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デヴィッド・ボウイ トリビュート公演直前:アール・スリック&バーナード・ファウラー Special インタビュー

 今年1月10日にこの世を去ったデヴィッド・ボウイ。彼のトリビュート・ライヴが5月に開催される。

 『ヤング・アメリカンズ』に続いて、今から40年前の1976年、ボウイは11枚目のアルバム『ステイション・トゥ・ステイション』を発表。英米のそれぞれアルバム・チャートでTOP10入りするベスト・セラーを記録。わが国でも話題になった。レコーディングにはそれまでボウイのツアーやアルバムで見事なギターをプレイしたアール・スリックが参加。

 今回の日本でのトリビュート・ライヴはそのアール・スリックを中軸にして『ステイション・トゥ・ステイション』をフィーチャーしてのステージ。彼はその後もボウイを様々な角度からサポートしたことはよく知られている。

 そしてヴォーカルはローリング・ストーンズのコーラスを25年以上続けているバーナード・ファウラー。その実力、ストーンズは勿論のことミック・ジャガー、チャーリー・ワッツ、ロニー・ウッド、キース・リチャーズらのソロ・アクティビティーでも発揮されている。ストーンのサポート・ミュージシャン、ティム・リースとのジョイント・コンサートなども素晴らしかった(東京公演では筆者もMCさせてもらった)。バーナードはアルバム『フレンズ』(2006年)、『THE BURA』(2015年)も発表している。

 そんな【アール・スリック and バナード・ファーラー perform”ステイション・トゥ・ステイション“ in tribute to デヴィッド・ボウイ】を前に、アールに来日直前インタビュー!(Text:Mike Koshitani)

次ページにて、特集第2弾「バーナード・ファウラー マイ・ミュージック・ライフを語る」も公開!

アール・スリック来日直前インタビュー

――ニューヨーク出身、子供の頃はどんな音楽を聴いていましたか?

アール・スリック(以下ES):ブルースをよく聴いていたんだ。バディ・ガイやファッツ・ドミノ、そしてロバート・ジョンソン。そういったジャンルの音楽が好きだった。

――ギターも早くから弾いていたの?

ES:そう、最初はブルースやロックを弾いていたんだけど、ビートルズが現れてからは、ほかのキッズ達と同じように、彼らの音楽にとても大きな刺激を受けたよ。

――1970年代初頭からプロとしてビッグ・アップル(NY)で活動を開始したと。

ES:デヴィッド・ボウイに出会う1974年以前は、いくつかバンドをかけもちしていた。彼と出会って俺にも初めてのビッグ・チャンスが到来したんだ。

――1974年、デヴィッド・ボウイの【ダイアモンド・ドッグス・ツアー】にも、もちろんギタリストとして参加。

ES:その頃、コンポーザー兼ミュージシャンで俺のメンターでもある、今は亡き偉大なるマイケル・ケイメンがデヴィッドと仕事をしていて、俺の為にオーディションをセッティングしてくれたんだ。オーディションでは、流れる曲に合わせてただ演奏しろ、と言われるだけで、どのキーで弾けばいいのかも教えてくれなかったんだ! 結果、合格!!

――その後もボウイのツアーに参加。彼はだんだんとソウル・ミュージックに傾倒。アルバム『ヤング・アメリカンズ』のレコーディングはどうでした。

ES:『ヤング・アメリカンズ』で、俺はほぼ全曲でギター参加したけど、ギタリストの立場から考えると、カルロス・アロマーの作風に近かったと思う。彼のプレイ・スタイルにあっているからね。素晴らしい楽曲がいくつも収録されている。『ヤング・アメリカンズ』に携われてとても誇りに思うよ。(以下ライブ動画では若きアールの姿も確認できる。)

David Bowie- Young Americans

――そして『ステイション・トゥ・ステイション』でも素晴らしいギターを披露しているね。このアルバムの魅力は?

ES:褒めてくれてありがとう。これといった理由はないんだけど、デヴィッドと共演したアルバムの中で、『ステイション・トゥ・ステイション』が一番のお気に入りだね。レコーディングは気のおもむくままに、俺もそれに合わせて演奏しただけさ。ポップ・ソングを見事に崩し、かつ、曲の本質を失わない。そんな作品はこれまでなかったし、芸術的に実に素晴らしい、重要なアルバムに仕上がっている。これほど“クレイジー”なことをしていたのは、当時、フランク・ザッパぐらいだった。アバンギャルドな作品を目指していたわけでもなく、ポップ作品で、それまで誰もこんな作品に取り組んでいなかった。俺は24歳のガキだったけど、あの若さであれだけの偉業を成し遂げたと思うと驚きだよ。俺が彼のために手掛けた中で最高傑作!アイコンの作品さ。

David Bowie - Station to Station (Live 1978)

――あなたはジョン・レノンともレコーディングしていますね。

ES:ジョンと初めて会った時、彼はこんな風に声をかけてくれたんだ、「久しぶりだな」って。ポカンとしていたら、彼が「ビートルズのメンバーを忘れるなんて、どうしたらそんなことが出来るんだい?」って言うんだ。実は1975年の「フェイム」のレコーディング時に会っていたんだけど、俺はそのことをすっかり忘れていたんだ! 二人とも腹を抱えて笑ったよ。実はジョンとは『ヤング・アメリカンズ』と『フェイム』で共演してた。当時の俺はただの若造だったけど、彼は俺のことをちゃんと憶えくれていたんだ。『ダブル・ファンタジー』に参加してくれないかって声をかけてくれた頃のジョンは、すっかりクリーンでマクロビオティックな生活を送っていた。一方で、俺はまだまだニューヨーク出身のしがないロッカー、生活面でも苦労していた。レコーディング初日はものすごく緊張したよ。アンプやら他の機材の準備しようと早めにニューヨークのスタジオ、ザ・ヒット・ファクトリーに向かったんだけど、ジョンは俺が着くよりも前にスタジオ入りしていたんだ。

 ジョンは最高だよ。アルバム制作に集まったバンド・メンバーは超一流のプレイヤーが勢ぞろい。ギターにヒュー・マクラッケン(天国で安らかに眠っていてくれ)、ベースにトニー・レヴィン、ドラムにアンディ・ニューマーク。彼らはすでにヒット作で演奏していたけど、俺なんかクラブとかダーティーなバーで弾いていただけさ。セッション経験がそれまで何度かあったけれど、こんなビッグなセッションは初めてだった。それに、他のミュージシャンよりずっと年下だったし…。そんなメンバーの中でジョンを一番近くに感じた、だからこそ彼とはすぐに意気投合できたんだ。

John Lennon - Woman

――その後はボウイも参加したソロ・アルバム『Zig Zag』をリリースしたね。

ES:当初、ソロ・アルバムを出すつもりはなかったんだ。ただ曲を書いていて、いつの間にか、「3曲できた。また新しい曲が4曲増えた。おお、10曲も出来たぞ」っていう感じで、とても楽しかった。未完成の曲でさえも、初心者にしてみればとても良い出来栄えだった。そのうち、「俺にも何か出来るんじゃないか?」って気づいた。それまでとは全く違う真新しい楽曲。そんな曲作りは初めての体験。別の自分を発見したような気分で、とても気持ちが良かったよ。

 マーク・プラティと俺の会話を立ち聞きしていたデヴィッドが、マークにこう囁いたそうだ、「僕をこのアルバムに少し参加させようなんて、ちっとも考えていないそうだね」って(笑)。それでデヴィッドも参加してくれたんだ。

David Bowie/Earl Slick - Isn't It Evening (The Revolutionary)

――最後に日本の魅力とファンへのメッセージをお願いします。

ES:ライヴで暴れまくる準備は出来ている! デヴィッドの死の悲しみが続く今、楽しむことがロックンロール・ヘブンで僕らを見守ってくれている彼への恩返しになる。これまで5~6回、日本に行ったことがあるし、日本でプレイするのは大好きなんだ。最高のファンばかりで、多くの音楽好きのみんながデヴィッド・ボウイの音楽をリスペクトしていることをひしひしと感じてきた。日本で演奏できることをとても楽しみにしているよ!

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 続いて、もう一人の公演のキーマン、バーナード・ファウラーの特集記事も公開。プライベートでも親交の深いマイク越谷が、本人から聞き出したバイオグラフィーを元に再構成。『バーナード・ファウラー “マイ・ミュージック・ライフ”を語る』をお送りしたい。

 バーナードとはすっごくウマがあう。いろんなところで遊んだ。チャーリー・ワッツ・クインテットのイベント、ロニー・ウッドのツアー、ティム・リース&バーナード、ストーンズ・クルー・パーティーなど彼の絡んだライヴでは10回くらいMCしたこともある。

 大の親日家で、奥様はアメリカ生まれの日本人。彼女のご両親を紹介してもらったことがあるけど(ニューヨークでのチャーリー・ワッツ・ジャズ・コンサート後の打ち上げパーティー。キースやスティーヴ・ジョーダンも参列していた)、お父様はお医者さん。バーナードの好物はお茶漬け、煎餅、海苔、そして名古屋で何度も一緒に食べに行ったひつまぶし。タクシーに乗って「MIGI、HIDARI、KOKODE IIDESU」。レストランに行って「BIIRU、KUDASAI、HITOTSU。HAIZARA ONEGAISIMASU」。

 そんなバーナードのバイオグラフィーを、本人の言葉で改めて振り返りたい。(Mike Koshitani)

クイーンズ生まれシンガーの華麗な共演歴

 1959年1月2日、ニューヨークのクイーンズで生まれた。小学校高学年からゴスペルをはじめ様々な音楽に親しんでいたよ。ハイ・スクールに入ってからはトロンボーンをプレイ。その後、クイーンズ・カレッジのジャズ・ワーク・ショップで音楽理論を学び、その時代に歌手としての才能を見いだされたんだ。


▲坂本龍一『未来派野郎』

 1970年代後半からニューヨークでプロとして活動を始めた。1980年代に入りハービー・ハンコック・プロジェクトに参加。1980年から84年はピーチ・ボーイズに、1986年にはアフリカ・バンバータにもジョイン。同年、坂本龍一のアルバム『未来派野郎』にも参加して、コンサート・ツアーでもステージに立ったよ。

 共演アーティストは数多い。吉田美奈子、細野晴臣、ザ・イージー・ウォーカーズといった日本のアーティストをはじめ、ギル・スコット・ヘロン、スライ&ロビー、ブーティー・コリンズ、デュラン・デュラン、ハーブ・アルパート、ポール・キャラック、リヴィング・カラー、ロバート・プラントetc etc etc…。

 88年から90年はタックヘッドに、1995年にはスティーヴィー・サラスとのニッケルバックに参加。ストーンズ・ファミリーのティム・リースとは、この10年以上、機会あるごとにアルバム・レコーディング&ライヴを楽しんでいるよ。

ストーンズとの深い関係


▲ミック・ジャガー『シーズ
・ザ・ボス』

 ミック・ジャガーとの出会いは1984年だった。ハービー・ハンコック・ツアーが1週間オフになって家に戻ったら、ビル・ラズウェルから電話が掛かって来て、すぐ空港に戻ってロンドンに来いと言った。何がなんだか分からず、JFKからヒースロー空港へ行くとビルが待っていて、タクシーに押し込まれた。ロンドン北西部の高級住宅地スイス・コテージというところにある大きな家の前でタクシーは止まった。でも、まだ何も教えてもらえなかった。誰の家なんだろうと思いながら「ビル、どういうこと?」と聞くと、「バーナード、ローリング・ストーンズは好きか?」と言われた。「もちろん」と答えたよ。僕が親父から初めてもらったレコードは『12×5』だったんだ。ビルはそれ以上何も言わず、ニヤニヤしながらその大きな家に入っていく。すると黒人のセキュリティがいて、僕にもっと中に入れという。進んでいくと、リヴィングの床に座ってギターを弾いているミック・ジャガーの姿が見えたんだ。驚いたよ!そこからビルが「ミック、こいつだよ、こないだ話してた奴」紹介してくれて、ミックのソロ・アルバム『シーズ・ザ・ボス』(85年)に参加したんだ。88年に日本とオーストラリアで行われたミックのソロ・ツアーにもリサ・フィッシャーらと加わったよ。

 1989年、ミックから電話がはいり、ストーンズの新作を作っているんだけど手伝ってもらえないかと言われた。まず、ミックと一緒にヴォーカル・パートを色々とやった。その後、チャーリー、ロニー、キースがスタジオに姿を現した。ヴォーカルの録音が終わり、ミックの「それじゃ、本番に行こう」という掛け声で、ロニーやキースもジョイントして4、5曲録音。それがアルバム『スティール・ホイールズ』(89年)になった。それから25年以上。ずっとストーンズと一緒だ。

 『スティール・ホイールズ』の録音終了後、プレイバックしている時、ふと視線を感じた。キースがじっと僕の方を見ているんだ。「何かまずいことでも?」と聞いたら、「何も悪くない。お前のことを気に入りたくはなかったんだ」と言われた。「なぜですか?僕は悪い人間ではありませんよ」と返すと「スティーヴ・ジョーダンからお前は良い奴だということを聞いていた」と言う。「では、どうして気に入りたくなかったんですか?」と言ったら「君がミックの手下(ミックス・ボーイ)のひとりだからさ。でもいいさ」と言って、キースは握手してくれたんだ。それ以来、ずっと仲良くしてもらっている。キースのソロ・アルバム「メイン・オフェンダー」(92年)と「クロスアイド・ハート」(15年)にも参加したよ。

 チャーリー・ワッツはジャズ歌手としての才能を見出してくれた。すごく感謝している。90年代初頭、チャーリーのジャズ・ライブのツアーに詩の朗読で加わったんだけど、その後、歌手としてもステージに立って、彼のソロ・アルバム『ウォーム・アンド・テンダー』(93年)と『ロング・アゴー&ファー・アウェイ』(96年)でジャズを歌うことが出来たんだ。

 ロニー・ウッドの92年のアルバム『スライド・オン・ディス』にも参加したね。日本でも93年に武道館を含めてライヴした。その時はマイクがMCしてくれたんだよな。6年前にリリースされた『アイ・フィール・ライク・プレイング』も楽しいレコーディングだったね。


ソロ・アーティストとして

 2006年、僕のファースト・アルバム『フレンズ』がリリースされた。日本のレコード会社がリリースしてくれたんだ。参加ミュージシャンはダグ・ウィンビッシュ、デイヴ・アグリジーズ、ウィル・カルホーン、ロニー・ウッド、スティーヴィー・サラス、カーマイン・ロハス、ワディ・ワクテル、リサ・フィッシャー、キャット・ダイスン、ダニー・セイバー、ジミー・リップ、アイヴァン・ネヴィル。


▲Bernard Fowler『THE BURA』

 2015年には、2ndアルバム『THE BURA』をリリースした。こっちはリサ・フィッシャー、ワディ・ワクテル、ダグ・ウィンブッシュ、Slash、シュガー・ブルー、アルバート・リー、チャックD、ダリル・ジョーンズらが参加した。ストーンズ・ファンや音楽ファンにお馴染みのミュージシャンの名前も多く見つかると思うよ。5月に東京と大阪でぜひ会おう!

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