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2019/06/21

<インタビュー前編>マーク・ロンソン、離婚を経て誕生した“ハートブレイク”アルバムに込めた想いを語る

 【グラミー賞】、【アカデミー賞】、【ゴールデン・グローブ賞】のトリプル受賞を果たした天才プロデューサー/DJ/アーティストのマーク・ロンソンが、4年ぶりの新作『レイト・ナイト・フィーリングス』を2019年6月21日にリリースする。

 「アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ」 が全米チャート14週連続で1位を獲得し、一世を風靡してから約4年。2018年12月には星野源とのWヘッドライナー・ショーを大成功させ、作曲で参加したレディー・ガガ初主演の映画『アリー/ スター誕生』の主題歌「シャロウ ~『アリー/ スター誕生』愛のうた」のヒットで主要音楽&映画賞3冠を達成したマークの5作目となるニュー・アルバムには、カミラ・カベロやマイリー・サイラス、リッキ・リー、アリシア・キーズなど様々なアーティストが参加している。「僕が今までに作ってきた作品の中で、最も重要な作品」と語る新作の楽曲制作過程やアーティストとの制作の裏側を語ってくれた。


―まずは、「シャロウ~『アリー/スター誕生』愛のうた」の成功、おめでとうございます。あなたにとって「アップタウン・ファンク」に続くマイルストーンになった気がしますが、どんな風に受け止めていますか?
マーク・ロンソン(以下マーク):そうだな、こういう風に評価されるってことはもちろん素晴らしいよ。でも同時に、諸刃の剣にもなり得るよね。なぜって僕としては、常にグッド・ミュージックを作ることだけに専念していたいわけだし、誰かに「さあ、君にこの賞をあげるとしよう」と言われたからって、急に、ほかの人たちより自分が優れていると思い始めたりしてはいけない。とにかくありったけの時間をスタジオで過ごして、よりいいものを作ることに集中していたい人間で、そういう意味ではハードコア過ぎるところもあるんだろう。でも僕にとってそれが最も大切なことなんだ。例えば、ニュー・アルバムの『レイト・ナイト・フィーリングス』にしたって、「シャロウ~『アリー/スター誕生』~愛のうた」や「アップタウン・ファンク」と同じように成功する保証はどこにもないけど、力の限り僕が思う最高の形にしてリリースしたい。それにこのアルバムは、非常にパワフルなエモーションに裏打ちされているがゆえに、これまでの作品よりも強い思い入れがあるように感じるんだ。ほかのアルバムはどちらかというと、楽しむことを主眼にしていたからね。

 
 
 
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WE’RE OFF THE DEEP END #goldenglobes

Mark Ronsonさん(@iammarkronson)がシェアした投稿 -2019年 1月月6日午後6時34分PST


―そんな「シャロウ~」の成功の裏で、『レイト・ナイト・フィーリングス』は完成までに紆余曲折があって、当初作っていた音源をボツにしたそうですね。
マーク:そうなんだよ。でも結果的には良かったと思うんだ。そもそも僕がソロ名義のアルバムに着手する時は、毎回まず最初に、DJの視点で構想を膨らませる。つまり、「どうやったらみんなを踊らせることができるだろうか?」とか「どうしたら楽しいアルバムになるだろうか?」といったことを考えるんだ。そして曲作りに関しても、何しろ僕が人生で初めてプレイした楽器はドラムだから、常にビートを優先して取り組む。ビートをいじって、何か気に入ったものができたら、それを土台にして曲を組み立てるんだよ。「アップタウン・ファンク」も「バン・バン・バン」も「ウー・ウィー」も、みんなそういう成り立ちだった。

ところが今回の僕は、結婚生活の破綻という試練に直面して、エモーションが音楽に入り込むことは避けられなかった。僕にはそれを止めることができなかった。だから従来とは異なる趣向のアルバムになったんだ。「よし、だったら、今の自分が抱えているエモーションから目を背けないで、正面から向き合って、音楽に注ぎ込もうじゃないか」と考えたのさ。なぜって、本当にパワフルなエモーションだったから、それが導くままに進めば、素晴らしい音楽に辿り着くんじゃないかと思った。それって少々皮肉な話ではあるんだけどね(笑)。そんなわけでソングライティングはいつもよりエモーショナルなプロセスになった。でも、その後はまた作業を楽しめたよ。一旦曲ができて、「なるほどね。じゃあこれに相応しいベースラインはどんな感じだろう?」と見極めていくのは楽しかった。なんだかんだ言って、究極的にはこのアルバムも、聴きながらみんなに踊ってもらいたいし、楽しんでもらいたいからね。

―すると、こんなに長いキャリアを持つあなたにとっても、全く新しい体験をしたわけですから、戸惑いもあったんでしょうね。
マーク:うん。普段の僕はエモーショナルな音楽を作るアーティストたちとコラボしていて、例えばエイミー・ワインハウスやレディー・ガガやクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジといった人たちが、ありったけのエモーションを注ぎ込んで音楽を作るのを支える側にいた。そしてマーク・ロンソンのアルバムを作る時には、逆に、「パーティーにぴったりの音楽を作るぞ!」っていうような軽い気持ちで臨んでいたからね。

今作ではエモーションが音楽に入り込んだと語るマークは、今作に収録される曲たちを切なく、メランコリックでも踊れるビートを兼ね備えた“サッド・バンガーズ(=切ないアゲ曲)”と呼んでおりそれについても聞いてみた。

―元々“サッド・バンガー”と総称されるタイプの音楽は好きだったんですか?
マーク:そうだな……多分、実際にこのアルバムを作り始めるまで、そんなに意識していなかったと思うんだけど、昔から惹かれていたんだろうね。うっすらとメランコリックな部分があって、でも踊ることができて、場合によっては単に明るい曲よりも大きな高揚感を与えてくれるような曲に。例えばダフト・パンクの「ワン・モア・タイム」みたいな曲も、ほんの少しメランコリックだよね。マイナー・コードには何かスペシャルな作用があるんだよ。

―アルバムはまさにサッド・バンガー集になりましたが、エモーショナルな拠り所を持つ作品ということで、完成した時には一定のカタルシスを得られたんでしょうか?
マーク:うん、そう思うよ。自分の内側からエモーションが迸り出るような感覚を味わえて、本当に良かった。なんというか、濃厚なエモーションの泉が自分の中にあって、何かが違うんだよ。鍵盤に触れると、まるで指先からエネルギーが放出されているような感覚があってね。一番重要なのは、こういう風に精神的に強いインパクトを与える体験をしたなら、せめてそれをエネルギー源にして、グッド・ミュージックを作り出して、意味を持たせるってことさ。

―作詞の作業にも、従来より積極的に関わったんですか?
マーク:そうだね。これまでとは違って、今回の歌詞には僕自身がかなり深く関わっているし、それ以前に、アルバム全体のエモーショナルな立ち位置をしっかりと定めたんだ。そして、普段からパーソナルな歌詞を綴っている、キング・プリンセスやエンジェル・オルセンといった素晴らしいアーティストたちとコラボしたことも、いい結果につながったよ。みんな、このアルバムの核にどんなエモーションがあるのか知り尽くした上で曲作りに取り組んでくれたから、僕がそれほど関わっていない曲にも、ものすごく思い入れがある。より強いコネクションを感じるんだ。(インタビュー後編へ)

訳・新谷洋子


◎リリース情報
アルバム『レイト・ナイト・フィーリングス』
2019/6/21 RELEASE
SICP-6115 2,200円(tax out.)
全13曲+国内盤限定ボーナストラック3曲

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