2026/04/29 17:00
ミツキほど独特にステージへ登場するアーティストはほとんどいない。多くのパフォーマーは、勢いよくスポットライトへ飛び込むか、不安げに駆け込むか、あるいは目立たぬように静かに現れるものだ。しかしミツキは、まるでコンベアベルトに運ばれているかのように、長く均一で意図的な歩幅でマイクへと歩み寄る。他のアーティストがステージに立つ興奮や自信、あるいは緊張を観客に伝えるのに対し、ミツキはまるでそこに呼び出されたかのように現れる。それは特別に感情的な行為ではなく、ただそこにいるべきだからいるという佇まいだ。
これは、ここ10年間で成功を手にしてきたアーティスト同様に、ポップ・スターダムという概念と長らく複雑な距離感を保ってきた彼女にふさわしい第一印象でもある。彼女のファン層は、ポップスター並みの熱狂的な愛情を注ぐ一方で、同じレベルの要求も突きつけてきた。そしてそれは、彼女が本格的にポップスター的な人気を得る以前から続いてきた。近年の彼女は、膨れ上がる成功を受け入れることもあれば拒むこともあり、その結果はしばしば直感に反するものだった。2010年代の終わりにセルフケアのため活動休止に入った(その後、世界もパンデミックで停止した)にもかかわらず、TikTokでかつてないほどの人気を得た。バイラル・ヒットの最中にシンセ・ロック中心のアルバムを発表した際には、商業的な注目は意外なほど早く薄れた。一方、数年後に発表したアメリカーナ調のバラード集からは、彼女にとって初の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”入りしたヒット曲が生まれた。
最新アルバム『ナッシングス・アバウト・トゥ・ハプン・トゥ・ミー』を聴き、さらに3月2日に米ニューヨークの複合文化施設ザ・シェッドで行われた6日間のレジデンシー初日公演を観ると、彼女がある決断に至ったことが感じ取れる。すなわち、観客の期待に応えるか距離を取るかを考えるのをやめ、自分がなすべきことをただやるという姿勢だ。今回のパフォーマンスは、近年のツアーほど演劇的でも振付があったわけでもない。無表情だが強い緊張感、さらに力を増した歌声、そして意図的で抑制された動きによって、感情面でも演出面でもドラマチックさが保たれていた。また、公演の中盤で観客との見えない壁を取り払い、「ハロー、こんにちわ!」と明るく挨拶した瞬間は、どんなストロボ照明の演出よりも衝撃的だった。
この日の公演でミツキは観客のリクエストに応じることはなく、「First Love/Late Spring」「Your Best American Girl」「Nobody」といった代表曲も披露しなかった(残り5公演で演奏される可能性はある)。それでも、ここまで全力で緻密に構成されたパフォーマンスに不満を抱くのは難しい。彼女は今すぐマディソン・スクエア・ガーデンを満員にできるだけの存在感と楽曲、ファンベースを持っているが、むしろ今回のように同規模の観客を分散させ、アートスペースで公演を行う方が適している。細部までコントロールできる環境であれば、観客にも自身の巨大な存在感にも圧倒されることがないからだ。ザ・シェッドのような会場だからこそ、アーティストと観客が互いを最も適切に理解し合う方法を見つけたように感じられる。
「愛してるよ」と、最後の曲を紹介した後に2000人以上の観客に向けてミツキは語った。「信じてくれないかもしれないけど、本当だよ」
以下、NYレジデンシー初日公演のベスト・モーメント5選だ。
<タンジー・ハウスのツアー>
公演の数日前、ミツキはザ・シェッドで『ザ・タンジー・ハウス』という展示も公開した。これは『グレイ・ガーデンズ』や作家シャーリイ・ジャクスンに着想を得たもので、『ナッシングス・アバウト・トゥ・ハプン・トゥ・ミー』の“精神的な家”を表現した空間だ。レジデンシー初日にも公開されており、来場者は本やレコードのコレクションを眺めたり、ポスト・イットにメッセージを書いたり、アルバム・ジャケットの猫の絵を拡大した背景の前で写真を撮ったりして、公演への気分を高めることができた。
<大きな“変化”>
アルバム『ナッシングス・アバウト・トゥ・ハプン・トゥ・ミー』の中でも際立つシングル「I’ll Change for You」は、絶望や孤独をテーマにした、美しく鋭く、そして徹底してロマンティックなバラードだ。その優しく繊細なオーケストラの伴奏は、レイヴェイのボーカル作品にも通じる雰囲気を持つ。しかしミツキはこの曲で、自身が圧倒的な歌唱力を持つシンガーであることを証明した。ザ・シェッドでのライブでは、楽曲がクライマックスへ向かうにつれて、彼女の声が空間全体を満たしていくのが感じられた。同時に、1950年代のフィルム・ノワール『逃げの女』の映像が背後に投影されていた。
<“スペシャル・デリバリー”>
ミツキは2013年の自主制作アルバム『リタイアード・フロム・サッド、ニュー・キャリア・イン・ビジネス』に収録され、ストリーミング人気の高い代表曲「I Want You」を2019年以来披露していなかった。この曲を“特別な”プレゼントとして紹介した彼女は、続けて“もう一つの特別な贈り物”を予告し、2014年の『ベリー・ミー・メイクアウト・クリーク』から「Francis Forever」を演奏した。この曲は比較的頻繁に披露されているものの、長年のファンにとってはやはり特別であり、会場を大いに沸かせた。
<「Stay Soft」の新たな重厚さ>
この日、評価が分かれたアルバム『ローレル・ヘル』からは数曲のみが演奏されたが、その一つが「Stay Soft」だった。もともとは80年代風のダンスフロア志向の楽曲だった。しかし、ショーの音の核となっていた、よりざらつき歪んだアートロックにうまくなじませるために、ミツキはこの曲からシンセのアレンジを取り除き、その上により荒々しいギターを加えた。その結果、アルバム版では十分に感じられなかった重厚さとインパクトが、この曲に新たにもたらされた。さらにベラ・ルゴシ版『ドラキュラ』の映像が重ねられたことで、不気味さも強調されていた。
<あの“猫”>
『ナッシングス・アバウト・トゥ・ハプン・トゥ・ミー』には、アートワークからトラックリストに至るまで猫のモチーフが多く登場する。「That White Cat」はその象徴とも言える楽曲で、この日の本編ラストとして披露された際には、今回のミツキの時代を象徴する存在のように感じられた。「ここは私の家のはずなのに/でも猫によれば/今はあいつの家らしい」と叫ぶ場面では、彼女が自分の人生をコントロールできない不安がこれまでになく鮮明に表現されていた。“猫によれば”の部分で、背後のスクリーンに映る猫のモノクロ映像を指し示す演出も印象的で、猫という存在が、実に手強い相手であるかのように感じさせる瞬間であった。
By: Andrew Unterberger / 2026年3月3日 Billboard.com掲載
◎公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL '26】
期間:2026年7月24日(金)、25日(土)、26日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※ミツキの出演は26日(日)となります。
INFO:FUJI ROCK FESTIVAL
https://www.fujirockfestival.com/
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