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泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー



泉谷しげる 『泉谷しげるの新世界―アートオブライブ!』 インタビュー

パンク親父が毒を吐きに吐きまくる2万字インタビュー!

 泉谷しげる、69歳にしてデビュー45周年。自身発起人の【阿蘇ロックフェスティバル2017】開催に『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』(CD9枚と完全ニューアルバム1枚、140ページもの豪華カラーアートブックに全曲の歌詞集、その楽曲セレクトや執筆、ジャケット絵画など何から何まで泉谷しげる完全プロデュース)のリリースと、精力的かつ自由に暴れ回る最強のパンク親父が毒を吐きに吐きまくる2万字インタビュー! めちゃくちゃ刺激的です。面白いです。なので、最後まで読んで、大いにその毒に侵されて下さい。

「芸術は“無理”でしょ? 度を越えてやるところがみんな見たい訳で」

--泉谷しげる、45周年。このタイミングで『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』がリリースされました。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:豪華なベスト盤と言ってしまえばベスト盤だし、集大成と言ってしまえばそれまでなのかもしんないけど、まぁ平たく言やぁ……ベスト盤なんぞアーティストのお墓みたいなもんだからね。新しいアルバムでも付けない限りね、今感出ませんよ。アーティストがベスト盤に頼るときというのは大体危ないですね。「もう曲作れねぇんだな、こいつ」みたいな。

--創作意欲が失われたか、もしくは財政的な問題か(笑)。

泉谷しげる:はっきり言えばそうだね! 財政的な問題か創作欠如。

--でも泉谷さんは完全ニューアルバム『舞い降りる鷹のように』も制作されていますから、創作欠如ではないですよね?

泉谷しげる:もちろんニューアルバムなんてそう簡単に作れるもんじゃないんですけど、意地ですよね。やっぱりただの集大成にしちゃったらそれはお墓なんで。葬儀屋みたいに「お別れが温かい」とか言う訳にもいかないからね。さよならが温かい? ふざけんな!っていう。そういう訳にもいかないんで、やっぱり現役感を出したい。ということですよね。

--現役感、出しすぎですよね(笑)。この作品を丸々完成させるのにどれだけの労力がかかってるんだっていう話じゃないですか。

泉谷しげる:1年ぐらいかかりましたね。デザイナーと相談しながら「ああしろ、こうしろ、ああしろ、こうしろ!」とやり取りしつつ、原稿も全部自分で書いて。人に頼むと大体お為ごかしでしか書かねぇしな。ただ「泉谷しげるは素晴らしい」そんなもん誰が読みてぇんだ? それだとつまんないんで自分で「ああでもない、こうでもない」って書いたほうがいいし。結局デザインも「俺が描いたようになんで出来ねぇんだ!」と怒っているうちに「俺が描いたように出来ないんなら、俺が作ればいいのか」って(笑)。そうやって怒った分だけ自分でやらなきゃいけないハメになっちゃったから、大変と言えば大変でしたね。ジャケットも全部描かなきゃいけなかったし。

--その結果、泉谷しげる完全プロデュースというか完全制作になった訳ですね。

泉谷しげる:結局、人に頼むということは、人に気を遣わなきゃいけなくなるじゃないですか。面倒くさいですよね。それで自分を曝け出せないんだったら、こんなもん作んないほうがいいんで。

--「自分を曝け出せないんだったら、そんなもん意味がねぇ」というのは、泉谷しげるの一貫したイメージとして強くあります。

泉谷しげる:実際に意味ねぇだろと思う。でも自分中心というよりは……さっき言ったように、才能の枯渇。これは年齢と共にそうなっちゃうのは分かるんだけど、生活習慣病なんじゃねぇかなと思うんだよ。結局はアーティストも怠けてんじゃねぇかと思うんだよな。俺のテーマは常にプロ意識だから、アーティストとして、或いは表現者として表に出ちゃった以上はどんな見方をされようが気にしないで、プロに徹する。プロへの追求ですよね。例えば年齢で体力が衰えてきたとしよう。それで声が出なくなったとしよう。そしたらタバコをやめるとか、密かに鍛えるとか……鍛えてる姿は見せたくないけど! こういうことを言うのもイヤだけど! すげぇイヤ!

--ハチャメチャでぶっきら棒に生きているイメージですからね(笑)。

泉谷しげる:でもしょうがないよ! どこかが破損してるんだから作戦を立てないと。「プロとしてどうなのか」という意思をちゃんと持たないと。だから酒もタバコも宴会もなるべくやめて……やっぱりイヤだな、こんな話(笑)。

--酒もタバコも宴会も全くやめなかったのはいつ頃ですか?

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:やっぱり30代、40代ですよね。酒は元々あんまり呑めなかったんだけど、タバコは凄い吸ってましたね。でも今はもう気持ち悪い。憎悪ですね。吸ってる奴に対しては憎悪ですよ。「殺すぞ、コノヤロウ!」みたいな感じですよ。

--喫煙家に牙を向く泉谷しげるは脅威ですよね。「今まで喫煙家の象徴みたいなイメージだったのに!」っていう。

泉谷しげる:でもプロ意識を取るんだったらね、そんなもん裏切るぐらいのことしないとダメよ。そいつらの為に生きてる訳じゃないから。ファンの期待には応えますよ? その為には無理が出来るような体作りもしなきゃいけない。無理が出来ないとやっていけないんで。ファンの人は「無理しないで」と気遣ってくれるけど、「じゃあ、無理しなくてもいいの? じゃあ、休んでいいんだな?」っていう話になっちゃうじゃん。“無理”をおまえらは見てるくせにさ。

--そうですね。“無理”してる泉谷しげるが好きだし、どのアーティストも“無理”を求められているところはあると思います。

泉谷しげる:芸術は“無理”でしょ? 度を越えてやるところがみんな見たい訳で、そうじゃなかったら世界競技なんて有り得ない。体に悪いことばっかりやってるじゃない?

--“無理”の境地ですよね(笑)。

泉谷しげる:“無理”の境地じゃん、あんなの! 誰がいちばん無理できたかの結果を見てるだけでしょ? それで「よくやった」とか「感動した」とか……よく考えてみたら「ふざけんな!」って話だよね?

--「おまえら見てただけじゃねぇか!」っていう(笑)。

泉谷しげる:俺たちもそういうことなんですよ。だから同世代と話しているとイライラするんだよ。「疲れたらどうするんだ?」とか「そんなことやってて疲れないか?」とか……こっちからしたら「バカ言ってんじゃないよ、おまえ」ですよ。“どれだけ疲れられるか”でしょ。だから「俺はここまでは疲れられるぞ!」っていうところまで行かないと。どうせ外出りゃ疲れんだからさ。

--どうせ疲れるなら行けるところまで行こうと。

泉谷しげる:それが同世代の奴らは分かんないからさ、話してもあんまり楽しくないね。老けたことなんか気にもしてねぇクセにさ、まぁ「衰えた」と思い込んじゃってんじゃないの。そりゃ衰えますよ? 長年使ってきたんだから。だけど、他の細胞でカバーするとか、他の鍛え方をしないと……それで他の才能が出てくるかもしれないじゃないですか。だから「使ってない筋肉を使ったらどうだ?」ってことなんですよ。

--実際に泉谷さんは音楽以外にも画家や俳優、映画監督、バラエティなど表現は多岐にわたっています。

泉谷しげる:あれは全部違う筋肉使ってんですよ。なんて言ったらいいのかな……ま、得意なことばっかりやってたらダメよ。不得意なこともやらないと違う筋肉が分からないし、そういう好奇心がすべての若さを貫けるんじゃないかな。やっぱり落ち着いちゃったり、丸くなったりするっていうことは……負けですね。本来、人間なんて丸くなれる訳がないんだから。そもそも「丸くなったね」という言葉がおかしいかもな。そんなもん優しくなっただけで、人間は丸くならない。性格が広がっただけで、尖ってるところは尖りっぱなしなんだよ。だから何もしないジジイも何かしてるジジイも結構揉めるじゃん? つまらねぇ頑固さを押し付けてきやがってさ、面倒くせぇじゃん。要するに「俺をちゃんと扱え」ってことを言ってんだろ? でも老けて枯れていったら粗末に扱われるもんなんだよ。粗末に扱われたくないんだったらね、ちょっとは無理してみろ!

--泉谷さんの場合は、自分で自分をある意味粗末に扱うというか、ぶっ倒れるまで駆使し続けるじゃないですか。年齢と共に無理の度合いが高まっている気がします。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:やらなくていい腕立て伏せやったり、倒れるまでジャンプし続たり、客席突っ込んでいったり。でもあれは1回ノリでやったらさ、別に毎回やりたい訳じゃなかったんだけどさ、このあいだの阿蘇ロック(泉谷しげる発起人の熊本野外フェス【阿蘇ロックフェスティバル2017】)もそうなんだけど、ステージ高いし、降りるところもちょっと怖いんで「今回はそういうこと一切やんないよ」って言ったら、「なんで?」って顔されて。スタッフ全員がだよ? 「なんでしないの? やってあたりまえだろ」みたいな顔してるんだよ。それで結局やったんだけど……ま、やっぱり自分もやりたいんだろうね。

--「おまえら、やらせんじゃねぇ」と言いながらやりたい(笑)。

泉谷しげる:おそらくスタッフに言わせたいんだろうね。「やっぱりやってよ」って。それがプロ意識よ。それで期待以上に応えるのがプロ。やっぱりイヤイヤやっても出来ちゃうパワーがプロなのよ。イヤイヤでいいんですよ。イヤイヤのほうが力は出るんで。「面倒くせぇなぁ!」って言いながら出来ちゃってるほうが格好良いわけよ。だからこのあいだの阿蘇ロックもさ「なんで年寄りがいちばん最後にやんなきゃいけねぇんだよ?」って文句言って。「もう客は帰り始めてるしよ、山だから夕方になると冷えてくるしよ、もう終わろうよ!」って。

--ライブせずに帰ろうと(笑)。

泉谷しげる:「ロックフェスっていうのは若い奴で終わるんだよ、普通。なんで69にもなってさ、トリをやんなきゃいけねぇんだよ。ロックフェスらしくねぇだろ!」って散々文句言って。それで「今日はもうさっさと終わりたいから、7曲ノンストップでやる!」っ言ってやったら、これが大変でさ。やんなきゃよかったって思ったね。もう死にそうになったよ! おそらく自分の体力自慢をしたかったんだろうな。その結果、最後客席に降りていってさ「もう疲れた。早く終わろう。おまえら、帰れ!」って(笑)。もうそれぐらいバテましたね。で、若いスタッフ連中が騎馬戦の馬を作ってさ「僕たちが支えますから!」って言ってたんだけど、最近の若い奴らは騎馬戦なんかやってないから簡単に崩れやがってさ!「格好悪ぃな! 出来ねぇんじゃねーかよ!」って怒って。上に乗ってる俺がいちばん危ないんだよ。それで靴も脱げるしさ、いちばん格好付けなきゃいけないときに「靴! 靴!」って靴探してる様子がヴィジョンに映ってんだよ! 大マヌケでした。だけど、最後に笑えたのは良かったなぁって。

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阿蘇ロックで復興を掲げなかった理由「人の不幸を動員に使うんじゃねぇよ」

--ハチャメチャな状態になりながらもやり切ったんですね。

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泉谷しげる:なんでそこまでやれたかと言うとね、山の上の空気の良いところだから音は良いしね、基本的にただ歌っていたら全く疲れないんですよ。結局は酸素なんですね。だから普通に終わったら何の疲れも生じないんですよ。気持ち良くやれちゃう。だから無理やり腕立て伏せやったんじゃねーのかって思うぐらいさ、肉体的疲労度をどうしても感じ取りたいタイプなんだよな。じゃないと、やった感がない。だから「大変でしたね!」「ノンストップでやって凄いですね!」ってみんなに言われたんだけど、演奏自体はそんなに疲れてないのよ。途中の腕立て伏せとかジャンプとか客席殴りこみとか、そこなんだよね。余計なことをやって疲れてる(笑)。お客さんも空気がいいから元気だったし、気付いたら帰ってた奴らが戻ってきてまた満員になってるし、8時までにはバスで帰さなきゃいけないのに7時40分までやっちゃったからヒヤヒヤしたんだけど……「まぁいいか!」と思って(笑)。

--でも大成功で終えられたんですよね。

泉谷しげる:大成功で終えたんだけど……やっぱりこう震災の影響があってまだ交通が不便だったりするから、来たくても来れなかった人が多かったみたいね。ナビが機能してないんだもんな。やっぱり1年後じゃまだまだキツいやね。その中でよくやったと思うよ。

--今回の阿蘇ロック開催の背景には、震災も関係していたんですか?

泉谷しげる:いや、むしろ関係なく。今回の【阿蘇ロックフェスティバル2017】は「熊本震災からの救済を掲げましょう」という意見もあったんだけど「いや、それはダメだ」って言ったの。「元々そうやって始まったものじゃないだろ? 純粋にエンターテインメントで楽しんでもらわねぇと、来た客がそういうことを気にしなきゃなんねぇしよ、ましてやあんなに高い料金を払って来てんのによ、なんかカンパしなきゃなんねぇのか?って話になってくるじゃねぇか。それじゃあ落ち着いて楽しめねぇじゃねーか!」って。だから元々始めた形で貫けと。熊本の女たちが作ったロックフェスで始まったんだから、初志貫徹でやれと。みんな気持ちは熊本愛だし、気持ちがあればいいんだよ。大してカンパも出来ねぇくせによ、掲げんじゃねぇ。大体、人の不幸を動員に使うんじゃねぇよ。そう話したの。

--それを掲げることで、熊本の人たちも気を遣う事になりかねませんもんね。せっかく熊本でロックフェスが開催されるのに素直に楽しめなくなるかもしれない。

泉谷しげる:そうなんだよ。純粋に楽しめねぇじゃん! 県外から来る奴も「いくらか出さなきゃいけねぇのかな?」って気遣うことになる。みんな、なけなしで来るんだからさ……。だからエンターテインメントに徹して、さっき言ったようにプロに徹して、復興を掲げるんなら観光客を呼んだほうがよっぽど良いだろと。そこで楽しんでお金使ってもらったほうが良いんだよ。だから出演アーティストに対してもそういうことを気にしないでくれと。自分のステージをちゃんとやってくれと。復興や救済を掲げなくてもその気持ちがみんなの中にあることは分かってるから。そもそもたまに来る奴がね「熊本ではこれだけの被害があって、皆さん大変ですね。応援します!」とか言ったってシラけるよ。たまにしか行かねぇ奴が無責任に言うんじゃねーよ!

--3.11のとき、泉谷さんは配信番組を眠らずに発信していたじゃないですか。そこで、東北の人たちの「復興や救済を掲げていろんなものを送ってくれるのは有り難いけど、それによって必要以上に被災者意識が強くなって申し訳ない気分になる」といった声を届けていたのが印象的でした。今の話はそれとも通ずるものがありますよね。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:そうね。しかもよく考えず何でもかんでも送りつけてさ、ゴミ捨て場じゃねぇーんだからよ! 中古のステレオ送ったり、それも人によっては必要なもんかもしれねぇけどさ、だったら新品を送れよ。卑劣だよね、逆に言えば。ちょうど古いものを捨てる機会になったみたいなさ。あと、そのときも言ったけど、俺らみたいなもんがああいうとき動くのはさ、ハッキリ言えば売名行為なんだから「勝手にやります、偽善です、1日1偽善で頑張ります」と。そう言わないとさ、実際に偽善以外の何ものでもないんだから。

--阪神・淡路大震災のときからそう仰っていましたよね。偽善で良いんだって。

泉谷しげる:だって、偽善でしょ? 熊本のことだって、東北のことだって、阪神のことだって、毎日考えてられないんだよ? よそもんなんだから。テレビのように不幸なニュースがあって、そのあと関係ないコマーシャルが入るようなもんですよ。みんな、そうじゃないですか。自分の生活もあるわけで。ずーっと熊本や東北のこと、阪神・淡路のことを考えてられるんだったら堂々と言っていいと思うんだけど、そうじゃねぇーんだから「好きにやらせてくれ」と。「金は置いてくから、あとは勝手に使ってよ」と。

--酒場の粋なお客さんみたいですね(笑)。

泉谷しげる:だから「あんまり取り上げないで」みたいな(笑)。そう言うと取り上げられちゃうんだよな。

--こっちは勝手に飲みに行ってるつもりなのに。

泉谷しげる:そうそう! ま、はっきり言えばただの通りすがり? こっちは専門家になるつもりはないんで。「痛みを分け合う」といくら言ったってそこに住んでねぇんだからさ。だから例えばそういうことで「デートをやめよう」とかね、それこそ「イベントを中止にしよう」とかね、すごくくだらないと思う。そのデートする奴はようやく取り付けたデートかもしれない。だから「ちゃんとデートしてこい!」と。それが被災地の方たちの目標になるんだから「ちゃんと楽しい毎日を取り戻そう」という方向に行かないと。みんなが同情したフリして深刻な顔しててもね、良いことなんかねぇよ。

--だったらそのデートを必死に成功させるところを見せてくれたほうが面白いし、力になりますよね。

泉谷しげる:そっちのほうが力になるじゃない!「子供がまだ生まれたばかりで復興支援に行けません。すみません」みたいなことを言う人も随分いたけど、そんなもんはいいんだよ。子供が生まれたことのほうが大事なんだから。

--謝る必要はないですよね。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:謝る必要なんてない。だから自分たちの予定をなるべく中止にしない。自分たちにとって大事なことをちゃんとやる。同情して深刻な顔するのは一見格好良いかもしれないけど、なんかウソくせぇよ。「自分はどういう見られ方をするんだろうか」みてぇな考えが働いてるからそういう行動に出る訳じゃない? でも俺なんかもそういう人の不幸を利用する仕事かもしれないので「自分はズルい人間である」ということを最初に表明しないといけないんだよ。

--泉谷さんのそういう価値観や生き様の背景にあるものって何なんですか?

泉谷しげる:よくわかんねぇけど、やっぱりプロ意識だよ。人気者になっちゃったら、お客さんが時間とお金をかけてくれている訳だから「その人たちの期待にどう応えればいいのか」って考える訳で。でもそう考えるようになったのはデビューして10年ぐらい経ってからかな? それまでは照れてて「テレビに出たくない」だの「格好良く生きたい」だの「暴れて帰っちゃえばいい」という感覚だった。でも10年ぐらいしてようやくプロ意識を持つようになって、それは「人気がなくなった」と一度実感したからかもしれない。

--「このままじゃダメだ」と思った?

泉谷しげる:そう思ったから「鍛えなきゃダメだ」と思った。それは音楽的に鍛えるということではなくて、人間として。「自分がファンだったらどう思う? 俺だったらどういう態度を取るだろう?」という考え方をするようになったんだよね。それで「如何に期待に応えられるようになるか」そう思うようになって、その為には度を越すエネルギーがないとダメだなと。だからさ、話はちょっとズレるけど……アイドルが大麻所持で問題になっちゃったりするけど、アレはある側面から見るとアイドルやりたくなかったんだろうね。アイドルなんて不良上がりが多いからどっかさ、イヤだったと思うんだよ。だけど、顔が良いから自分の意思とは関係なくアイドルやっていくことになって、でも最終的に抑えきれなくなってしまった……というところはあると思うんだよ。それは分かるんだけど、でもアイドルに自由なんてないからな。自由を求めたらアイドルになんてなれないの。アイドルが自由になったらそれはもうアイドルではないじゃないですか。可愛くてさ、キラキラ輝いて、トイレも行かずに、恋愛もしない。自由なんかないじゃないですか。アイドルはそれぐらい徹しないと出来ない。

--それもまたプロですよね。

泉谷しげる:徹している人がプロなんですよ。だから自分も徹することが出来ないんだったら表に立たないほうがいいし、やんないほうがいい。傷つくだけだから。相手も傷つくし、自分も傷つくわな。

--でも泉谷さんの場合はこの道を選んで正解だった訳ですよね?

泉谷しげる:俺はこれがやりたくてやり出したからね。だから怠けていた期間は本当に申し訳ないと思ってるよ。「人気がなくなってしまった」と思ったあの瞬間も自分の中では許せないですね。「人気の為にやってたんじゃねぇだろう!」っていう。そこですごく悔しい想いをして、もっと自分を徹しようと。徹底的にキャラを追及し、音楽を追及し、表現を追及して、まぁ特別なことをやった訳じゃないんだけど、人の期待以上のことをやろうと。「度は越すぞ!」みたいな(笑)。だから、今「特別なことをやった訳じゃない」と言ったんだけど、何をしたかと言えば……こんなことはやっぱり言いたくないんだけど、本当に言いたくないんだけど……ハッキリ言えば、体調管理?

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

一同:(笑)

--結局そこに尽きる訳ですね。

泉谷しげる:そうなんだよ。タバコやめるとか、他の筋肉使うとか、腕立て伏せやるとか、スパーリングやるとか、そういう……あの、やっぱりイヤだなぁ~。

--全然イヤじゃないですよ(笑)。転機を迎える前の泉谷しげるファンはイヤがったかもしれないですけど。

泉谷しげる:イヤですよ! 自分もファンだから。自分のいちばんのファンは自分じゃないですか。だからイヤじゃないですか。「なんでおまえそっち行くんだよ? なんでタバコやめんだよ?」ってなる。

--でも、タバコをやめたりはしているかもしれないですけど、表に出てくる泉谷しげるのイメージは変わってないじゃないですか。その泉谷しげるを打ち出し続ける為に選んだ手段が禁煙であり、体調管理だったという話ですよね。

泉谷しげる:ま、体力的な問題だね。だから体の力を集めていくという。それが何の役に立つかと言ったら、ステージの上で運動体としてしっかり声が出せる。歳取って声が出なくなる奴は怠けてんだよ。常に動いていれば、或いはでっかい声で歌っていれば衰えることはないんです。あれはぜんぶ怠けてるんですよ。叫んで歌うのが恥ずかしいと思ったのか、或いは自分の曲に飽きてるか、訳の分かんないアレンジで誤魔化して歌ってるか……あれはダメだよな。やっぱり最初に出した通りの楽曲のイメージのまま表現してあげることがファンは嬉しいわけじゃないですか。

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「何やってんだ、コノヤロウ」同世代が弱くなっていくのはすごく残念

--今回の『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』には様々なバージョンの「春夏秋冬」が収録されていますけど、どれも基本的に原曲に忠実ではありますよね。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:そうなんです。変な歌い方はしない。

--変な歌い方(笑)。多くの歌い手が通りがちな道ではありますよね。

泉谷しげる:だから演歌の奴らとか飽きちゃってるせいか、訳のわかんない歌い方するだろう。ズラしやがってさ。バカだよね、あれ。飽きちゃってんだよ、あれ。頼みもしねぇのにボサノヴァにアレンジしやがってさ……殺してやろうかと思うよ!

--泉谷さん、対象が限定されます(笑)!

泉谷しげる:ギターでテンポを変えて鬱々と歌いやがってさぁ、それもまた腹立つんだよな。だから「テンポは変えないで!」みたいな。

--でもそれはファンにとっても率直な意見かもしれませんよね。全く違うバージョンで出されてしまって、本当はオリジナルが良いんだけど、でも「これも良いですよね」って言わなきゃいけない感。

泉谷しげる:なんでファンが気遣わなきゃいけねぇんだよ。なんか理解してあげなきゃいけないわけでしょ? つまり「ボサノヴァにすることにも意味があるのかな。これはこれで理解できなきゃマズいのかな?」と思わせちゃってる訳じゃない? おかしくない、それ! そんなバカな話ないよ。

--まぁ心底絶賛される例もあるにはあると思いますけど、演歌が好きでファンになった人には、ボサノヴァという振り幅はちょっとキツいでしょうね(笑)。

泉谷しげる:絶対キツいよ!

--「ボサノヴァなんか聴いてきてねぇよ!」っていう。

泉谷しげる:キツい! 俺はジャズでもキツいよ(笑)。

--泉谷さんは「春夏秋冬」をあれだけ歌い続けてきて飽きなかったんですか?

泉谷しげる:そんなことはないですよ。飽きて、1回捨てたときもありました。でもある外タレのライブを観たときに、何十年も前のヒット曲が流れた瞬間、やっぱり出す光が違うというかね……その人の代表的な曲はもうその人の曲ではなく、ファンのもんなんだよね。プロコル・ハルムの「青い影」を聴いた瞬間「うぉぉぉぉ!」となっちゃうんだよ。

--あのイントロが流れてきた瞬間に……

泉谷しげる:もうビックリしちゃうというか、涙も出てきちゃってさ。だからボブ・ディランがちゃんと歌った日本武道館のライブが大好きなんだけど、崩しもしないしさ、いちばんちゃんと歌っていた瞬間があったの。感動しましたね。レコード通りのフレーズもあり、レコード以上の迫力があって……格好良かったですねぇ~。ボブ・ディラン、そのときまで全然興味なかったんだけど、「なんだ、こいつ」と思ってたんだけど、本当にビックリしちゃって!「この人、歌うまいじゃん! いろんな声が出るんだ! 凄い!」って。ただただ歌ってるだけなのにあの迫力。それに「格好良い!」と思ったんですけど、それ以降グダグダになりやがって。……飽きちゃったんだねぇ、あいつも。

--ボブ・ディランも飽きちゃったと(笑)。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:でもね、なんか分かるんですよ。何が理解できるかと言うと、おそらくロックの本質を持っている人っていうのはね、ちゃんと歌うと照れちゃうんですよ。歌い上げたり、凄い表現力を持っちゃったりすると、ひねくれたい。で、日本武道館のライブで夢中になってからいろんなアルバム聴いたり、ライブ盤もベスト盤も聴いたんだけど、面白かったのはね……『偉大なる復活』のときに、1番はバァーン!と歌ってるんですよ。でもそこで歌い過ぎたと思ったのか、2番から明らかに下がってるんだよ。「あ、こういうことか!」って。「やりすぎた!」と思って照れちゃったんだよね。「俺、上手いぞぉ!」的な歌手ってイヤじゃん。それで恥ずかしくなっちゃったんじゃない? その気持ちは分かる。だから敢えてグダグダの表現にしたのは「力なんて無くたって曲は成立するんだ」と……ま、しないと思うんだけど! 俺なんか観るたんびにガッカリして「もう観に行かない」って思うからさ(笑)。だから表現というのは、どうであれ度を越してほしいんだよね。照れんのも分かるんだけど、度を越えてやんなきゃいけない。ポール・マッカートニーなんて度を越えてるよ?

--もはや聖人ですよね。

泉谷しげる:聖人ですよ!「何やってんだ、この人」と思うぐらい凄いじゃない? もう徹してるじゃない?

--もう何十年「イエスタデイ」歌ってんだ?って話じゃないですか。

泉谷しげる:凄いよね。ずっと“昨日”だよ?

一同:(笑)

泉谷しげる:でもあのテンション!「この人、やっぱりプロだなぁ」って思う。

--それこそみんなが求めているポール・マッカートニーを体現している。

泉谷しげる:だからもうポール・マッカートニー自体は自分を超えてるというか、ファンのものにちゃんとなってて、なおかつ度を越えてる。やっぱりね、こういう表現者はアイドルも含めてそうだけど、年齢を越えなきゃいけないの。だから60だとか70を言い訳にしてはいけない。だって、観る人は人間体として観るんだから。俺が「体調管理に気をつける」みたいなことを言ったのはさ、ファンの何気ないモノの見方がきっかけで。こっちは凄い格好良いステージやってるんですよ? 自分はそう思っていた訳ですよ。ハードにぶちかましてさ。そしたら後でファンが俺のところ来てさ「最近、泉谷さん太ったでしょ?」って言うんだよ。「お腹出ちゃダメよ」みたいな(笑)。これって大事なことだよね!

--そのフォルムも含めて好きなんですもんね。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:形も変わってほしくないんだよ。そういうことなんですよ。それで「あ、俺も怠けていたかもしれない」という。いくら格好良く演奏していても、ファンが集中できない瞬間はある訳で、そのときはこちらの体を見ている訳だよ(笑)。無意識に粗探ししちゃうんだよ! そこにヒットしちゃって「あ、お腹出てる」みたいな。そこは素直に「すみません。引っ込めます」ですよね。歳とか体調とかそういうものを言い訳にしてはいけない。引田天功はずっとあの格好してなきゃいけないんだぞ?

--引田天功さんはそういう契約らしいですよね(笑)。

泉谷しげる:でも俺らもお客さんと契約しているようなもんだからな。このビジュアルでいる……ま、髪の毛が抜けていくのはしょうがねぇから、そこだけは我慢してもらって。でも態度や口の利き方、文句の付け方、自虐的な物言い、すぐ怒りやすい、そういう感じのキャラはちゃんとあたりまえのように出来ないと、いちいち構えてからやるんじゃなくてフッと出来ないと、面倒くせぇなぁと思いながらもサッと出来ないとね。日本人の体力は強くなってきたと思うし、サッカーもあそこまで出来るようになってるんだから、ミュージシャンだけが怠けているような気がするわけ。「鍛えてんのか、おまえ」っていう。

--では、泉谷さんが毒を吐き続けられるのも鍛錬の賜物なんですか?

泉谷しげる:毒を吐くのは、健康だからだと思うんですよね。もし自分が体調悪かったら吐けないじゃない? 弱気になっちゃうし、面倒くさいこと言えなくなっちゃうよね。「静かに暮らしたい」とか思っちゃう訳じゃない? それはすでに老化ですよね。だから言いたいことを言えている状態のときは「一応、体調管理は成功してるな」って思う(笑)。だから毒を吐かなくなって「最近、大人しくなったな。おかしくない?」と言われ出したら危ないときですよ。でもそんなもんは右も左もぶっ飛ばせ!ですよ。やっぱり自分でグレードを上げていかなきゃいけない。つまり課題を大きくしていかなきゃいけない。水位を上げてなかなか届きづらいところに自分で届くようにしていかないと、そこは誰かがやってくれるところではないんで。

--2011年【JAPAN JAM 2011】のエレファントカシマシのステージ。仲井戸“CHABO”麗市さんと泉谷さんも一緒にゲストとして出たじゃないですか。で、みんなが本編終わってステージ袖に消えてるのに泉谷さんだけ残って「どうせやるくせにさ、なんでこいつらのアンコール待ちしなきゃいけないんだよ」とか言って、清志郎さんの「LOVE ME TENDER」を歌い出しましたよね? あれはどういう意図があったんですか?

泉谷しげる:エレファントカシマシっていうのは鋭い刃みたいな人たちだし、そういう素晴らしいミュージシャンたちの中にいて喰われる訳にがいかなかったんだよ(笑)。

--あれは対エレカシ仕様だったんですね。

泉谷しげる:そうです!「おまえの傘下には下らないぞ」というただの対抗意識。尊敬は対決でもあるから。そうやって一回りも若いアーティストにちゃんと嫉妬できてる自分がちょっと気持ち良いかな。やっぱり最高のアーティストですよ。大好きですけどね、新しい曲聴く度に「クソッ!」と思ってる。「こんなもん作りやがって、チキショー!」って思いますもんね。歌が良いですよねぇ。で、演奏も良い。ステージングも良い。だから最高のアーティストですね。それでこっちの古い歌もちゃんと歌ってくれたりするしね。一緒にステージに立つと鋭い狂気みたいなものを感じるんですよ。それが実に楽しいですね。ああいうアーティストは最近いねぇなー。凄い集中力ですよ。そういうクラスのアーティストにヤキモチを妬かなくなったら若さがなくなったってことだよね。

--45年も活動されていたら「若い連中にヤキモチを妬くなんて格好悪い」という感覚になってもおかしくないと思うですが、泉谷さんの場合はそれが全くないですよね。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:全くないね。むしろヤキモチを妬かなくなったらもう危ないと思ったほうがいいし、妬かない人なんているの?「自分が最高だ」と思う瞬間はそりゃあるよ、誰だって。でも「こいつは最高だ」と気付いてしまうときだってあるじゃないですか。そのときに「素晴らしい」と思えるこの健全さですよ。評価できる、嫉妬できる対象が世の中にあるということはね、幸せなことですよ。「負けねぇぞ、コノヤロウ!」ってなるし、「俺が違う表現してやる!」とか或いは「ぶっ殺してやる!」とかね。

--45周年で「ぶっ殺してやる!」と思う人、なかなかいないですよ(笑)。

泉谷しげる:いや、だから45周年とかはどうでもいいんですよ。年齢なんか越えてやろうと思ってるんで。だから今みたいに毎回ツッコんでもらってね(笑)、その度に「関係ねぇ」って言っていくだろうし。でもそれを気にせざるを得ない人たちもいる。先輩の歌手にも同世代にも、モチベーションが無くなっちゃってきてるんじゃないかなと思う人が多くて、それで声も衰えちゃってるし、表現力も衰えている。それは「残念だな」ということで、敢えて挑戦的に……ハッキリ言えば「何やってんだ、コノヤロウ」と。ちょっとけしかけるというか、そういうところもありますね。やっぱり残念ですから。同世代が弱くなっていくのはすごく残念。

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「日本人って基本的に自由が好きじゃないんだと思うんだよ。」

--そういった想いは、新アルバム『舞い降りる鷹のように』に滲み出てますよね。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:そうですね。自分はもっともっと獰猛にあの時代を生きてきたはずなんで、先輩たちなんて物のない時代から生きてきてる訳だからもっとそうだし、だから贅沢に馴れたなんてとても思えないし、むしろ自分の居場所を失っちゃってるんじゃないかっていう。ま、自分の居場所なんて最初からないよ?

--泉谷さんはそのイメージです。代わりに他人の家にどんどん踏み込んでいく。

泉谷しげる:そう、乱入ですよ! だからエレカシの宮本がたまに言うんですよ。「本当にあんたらが居るとやりづらい」って。

--多分それジョークっぽく言ってますけど、半分本音ですよ(笑)。

泉谷しげる:そうなんだよ、半分本音なんだよ! あの世代の奴らはみんな言うんだよ。「先輩、元気過ぎるからイヤだ」「目の上のたんこぶだ」って。若い奴らのロックフェスに俺が出るとさらって行っちゃうらしいんだよ。俺はそんなつもりはないんだけど、たしかに大暴れして帰って行くからさ。でも「そういう奴がいたほうがおまえら頑張れるだろ?」と思うし、もし俺があいつらの壁だとするなら「壁賃もらうよ?」って。

--壁賃って何ですか(笑)?

泉谷しげる:やっぱり俺はみんなに倒しに来てほしいんだよね! 腕を磨いて、素晴らしい曲を作って、倒しに来てほしいの。

--それは泉谷しげるが倒しに行く側だったからですよね。先輩だろうが何だろうが噛み付いていった訳じゃないですか?

泉谷しげる:そうですね。狭い世界に居たかもしれないけどね、やっぱりフォークで出た頃は芸能界が相手してくれなくて、ラジオ中心の活動になっていったんだけど、それで「テレビに出ない」って吉田拓郎が言っちゃったが為にさ、俺なんか出たかったのによ、腹の中では「あの野郎、余計なこと言いやがって」と思いながら賛成してしまったんだよ!

--本当は出たいのに(笑)。

泉谷しげる:芸能界がゴシックだとしたら、俺たちは印象派だったんだよ。印象派なんて素人みたいなもんじゃん。だから「ステージ衣装持って来い」と言われてもジーパンでやってくるしよ、大芸能界はそれをすごく嫌ったわけ。様式美をぶち壊しちゃったから。実際に俺たちの世代のフォークの連中は「芸能界、ぶっ潰してやる」っていう意識があったわけよ。あれは格好良かったですねぇ。「歌謡曲、息の根止めてやる」みたいな。だけど、本当に息の根止まったときに「ちょっとマズかったかな?」って(笑)。やっぱり対抗意識があったから俺らも頑張れたんだけど、その対象が無くなっちゃうと……「弱っちゃったな」みたいな。

--巨大なシーンに対するカウンターで在りたかった訳ですよね。でも本気でぶつかっていったらその対象が壊れてしまったという。

泉谷しげる:攻撃対象がハッキリしていたからモチベーションを作りやすかったんですよ。それでバカバカ攻撃してたら「あれ?」みたいな。目標が無くなっちゃったんだよ。だからフォークの連中は対抗している時期のほうが素晴らしい曲をいっぱい作ってますよね。歌謡曲に出来ないことをやっているし、自作自演の最高峰を作ってるし。海外だってそうですよね。向こうもフランク・シナトラみたいな大芸能スターみたいな存在が居たから、ボブ・ディランも含めロックが出てこれた訳じゃないですか。相当ムカついていたんだと思うんだよね。「なんとかコイツを倒したい。なんとか叩きのめしたい」というあの意識、若さ。それで実際にビートルズが出てきてひっくり返したんだけど、今度はビートルズに「コノヤロウ!」と思ったニューロックの連中が出てくる。

--常にひっくり返してきた歴史なんですよね。

泉谷しげる:そういう60年代~70年代のロックの創生とかポップの創生とかに青春時代に出くわして、本当にある意味幸せな時代だったと思うんだけど、自分がその世界に入ってみてふと思ったのは「意外とロックって保守的?」それこそ様式美で、生ギターだった奴がエレキに変えただけでブーイングが出たりとか「リードギターはこうでなければならない」とかさ、ちっとも自由じゃなくて。むしろフォークのほうがちょっと自由で、言いたいこと言ってるし。でもそうやって俺たちがそういう時代にやり合ったり、ロックとかフォークとかの狭い了見でケンカしていたのが面白かったねぇー。それが面白かった! ロックはさ「俺のバラをおまえにやるぜ」みたいな、訳のわかんない歌詞じゃない?

--最近、そんなロックないですけどね(笑)。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:最近はないけど、当時はそんな感じだったんだよ(笑)! でもフォークはさ、正直なんだよ。自分は格好良い奴じゃないよ、ロクでもない奴なんだと。で、失敗もするし、貧しい暮らしもしてるし、例えば「『いちご白書』をもう一度」の歌詞なんかさ、学生運動していたような奴が、就職のことが気になっちゃって、髪も切って国家公務員になるわけでしょ?

--ダサいですよね。

泉谷しげる:ダサいんだよ! でもそれを描いちゃうというところが正直だよね。格好良くないんですよ、フォークは。「小さな石鹸 カタカタ鳴った」だからさ。格好良くないからみんなの心を掴んでいったんですよ。ちょっと残念な若者像。上手く得られなかった敗北感。Loserな気分……だから格好良いことを追求している人たちが本当に羨ましかったよ。そこからまた日本人は変わっていくんだけどさ。

--どんな風に変わっていったと感じますか?

泉谷しげる:日本人って基本的に自由が好きじゃないんだと思うんだよ。特に若い世代なんだけど、自由が得意じゃない。むしろちゃんと就職は決まったほうが良いし、ちゃんと宮仕えしていたほうが良いし、自由に憧れているフリをしているだけで“自由を求めてる”とは思えないんだよね。だから学生運動とかも当時見ていたんだけど、どう考えてもあれは宗教にしか見えないんだよ。同じようなことしか言わないし、宗教っぽい熱っぽさというか、原理主義に近い。自由を求めているようですごく凝り固まっていて、話にならない。その中で俺たちは自由に生きているように見えちゃった分だけ、相当批判食らったもんね。だから元々本質的に日本人は自由がイヤなんだと思う。で、民主主義って下品と笑いだと思うんだよ。ねぇちゃん見れば性の対象にしか考えないし、宗教は踏みにじるわ、神も信じないわ、全部笑いに持っていっちゃうわ……そういうところが学生運動では「許せない!」となったんだと思う。おそらく民主主義に対する抵抗だったんじゃないかなって気がするんだよね。でも俺らはそういうところで育っちゃったからさ、やっぱりどうしても下品と笑いが好きなんだよね(笑)。

--というか、日本がそういう国だと早々に気付きながら、よく45年もその姿勢を貫き通しましたね。

泉谷しげる:だから俺なんかテロ対象ですよ?

--(笑)

泉谷しげる:おそらく宗教家も俺のことなんて大っ嫌いですよ! 信仰心もなければさ、記念日も大事にしないし。でも「自由とは何か?」と言ったら“孤独”だと思うんですよね。孤独を楽しめるかどうかの話ですよ。だってね、モノを創るときは孤独にならないと創れないんで。ガシャン!ガシャン!したところで創れないんで。残念ながら自分の時間がないと難しいですよね。だから孤独を良しとして、つまりはひとりでご飯食べるのも「楽しい!」と思えないと自由になる資格がないというか。

--だから自由って聞こえはいいですけど、そんなにハッピーなものではないんですよね。

泉谷しげる:全然そうじゃないですね。むしろ自分のハードルを上げざるを得ない。むしろストイックに近いようなもの。だからいろんなものを我慢しなきゃいけない。いろんなものを辞めなきゃいけない。そういうものですよね。だって、みんなは安定を求めているんだから。自由なんて求めてませんもん。やっぱり毎月ちゃんとしたお金が入ること、仕事がちゃんとあることを求めてるし、気分だけでは生きていけない経済大国なわけじゃないですか。そこで自由なんて叫んでも……超虚しいというかね(笑)。もっと平たく言えば、税金払っておいて反体制はないと思う。凄い矛盾じゃん! 金取られてんじゃん。その時点で負けてるじゃん。それで「俺は反体制だ」って言うか? 当時そこを指摘したらボッコボコにされたんですよ。生意気だったんだろうね。

--ボッコボコにされながらよくここまで辿り着いてくれました(笑)。そういう泉谷さんみたいなめちゃくちゃな後輩が出てきてほしい想いってありますか?

泉谷しげる:自分は間違っていることも平気でやってきている人だから、間違えだと分かっていながら頭突っ込んでるところもあるんで、そういう無軌道なところがあるんで、やっぱり俺たちが先輩たちを潰そうとしたあのエネルギーと同じように、俺たちが先輩なんだとしたらやっぱり「叩きのめす」という野心丸出しの人たちと何かやるのも楽しいし、田舎でフェスとかやろうとすると市長さんとか村長さんは「同世代のアーティストをもっともっと呼んでほしい」とか抜かすだけど、「ヤダよ、そんな姥捨てみたいなフェス。本当に星になっちゃうじゃねぇかよ! おまえらが理解できない若い連中が出てこそロックフェスなんだ。ヘタにジジイとババアばかり集めたら虐待になるぞ!」と言ってんの。やっぱり20代とか30代のいちばん了見が狭い連中がガッと集まってパーン!と弾けるという、そういうものを作ってあげないとさ。で、作ってやってるにも関わらず「泉谷、倒れろ」みたいな恩知らず。それがいちばん最高。俺も恩を着せている訳でないんで、恩じゃなく恩知らずで返してくれ(笑)。

--6月24日には、EX THEATER ROPPNGIにて45周年特別公演【泉谷しげる ライブ オブ レガシー!】を開催。泉谷しげる with BAND(藤沼伸一、渡邊裕美、板谷達也&小林香織)としてのライブがあります。

泉谷しげる『泉谷しげるの新世界「アート オブ ライブ」』インタビュー

泉谷しげる:これはね、今までやったことないことを少しでもやりたいんで、第1部は新アルバム『舞い降りる鷹のように』を曲順通りにやるという。で、第2部はセレクションノンストップライブで体力の限界に挑戦。だから第1部と第2部の間に休憩入れます。客が半分年寄りになってるから、アイツら休憩入れないと大変なんだよ(笑)。あと、藤沼伸一という素晴らしい天才ギタリストがいるんだけど、俺はそいつに対抗意識があるんで「おまえなんかいなくても出来るんだよ!」って俺がリードギターを弾いて、ドラムとベースと3人だけでやる時間帯も作ったりね。俺がただマーシャル使いたいだけなんだけど(笑)。それで「俺のリードギター、驚くなよ?」みたいな。だから決闘です。内部崩壊です。

--崩壊を目指すライブ、楽しみにしてます(笑)。では、最後の質問を。これからの泉谷しげる、どんなアーティストで在りたいと、もしくは在り続けたいと思いますか?

泉谷しげる:最後までパンクでいたいというか、パンク親父でいたいね。「アイツはしょうもない奴だったな」と言われたい。「結局何だったの?」って言われたいです(笑)。

Interviewer:平賀哲雄
Photo:Jumpei Yamada

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