Billboard JAPAN


NEWS

2026/09/08 21:00

<ライブレポート>Laura day romanceが紡いだ“魔法”の一夜 ビルボードライブ・ツアー最終公演

 Laura day romanceが8月30日、ビルボードライブ東京にて【Laura day romance Billboard Live「魔法、4度も」】を開催した。大阪と東京で各2ステージ、全4公演を行ったビルボードライブ・ツアーの最終公演にあたる。筆者が観た東京公演の2ndステージは、1stステージとともにソールドアウトとなった。

 客電が落とされ、Stuart Murdoch & Belle and Sebastianの「I'm Not Rich」が流れると、井上花月(Vo)、鈴木迅(Gt)、礒本雄太(Dr)が、おなじみのサポートメンバーであるドラ内山(Ba)、小林広樹(Gt)、西山心(Key)とともにステージへ。温かな拍手に迎えられ、「5-10-15 I swallowed|夢みる手前」でライブは幕を開けた。音数を削ぎ落としたアンサンブルの隙間を縫うように、鈴木がオリエンタルな響きをまとったフリーキーなギターフレーズを差し込む。そうして重く引きずるように始まったリズムは、少しずつ熱を帯びていく。

 続く「rendez-vous」では、カントリーやフォークを下敷きにした軽快なリズムに乗せ、トレードマークの白いヘッドフォンを装着した井上が、柔らかな歌声を滑らかに漂わせる。黒いタンバリンを揺らし、メンバーとアイコンタクトを交わす井上の表情につられるように、客席にも笑顔が広がっていった。終盤ではテンポを落とし、6/8拍子の雄大なエンディングへ。親しみやすいメロディの中に予想外の展開を忍ばせる、一筋縄ではいかない彼らのソングライティングの美学が早くも表れた。

 「heart」では小林の軽やかなカッティングとシャッフルビートに乗り、井上が切なさを帯びた旋律をファルセットも交えて歌唱。西山のシンセサイザーから鈴木のギターへとソロが受け渡され、6人それぞれの個性が鮮やかに浮かび上がった。

 礒本のドラムで始まった「透明」は、16ビートのグルーヴと抑揚たっぷりのメロディが印象的だ。ベースソロを経てアンサンブルは一度カオティックに崩れ、やがて元の輪郭を取り戻す。「アイデア」では、デヴィッド・ボウイ「Sound and Vision」の影響を感じさせるアレンジを軸に、井上と鈴木のオクターブユニゾンやスキャットが緊張感のあるサウンドを軽やかに彩った。

 彼らが受けてきた洋楽からの影響は、単なるオマージュにとどまらない。フォーク、カントリー、オールディーズ、オルタナティブロックといった語法を一度咀嚼し、Laura day romanceの楽曲として再構築する。そのストイックな姿勢が、親しみやすさの奥にある小さな違和感や、何度も聴き返したくなる奥行きを生んでいるのだ。

 「winona rider|ウィノナライダー」から「waltz|ワルツ」へ進むと、会場はノスタルジックな空気に包まれる。ミラーボールの光が回る中、演奏は次第にヘヴィかつディープなサウンドスケープを描く。「肌と雨|skin and rain」は青い照明、ウィスパーボイス、ジャズの要素を帯びたコードと大胆なリズムチェンジが、ひとつの映画を観るような情景を作り上げた。

 公演タイトルにもつながる「魔法は魔女に|magic belongs to witches」では、中期ビートルズを思わせるひねりの効いたコード進行に、重く跳ねるドラム、歌うようなベース、浮遊するエレクトリックピアノが交錯。「brighter brighter」では、鈴木の引きつるようなギターとたゆたうメロディが、PixiesやPavementにも通じるオルタナティブな感触を生む。

 最新曲「素晴らしき1日」は、流麗なアルペジオからドラマティックに展開するインストゥルメンタル。そこから「happyend|幸せな結末」「素敵すぎる」へと進む流れもシネマティックだった。なかでも、過去の自分や思い出との距離を描く最新曲「素敵すぎる」が疾走感たっぷりに駆け抜けると、この日一番の大きな拍手と歓声が送られた。

 井上は東京公演が両ステージともソールドアウトしたことについて、「たくさんのお客さんが来てくれるのは、決して当たり前のことじゃない」と話し、改めて感謝を伝えた。その言葉を受けるように、「リグレットベイビーズ」では鈴木のヒリヒリとしたギターとファンタジックなメロディがせめぎ合い、最後は不協和音すれすれの混沌へ。本編ラストは、2018年発表の「night flight」。小林のスライドギターと西山のピアノ、ミラーボールの光がドリーミーな余韻を残した。

 アンコールでは礒本が4公演を振り返り、「いつも以上にメンバーとも距離が近いステージで演奏できたので、すごく雰囲気よく、伸び伸びやれたツアーだった気がします」と語った。そのかしこまった口調を井上と鈴木が温かく茶化す。そんな和気あいあいとした空気は、演奏から感じられた6人の信頼関係と地続きのものだった。

 最後に井上が「ちょっと久しぶりに、この曲を」と告げ、「東京の夜」を披露。演奏に合わせてステージ後方のカーテンが開くと、眼下に六本木の夜景が広がった。静と動を行き来するバンドサウンドに、井上の甘く優しい歌声が溶け込んでいく。

 メンバーの飾らない人柄と、一音一音の配置に妥協しない楽曲至上主義。その二つが自然に同居するからこそ、Laura day romanceの音楽は軽やかでありながら、奥行きと広がりを感じさせる。楽曲への信頼と、演奏を磨き続けてきた時間。そのすべてが6人の音に宿り、4度にわたる“魔法”となって客席へ届いた。

Text by 黒田隆憲
Photos by kokoro


◎セットリスト
【Laura day romance Billboard Live 魔法、4度も】
2026年8月30日(日)東京・ビルボードライブ東京 2ndステージ
1. 5-10-15 I swallowed|夢みる手前
2. rendez-vous
3. heart
4. 透明
5. アイデア
6. winona rider | ウィノナライダー
7. waltz|ワルツ
8. 肌と雨|skin and rain
9. 魔法は魔女に|magic belongs to witches
10. brighter brighter
11. 素晴らしき1日
12. happyend | 幸せな結末
13. 素敵すぎる
14. リグレットベイビーズ
15. night flight
EN. 東京の夜