2026/10/16 21:00
Kroiのライブには野性と品が等しく同居している。
その演奏に身を預ければ猛烈に体が動き、その熱狂にもかかわらず、繊細さや複雑さが置き去りにされていないところに大きな感動がある。メジャーデビューした頃に比べればステージセットの装飾は随分と減りシンプルなものになったが、しかし彼らの音楽の多彩さやそこに生まれるイマジネーションの豊かさは、あの頃のよりも煌びやかに、色彩豊かに、空間を照らし出す。今、彼らは最も脂の乗っているライブバンドである。9月23日、東京・Zepp Hanedaで開催された全国ツアー【Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”】のファイナル公演で、改めてその事実を実感した。
ツアー初日の横浜公演以外は各地、対バンとワンマンの2DAYS形式で開催された今回のツアー。名古屋はレキシ、福岡はiri、大阪はKIRINJI、東京は東京スカパラダイスオーケストラと、それぞれゲストを招いた対バンライブも繰り広げられ、そしてツアーファイナルとなった9月23日のZepp Hanedaはワンマン。Kroi単独の、約2時間におよぶ超濃密なライブが繰り広げられた。
内田怜央(Vo.)、関将典(Ba.)、長谷部悠生(Gt.)、益田英知(Dr.)、千葉大樹(Key.)の5人がステージに登場すると、まずはメンバー全員によるパーカッシブなジャムセッションでライブは幕開け。どのようにライブを始めるか?というのはアーティストの大事なものが試される場面だが、ジャムセッションによる始まりというのが、KroiがKroiであることの証明という感じがして最高だ。しかも、そのセッションはバンドが内に籠っていくタイプのものではなく、リズムの根源的な解放感によって晴れやかに観客たちを巻き込んでいく。そこから「Amber」、ジャム曲「papaya」、そして早くも投下された「Fire Brain」と会場の熱気は高まる。「Fire Brain」のブレイク部分でMCはなし。それゆえに感じる空間と自分の内側の高揚があった。さらに、生活のざわめきを運んでくるような「おなじだと」、インコグニートのプロデュースによって生まれた「Kinetic」と、メロウネスを徐々に加味していくように楽曲が披露されていく。素晴らしいプレイの連続、激しい緩急と、微細なグラデーション。それらが一瞬一瞬を違うものにしていき、観る者に一瞬一瞬の尊さを感じさせていく。
MCでは内田が「みんながセットリストを育ててくれている感じがする」と語る。思えば以前観たライブでも、内田は「観る人の歓声一つひとつが、自分たちの作る曲には入り込んでいる」と語っていた。Kroiの作品はすべてが、彼らが世界と接触し続ける生のドキュメントでもあるのだろう。そんなMCを挟み、導入にソフト&スムースな素晴らしいアレンジが加えられた「HORN」から演奏はさらに表情を変えていく。このセクションで個人的に嬉しかったのは、シングル『Method』のカップリングに収録された名曲「Clay」をライブで初めて聴くことができたことだ。音源ではメンバー全員がリモート状態でアイディアを出し合いながら生まれたという「Clay」。前に内田は「「Clay」は、Kroiが曲を作るための色をグチャグチャに出したパレットを、そのままリリースした曲」とインタビューで語っていた。そのカオティックであるがゆえの生命力は、ライブでも感じることができた。さらに「侵攻」へと曲は続き、ライブはどんどんと深い場所に潜っていくように進行していく。
ライブも後半に差し掛かると、激しさだけでなく、Kroiの楽曲の持つ美しさが際立った演奏を聴くことができた。「Polyester」「Pixie」「risk」といった楽曲たちの美しさは本当に絶品で惚れ惚れする。混沌とした野獣のようなファンクを奏でるバンドは、また同時に、光を反射する宝石のように、透明で特別な形をしたサウンドを奏でてみせるのだ。かつての内田が言った「観客たちの歓声が曲に入り込んでいく」という言葉と同じように、アリーナ会場やアコースティックライブなど、様々な場所やセットでライブをしてきた経験もすべてがKroiの楽曲に入り込んでいる。そしてそれは、既にリリースされてきた楽曲にも新しく柔らかな命を与えて続けている。「誰と出会ったのか」「どんな場所を歩いてきたのか」――つまり「生きてきた」というが、Kroiの楽曲に結実していく。これから生まれる新曲にも、ライブで演奏され続ける既発曲たちにも、きっと。だから彼らのライブには理屈を超えた感動がある。
ライブも終盤に入り、「Balmy Life」での圧巻の盛り上がりから、あまりに素晴らしい「明滅」の、記憶への、刹那への、生き様への慈しみに満ちたサウンドを浴び、そしてラストは詩情と音の海へ飲み込まれていく「Shincha」の名演で、ライブ本編は終了。アンコールを求める拍手が会場に満ちると、急にステージ前方を紗幕が覆った。その紗幕に映し出されたムービーで、新曲「SPIN」のリリース、そして同曲がアニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』のオープニング・テーマになることが発表され、観客たちの割れんばかりの歓声が会場を包み込む。紗幕が外れると、ステージにセッティングしていた5人が演奏し始めたのは、新曲「SPIN」だ。性急に疾走しながら、猛々しく吠えるような演奏。ウェスタンとファンクが混ざり合う、新鮮でありながらKroi節が炸裂した新曲の唐突な初披露に、フロアは唖然としつつも「盛り上がらずにはいられない!」とばかりに再び熱気は最高潮に。さらに「Juden」、そしてエンディングのトロピカルで陽気なジャムが披露され、この日のライブは締めくくられた。
今という瞬間はもう二度と訪れない。その事実をMCで噛み締めるように語りながら、それでもライブ中、何度も「また絶対会おうね!」と観客たちに伝え続けた内田。祈りにも近いその言葉が、またKroiの曲を生むのだろう。
Text:天野史彬
Photo:Kaito Ono
▼公演情報
【Kroi Live Tour 2026 “JUNGLE”】
2026年9月23日(水・祝) 東京・Zepp Haneda
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