボード・ソング・チャート“Hot100”で25位を記録するヒットとなった。ただし、この曲は自作ではなく、デイヴ・グルーシンとアラン&マリリン・バーグマン夫妻によるものだった。そして、日本でも大ヒットした1985年の『ホワイトナイツ/白夜』では、フィル・コリンズとマリリン・マーティンがデュエットした愛のテーマ「Separate Lives」を書き下ろしている。他にも『チャイナ・シンドローム』(1979年)の「Somewhere lnbetween」や『愛が微笑む時』(1994年)の「(You'll Always Be) My Heart And Soul」などを手がけているが、主題歌以外でも『ケンタッキー・フライド・ムービー』(1977年)や『ブルース・ブラザース』(1980年)などにカメオ出演するなど、とにかく映画には縁が深い。



▲ 「It Might Be You」


▲ 「Separate Lives」


 他にも、彼が作家として提供した楽曲も多数あり、地道ながらも音楽シーンに貢献した功績は大きい。そして、そんな彼が今も第一線で活躍し、コンスタントにツアーを行っているのだ。ぜひとも名曲を生み出す天才、スティーヴン・ビショップの歌声を、ステージで体感していただきたい。

 

 

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