2013/06/24 10:32
ローラ・マヴーラのデビュー作『シング・トゥ・ザ・ムーン』は、かなり録音に凝った作りになっている。ローラ自身のヴォーカルは幾重にも重ねられているし、使われている楽器の数も多い。既知のアーティストを引き合いに出すなら、ビョークやピーター・ガブリエルの名前を挙げたくなるアルバムだ。
対して、ステージに現われたローラは、とってもチャーミングな女性だった。CDのジャケットやミュージック・ヴィデオで見られるキリリとした表情ではなく、ライヴを通して常に笑顔。ミステリアスな佇まいではなく、オーガニックで陽性のオーラに包まれている。ライヴでのローラを同様にたとえるなら、ヴァン・ダイク・パークスの楽団をバックにリンダ・ルイスが歌っているかのよう、とするのが正解に思える。
エレクトリック・ピアノを弾きながら歌うローラに加えてバンドは、ハープ、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、ドラムス、という編成。曲によってはその全員がバック・ヴォーカルをとり、ハンド・クラップで曲に高揚をもたらす。室内楽とUKソウルが出会ったような、実に独創的な演奏が聴かれる。
ローラがほとんど曲で、歌詞についてのエピソードを話していたのも印象深い。「フライング・ウィズアウト・ユー」は“自由”についての歌。「ファーザー・ファーザー」は“許し”についての歌。ローラがエレピの弾き語りで切々と歌った後者は、間違いなくこの夜のハイライトだった。
とにかく、歌声に説得力がある。決して押し付けがましいそれではない。ナチュラルなトーンなのに芯の強さがあり、反対に人間の弱さみたいなものまで表現してみせる。強さを表現したがるシンガーは数多いけれども、弱くても大丈夫なのよ、と歌ってくれるシンガーは、そうはいない。その点こそは、ローラ・マヴーラのいちばんの魅力に思える。
ライヴの中盤ではボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」が歌われ、アンコールの最後には、指で弾かれるチェロだけをバックにしたマイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」が、実に麗しく歌われたりもした。
きっと会場に集まった多くの人が、これからの活動がますます楽しみになった、と感じたことだろう。このライヴに接して、僕もローラの大ファンになったのだった。
TEXT:宮子 和眞
Photo:成瀬 正規
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