1897年の初演以降、日本をはじめ世界各地で幾度となく上演され、映画化・ミュージカル化されている稀代の名作『シラノ・ド・ベルジュラック』をジョー・ライト監督が壮大なスケールで再構築したミュージカル映画『シラノ』が公開中だ。

　HBO制作のテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』で【エミー賞】や【ゴールデングローブ賞】などに輝いた実力派俳優ピーター・ディンクレイジが主人公の剣豪にして詩人のシラノを演じる。シラノの親友であり思い人であるヒロインのロクサーヌをヘイリー・ベネット、ロクサーヌが片思いをする口下手なクリスチャンをケルヴィン・ハリソン・Jr.が演じている。

　本作の全楽曲は、音楽・映画界から引く手あまたのザ・ナショナルのブライス・デスナー、アーロン・デスナー、マット・バーニンガー、そしてカリン・ベッサーが担当。彼らの楽曲によって、本作は文学作品でありながら“現代的”で新しい作品へと昇華している。原作である舞台版の生みの親であり、本作で脚本を務めるエリカ・シュミットは「この映画の音楽は素晴らしいと思う。舞台のときよりもさらにキャラクターに沿った豊かな曲になっていった」と語り、近衛隊長のル・ブレを演じたバシール・サラディンも「彼らの楽曲はキャッチーなもの。きっと観客は映画館を出たあとも、映画で流れていた曲を口ずさんだりするんじゃないかな。この音楽は観客の心に残るものだと思う」と絶賛する。

　また、ジョー・ライト監督も「ザ・ナショナルの魅力は恋いこがれる気持ちや愛情の表現だ。もの悲しさもあるが、とてもクールだよ。彼らの音楽にはいろいろな音楽が融合していると思う。モダンなフォークロックをベースにしてクラシック風の味付けもある。だからこそ、ミュージカル作品にぴったりとハマるんだ」と、彼らの魅力を語っている。

　『プライドと偏見』（2005）、『つぐない』（2007）、『ウィンストン・チャーチル／ヒトラーから世界を救った男』（2017）など、ライト監督の作品では今までも音楽が重要な役割を果たしてきたが、今回は歌で表現していく要素が非常に大きい。しかし、監督は自身初のミュージカル作品でありながら、「歌と他の部分はほとんど区別して考えていなかったんだ。この作品の音はひとつのまとまりとして考えていたからね。会話と効果音と音楽が一体となって、より深く、より広い音の世界を作っている」と、これまでの延長線上にあるかのように自然に取り組んだそうだ。

　撮影監督のシーマス・マッガーヴェイは「これまで、急に歌と踊りのパートが始まってドラマから切り離されるような作品にはいくつも参加したことがあった。でも今回は、それらが一体になっていて、その方がはるかに良い。曲とドラマだけでなく、役者の演技も一貫したものになる」と生歌の撮影方法を称えており、演出を手掛けたマーク・アスピノールも「すべてを生で収録していく利点は、役者たちが目の前の瞬間に自由に反応していけること。僕は現場でピアノを演奏したんだけど、僕も役者たちに合わせた反応をすることができた」とスタッフ一同、本作へ自信をみせている。現代的で美しい音色で紡がれるミュージカル映画『シラノ』を、ぜひ劇場で。

◎公開情報
『シラノ』
監督：ジョー・ライト
出演：ピーター・ディンクレイジ、ヘイリー・ベネット、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、ベン・メンデルソーンほか
配給：東宝東和
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