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泉 沙世子 『カス』インタビュー

泉 沙世子 『カス』 インタビュー

 モーニング娘。オーディションを受けた経歴があり、スピッツの草野マサムネにその歌声を気に入られ、この度『カス』なるニューシングルをリリースすることになった女性シンガーソングライター 泉 沙世子。一体どんな人なんだろうと初インタビューを敢行してみたところ、なかなかに面倒くさい(面白い)生き方をしているようで……。

今年デビュー組の全員に負けている/最終的には私が一番になる

泉 沙世子『カス』 Music Video
▲泉 沙世子『カス』 Music Video

--自分では“泉 沙世子”をどんな人間だなと感じていますか?

泉 沙世子:とても平凡で……どんくさい(笑)。

--どんなところが平凡だと?

泉 沙世子:今作『カス』にも出ているように、すごく悩みやすい性格なので、そういう意味では苦労している意識はあるんですけど、勝手に悩んでいるので。だから努力家とも言えなくて、他の人が1のパワーで出来ることに10かかるというか、平凡なくせにしんどい。でもだから特殊な環境にいなくても歌が書けるのかなって。

--では、どんなところがどんくさいと?

泉 沙世子:例えば、学校で宿題3つ出されて、宿題はやる気満々であっても1つはあったこと自体忘れているとか。別にサボろうとしている訳じゃないんですよ。時間割を覚えるのもすごく苦手で、どこの授業がどの教室でどの先生かも覚えられないから、学校をひとりで歩けない(笑)。目の前のことは全力でやるんですけど、ちょっと広い範囲になると迷ってしまう。

--まだ会って3分ぐらいしか話聞いてないですけど、生きていくのが大変そうですね。

泉 沙世子:ハハハハ!

--すぐ悩むし、迷うし、ひとりで歩けないし。

泉 沙世子:だから歌を書くとか、歌っていくこと。これじゃなかったら本当に自信がないですね。コンビニでバイトするとか、OLになるとか、めちゃくちゃハードルが高い。最初に受けたオーディションからデビューまで10年ぐらいかかっているので「なんでそんなに続けてこれたんですか?」って聞かれるんですけど、それはもう……

--他の仕事ができないと分かっていたから?

泉 沙世子:歌の仕事を諦めて他の仕事をやることが、私にとって果たしてラクなのか?っていう疑問もずっとありましたし、夢を諦めることが妥協にならないというか(笑)。

--では、自分をどんな女性シンガーソングライターだと感じていますか?

泉 沙世子:もちろん女性シンガーソングライターではあるんですけど、しっくり来る肩書きではなくて……。元々は歌手を目指していて、でも途中で歌っているだけでは無理なんだなって分かったので、自分でも詞や曲を作るようになったんですけど、女性シンガーソングライターって言うと、完成度が高い楽曲を書いている…

--それを言っちゃうと、自分の楽曲の完成度が低いって話になるよ(笑)。

泉 沙世子:ってなりますよね(笑)。いや、世界観とか熱量とか人間っぽさとか、そういう基準だったら自信あります。でも「この構成がすっきりまとまっている」とか、そういうところで考える頭があんまりなくて。だから女性シンガーソングライターって言うよりも、もっと泥臭い。横文字で“シンガーソングライター”というより人間として歌う。だから“歌うたい”ぐらいがしっくり来る。

--では、ここ1,2年で多くの新人女性シンガーソングライターがデビューしていますけど、その娘たちのことは気になったりしない?

泉 沙世子:タイミングによって両極端な捉え方をしてしまうんですけど、例えば「今年デビュー組の全員に負けている」って思うときもあるし、「いや、今がどうであれ、最終的には私が一番になる」って思うときもあるし、自己評価がブンブンブンブン上がり下がりするんですよ。だけど根底には「私は私やで」っていう気持ちが揺るがずにあるからやってこれたし、やっていくんかなって思う。

--泉さんはどんな女性シンガーソングライターが好きなんでしょう?

泉 沙世子:私、ほとんど男性の歌しか聴かないんですよ。女性やと、大先輩。ユーミンさんとか浅川マキさんとか森田童子さんとか、シンガーソングライターじゃないかもしれないんですけど、ちあきなおみさんとか。それって「最近の若い人の音楽は」みたいなことではなくて、変な頭が入っちゃうんですよね。同世代の女性の歌だと、やっぱり気にするっていうのもありますし、良いなと思っても「あ、年下か」とか、いらん感情が入ってきたり、観察みたいになってしまうんですよ。観察してる時点で悔しいし、自分を「ちっちゃ!」って思うんですけど。広い心で聴けない、音楽として捉えられない。

--比較対象にならないぐらいキャリアもあって、存在としても突き抜けている人の音楽は聴けるけど、比較できてしまう人の音楽は聴けないと。

泉 沙世子:そうですね。でもここ数週間で反省したんですよ。友達のミュージシャンと「トータス松本さん? 私も好き」みたいな会話をしていたとき、男性ミュージシャンが自分より年下の男性ミュージシャンを「いいよ」って紹介してきて。それに「聴くんや?」ってビックリしたんですね。

--でも普通は年齢で音楽聴かないですよね?

泉 沙世子:でもそれを聴いて「いいよ」って人に言うことにビックリしたんです。私も実は年下とかで「いいな」って思う人はいるんですけど、絶対に人に言わないんですよ。「これ、もうファンになってるな」って内心思っていても公言しないんです(笑)。

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「道重さゆみさんや……可愛いなぁ」って見惚れてました。

--言ったら負けだ、みたいな感覚があるの?

泉 沙世子:そうそう! だからもし今度またお会いしたときに、私がパってその人の名前を言ったら「成長したんだな」って思ってください。

--(笑)。ここまでの話をまとめると“自信はないけど、プライドが高い”んですね。

泉 沙世子:最悪じゃないですか(笑)。

--いろんな女性シンガーソングライターが存在する中で、自分が目指しているのはどんな存在。もしくはどんな音楽なんでしょう?

泉 沙世子:“アーティスト”がって言うよりかは“人間”として、というのを常にイメージしていたい。で、人間として“自信はないけど、プライドが高い”んだとしたら、自信が追いつきたいですよね。歌を書く為には繊細でありたいし、一方で大胆な人間にもなりたい。

--そんな泉さん、13歳からモーニング娘。などのオーディションを受け始めていたそうで。デビュー作『スクランブル』のMV観て、ちょっと田中れいなに雰囲気が近いなと思って、好きなんだなって。

泉 沙世子『スクランブル』 Music Video
▲泉 沙世子『スクランブル』 Music Video

泉 沙世子:そこは田中れいなさんを意識した訳ではないんですけど、金髪でしたからね(笑)。

--いつか共演できるといいですよね。あのとき、オーディションを落とされたモーニング娘。と、歌うたいとしてブレイクした泉 沙世子がツーマンライブ。

泉 沙世子:ハハハ! そんなん、めっちゃ面白いですけどね(笑)。でも私みたいな人っていっぱいいると思いますよ。モーニング娘。のオーディション受けたことがあって、そのあとに別の形でデビューしている方って。だって、モーニング娘。は絶対的なスターでしたもん。先日、テレビの収録でモーニング娘。の道重さゆみさんもいてはって、道重さんは6期ですけど、私は7期のときにオーディション受けたんですよ。だから年下ではありますけど「道重さんや……可愛いなぁ」って見惚れてました。「ついにすれ違った!」って(笑)。

--ブレイクしたらきっともっと会えますよ(笑)。ちなみに「どうすれば売れるんだろう」とか悩んだりするタイプ?

泉 沙世子:常にそういう目線は持ってます。例えば「私みたいな人間に対して何が求められているか」とか、「パッと見た目で興味を持ってくれた人が、その先に求める歌詞って何なのか?」とか。でもそれも人間対人間の話だから組み合わせがいろいろあるじゃないですか。彼女に求める条件として「清楚だけど、実がワガママでちょっとエロい娘がいい」っていう人もいれば、「清楚だったらすべて清楚であってくれよ。料理できてくれよ」みたいな人もいるように。そう考えるともう嘘は効かへんのやろなって。

--なるほど。

泉 沙世子:よっぽどテクニックがあったり、ビジネスとしての計算が働く人は別でしょうけど、私の今の能力と人間の質では、切っても切っても金太郎飴みたいな感じで、ちょっとツッコまれても「言うてること同じですもん。いつ聞かれても考えていることは一緒ですもん」っていう状態でしか勝負できないって思ってます。それを貫いた結果、何十回もオーディション落ちて、10年拾ってもらえへんかったけど、でも最後に拾ってくれる人と出逢えたので。だからそこは“素”で行こうかなと。

--でも女性シンガーソングライターが次々と世に出てくると、埋もれ易くもある訳じゃないですか。そこの危機感はあったりしませんか?

泉 沙世子:あります。オーディション受かったときに「ほっとしました。嬉しいです!」って言っていたんですけど、正直に言うとそんなに浮かれた気持ちではいられなかったですね。10年間追い続けていたものを一回掴んでしまったら、これを形にしなければいけないし、与えられたチャンスは無限ではないので、この何年かで将来までの決着がついてしまう訳じゃないですか。で、あれから1年経ってプロの中で生きていかなきゃいけない焦りもリアルに出てきている。

--YouTubeで「泉さんの歌声ってスピッツの草野マサムネさんのお気に入りの声らしい」というコメントを見たんですが、これが本当だったら自信を持っていいんじゃないかと思うんですけど、真相を聞かせて下さい。

泉 沙世子:ツイッターかなんかで、スピッツのファンクラブの会報かなんかに私の名前が書いてあったって。それ、現物をめっちゃ見たいんですけど、会報なので手に入らなくて……。でもそれはそれとして聴いて頂きたいですね。今回のシングルも。おこがましいですけど、聴くだけ聴いてもらえたらなって(笑)。

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タオル常備して授業を受けてたんです。嫌すぎて泣くから。

--そんな草野マサムネも認める存在でありながら、新曲のタイトルは「カス」。この曲はどんな背景や想いがあって生まれたものなんでしょう?

泉 沙世子:高校生のときにオーディションを何十個も受けて、大学進学で上京したんですけど、この曲を書いた21,2歳のときは大学中退していたんですね。で、曲を書いても書いても待ってくれている人がいる訳でもなく、デビューがどうこうの話が進む訳でもなく、どこに向かっているのか分からなくなって。それに加えて本当に人見知りやし、実家大好きみたいな人なので、ひとりで東京出てきても居場所がないというか。家に帰るのが本当に嫌で、誰がおる訳でもないし、暗いし、ひとりでご飯食べたくないし。だから毎日やることが終わったら「どうしよう?」って感じだったんです。

--目標失って、人見知りで、ひとりになるのも嫌いって、どこにも逃げ場ないですよね。

泉 沙世子:高校のときも寮生活をしていたんですけど、1年目、2年目はすっごく馴染めなくて。タオル常備して授業を受けてたんです。嫌すぎて泣くから。もう寂しくて寂しくて「家、帰りたい!」ってなってたんですよ。でも歌の為に寮生活をして、放課後にはレッスンに通ったりしていた。で、大学も歌の為だったから、それが無くなったら「何をしに東京まで来て一人暮らしなんか!けっ!」みたいな感じになっちゃって。歌が上手く行ってれば耐えられるんですけど、職業を尋ねられたとき「歌手です」と答えられるようになったのはここ1年だから、当時は肩書きもないし、めちゃくちゃしんどかった。

--そんなときになんで「カス」を書こうと?

泉 沙世子:曲というより「なんでこんなに……」っていう愚痴。一人暮らしも3,4年目。東京での2軒目のお家にて出てきた言葉たち。そのときも落ち込みすぎて泣いてる。気持ち悪いと思いながら(笑)。

--昔からよくそうやって落ち込んだりするほうなの?

泉 沙世子:そうかもしれないですね。「22歳」っていう曲でも“なぜこんなに悩みは尽きないんだろう?”みたいなことをパラパラ書いてるんですけど、25歳になっても全く一緒やなって思って。状況はそのときからすごく変わってますけど、自分としては淡々と、じわじわと同じ日々を送ってきた感じ。変に浮かれることもなければ、プレッシャーに対して「よっしゃ!」ってなることもなく、ある意味、マイペースかもしれない。ずっと変わってない気がしますね。

--では、何故に泉 沙世子の本質とも言える「カス」を今打ち出そうと?

泉 沙世子:元々オーディションで歌った曲なんで、デビューのときから「これをいつ出すか?」みたいな話はあったんです。イメージ的なことでデビュー曲ではないとか。でもそれを出すということは、勝負のタイミングやなとは思いますね。ある意味、怖くもある。絶対に結果を出したい気持ちはあるんですけど。

--この曲はカスがカスじゃなくなる未来を掴もうとしている曲ですよね。カスのまんまで終われるかい!的な。それを勝負のタイミングで歌うのは生々しくて良いですよね。

泉 沙世子:本当にそうですね(笑)。

--ちなみに今作「カス」は「なんぼでも言い訳が浮かぶねんけど、十年後は今と違う自分になりたいねん」とありますが、どんな自分になれたらと思っているんでしょうか?

泉 沙世子:やっぱり繊細かつ大胆な人。今は大胆じゃないんで。余裕があって「ええやん、それで」みたいに言えないから、最終的にパニックになる(笑)。散々騒ぎ倒して散らかしてどっか行く、みたいな。

--大胆というより、タチ悪いですね(笑)。

泉 沙世子:お騒がせな感じです。そうじゃなく大胆になりたい。あと、代わりが利かない人になりたいです。崇拝されたいとかじゃなく、1対1でいいから「泉 沙世子がいい」っていう風に求められたい欲求がすごくあって。だから妬きますもん、ツイッターとか見てると。「誰々と誰々と泉 沙世子を応援してます」って書いてあると、「私ひとりがいいなぁ」って思う。いや、いろんな人を聴いていても構わないんですけど、その中でも特別になりたいっていう気持ちはありますね。

--そんな泉 沙世子が映画『ヨコハマ物語』(主題歌「カス」)で銀幕デビュー。スター街道まっしぐらじゃないですか?

泉 沙世子:いやいや(笑)。演技なんて私には「無理だ!」って思っていたんですけど、すごく面白かったですし、楽しみました。

--では、最後に、まだ泉 沙世子とその音楽に出逢ってない人々へメッセージをお願いします!

泉 沙世子:サラッと「良いな」って聴き流すんじゃなく、ガッ!て組んだ状態でいろんな泉 沙世子を聴いてもらって、ずっと一緒に歳を取ってもらいたい。そういう感じになろうや(笑)!

Music Video

泉沙世子「カス」

カス

2014/01/15 RELEASE
KICM-1485 ¥ 1,080(税込)

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Disc01
  1. 01.カス
  2. 02.グレーゾーン
  3. 03.カス (instrumental)
  4. 04.グレーゾーン (instrumental)

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