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2023/03/20

<ライブレポート>LE VELVETS、15周年を飾るオーケストラ公演が東京で開幕

 結成15周年を迎えるLE VELVETSの初のフルオーケストラコンサート【LE VELVETS 15th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2023】が3月17日、東京芸術劇場で開幕。超満員の客席はオペラ、ミュージカルの名曲を奏でる4声の豊かな響きと、柴田真郁指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の繊細かつダイナミックな演奏が交差し生まれる、芳醇な時間に酔った。

 オーケストラによる「軽騎兵」序曲がファンファーレのように高らかに鳴り響き、この日のコンサートへの期待感をさらに煽る。大きな拍手に迎えられ宮原浩暢(バリトン)、佐賀龍彦(テノール)、日野真一郎(テノール)、佐藤隆紀(テノール)が笑顔で登場し、客席を見渡す。一曲目は彼らの名刺代わりといえる一曲「’O SOLE MIO」だ。4人の美しく伸びやかな歌声が広がる。佐藤の代名詞・ロングトーンが早くも炸裂し、客席からはため息が漏れる。

 LE VELVETSは2008年、“身長180cm以上、音楽大学声楽科出身”というオーディションで選ばれた4人によって結成。クラシックを学び、グループを結成してからはポップス他とのクラシカルクロスオーバーの旗手として、幅広いファンを魅了とすると共にクラシック音楽の魅力を伝え続けてきた。そして今年15周年を迎え、初のフルオーケストラコンサートを、初めての東京芸術劇場で行うという、メンバーもファンも待ちに待った瞬間——「’O SOLE MIO」での華やかな幕開けは、まるでメンバーからファンへの感謝の気持ちのような歌になった。「温かな拍手に圧倒された」(佐藤)というように、割れんばかりの拍手が贈られる。カンツォーネの「帰れソレントへ」は、昨年夏、佐賀が大病から復活してからこの日初めて4人で歌った。情熱的な歌がより情熱的に聴こえてくる。結成当時からレパートリーとしている「誰も寝てはならぬ」では、日野のファルセットが強い光になり、オーケストラの演奏もドラマティックで、歌をふくよかにする。

 LE VELVETSのライブは、爆笑トークを楽しみにしているファンも多い。美しい歌とのそのメリハリが多くのファンを引き付ける。インタビューでは「いつものように上品に、滑らかに」(佐藤)と語っていたが、この日のステージでも、4人の人となりが伝わってくる爆笑トークで客席を楽しませていた。

 声に感じるその人の“成分”を堪能できるのがソロコーナーだ。このクラシックコーナーではハンドマイクを置き、一人ひとりが声を届ける。日野は「私を泣かせて下さい」(歌劇『リナルド』より)を披露。やわらかな旋律のアリアを強いファルセットで表現し、登場人物の心情を映し出す。宮原は、誰もが一度は耳にしたことがある定番曲「闘牛士の歌」(歌劇『カルメン』より)を歌った。赤い照明に包まれながら、力強さと優しさを感じる声が、低く深い響きとなってオーケストラの音とブレンドされ客席を包みこむ。佐賀は十八番の「グラナダ」を披露。アタック力の強い高音、リズミカルな表現で、この情熱的な歌を初めてのフルオーケストラで歌い、楽しんでいるようだった。佐藤は「衣装をつけろ」(歌劇『道化師』より)を情感豊かな歌で、人間の激情を表現。その厚くて滑らかさも感じさせてくれる歌声は、圧巻のひと言。

 一部ラストは4人で「乾杯のうた」(歌劇『椿姫』より)。華やかな歌が4声とオーケストラの瑞々しい音で、さらに華やかさと優雅さ増し、2部への期待感を高め、締めくくった。

 2部は一部とは空気が変わり、ミュージカルの名曲中の名曲を並べ、それぞれの表現力を存分に見せ、聴かせていた。途中のMCでは全員音大出身のメンバーが音大時代の思い出話しをオーケストラも巻き込んで大いに盛り上がる。ちなみに国立音大出身の佐藤は、同大学出身の指揮者・柴田の後輩にあたる。この温かい雰囲気がLE VELEVETSのいつもライブの魅力のひとつだ。オーケストラと4人との“息と息とのセッション”でもあるこのコンサートは、この親密なコミュニケーションが、大きな力になっているのかもしれないと思わせてくれたシーンだった。15年間を振り返るトークでは、それぞれが想い出を語り、ファンと共に盛り上がった。

 後半はミュージカル『レ・ミゼラブル』の世界をたっぷりと披露し、同ミュージカルの主役を演じている、佐藤が「彼を帰して」を披露。歌の強弱がドラマティックさを生み、切々と歌うと佐藤の表現力に引き込まれ、感動が広がる。そして「音楽界に革命を起こしたい」という思いを込め「民衆の歌」を力強く歌った。オーケストラのダイナミズムと4人の声が持つしなやかさと迫力がひとつになり、高い熱量が生まれていた。

 そのハーモニーもユニゾンも、4人が生み出す歌声はまさにベルベットのような極上の肌触りで、東京フィルの豊かな音色がそこに光を当て輝かせ、堪らない肌触りの歌になっていた――そんなコンサートだった。“息と息とのセッション”から生まれる、例えようのない素晴らしい音楽体験だった。このコンサートは4月1日、メンバー佐賀の地元・京都コンサートホール 大ホールでも行われる。

Text: 田中久勝
Photo: 岩田えり

◎公演情報
【LE VELVETS 15th ANNIVERSARY Premium Symphonic Concert 2023】
2023年3月17日(金)OPEN 17:00 / START 18:00 東京・東京芸術劇場 コンサートホール ※終演
2023年4月1日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 京都・京都コンサートホール 大ホール

出演:LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)宮原浩暢 佐賀龍彦 日野真一郎 佐藤隆紀
指揮:柴田真郁
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団(東京)京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ(京都)

◎チケット情報
全席指定・特製プログラム付き
S席 12,800円(tax in.) ※完売
A席 9,800円(tax in.)
※枚数制限:お1人様各公演1申込のみ最大4枚まで
※未就学児入場不可

◎コンサートに関するお問合せ
(京都)キョードーインフォメーション 0570-200-888 (11:00~18:00/日・祝休)

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