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スタイリスティックス 来日記念特集~結成50周年を迎えるベテラン・グループの魅力と歩み

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 2007年にビルボードライブがオープンして以来、毎年クリスマス・シーズンに来日し、同クラブだけでもトータル200以上のステージをこなしてきたスタイリスティックス。70年代のソウル・ミュージック・シーンにおいてフィラデルフィア・ソウルの名門ヴォーカル・グループとして一世を風靡した彼らは、日本においても抜群の知名度を誇る。トム・ベルやヴァン・マッコイらによってアレンジされ、美しいファルセット・ヴォイスと洗練されたハーモニーで紡がれた甘く切ない名曲の数々。メンバー・チェンジを経た今も何ひとつ変わらないそのスタイルは、まさに彼らの専売特許。そんなスタイリスティックスの魅力と歩みを、来年の結成50周年を前に、日米での愛され方の違いも含めて迫ってみたい。

世界で歌い継がれるスタイリスティックスのスウィートな名曲たち

 70年代、アメリカのソウル・ミュージックにおいてファンク・バンドと並ぶ柱となったヴォーカル・グループ。60年代にはモータウンから登場したテンプテーションズがトップ・スターとなったが、フィラデルフィア・ソウルの台頭とともにヴォーカル・グループの象徴となったのがスタイリスティックスだった。フィリー・ソウルの洗練された絹のように滑らかなサウンドと、リード・シンガーのラッセル・トンプキンスJr.による天高く突き抜けるようなファルセット・ヴォイス。フィラデルフィア・ソウルの文脈では、ファルセットを売りとするスウィートなヴォーカル・グループとしてデルフォニックス、ブルー・マジックとともに御三家とされ、以後、そのスタイルを受け継ぐグループが雨後の筍の如く現れた。日本ではソウル・ヴォーカル・グループの中で最も知名度が高いとも言われ、フィリー・ソウルのグループではスリー・ディグリーズと並んで頻繁に来日しているグループというイメージも強い。2000年以降は、ラッセル・トンプキンスJr.に代わってハロルド“イーバン”ブラウンがリードを務め、ラッセルそっくりのファルセット・ヴォイスで往年の名曲を歌って会場を沸かせている(ラッセルは「ニュー・スタイリスティックス」という分派的なグループで活動している)。

 名曲は数多いが、日本での人気を考えた場合、マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスのデュエット・ヴァージョンでも有名な「You Are Everything」(71年)、そして「愛がすべて」という邦題で知られる「Can't Give You Anything(But My Love)」(75年)が2大名曲となるだろうか。特に後者はビルボードのR&Bチャート18位、ポップ・チャート51位というまずまずの成績ながら、日本のディスコ・シーンともリンクして火がつき、当時を知る世代には忘れられない名曲として語り継がれている。一方、同チャートにて高順位(トップ10圏内)をマークした本国での2大名曲といえば、72年にR&B2位/ポップ3位となった「Betcha By Golly,Wow」、74年にR&B5位/ポップ2位となった「You Make Me Feel Brand New」となるだろうか。もちろん日本でも人気で、70年代をリアルタイムで体験したリスナーなら定番中の定番だが、もう少し後の世代であれば、前者は(The Artist formally known as Princeと呼ばれていた頃の)プリンスが96年作『Emancipation』でカヴァーし、後者は山下達郎が『On The Street Corner 2』(86年)にてアカペラで披露したことで知る人も多いだろう。これらに限らずカヴァーやサンプリングの類は枚挙にいとまがなく、ソウル・ミュージックをテーマにしたカヴァー集で彼らの曲が取り上げられることも少なくない。


▲ 「You Are Everything」音源


▲ 「Betcha By Golly Wow / You Make Me Feel Brand New」(Live)

スタイリスティックス誕生〜トム・ベルやヒューゴ&ルイージと組んだ黄金時代

 フィリー・ソウルの流麗なサウンド込みで日本のポップスにも大きな影響を与えた彼らは、2013年に日本の歌謡曲/J-Pop名曲のカヴァーを含む企画盤『Cover The Stylistics』も出していたが、現時点におけるスタイリスティックスの最新オリジナル・アルバムは結成40周年記念を謳って日本先行で出した2008年の『That Same Way』となる。来年2018年に結成50周年を迎える彼らは68年にフィラデルフィアで結成。メンバーは、モナークスにいたラッセル・トンプキンスJr.、エアリオン・ラヴ、ジェイムズ・スミス、パーカッションズにいたハーバート・マーレルとジェイムズ・ダンの5人。グループ最大の売りはテンプテーションズのエディ・ケンドリックスに憧れていたというラッセル・トンプキンスJr.のファルセット・ヴォイスであった。

 69年に地元のセブリングから発表した「You're A Big Girl Now」が話題を呼び、その版権をアヴコ・エンバシー(以下アヴコ)が買い取ったことでアヴコに入社。71年のデビュー・アルバム『The Stylistics』からは「Stop,Look,Listen(To Your Heart)」「You Are Everything」「Betcha By Golly,Wow」「People Make The World Go Round」が立て続けにヒットしている。これらを書いたのはデルフォニックスに「La La Means I Love You」(68年)を提供してフィリー・ソウルの立役者となったトム・ベル、および彼のソングライティング・パートナーとなった女流作詞家のリンダ・クリード。バート・バカラックとハル・デイヴィッドのセンスにも通じていたふたりの書く愛の歌をスタイリスティックスは、エレキ・シタールなどをきかせたベル特有の甘く切ないサウンドに乗ってエレガントに歌い上げた。そして、セカンドの『Round 2』(72年)からは「I’m Stone In Love With You」「Break Up To Make Up」などを、サードの『Rockin' Roll Baby』(73年)からはアルバム表題曲やラッセルとエアリオンの掛け合いが素晴らしい「You Make Me Feel Brand New」などをヒット・チャートに送り込んで、デビューから3年ほどでトップ・グループの仲間入りを果たしている。同じフィリー・ソウルのヴォーカル・グループでも、ケニー・ギャンブルとリオン・ハフが手掛けたオージェイズやハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツといったバリトン・シャウター系のリードがソウルフルに熱唱するそれとは違って、ベルが手掛けたスタイリスティックスはソフトなヴォーカルとポップで親しみやすいサウンドが特長となった。




 だが、スピナーズなどを手掛け始めたトム・ベルが多忙になったことでベル=クリードとの蜜月関係は3枚のアルバムで終了。その後、70年代中~後期には、ヒューゴ&ルイージのプロデュース/ヴァン・マッコイのアレンジという体制のもと、グループのスウィートでポップな持ち味をより強調する方向へと向かっていく。ベル=クリードに変わるソングライティング・チームとなったのは、ヒューゴ&ルイージと、彼らの右腕であったジョージ・デイヴィッド・ワイス。この3人はかつてエルヴィス・プレスリー「Can’t Help Falling In Love」(61年)を書いたチームであり、そんな彼らのポップ・センスに、ヴァン・マッコイが自らのヒット「The Hustle」のスタイルを応用したディスコ・マナーを持ち込むことでソウル・ミュージックを超えた存在として人気を博していく。そうした中で生まれたのが先に触れた「Can't Give You Anything(But My Love)」であり、「Disco Baby」「Sixteen Bars」「Funky Weekend」といった来日公演でも定番化している楽曲たちだった。一方で本国ではこの頃からチャート的には低迷していくのだが、アヴコがヒューゴ&ルイージに買収されてH&Lと名称変更してからもスタイリスティックスは精力的に作品をリリース。スロウ・バラードは、日本のディスコでチーク・タイム(スロウ・テンポの曲で男女がチーク・ダンスを踊る時間)の定番となっているものも少なくない。

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再評価、そして変わりゆく変わらないグループの魅力

CD
▲『ライオンは寝ている』

 70年代後半には健康上の理由でジェイムズ・ダンが抜けて4人組に。78年にはトーケンズの名曲カヴァー「The Lion Sleeps Tonight」をシングルで発表し、翌年にはTK傘下のダッシュからヒューゴ&ルイージの制作となる同名のアルバムを出しているが、この時は既にヒューゴ&ルイージと離れており、マーキュリーにてテディ・ランダッツォが制作した『In Fashion』(78年)など2枚のアルバムを出した彼らはフィリー的なソウルに回帰している。こうして80年には、ギャンブル&ハフが主宰したフィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ(PIR)の傍系レーベル=TSOPに入社。意外にもPIRとは直接的に縁がなかったスタイリスティックスだったが、ようやく地元のレーベルと契約を果たしたのだ。TSOPでの第一弾『Hurry Up This Way Again』(80年)からは、70年代後半以降のPIRサウンドの核となった鍵盤奏者デクスター・ワンゼルが女性作詞家のシンシア・ビッグスとコンビを組んでベル=クリードのコンビよろしく書き上げたアルバム表題曲がスマッシュ・ヒット。ワンゼルのメロウなセンスが発揮されたこれは、後にジェイ・Zの「Politics As Usual」(96年作『Reasonable Doubt』収録)でサンプリングされたのをはじめ、J・ホリデイがリック・ロスをフィーチャーした「Wrong Lover」(2009年作『Round 2』収録)などでも引用されるなど、当時のヒット・チャートとは別の文脈でヒップホップやR&Bの世界で新しい世代によって評価されることになる。




 同じくヒット・チャートと関係なく評価されている楽曲としては、トム・ベルとの再会作となったTSOPでの2作目『Closer Than Close』(81年)に収録された「Mine All Mine」がシカゴ・ステッパーズのクラシックとして本国で人気であることも記しておきたい。シカゴ・ステッパーズとはシカゴのブラック・コミュニティにおける伝統的な社交ダンス/音楽を含めたカルチャーで、2000年代半ばにシカゴ出身のR.ケリーが「Step In The Name Of Love」などでそのシーンを広く知らしめた。そこでよくかかる曲としてはフィリー・ソウルの曲も少なくなく、スタイリスティックスなら「Pay Back Is A Dog」(73年)もシカゴ・ステッパーズのクラシックとされている。ただ、「Mine All Mine」は来日公演でも何度か披露されているものの、本人たちの思い入れとは裏腹に日本ではほとんど受けない。代わりに「Can't Give You Anything(But My Love)」が受けるわけだが、同じグループの楽曲でも日米における温度差があるという事実は興味深く、そこも含めてスタイリスティックスというグループはユニークな存在だと思う。




CD
▲『ザット・セイム・
ウェイ』

 82年にTSOPの親レーベルであるPIRから『1982』をリリースした後は、アーサー・ベイカー主宰のストリートワイズでモーリス・スターをプロデューサーに迎えたアルバムを2枚発表し、91年にはアムハーストから『Love Talk』を発表。80年代以降はメンバー交代が激しく3人組となった時期もあったが、96年の『Love Is Back In Style』から12年ぶりとなるスタジオ録音アルバム『That Same Way』からはオリジナル・メンバーのエアリオン・ラヴとハーバート・マーレルに新参のハロルド“イーバン”ブラウンとヴァン・フィールズが加わり、以降は4人組として活動中。ただし、2011年の来日公演からはヴァンが脱退してジェイソン・シャープが新たに迎え入れられた。いずれにしても現在の看板はイーバンであり、レイ・グッドマン&ブラウンでも活動するなど若くして70sヴォーカル・グループ的作法を弁えた彼がリードを務めることで70年代の名曲が当時の輝きのまま蘇るあたりは痛快この上ない。

 クリスマス・シーズンの来日公演がお約束となっているスタイリスティックス。今年のビルボードライブでは、東京で13ステージ、大阪で6ステージが行われる予定で、これらを含めるとビルボードライブだけで通算246ステージをこなすことになるという。クリスマスという大切な時期に彼らが日本でライヴを行うというだけでも、その親日家ぶりが窺えるだろう。まもなく結成50周年。そのスウィートなソウル・マジックは今も色褪せていない。

スタイリスティックス「フリー・ソウル クラシック・オブ・スタイリスティックス」

フリー・ソウル クラシック・オブ・スタイリスティックス

2014/07/23 RELEASE
VICP-65238 ¥ 2,160(税込)

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Disc01
  1. 01.ハリー・アップ・ディス・ウェイ・アゲイン
  2. 02.ピープル・メイク・ザ・ワールド・ゴー・ラウンド
  3. 03.ラブ・カムズ・イージー
  4. 04.エボニー・アイズ
  5. 05.レット・ゼム・ワーク・イット・アウト
  6. 06.イフ・アイ・ラヴ・ユー
  7. 07.ユー・メイク・ミー・フィール・ブランド・ニュー
  8. 08.ユール・ネヴァー・ゲット・トゥ・ヘヴン
  9. 09.カントリー・リヴィング
  10. 10.シェイム・アンド・スキャンダル・イン・ザ・ファミリー
  11. 11.ロッキン・ロール・ベイビー
  12. 12.ファウンド・ア・ラヴ・ユー・クドゥント・ハンドル
  13. 13.ベッチャ・バイ・ゴーリー・ワウ
  14. 14.ストップ・ルック・リッスン
  15. 15.ブレイク・アップ・トゥ・メイク・アップ
  16. 16.ユー・アー・エヴリシング
  17. 17.ユーアー・アズ・ライト・アズ・レイン
  18. 18.キャント・ギヴ・ユー・エニシング
  19. 19.イージー・ラヴィング・ユー (Bonus Track)
  20. 20.ヒューマン・ネイチャー (Bonus Track)
  21. 21.ディス・クリスマス (Bonus Track)

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