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LINEが提唱する「エンタテイメント体験」とは? ビルボードジャパン×Cip協議会による【Live Hackasong】初参加に向けてインタビュー



インタビュー

 いまやコミュニケーション・アプリの枠に留まらず、インフラストラクチャーとして我々の生活を支え、様々なコンテンツを手軽に提供するプラットフォームとなった『LINE』。同社がこの度、ビルボードジャパンとCip協議会が「未来のエンタテイメント体験」をテーマに共催するロングラン・ハッカソン【Live Hackasong】に初参加。2015年には『LINE MUSIC』を立ち上げ、音楽事業に本格参入した同社の考える「エンタテインメント体験」とは。そして、その事業ミッションとして掲げている「CLOSING THE DISTANCE」の真意とは。現在は同社のテクニカルエバンジェリストとして、ハッカソン・イベントにも積極的に参加しているという立花翔氏に話を聞いた。

LINEだけ入れておけば何でもできるという時代を

――まずは今回ご提供いただく技術について、ご解説をお願いします。『Messaging API』はユーザーにとって最も身近な技術の一つだと思いますが。

立花翔(テクニカルエヴァンジェリスト):簡単に言うとLINEでBotを作るためのAPIですね。みなさん普段は人対人でコミュニケーションをとっているかと思いますが、『Messaging API』を利用すると挙動をプログラムで設定するLINEアカウント、つまりBotを開発することができます。

――代表的なケースで言うと?

立花:最近のビジネスの成功例だと、LINEを使って行列店に並ぶことができるサービスで、家にいながら行列の一番後ろに並んで、自分が今何番目かが分かります。5人目くらいになると「もうすぐあなたの番ですよ」とプッシュ通知がくる。こちらもプログラムを利用して運用されています。

――お店の整理券のような。

立花:そうですね。今年からはビアガーデンでも導入されたり。

――『LINEログイン』とはどのような技術でしょうか?

立花:よくあるソーシャル・ログインですが、『LINEログイン』の他社サービスと違う点は、LINEアカウントとの連携ですね。例えばWebからログインしたのち、LINEアカウントで友だちになれたり。普通、会員登録した後のやり取りってメールですることが多いと思うんですけど、メールなんて今ではあまり見ないじゃないですか。『LINEログイン』を使うと、会員登録後にLINEアカウント宛に「友だち登録ありがとうございました」といった感じでメッセージやスタンプを送付できます。そこから『LINE@』の機能を使って密なコミュニケーションが取れたり、アンケートを集計したり、クーポンが配信できたり。メールでは送りづらいインタラクティブなコンテンツなども送れるので、すごく便利に使っていただけると思います。

――それでは『LINE Notify』は?

立花:『Messaging API』の場合だと、用意したサーバーを中継してやり取りするようなイメージなんですけど、『LINE Notify』ではサーバーを用意しなくても、例えば『Raspberry Pi』からコマンドを1個打つだけでLINEに通知が飛んでくる。作るのがすごく簡単なのが利点ですね。

――続けて『LINE Beacon』はどんな技術なのでしょう?

立花:友だちになっているLINEのBotにビーコンが紐づいていた場合、そのビーコンに近づくと設定されたエンドポイントに「この人はこのビーコンの近くにいます」と通知が飛びます。つまり、位置情報に基づくサービスを作れるんですね。例えば東京にいる人に大阪のお店のクーポンを送っても仕方ないじゃないですか。『LINE Beacon』では、その人がそこにいる瞬間に、そこに合ったクーポンを出してあげることで、コンバージョン率を上げることができる。『LINE Beacon』を活用することで、位置情報をもとに、クーポンだけでなく、LINEのプッシュ配信やアプリ内にバナー表示することで、7,300万人のユーザーを抱えるLINEアプリ内でコミュニケーションが取れるのが特徴です。

――代表的な例でいうと?

立花:KIRINさんの自動販売機サービス『Tappiness』ですね。自販機が近くにあると、LINEアプリ上でバナーが表示され、近くに自動販売機があることを伝えられます。また、ユーザーは『Tappiness』を使うとポイントも貯まりますし、『LINE Pay』で決済もできる。

――その『LINE Pay』ですが、モバイル決済サービスが数ある中で、『LINE Pay』ならではの強みというのは?

立花:スマホを持っていてLINEを入れてない人ってあまりいないと思うので、加盟店さん側からしたら、たくさんのユーザー獲得を望めることはメリットだと思います。ユーザー側のメリットは、例えば新しいアプリをインストールしなくて済むこと。あと、『LINE Pay』ってすごく使いやすいんですよ。LINEのアイコンを長押ししてクイックアクションで呼び出せばすぐに決済できます。

――決済するまでの動線がすごく短くてシンプルですよね。

立花:割り勘もしやすいんですよ。うちの社員とか、みんな『LINE Pay』で払うのに慣れてるので、飲み会に行くと誰かがカードで払って、あとは『LINE Pay』で割り勘しています。現金には一切触らずに。

――「1,000円足りないよ!」みたいな事態にはなりませんね(笑)。そもそもコミュニケーション・ツールとしてスタートしたLINEが、今では音楽や漫画といったエンタメ領域までをカバーしている、そこにはどのような思いがあったのですか?

立花:メッセージングプラットフォームがLINEの核ではあるんですけど、スマートポータル戦略といって、その上にコンテンツとインフラの2つのプラットフォームを築こうとしています。『LINE Pay』なんかはインフラですね。対するコンテンツとして、音楽や漫画がある。様々なもののポータルとしてLINEを育てていこうと。最終的には、スマホに他のアプリをインストールしなくても、LINEだけ入れておけば何でもできるという時代を作ろうとしています。

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コミュニケーションを核としたエンタテインメント体験

――それでは、普段からハッカソンに積極的なLINEさんにとって、ハッカソンに参加することの意義や狙いがあればお聞かせください。

立花:せっかくAPIを公開していても、「API公開しました。みんな使ってね」って書いて置いてあっても誰も使ってくれないんです。やっぱり実際に良さを説明して、作ってみせて、使ってもらって、サポートして、といったことが必要になってくるわけです。その機会の場としてハッカソンはすごくいいと思っていて、積極的に参加するようにしてますね。

――過去のハッカソンで課題だと感じたことはありますか?

立花:ハッカソンでモノを作ってる時ってアドレナリンが出てるので、時間がない中でもみなさん熱量にあふれてるんですけど、いざ終わってそれぞれ自分の会社や学校に戻っていくと、世の中に出していくところまでにやる気がなくなっていっちゃう。実際にサービス運用していく段階になると、プロトタイプを作るのとはまた別の苦労があるわけですね。そこは解決できるようにサポートしていこうとは思ってます。

――今回のハッカソンのテーマは「未来のエンタテイメント体験」です。これについて、LINEさんの意見、描いているヴィジョンがあれば教えてください。

立花:APIやプラットフォームを公開していますので、ぜひ参加者の皆さんの自由な発想で作り上げていっていただけると幸いです。領域としてはVUI(音声ユーザーインターフェース)ですかね。スマート・スピーカーには力を入れてます。

――技術のメンターとしては参加すれど、そこから生まれる何かの方向性を指し示すことはないと。

立花:そうですね。注力しているのがスマート・スピーカー。あとはコミュニケーションですね。そのあたりで何かが出てくれれば。

――2015年の『LINE MUSIC』のローンチから音楽事業に参入したLINEさんですが、音楽とLINEのコミュニケーション機能には親和性を感じていますか?

立花:親和性は絶対あります。例えば自分が聴いている音楽をタイムラインに出したり、自分のプロフィール用に曲を設定できたり。

――やはりあくまでコミュニケーション・プラットフォームが前提にあって、そこに音楽を紐づけるような。

立花:そうですね。コミュニケーションを核としたエンタテインメント体験の一環です。LINEのアカウントがあって、さらにスマート・スピーカーも出てきたことで、さらにユーザーとの接点が増えると思うので、その中でLINEのコミュニケーションを核としたエンタテインメントを提供していくことがビジョンです。

――今回ご提供いただく技術もその核の部分でしょうか。

立花:人と人のコミュニケーションはもちろん、人とシステムのやり取りも言ってみればコミュニケーションなので。私はLINEが使えないサービスなんてないと思ってますし、いかなるサービスもLINEのAPIを使えばもっとよくなると思ってます。

――では、LINEさんの技術を用いるであろう参加者の皆さんには、何を期待されていますか?

立花:うちのAPIだからこそできることって結構あると思っていて、ただ便利なだけじゃなく、これまでになかった、でもLINEらしくLINEのユーザーに刺さるようなものが生まれれば。あといつも言ってるんですけど、世の中のコミュニケーションの総量が増えるようなサービスが出てくればいいなと思ってます。うちのAPIは実際にそれができるような設計にもなってますし、今回は期間も長いので一緒にじっくり作っていければいいなと。うちのミッションは「CLOSING THE DISTANCE」。人と人、人とシステムの距離を縮めることです。

――スマート・スピーカーに注力されているとのことでしたが、『Clova』を使ったスマート・スピーカーの他社製品にはない強みがあれば教えてください。

立花:スマート・スピーカーを使ってLINEの通話ができたり、メッセージを送れたり。他社の製品とはユーザー層が違うので、そこに刺さる機能を提供できているのは強みですね。

――見た目が他社製品と一線を画していて、キャッチ―で可愛いデザイン性は若者に刺さりやすいでしょうね。

立花:話しかけやすいというのはあると思います。

――2011年にLINEがリリースされて以来、デバイスの開発はスマート・スピーカーが初?

立花:対一般ユーザー向けのデバイスは、多分初めてじゃないかなぁ。

――何かきっかけが?

立花:我々はスマートフォンがなくなった時のことを考えています。「絶対なくならないだろう」と思っていたものがなくなる時って、必ずくる。次世代のコミュニケーション・ツールになるものとしてこれを作った、と私は聞いています。

――なるほど。

立花:スマート・スピーカーの今後でいうと、画面付きデバイスの発売も予定されています。例えば「新宿区の天気は?」って聞くと、声による出力と同時に1週間分の天気がずらっと表示されるようなことも実現できますね。

――最後に、参加者に向けてメッセージをいただければと思います。

立花:私はもともとWebやアプリのエンジニアをしていましたが、現在の職責はエバンジェリストであり、ハッカソン等イベントを通じて皆さんのビジネスの成功をサポートすることがメイン・ミッションです。導入からビジネスの成功まで、参加者の皆さんをサポートしていきますので、何でも頼っていただければ嬉しいです。



Interview by Takuto Ueda

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