2025/04/15 18:00
なきごとが、4月8日にワンマンライブ【超超超超大切なお知らせワンマン×水上生誕祭!】を東京・WWW Xで開催した。“超超超超大切なお知らせ”とは、メジャーデビューの発表のこと。ライブ中にメンバーが、今年7月9日にソニー・ミュージックレーベルズ内のEPICレコードジャパンよりメジャーデビューすることをファンに報告すると、会場は祝祭感に包まれた。この日のライブは配信も行われていたが、きっとメンバーには、自分たちの言葉でファンに直接伝えたいという思いがあったのだろう。この記事では、メジャーデビュー発表の瞬間も含め、ライブの模様をレポートする。
ライブタイトルの後半部分が示していた通り、当日は水上えみり(Vo. / Gt.)の誕生日。主役は遅れてやってくるのが相場であり、岡田安未(Gt. / Cho.)とサポートメンバーの山崎英明(Ba.)、奥村大爆発(Dr.)、高田真路(Key.)がセッションを繰り広げるなか、水上がステージに現れた。水上が耳に手を当てて前に乗り出すと、フロアから「フゥ―!」と大きな歓声が。めでたいトピックがふたつあると分かっているから、そして何よりもバンドの鳴らす音が早速最高だから、観客のテンションは初めから高かった。岡田のギターリフをきっかけにスタートした1曲目は、グランジロックナンバー「sniper」。ロックバンドとしてのフィジカルを前面に打ち出したオープニングに歓声が止まない。その声を受け取り水上は「仕上がってるねー!」と喜び、岡田もストイックにプレイしながら笑みを浮かべていた。
バンドの演奏に観客が「きっといいライブになるだろう」と確信していると、水上が「最高に楽しい一日になること間違いなしなので、楽しみにしててください!」と付け加えたため、フロアのテンションがさらに上がる。ドラムのビートが始まれば、メンバーが煽らずとも手拍子が自然発生。そんな場面ののちに始まったのは「私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない」で、水上は〈僕なりの愛してるが聞こえている?〉〈君なりの愛してるを教えてよ〉という歌詞に続けて、「手拍子で教えてね」と呼びかけた。すると、観客がリズミカルな手拍子で応じる。温かいコミュニケーションだ。なきごとには愛を歌った曲も多いが、思えば初期は今よりも内向的で、他者と自分の間にあるものを捉えるというよりも、自分の中に生まれた感情を描写することにエネルギーを費やしている印象があった。しかしバンドの楽曲に感動や共感を覚えたリスナー、なきごとを囲む人の数が増えていく中で、「この歌を贈りたい」「他の誰でもない、あなたに届けたい」という気持ちが芽生えたのだろう。比喩ではなく本当に、水上はフロアの一人ひとりの目を見ながら歌っている。
「懐かしい曲を」と紹介された「合鍵」は、岡田が熱量高くギターを掻き鳴らしてバンドを牽引。迫力ある音像に圧倒されながら、バンドの重ねた歳月に想いを馳せた。日常にしみついている“きみ”の存在の大きさを歌った「退屈日和」は、水上が「あなたに出会えてとても嬉しいです。あなたがライブを観てくれて、とても嬉しいです」という言葉を添えることで、なきごとにとってのリスナーの存在を語る曲として届けられた。光を纏ったギターの音色は美しく、観客の心の中でいつまでもこだましていたことだろう。
「不幸維持法改定案」を終えた時点で13曲が終了。ライブ中盤にはみんなでバースデーソングを歌って水上を祝う場面があったが、ライブタイトルの前半部分はまだ回収されていない。ここで水上が「今日のタイトルを思い出してください。ということはー?」と投げかけると、「おおっ!?」とどようめく観客。さらに水上が「残すところは?」と言うと、再び「おおっ!?」と観客。そんな微笑ましいやりとりのあと、水上から「来たる2025年7月9日、なきごとは、なんと、なんと、なんと、なんと! ソニーミュージックからメジャーデビューします!」と発表されたのだった。深くお辞儀する水上と岡田の元に、観客による拍手と歓声が降り注ぐ。この日のライブも、 新しいスタッフも共に作ったものらしく、水上は「めちゃめちゃ愛に溢れたチームで、のびのびやらせてもらっています」と実感を語りつつ、「これからものびのびやらせてもらう予定となっておりますので(笑)、よろしくお願いします!」とファンに伝えた。
そして祝福ムードの中、今年1月にリリースされた「愛才」が演奏される。サウンドはポップでカラフルだが、〈愛も才も消耗品〉とシビアなフレーズもある楽曲だ。何もないところから曲を作る才能も、リスナーから受け取る愛情も、湯水のように湧き出るものではなく、いつか涸れるかもしれない。しかし、だからこそ大切に育てていきたいのだと歌うこの曲で、水上が「歌える? 聴かせて!」とマイクから離れれば、観客がメロディを歌い、想いを繋いだ。次に演奏されたのは「メトロポリタン」で、イントロが鳴るや否や歓声が上がったのは、ファンにとって愛着のある曲だから。とはいえ、愛着があるのはメンバーも同様で、結成のきっかけとなったバンドのドラマが詰まった楽曲を、水上が「ずっと大切にしてくれた曲」と紹介していたのが印象的だった。なきごとの音楽は、もはやふたりだけのものではないということだろう。
だからこそ、なきごとは未来へと進む。本編最後のMCでは、水上が「インディーズの6年間でもなきごとは変わってきたけど、変わらないものを通し続ける信念も持っています。だから、絶対に大丈夫」と、さらに「これからも、あなたといろいろな光景を見るために変わっていくと思う。それを今日伝えたかったです」と語り、ラストナンバー「憧れとレモンサワー」へと繋げた。〈あぁ、また、僕はあなたに/救われてしまったなぁ〉と歌った直後に「今日来てくれてるあなた、今日観てくれてるあなたの曲なんですよ!」と言葉を重ねていた水上は、相棒である岡田の肩を組み笑顔。このふたりだから、そしてふたりだけじゃないから、なきごとはどこまでも行ける。
EPのリリースやワンマンツアーの発表、新曲「たぶん、愛」の初披露と、アンコールまで盛りだくさんだったこの日のライブ。止まない拍手に応えて急遽行われたダブルアンコールでは「メトロポリタン」が再び披露され、観客のシンガロングとともに大団円を迎えた。フロアにマイクを向けた水上は、手で口元を押さえながら感極まっている様子。この日の素敵な記憶を胸に、さらなる幸せを求めて、なきごとの活動は続いていく。
Text:蜂須賀ちなみ
Photo:yoshiki murata
◎公演情報
【超超超超大切なお知らせワンマン×水上生誕祭!】
2025年4月8日(火) 東京・WWW X
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