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2025/10/09 18:00

<インタビュー>10-FEETが極みを目指すすべての人に捧ぐ『ウマ娘』主題歌 「スパートシンドローマー」で到達した新たなギア

10-FEETが新曲「スパートシンドローマー」を10月8日に配信リリースした。この曲は10月5日からスタートしたテレビアニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』第2クールオープニング主題歌。映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌「第ゼロ感」をきっかけに、それまで以上に幅広い層にその名を知らしめた彼らだが、今回が初めてのテレビアニメ主題歌となる。『ウマ娘』という爆発的な人気を誇るコンテンツとの初コラボレーションに対し、メンバーのTAKUMA(Vo. / Gt.)、NAOKI(Ba. / Vo.)、KOUICHI(Dr. / Cho)はどんなことを考えて楽曲制作に臨んだのか、話を聞いた。(Text & Interview: 西廣智一/Photos by 筒浦奨太)

──10-FEETと『ウマ娘』という2つの並びが強烈だなと感じる今回のコラボレーションですが、最初に主題歌の話が来たとき、率直にどう受け取りましたか?

TAKUMA:かなり前から『ウマ娘』の存在は知っていましたけど、その時点では詳しくは知らなかったので、まずは作品を観てみようと。

NAOKI:僕ももともと『ウマ娘』という名前だけは知っていました。実際に触れてみると……競走馬を擬人化した“ウマ娘”と呼ばれる女の子が仲間と競い合いながらトップを目指すというスポ根物語で、その設定も含めてすごく斬新なアイデアだと思って。しかも、実際の競走馬とリンクするストーリーもあって、上から目線ではありませんが、本当によくできた面白い漫画やなと思いました。

KOUICHI:僕も今回初めて『ウマ娘 シンデレラグレイ』を全部観てみたら……途中からグッとハマってしまって(笑)。単純に面白かったです。親父がよく競馬をやっていたのをそばで見ていたし、僕自身も昔から競馬のゲームとか好きだったので、どんどんのめり込んでいきました。

TAKUMA:ということで、3人とも「面白そうやな」っていうことでお引き受けすることにしました。

──『ウマ娘』チームから「こういう曲調で」とか、そういうオーダーみたいなものってあったんですか?

TAKUMA:「僕らが持っているイメージがまず形になるのをドキドキして待ちましょう」という意図なのか、スピード感とか競争とか戦いとか、そういうシンプルで大きな括りこそあれど、あまり細かいオーダーもなく、包容力のある抽象的な表現で依頼してくださった気がします。これは僕の勝手な予想ですけど、いろいろと細かくオーダーしてしまうと“びっくりワクワク感”がなくなってしまうと思ったんやないかな。なので、僕もそれをドキドキワクワクと受け止めて、ただ単に速い曲を作るんじゃなくて、アスリートが走る直前の心の高鳴りとか競走中の闘争心とか、そういうものを心の中でイメージしながら音楽にすることを心がけました。

──なるほど。

TAKUMA:クライアントから作品のイメージをもらって作るのも楽しいんですけど、そのへんに寝転がってリラックスして、ビールジョッキ片手に「久しぶりにこういう音楽やりたいな」とか「あんな音楽やってみたいな」って気楽にやる音楽って、得てして大ヒットにつながるような気がしていて。なおかつ、印象的な輝きを持つ音楽にもなる気がしていたから、「今の僕らがただ単にやりたいことを制作活動につなげていきたい」と思って、頭の中で流れている音楽を具現化していくことも意識していました。僕やったらギターとか鍵盤、KOUICHIだったらドラム、NAOKIだったらベースにおいて「最近こういうフレーズが好きやねんな」とか、ソファに寝転がって目を瞑って何も考えんと適当に弾いて出てくるようなフレーズとか。それが僕らの好きなことだったり、得意なこと、やりたいことであったりするし。そもそも、僕らは遊びの一環でバンドをやり始めたような人間ですし、それぞれのパートの技術もほかのバンドの中でも一番ないような人間の集まりなんですよ(笑)。

KOUICHI:うん(笑)。

TAKUMA:生まれ持った才能とかセンスとか、勉強して積み重ねた知識がないぶん、3人で力を合わせていいものを作ることにバンドの意義があると思っているので、かなり早い段階から「単にスピードの速い曲ではなくて、いろいろ工夫して演奏でスピード感を表現できるようなものを作りたい」という意思の共有は3人の間でできていました。

──実際に「スパートシンドローマー」を聴くと、大きいビートからストレートな8ビートに変わり、さらに16ビートが入ってきたりと、パートごとにビート感が異なるじゃないですか。それも唐突にではなく、しなやかに変化していく。その自由さがすごく10-FEETっぽいなと思いました。

KOUICHI:ありがとうございます。TAKUMAから「一旦デモの通りに叩いてみて。で、何か自分の考えているリズムがあったら、自由にやってみて」と言われたんですけど、ほんまにいろんなパターンのドラム……自分が感じるまま、自分が持っているアイデアを叩いてみた結果、TAKUMAが考えてきたリズムパターンと自分が考えた要素がいい具合にミックスされてハマったんかなって思います。

──ベースラインに関してはいかがですか?

NAOKI:TAKUMAが作ったデモを聴いて、「きっとTAKUMAはこういうイメージなんやろうな」って1回体に落とし込むんですけど、自分の中で鳴る音もあるわけで。デモのベースラインと自分の中で鳴る音の間を取るという感覚が、一番近いのかな。「こういうジャンルにはこういうベース」っていうプレイをそのまますることの良さもあれば、それに対する抵抗心もあるので、ほかのバンドには出せない自分たちの色と、今までアプローチしてこなかったものを組み込めたらなって考えました。

──先ほどTAKUMAさんが「アスリートが走る直前の心の高鳴りとか競走中の闘争心」とおっしゃっていましたが、確かにこの曲は競馬場でのレースだけでなく、スポーツで試合が始まる際にも鳴っていてほしい、アスリートに向けたエールのようにも感じられる曲だと思いました。歌詞においても『ウマ娘 シンデレラグレイ』の物語を踏まえつつ、そういった広い意味でのアスリートを意識したものなのでしょうか。

TAKUMA:アニメや原作にばっちり寄り添った歌詞も頑張れば作れるとは思うんですけど、それよりも『ウマ娘 シンデレラグレイ』と10-FEETが面白おかしくセッションするイメージでした。具体的に言うと……静が動を引き立てるのと同じように、わかりやすい表現の中に突然飛び込んでくるよくわからない表現が、いい意味でコントラストを出すこともあるんです。それぞれが良きところでパッと咲くことが理想なので、あんまり意識し過ぎるのをやめて、さっと歌いながら作っていきました。

──言葉の並びだったり響きに対して、深読みしたくなる歌詞だなと思いました。

TAKUMA:アスリートの世界では先行逃げ切り型の人もいれば、自分のペースで進めてベストタイムを出す人とか、いろんなスパート(全速力)があると思うんですけど、自分の能力のスパートを出さないと勝てない世界じゃないですか。この間、『世界陸上』を観ていて、「本番で自己新記録を出す人って何者やねん!」って思ったんです。僕もスポーツをやっていたけど、試合が一番成績悪かったから、それって体力以上に心の問題としか言いようがないっていう実体験があって。そういうラストスパートで一番いい状態に自分を持っていける存在とか、その瞬間のために励み、鍛え、心を支配されるぐらい走ることに魅了されている人たちにしかできないようなことを描いた音楽を作りたかったんです。

──「スパートシンドローマー」というタイトルもインパクトが強いですよね。

TAKUMA:「集中指向サラウンド」か「スパートシンドローマー」かで、最後まですごく迷ったんですよ。スパートに依存しているという表現にしたかったので、「シンドローム(Syndrome/症候群)」に「何かをする人」という意味の“er”を付けて「Syndromer」という単語を思いつきました。「ヘンテコな英語造語もいいんじゃないかな」と思って、あえてカタカナにして、「スパートシンドローマー」というタイトルを作りました。メンバーに「どれがいい?」って意見を聞いて、最終的に「スパートシンドローマー」に決めたんです。

──映画『THE FIRST SLAM DUNK』の「第ゼロ感」では、新たなファン層を獲得することができたと思いますが、今回は地上波アニメ、しかも『ウマ娘』という人気コンテンツのテーマソングです。『ウマ娘』ファンやアニメファンをはじめ、さらに幅広い層にこの曲が届くことになると思いますが、そこに対する期待っていかがですか?

TAKUMA:このオープニング主題歌の情報が発表されたときに、久しぶりの友達からたくさん連絡が来て、全国区の人気を実感しました。僕らのことを知らない人たちにも知ってもらい、受け入れてもらえたら、またそのときにより嬉しさを味わえるはずなので、そんなふうに広がっていったらいいなって思っています。

NAOKI:僕も今回の情報が発表されたときに、周りの先輩……だいぶオジサンなんですけど(笑)、「俺、『ウマ娘』全部観てんねん!」って言う人もいて。

TAKUMA:冠さん?

NAOKI:そう。THE冠ってバンドの冠徹弥さんなんですけど、『ウマ娘』シリーズを全部観ているそうです(笑)。

TAKUMA:同世代とか年上からたくさん連絡来たよな。すごいよね。

NAOKI:結構好きな人が多いんですよね。競走馬がモチーフなのも大きいんですかね。以前、なにかのアニメイベントでDJさんが流す「第ゼロ感」をみんなが同じ振り付けで踊っている映像を観たことがあって。今回もそういう感じで広まっていったら面白そうだなと思っているところです。

TAKUMA:そんなんあるんや! そうなったらありがたいな。それだけ受け入れられたってことだし。

KOUICHI:僕も同級生とかいろんな人たちから連絡来ましたよ。

TAKUMA:お父さんから連絡なかったの?

KOUICHI:親父はもう競馬やめてるからね(笑)。「スパートシンドローマー」を通して新たに僕らのことを知ってくれて、ライブにも来てくれたら嬉しいです。


◎リリース情報
「スパートシンドローマー」
2025/10/8 DIGITAL RELEASE
再生・ダウンロードはこちら

◎放送情報
アニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』
TBS系全国28局ネットにて、毎週日曜16:30~放送
BS11にて、10月14日から毎週火曜25:00~放送
AT-Xにて、毎週水曜21:30~放送 ※10月10日から毎週金曜9:30~、10月14日から毎週火曜15:30~リピート放送

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