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KISSのフロントマンによる渾身のソウル/R&Bプロジェクト、ポール・スタンレーズ・ソウル・ステーション来日記念特集

 KISSのポール・スタンレーによる渾身のソウル/R&Bプロジェクト、Soul Stationが、来年1月に待望の来日公演を開催する。ポールが全精力を込めてザ・テンプテーションズ、ジャクソン5、ザ・ミラクルズ、アル・グリーン等などのソウル・クラシックスのカヴァーを披露する本プロジェクト。あの“KISS”とソウル・ミュージックと言われると、不思議な組み合わせの気もするが、真相はどうか? なぜ、いまポール・スタンレーがSoul Stationとして、ソウル・クラシックスのカバーに挑むのかについて、ポールの自伝の日本語版の監修や、ポール本人への取材の数々でも知られる音楽評論家の増田勇一氏に解説して貰った。

KISSというバンドの功績と“伝染力”

 世界でいちばん熱いバンド――暗転したアリーナにこの言葉が雷鳴のように轟くと、超満員の観衆がそのアナウンスに合わせてKISSの名を叫び、文字通りの怪物バンドのショウが幕を開ける。このバンドを愛する人たちにとってのお馴染みの光景だ。1973年にニューヨークで産声をあげたKISSの歴史はすでに45年目に突入し、1977年に実現した日本初上陸からもすでに40年もの月日が経過している。



▲KISS LIVE 1977 Japan


▲『地獄からの使者
~キッス・ファースト』

 KISSが1974年のデビュー・アルバム発売から現在に至るまで、本当に“世界でいちばん熱い”存在であり続けてきたかと言われれば、さすがにNOと言わざるを得ないだろう。しかし、あまりにも奇抜でコンセプチュアルなこのバンドが、これほどまで長きにわたり音楽シーンの第一線に君臨し続けることになると、いったい誰が想像していただろうか。『DESTROYER(地獄の軍団)』や『ROCK AND ROLL OVER(地獄のロック・ファイヤー)』、『LOVE GUN(ラヴ・ガン)』といった象徴的アルバムが生まれた1976年から1977年にかけての時期をこのバンドの絶頂期と見る向きは少なくないが、彼らはトレードマークであるメーキャップを落として活動していた1983年からの素顔時代も、オリジナル・ラインナップでのリユニオンに至った1996年以降も、そしてさらには今現在においても、揺るぎない支持の高さを誇っている。

 かつて、ロック・ミュージックに免疫のない子供たちをも巻き込みながら社会現象に近いブームを巻き起こした彼らの人気は、当時の大人たちにはあくまで一過性のものとして見られていた。が、KISSでロックに目覚めてバンドを志すようになった若者たちの数は知れない。彼らの功績はすさまじいアルバム・セールスや動員記録ばかりではなく、そうして若い世代にとっての衝動/動機となり、ロック文化を絶やさずにきたことにもある。しかも彼らの音楽とライヴ・ショウは、すっかり大人になったファンをいまだに夢中にさせ、そうした“かつての少年たち”がライヴに連れてくる息子や娘、あるいは孫たちにまで、その熱が伝染し続けているのだ。

 KISSはこれまでに南北アメリカにおいて、他の誰よりも多くのゴールド・ディスクを獲得してきた。日本武道館でのザ・ビートルズの動員記録を塗り替えたのも彼らだった。彼らの功績の大きさについて語るうえで、いまさらそうした輝かしい記録をあれこれ列挙する必要はないだろう。それほどに、このバンドの存在は絶対的なのだ。そしてついに彼らは、デビュー40周年の節目の年にあたる2014年に、ようやくロックンロールの殿堂入りを果たしている。少しばかり遅過ぎる気がしなくもないが、頭の固い評議員たちもついにKISSの功績の大きさを正面から認めざるを得なくなった、ということかもしれない。



▲KISS Live In Tokyo 10/24/2013(2nd Night) Monster World Tour

“ソウル・ミュージック”という、世代を問わず理屈抜きに楽しめるタイムレスな音楽

 ポール・スタンレーは、ジーン・シモンズとともに結成時からこのバンドを扇動し続けてきたヴォーカリスト/ギタリストである。相棒のジーンには“千の顔を持つ男”との異名があるが、ポールの顔もまた、KISSでお馴染みのそればかりではない。彼はソロ・ミュージシャンでもあり、ミュージカル俳優でもあり、レストラン・チェーンの共同経営者でもあり、画家でもある。さらには良き家庭人でもあり、料理の腕前も相当のものであるらしい。また、2014年に刊行された彼自身の自伝『FACE THE MUSIC:A LIFE EXPOSED(ポール・スタンレー自伝 モンスター~仮面の告白~)』では、我々が長年見慣れてきた彼の華々しいロック・スター然としたたたずまいとは真逆ともいえるほどの、トラウマと葛藤に満ちた生い立ちが赤裸々に語られていたりもする。

 そんなポールが近年、情熱を注いでいるのが、彼自身が幼少期から愛してきたソウル・ミュージックへの取り組みだ。単なるソロ活動ではない。Paul Stanley's Soul Stationというバンド形態でのライヴ活動なのだ。彼は、筆者が2016年に行なったインタビューのなかで、この新たなプロジェクト始動の動機などについて、次のように語っている。

 「これは、突然の楽しいチャレンジだった。切っ掛けは、僕自身に多大なる影響を与えてくれたモータウンやフィリー・ソウルといった音楽が、最近めっきり聴こえてこなくなってきたこと。ザ・テンプテーションズ、ザ・スタイリスティックス、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ……そういった素晴らしいアーティストの音楽を聴く人たちが、なんだかとても減っているように思う。そうした音楽がライヴ・ステージで演奏される機会もね。ああいったクオリティの高い音楽が聴かれる機会をどんどん失っているんだとしたら、こんなに残念なことはない。だからこのプロジェクトの目標は、そうした素晴らしい音楽をオリジナルに忠実に、大いなるリスペクトをもって演奏することなんだ」



▲The Temptations - My Girl

 実は彼自身、このインタビューを行なった時点で「僕の次なる計画は、このプロジェクトを率いて日本でプレイすることだ」と語っていた。それが2018年、ようやく実現することになるというわけである。もう少しだけ、ポールの発言を紹介しておこう。

 「ここで一緒にプレイしているメンバーたちは、スモーキー・ロビンソンやスティーヴィー・ワンダー、ホイットニー・ヒューストンなどと一緒に演奏してきた一流中の一流ミュージシャンばかり。彼らの楽しみは何よりもそういった音楽を演奏することだから、とにかく僕自身も楽しくてたまらない。それがいいライヴにも繋がっていると思う。なかには僕がこうした音楽に傾倒しているのを意外に思うロック・ファンもいるかもしれない。だけど僕は、レッド・ツェッペリンに夢中になる前に、オーティス・レディングのライヴを観ている。ザ・テンプテーションズも、ソロモン・バークもね。それに、自分のルーツにあるものというだけじゃなく、音楽として本当に素晴らしい。だから、こうしてホーン・セクションやバック・シンガーを引き連れながら本気でトリビュートすることが、本当に楽しい。これはまさに、タイムレスな音楽だからね」



▲Otis Redding - In Concert (Live)

 まさにタイムレスなロック・バンドであるKISSのフロントマンが口にする言葉だからこそ、そこには彼自身の純粋な嗜好ばかりではなく、ずっしりとした重みも感じられる。今回のライヴで我々は、これまで知らずに来たポールの一面と向き合うことになる。しかしそこで、かしこまる必要はない。そのライヴは間違いなく、世代を問わず理屈抜きに楽しめるものになるはずなのだ。まさに、世界でいちばん熱いバンドのライヴが常にそうであるように。

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