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特集:新世代ジャズとテラス・マーティン ~来日直前インタビュー&プレイリスト



 これまでBillboard JAPANでは、ポップ・ミュージックの世界と共振し、進化と拡大を続ける新世代ジャズ・シーンの担い手たちを複数回に渡り特集してきた。そして、いまその最先端にいるアーティスト/プロデューサーの一人が今月、来日公演を行うテラス・マーティンだ。今回は、これまでの新世代ジャズ関連特集の中から、いま改めて振り返りたい5本を選出し、冒頭に掲載する。

 さらに次ページではテラス・マーティン自身の最新インタビューを掲載。彼が先日リリースした新作アルバム『Sounds of Crenshaw, Vol.1』を中心に話を聞いたほか、最近のお気に入りの楽曲についても答えて貰い、プレイリストを作成した。さらに、そのインタビューのリード文として本メディアの特集にもたびたび協力しているジャズ評論家で『Jazz The New Chapter 4』の監修者、柳樂光隆氏の文章を掲載。なぜいまテラス・マーティンに注目すべきなのかについて改めて書いて貰った。特集を通してシーンの大きなうねりを感じて貰えれば幸いだ。

新世代ジャズ&『Jazz The New Chapter』関連特集5選

クリス・デイヴ & the Drumhedz 来日記念特集

 クリス・デイヴの革新性を改めて検証すべく、柳樂光隆氏に彼のプレイ、そして、その音楽家としてのキャリアを、数々の動画と共に振り返って貰った。題して「動画で“再発見”するクリス・デイヴ」特集。(2016年1月掲載)

カマシ・ワシントン x ブランドン・コールマン スペシャル対談

 LAシーンで注目を集める鍵盤奏者ブランドン・コールマンとサックス奏者カマシ・ワシントン。幼馴染の2人は、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナーや彼の兄ロナルド・ブルーナーJr.、マイルス・モズレーなど、地元の気の知れた仲間と学生時代から音楽コミュニティを育み、その類まれな音楽センスと才能を開花させていく。今では誰もが一目置くミュージシャンとなった2人が、その出会いや“ウェスト・コースト・ゲット・ダウン”の結成、盟友テラス・マーティン、LAの音楽シーンについて和気あいあいと語ってくれた。(2016年5月掲載)

マイルス・デイヴィス&ロバート・グラスパー『エヴリシングス・ビューティフル』特集対談

 ロバート・グラスパーが2016年にリリースしたアルバム『エヴリシングス・ビューティフル』は、マイルス・デイヴィスの生誕90周年に合わせて、マイルスが残した音源を元にグラスパーが再構築/再クリエイトした1枚。エリカ・バドゥやハイエイタス・カイヨーテら、一枚を通して豪華なゲストも参加し、全く新しいマイルス解釈の作品として大きな反響を呼んだ。この特集では、そんな『エヴリシングス・ビューティフル』について、ジャズ評論家の村井康司氏と柳樂光隆氏の対談を実施。同作を通して見えてくるマイルスというジャズの巨人、そして、ロバート・グラスパーの現代性について改めて語ってもらった。(2016年7月掲載)

カマシ・ワシントン来日記念 rockin'on 渋谷陽一インタビュー

 カマシ・ワシントンの来日を前に、ロッキング・オン・グループの経営者である渋谷陽一氏にインタビュー。長年ロックの音楽評論家としても知られてきた渋谷氏だが、2016年の【フジロック】で観たグラスパーやカマシの演奏への感銘や、後者の実質的ファースト・アルバム『エピック』の愛聴を公言する一人でもある。長きに渡り洋楽シーンを見てきた渋谷氏に、現在の新しいジャズの潮流はどのように見えているのか話を聞いた。(2016年10月掲載)

『Jazz The New Chapter 4』インタビュー

 ロバート・グラスパーをはじめ、現代の音楽/ジャズ・シーンを牽引するミュージシャンに焦点を当てた企画で、発売のたびに話題になる『Jazz The New Chapter』シリーズ。2017年3月には『Jazz The New Chapter 4』が発売となった。ビラルやジル・スコットをはじめ、ネオソウルの要人の貴重な証言が集まったフィラデルフィア特集。またアントニオ・ロウレイロ、カート・ローゼンウィンケルらが起点となったブラジル音楽特集など、ディープかつ新鮮な切り口の特集が並んだ雑誌について、監修者のジャズ評論家の柳樂光隆氏と、シンコーミュージック・エンターテイメントの編集者、荒野政寿氏に話を聞いた。(2017年5月掲載)

LAのカルチャーを体現しつつ、ジャズ・ミュージシャンならではのユニバーサルなサウンドを奏でるテラス・マーティンのサウンド


▲『To Pimp A Butterfly』

 2010年以降、ジャズ・シーンが盛り上がっているのはご承知の通り。ジャズの本場NYではロバート・グラスパーをはじめ、様々なジャズ・ミュージシャンたちが、刺激的なサウンドを供給している。その一方で、近年は西海岸、LAのシーンの活性化が著しく、NYを凌駕するような充実を見せ始めている。プロデューサーのフライング・ロータスがジャズとビート・ミュージックの狭間でチャレンジングな作品を生み出し、LAにおけるジャズミュージシャンたちの存在がクローズアップされ始めたところから始まり、フライング・ロータス主催のブレインフィーダーからベーシストのサンダーキャットが革新的なアルバムを発表したことで徐々にLAはジャズ・ミュージシャンがすごいらしいというのが既成事実となり、カマシ・ワシントンの登場で一気に爆発した。そして、その勢いそのままに、ラッパーのケンドリック・ラマーが発表した『To Pimp A Butterfly』ではサンダーキャットやカマシ・ワシントンをはじめ、数多くのジャズミュージシャンが参加し、歴史的名盤に貢献したことで、LAのシーンはジャズを超え、あらゆるジャンルのリスナーから注目されるようになった。

 今、世界を騒がせているLAのジャズ・ミュージシャンの多くは“ウェスト・コースト・ゲット・ダウン”と呼ばれるクルーの一員だ。カマシ・ワシントンやマイルス・モーズリー、ブランドン・コールマン、ロナルド・ブルーナーJr、ライアン・ポーターなどを擁するこのクルーは、フライング・ロータスやケンドリック・ラマーらの作品に参加してブレイクする前から、ドクター・ドレーやスヌープ・ドッグ、ローリン・ヒル、エリカ・バドゥなどのバック・バンドとして活動してきた超一流のミュージシャンで、ジャズもネオソウルもヒップホップも自在に奏でるセンスを持っている。

 そんなジャズ・ミュージシャンたちの中でも特に大きな成功を収めているのがサックス奏者のテラス・マーティンだ。サックス奏者としてカマシらとセッションを重ねながら、ドクター・ドレーやDJクイック、スヌープ・ドッグ、そしてケンドリック・ラマーなどにトラックを提供したりする彼は今、世界で最も注目されるプロデューサーでもある。ハービー・ハンコックの新作を手掛けることも発表されているテラスのサウンドは、自身のプロジェクトでもあるポーリーシーズなどでも聴けるように、西海岸のギャングスタ・ラップや現代的なジャズなどの要素が溶け込んでいるのが特徴だ。LAという土地に根付いたカルチャーを体現するサウンドであり、同時にジャズ・ミュージシャンならではのユニバーサルなサウンドでもある彼の音楽は、まさにテラス・マーティンにしか作れないものだ。


▲The Pollyseeds - Intentions (featuring Chachi)

文:柳樂光隆

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テラス・マーティン来日直前インタビュー

――ポーリーシーズはどういう経緯で結成したプロジェクトですか?またこのプロジェクト名に込めた意味を教えてください。

テラス:みんな音楽を通して出会ったんだ。ほとんどのメンバーは一緒に成長してきた仲間でもある。それが音楽とロサンゼルスのサウス・セントラルの魔法なんだ。“ポーリーシーズ”の名前の由来は、ひまわりの種から来ている。俺らの育ってきた地域では、ポーリーシーズって呼んでたのさ。ひまわりは美しく輝いている。平和、幸福、日の光の象徴でもある。全ての種が一つに集まっている様はまるで、明るい黄色の喜びが集結して突き出ているように見えるんだ。この作品(『Sound of Crenshaw vol.1』)では、そのひまわりを見た時に感じる感情的な反応とサウス・セントラルで育ち培われたノスタルジックな気持ちを融合させたかったんだ。 新旧のサウンドをミックスさせた音に影響を受けて出来た作品だよ。

――最近『Relationships』をリリースした素晴らしいドラマーでプロデューサーのトレヴァー・ローレンスJrとあなたはSnoop Doggの『Ego Trippin』などに二人ともクレジットされていたり、近いところにいたと思いますが、そもそもどこで知り合って、どんな関係を築いてきたのでしょうか。

テラス:トレヴァーは俺にとって大切な友達で、何年も前から知っているし、俺たちの友情は音楽よりも大きいものなんだ。彼は、西海岸から出てきた最高のミュージシャンの一人だよ。

――キーボーディストとして参加するキーファー(Kiefer)のアルバム『Kickinit Alone』は日本でCDがリリースされていて、ビートメイカーとしても知られています。あなたとはどういう経緯で知り合って、一緒にやるようになったのかを教えてください。

テラス:キーファーと俺はインスタグラムを通じて繋がって、お互いにファンになったんだ。キーファーの音楽は新しくて魅力的だよ。


▲Kiefer - Tubesocks

――ポーリーシーズのマーロン・ウィリアムスを日本のファンに紹介してもらえますか?

テラス:マーロンは現代音楽にとって本当に重要なサウンドを生み出している。彼は、YG、クインシー・ジョーンズ、ケンドリック・ラマー、それからハービー・ハンコックと言った才能溢れたアーティストたちと仕事をしてきた。彼は、今の時代で最もレコーディングされたことの多いギタリストなんじゃないかな。


▲Marlon Williams Discusses the Fender American Professional Telecaster | Fender

――ブランドン・オーウェンスは『To Pimp A Butterfly』にもクレジットされていたベーシストです。彼とあなたとの関係や彼のベーシストとしての特徴を教えてください。

テラス:ブランドンは俺が15歳の時からの親友なんだ。それに彼は俺のお気に入りのベーシスト、ソングライター、そしてプロデューサーの一人でもある。彼の音楽はとても暖かいサウンドを運んでくれるんだ。

――映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』でも“Crenshaw Boulevard”が映っていました。日本人には馴染みのない地名だと思います。クレンショー(Crenshaw)とはあなたにとってどんな場所なのでしょうか。

テラス:クレンショーは、いわばアート・シーンにおける心臓の鼓動なんだ。ジャズ、ダンス、良い食べ物、癒し、それから全てのシーンには黒人としての誇りが存在している。

――「Mama D/Leimert Park」という曲に込めた意味を教えてください。

テラス:「Mama D/Leimert Park」は俺と1500 or Nothin'のローレンスが作曲した曲で、彼の亡くなった母親の実在とレイマート・パークの想いが融合されているんだ。

――また、「Mama D/Leimert Park」はあなたのサックスソロが印象的です。あなたがLeimert Parkでジャズを学んでいたころを思い出しながら演奏しているように感じました。

テラス:めちゃくちゃ勉強したよ。サックス・パートはその時代の経験と色が反映されているね。

――今回の来日ではチャチ(プロブレム)、ローズ・ゴールド、ワイアン・ヴォーンの3人のシンガーが同行します。彼らについても日本のファンに向けて紹介してもらえますか?

テラス:ワイアン・ヴォーンは俺の作曲パートナーで、ソウルフルな歌声を持った素晴らしいアーティストだ。ローズ・ゴールドは、ボルティモア出身の“Sounds of Crenshaw”のアーティストで、天使のような癒しのサウンドを運んできてくれる。チャチはカリフォルニアのコンプトン出身で、彼はソウルフルなサウンドを兼ね備えたアグレッシブな紳士だよ。


▲Terrace Martin - Think Of You' (feat. Rose Gold)

――「Funny How Time Files」はジャネット・ジャクソンのバージョンが有名ですが、もともとはスタンリー・クラークの楽曲です。この曲をカヴァーした理由を教えてください。

テラス:ジャネットの「Funny How Time Flies」は俺のお気に入りの曲の一つさ。彼女はレジェンドだし、このレコードのメッセージ性に一番心を惹かれるね。

――『Sound of Crenshaw vol.1』にはギャングスタ・ラップから連なるサウンドが入っているように思います。あなたや『Sound of Crenshaw vol.1』とギャングスタ・ラップの関係について聞かせてください。

テラス:俺にとっては全部一緒なんだ。自分が好きなものが好きなんだ。

――「Up Up & Away」におけるシンセとボコーダーがとても印象的です。あなたのボコーダーは ロジャー・トラウトマン~ドクター・ドレー~2Pacと受け継がれているものなのかなと思いますが、いかがでしょうか。

テラス:すごく楽しく制作した曲だよ!その偉人たちが自分自身の中にいるようで、時折そのことに気付いてくれていたら嬉しいよ。

――今回の来日では3人のシンガーが同行することもあり、前回のライブとはかなり違うものになるような気がします。どんなライブになりそうか教えてください。

テラス:楽しくて、愛が溢れていて、それから実験的になると思うから楽しみにしていて!早くみんなに会いたいよ!

質問作成:柳樂光隆

テラス・マーティンのヘヴィ・プレイ・プレイリスト

 特集の最後にテラス・マーティンに最近お気に入りの曲をセレクトして貰ったApple Musicプレイリストを公開。インタビューと合わせて、ぜひ楽しんで欲しい。

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