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傳田真央『Love for Sale』インタビュー



傳田真央 『Love for Sale』 インタビュー

何があってもラブソングに拘り続けた18年間―――

皆さんが傳田真央とふれあう時間というのは、
愛についてふれあう時間であってほしい。

 今から約18年前、MISIAや宇多田ヒカルの台頭によって生まれたR&Bブーム。その渦中にいながらして強烈な才能を放っていた傳田真央は、00年代後半のセツナ系(着うた)ブームの中でも、2011年の震災時においても、2017年現在まで一貫して「たかが恋、されど恋」とラブソングを歌い続けていきた。今回のインタビューでは、そんな彼女の生き様をフィーチャーしながら、4年ぶりの新アルバム『Love for Sale』に込めた想い、かの名曲「Happy Ever After」の今とも言える収録曲についても語ってもらった。

ラブソングを歌い続けた者が放つ「君の愛までは 売ってはいないよね」

--傳田真央さん、前作『セミダブル』以来4年ぶりのインタビューになります。

傳田真央「いまさら会えなくて」
傳田真央「いまさら会えなくて」

傳田真央:4年ぶり、オリンピックできちゃう(笑)。お久しぶりです。

--デビュー時から取材させて頂いているので、出逢ってから約18年。

傳田真央:もうそんなに経つんですね。

--その間、一貫してラブソングを歌い続けている傳田真央さん。今回のインタビューでは、その生き様を世に広めたいと思っているのですが、まず新作『Love for Sale』完成まで4年の歳月を費やした理由や流れを教えてもらえますか?

傳田真央:世界一周旅行に出ていたとかじゃなくて……

--セレブ的な理由ではなかったんですね(笑)。

傳田真央:だとしたら逆に格好良かったかもしれない(笑)。前作『セミダブル』を作り終えて、わりとすぐに次の曲作りをスタートさせてはいたんですけど、その中でいろいろ拘り抜いているうちに4年経っちゃった! その間に自分の音楽スタイルを模索したりとか、自分の中での変化を求め出したり、ライブの面でもアコースティックライブを始めたりとか、いまさら人前でピアノを弾き始めたりとか、自分の目指している音楽の方向性が結構生まれ変わっていったんです。その中で「音源に落とし込むものはどんな音楽がいいんだろう?」って探し続けていたような4年間だったかな。

--具体的には、どのような変遷を辿って『Love for Sale』に辿り着いたんですか?

傳田真央:ざっくり言えば、生楽器とのふれあい。それで大きく変わったんです。元々R&Bシンガーとしてデビューしてて、それはそれとしてずっと私の音楽性として在り続けると思うんですけど、ライブでピアノを弾き始めたり、アコースティックライブをしていく中で、音自体の中でも遊び始めたというか、自分で弾くことによって自分の旋律……自分の奏でたい和声も実現できるということに気付いてしまって。それも含めてサウンド自体でも傳田真央の世界を創りたいなと思って。それで最近やってるアコースティックな感じを音源にも盛り込めるように徐々になっていった感じですね。

--それによって大きく変貌を遂げた曲もある?

傳田真央:ありますね。4年前『セミダブル』の直後に作っていた曲「愛逢い傘」も今回収録されているんですけど、当時はめっちゃEDMの曲として作っていて。でもそれが4年間の中で変化していって全然違う感じになっていたりとか。なので、今作『Love for Sale』は最初から「温かい感じにしよう!」と思って曲作りしていた訳ではなくて、作っていく中でちょっとずつちょっとずつこの形に近づいていった。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

--服装で例えると、最初はサイバー系の派手な格好をしていた子が……

傳田真央:気付いたら「ヴィンテージの服を着よう」ってなっていた(笑)。

--この4年間で音楽自体に対する気持ちや心境の変化もありましたか?

傳田真央:前も自ら「大人女子」とか言ったりしていたんですけど、当時歌っていたラブソングにはまだまだ先があったと感じていて。アルバムを作りきった後って「やりきった」って自分では思ってるから『セミダブル』の後もそうだったんですけど、そこからライブをしていったら「あ、まだなんかある!」って気付いて。何かすごく新しいことがこれから出来そうな自分……っていう可能性を感じ始めて、でもそれをパッとすぐには音に出来なかったり、メロディーとか歌詞に出来ない時期もあったので、そういうときはすごく歯がゆい想いがあったり。あと、なんとなくうっすら見えてきた光というか「こういうことをやりたいんだよ」という想いを周りのスタッフのみんなに伝えていかなきゃいけない。っていうこともアーティストの大きな仕事としてあるので、そういうものをどんどん怖れずライブで出していってみる。

--なるほど。

傳田真央:だからリハの3日前に書いた曲をライブでやっちゃったりとか、それを歌い続けていく中で毎回歌詞を変えたりしながらお客さんの反応も見て。それで反応が良いと「この曲は力があるかもね」ってスタッフも思ってくれるので、そういう工程の中で曲が出来上がっていく。ロックバンドみたいなスタンスというか、ストーリーでアルバムを作っていくことが初めてだったんで、ワクワクしながらも厳しい現実も受け止めたりしながら、そうやって4年かけて完成させたのが今回の『Love for Sale』なんです。

--ラブソングを歌い続ける傳田真央としては、恋愛観の変化も楽曲に反映される訳じゃないですか。4年の中でそこの変化もありましたか?

傳田真央:あった。またひとつ大人の階段を上りました。4年経つとアラサーがアラフォーになるんですよ!

--そうなりますよね(笑)。

傳田真央:心の中にはいつでも乙女心があるよう死守しようと思ってるんですけど、アラフォーになると女子会のトークテーマも変わってきて、恋バナとかだんだんしなくなってきてしまって!

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

--「再び恋が出来るのかどうか?」という次元になってきますからね。

傳田真央:恋してても「それを言葉にすることが怖い」とかね。もしくは「恋しても結婚に繋がらない」「結婚に繋がらないと失敗と思われる」みたいな見栄の張り合いみたいな話も出てきて。それはまだ恋愛の話だからいいんですけど、気付いたら保険の話をしたりしてて「どう生き抜いていく、ウチら!」みたいな。

--恋愛の前にどう生きていくかの話になるんですね(笑)。

傳田真央:その反動かもしれないんですけど、エグい、ヤバいドラマを観たりするようになったりとか、もしくはファンタジックな恋愛ドラマを観て、韓流の美しい男子に夢見ちゃったりとか、誰もがより極端になっていく(笑)。

--僕もアラフォーなんですけど、この年齢になると「愛」とか「恋」とかだんだんストレートに語れなくなってくるじゃないですか。絶対に重く受け止められるし、仮に恋愛していても誤魔化すようになりますよね。

傳田真央:そうなの!「会いたい」とすらイタいんじゃないかと思って言えなくなったり、そういう可愛くなりきれない自分がいたりとか。でもそれが言えていたギャル時代よりも切実な寂しさがあったりする。なので、そういう言葉に出来ない部分は、今までとは違う角度から刺すことで補うようになる(笑)。そういう歌詞も今回書いてるんですけど。

--ただ、アルバム全体の印象としては普遍的になってますよね。逆に聴き手の年齢や性別を選ばない感じになっていってる。

傳田真央:だんだんシンプルになっていってるのかもしれない。あと、恋愛するのにも体力がいるじゃないですか。でも私はラブソングを書いたり歌ったりしてるし、ライブも恋愛と同じようなイメージで臨んでいるから、今回は頑張らなくても聴ける、やさしくそばにいられるようなラブソングの皆さんを収録してるんです。

--表題曲「Love for Sale」はまさに普遍的で、ラブソングを歌い続けてきた人の「愛までは売らないで」という想いも感じられてグッと来ました。

傳田真央:ありがとうございます。ただ、この曲のせいで4年かかったと言っても過言ではないというか(笑)、長い戦いがあったんですよ。ピアノも自分で弾いてるんですけど、ピアノのフレーズとかメロディーの部分が……ようやくこの形に辿り着いた。

--「たくさんのものが あふれかえる街に 君の愛までは 売ってはいないよね」というフレーズにいろんな想いが込められていると思うんですけど、それこそ18年間にわたってラブソングを歌い続けてきた人が放つことに意味深さを感じます。

傳田真央「Love for Sale」 MUSIC VIDEO
傳田真央「Love for Sale」 MUSIC VIDEO

傳田真央:この「Sale」という言葉がずっと気になってて、仕事終わりとか、女子会の帰りとか、1日の終わりにはひとりで歩いていく訳で、そのときに街中に溢れる「Sale」という言葉が印象に残っていて、いろんなイメージを膨らませていたんです。今回は久々のリリースだから「傳田の愛、売出し中です」「私自身もいろんな意味で売り出し中です」っていうイメージもあったりしつつ(笑)、今は24時間ネットで買い物できるし、LINEをやっていればいっぱい友達ゲットできた気持ちになったり、今はすごく便利で合理的な世の中だけど、でも愛というものが余計に掴みづらくなっているんじゃないかなって。そういうことを聴いてくれる人それぞれの解釈で考えてもらえたらなって……という提案をしたくて「Love for Sale」は作ったんです。

--便利さが弊害になっているというか、それこそLINEで気軽に別れ話する世の中になっていたりする訳で……

傳田真央:そうなんですよね!

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  1. デビュー時の遠恋ソングに涙「将来の自分への手紙みたいになっていた」
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デビュー時の遠恋ソングに涙「将来の自分への手紙みたいになっていた」

--傳田真央が18年前にラブソングを歌っていたときは、おそらく有り得ない価値観だったじゃないですか。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

傳田真央:ポケベルで数字が送られてきて、それを解読して喜んでましたからね(笑)。

--「※2※2」の時代(笑)。今思うとロマンティックなツールでしたよね。数字を解読して相手のメッセージを受け取るっていう。

傳田真央:その想像力によって生まれる空間みたいなものが今はあんまりないなって。自分もそうなんですけどね。スマホで何でもやっちゃうし、信号待ちでもスマホいじっちゃうし、スマホで余白を全部埋めて忙しくしてしまうから「あ、あれってどういう意味だったんだろう?」とか……そういう時間のロマンティックさみたいなもの? それを感じたいと思いますよね。でも感じることも怖くなっていたりして、ドラマの中だけでときめいちゃったりするんですけど。

--傳田真央の18年間を振り返ると、00年代前半のR&Bブームがあり、00年代後半のセツナ系(着うた)ブームがあり、2011年には震災があり、そして2017年現在まで一貫して「たかが恋、されど恋」とラブソングを歌い続けた音楽人生になる訳ですけど、そのときそのときで打ち出してきたラブソングは自分でも違うと思います?

傳田真央:あとで振り返ってみると「違うのかな」って思いますね。

--では、ひとつひとつ振り返っていきたいんですが、デビュー当時となる00年代前半はどんなラブソングを歌っていたなと思いますか?『Love for Sale』にも当時の楽曲「耳もとにいるよ…~Ring the bells~ ('17 Unplugged live)」が収録されていますけれども。

傳田真央:私、昨日、大阪でライブしていたんですけど、「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」は大阪と東京の遠恋(遠距離恋愛)ソングだったんです。二十歳の頃ですけど、その当時は「今、こんな恋しちゃってて、そんな私をそのまんま書きました!」みたいな。

--「私の恋、これです!」っていう。

傳田真央:そう!「なう!」みたいな。

--当時は「なう!」って言葉も使われてなかったですけどね(笑)。遠恋ブームの時代に戻りましょう。

傳田真央 / 耳元にいるよ~Ring the bells REPRISE~(49秒Ver.)
傳田真央 / 耳元にいるよ~Ring the bells REPRISE~(49秒Ver.)

傳田真央:この「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」の頃は、まだケータイの画面がカラーじゃなかったんですよ。絵文字とかスタンプとかもなくて「ガラケー」っていう言葉もないぐらいの時代だったんですけど、ライブとかキャンペーンで大阪へ行くときに「会える?」みたいな(笑)。そんな当時の恋愛をそのまま書いた曲なんです。そのときのプロデューサーとか周りのスタッフのみんなが、そんな天真爛漫な私の取扱を分かってくれていて「今の真央の気持ちを書いたらいいじゃん!」って言ってくれて。当時は歌詞の書き方もよく分かってなかったので、本当にそのまま書いた感じなんですけど。

--たしかに当時は“ザ・天真爛漫”でしたよね。

傳田真央:(笑)

--でも同時に一生懸命背伸びしているところもありましたよね?

傳田真央:そうですね。R&Bブームとか、そういう時代感もあっただろうし、そのとき流行っているもの、オシャレだと自分が思うものに対して頑張ってる女の子でしたね。

--そして「私はこれだけ歌えるんだ!」といった自信に満ち溢れていて、どう考えても歌唱難易度の高い「Happy Ever After」等も躊躇なく歌い上げていました。

傳田真央:「どこまで行っちゃうの?」みたいなね。あの勇気は凄いなって思います(笑)。躊躇いもなく「やってみちゃう!」って感じでどーん!って歌っちゃう。

--あの衝撃は凄かったです。MISIA、宇多田ヒカルの台頭以降、物凄い数のR&B系女性シンガーがデビューしていく訳ですけど、その中でも傳田真央の歌声と『Eternal Voice』というアルバムは鮮烈でしたからね。遠恋ソングみたいなキャッチーさも持ち合わせていて……というか「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」をこんなに長く歌い続けると思っていましたか?

傳田真央:全然思わなかった! あのときスタジオでこの曲を作っていて……作っている瞬間って数時間だったりするんですけど、その瞬間にセッションしながら作った曲をこんなに長く歌い続けるとは本当に思わなかったですね。冒頭の「はなればなれだからって」っていう言葉とかも今見るとあんまり意味分かんないんですよ(笑)。その言葉が浮かんじゃったからソレにしちゃってる。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

--当時、遠恋していた彼氏にポケベルかメールで打ってたんでしょうね。

傳田真央:打ってたんでしょうね! なので、本当にその瞬間を切り取った感じがすごく良いなって思いますね。今はまた違う作り方をしていて、どちらかと言うと小説家のような気持ちで書いたりとか、女優のような気持ちで歌ったりとかしてるので……「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」を聴くと“子供”って感じがします(笑)。

--あと、今作に収録されている「耳もとにいるよ…~Ring the bells~ ('17 Unplugged live)」を聴いて感じたんですが、当時の傳田真央が遠恋ソングとして作った曲なのに「いつでも遠くの場所で耳もとにいるよ」っていうフレーズが深い意味を持ち出していて、自分とファンやリスナーを繋ぐ……大袈裟に言えば、傳田真央の人生を表すワードになってる。

傳田真央:そうですねぇ……。傳田真央と言えば「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」みたいなイメージを持ってくれている人もいっぱいいると思うし、自分でも……「よくこんな言葉が思いついたな!」って思うんですよ。シンプルで普通の言葉なんだけど言い得てるし、自分の音楽とか歌も耳もとにいてもらいたいな。っていうところにも繋がるし、この曲って不思議なんですよね。いつもライブの最後に必ず歌うんですけど……

--なんかもう泣けますもんね。

傳田真央:そう! 本当に毎回泣けちゃう。昨日も泣いたもん(笑)。昨日は「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」を歌った後に、スタッフのみんなが「リリースおめでとう!」ってケーキとかサプライズで持ってきてくれて、そのときに泣けばよかったんだけど、その前にこの曲歌いながら泣いちゃってて。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

--自分の曲で泣いちゃってた(笑)。

傳田真央:たまたまかもしれないんですけど、大人になっていく自分へのメッセージとかも入ってるんですよね。「少しずつ大人になってゆくのを ちょっと ためらい ぶつかってかかってこう」っていうフレーズがあるんですけど、それを大人になった自分が歌うとグッと来ちゃう。将来の自分への手紙みたいになっていたんですよね。

--続いて、00年代後半のセツナ系(着うた)ブーム到来。傳田真央は2009年に8年ぶりのアルバム『I AM』をリリースしました。その収録曲だった「Bitter Sweet('17 Piano session)」も『Love for Sale』に収められていますが、当時はどんなラブソングを歌っていたなと思いますか?

傳田真央:「悲しいなぁ~」っていう感じですかね(笑)。元々ロックが好きだったりして、ダークな部分も持ち合わせていたり……

--SUGIZO(LUNA SEA)大好きですもんね。

傳田真央:大好きなんです! なので、天真爛漫な部分はありつつも、すごくダークネスな闇なる部分もあったりして。それは長野県の寒い気候のせいなのか、両親もミュージシャンでそれぞれ独自のマイワールドで生きていて、その中に篭っていたせいなのか、なんかそういう孤独な部分をずっと持ち合わせてはいて、その力を発揮した時期だったと思います。まさにセツナ系(着うた)ブームの頃、自分も20代後半で一番「切ない」という感覚の中にいた時期で、それは恋愛観においてもそうだし、都会に出てきて「これから頑張らなくちゃ」ってそれこそ背伸びしなきゃいけないプレッシャーの中にいたり、大人女子として同世代の女子たちの中でも「輝かなきゃいけない」気持ちもあったり……本当に切羽詰っているというか、切実な想いがあったんですよね。それを一気に出していた時期かなって。

--その時代の代表曲「Bitter Sweet」に対しては、今どんな印象を持たれてますか?

傳田真央 - Bitter Sweet
傳田真央 - Bitter Sweet

傳田真央:本当に自分のターニングポイントになった曲です。当時、一緒に曲作りしてくれたJeff Miyaharaさんとの出逢いも大きかったし、共作で書いてくれた作詞家の岩里祐穂さんとの出会いも大きくて。自分の熱すぎる想いを曲にする術が追いついてなかったんですけど、自分の情熱を聴き手に伝える方法を「Bitter Sweet」の曲作りを通して教えてもらえたんですよね。「その想いはこういう伝え方があるよ」とか、そういうものを自分に吸収できた。そうして出来たこの曲で新しく出逢えた人たちがいっぱいいたんです。そういった意味で、あのとき私をひとつ大人にしてくれたラブソングだなって思います。

--それと世の流れが重なり合ってヒットする訳ですが、当時の女の子たちがとにかく「切なさ」を求めていた現象。今思うと一体何だったんですかね?

傳田真央:何だったんですかね(笑)? 切ないものをみんな求めてましたよね。泣くっていうことで何かを感じたかったんですかね。生きてる感触とか……自分も当時はそうだったなって思います。

--ただ、傳田真央の歌はその10年前から切なかったですよね?

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傳田真央:何でか分からないんですけど、いつでも切なかった(笑)。

--ラブソングを歌い続ける人の宿命かもしれませんね。おそらく「なんとなくずっと幸せです」っていうモードになったら書けなくなってしまう。

傳田真央:そうですね。切ない気持ちとか経験、それとはずっと背中合わせで生きていくとは思います。どんな歌をうたっていくにしても、その部分はずっとある。

--そして、傳田真央は2011年の震災時も恋愛について語り続けました。

傳田真央:世の中には常にいろんな問題があって、その中で私たちは生きてて。もちろんひとりの社会人としていろいろ考えている側面もあるんですけど、私は人って役割分担があると思っていて、自分は“傳田真央”という名前で何か世の中に発信するときは、ラブソングライターの傳田真央として発信していようと思っているので、それは徹しています。で、愛について語ったり、ラブソングを聴いたりすることって、ツラい現実から一時離れてその世界に入り込める時間じゃないですか。それによって元気になったり、癒されたりもするし、私たちアラフォー女子からしてもすごく大事な時間なんですけど、これからパートナーと出逢っていったり、未来を創っていくということにもう一度目を向ける機会にもなったりする。そういう必要な、大事な要素だと思うんですよ、愛っていうものに入り込む時間っていうのは。

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「結婚しました!」に「イイネ!」押せない自分から卒業? 名曲誕生!

--たしかにそうですよね。

傳田真央:傳田真央のラブソングを聴く時間もそういう時間にしてもらいたい。なので、いろいろ難しいことを語る存在ではなくていいかなと思っていて、皆さんが傳田真央とふれあう時間というのは、愛についてふれあう時間であってほしいなって。

--その気持ちが当時「たかが恋、されど恋」という言葉も生んだと思うんですけど、愛や恋で救われる何かは確実にあるし、もっと言えば、恋愛=生きると言っても過言ではない訳ですもんね。

傳田真央:最終的に辿り着くところだと思うんですよね。どんなにツラいことがあっても、それこそ命の危機に直面するようなときでも……むしろそういうときこそ、隣で分かち合ってくれる誰かを人は求めると思うんです。その存在によって心が救われたり、大きな危機を乗り越えていけたりするじゃないですか。

--そういう状態のときこそ人は好きな誰かを求めますからね。やっぱり「されど恋」だし「されど愛」なんですよね。

傳田真央:「それ以外あるの?」って今ここで言い切っておきます(笑)。

--そして2017年。今作『Love for Sale』に辿り着いた訳ですが、ここに収められたラブソングたちは「今歌わなきゃいけない」という想いからきっと生まれたものですよね。

傳田真央 AL「Love for Sale」トレーラー
傳田真央 AL「Love for Sale」トレーラー

傳田真央:そうですね。以前は、恋愛観も歌っている内容も“気付いてほしい想い”だったんです。「私はこんなことを考えてるんだよ、気付いて」みたいな主張の仕方で歌っていたんですけど、そこから大人の階段をまたひとつ上った『Love for Sale』では、もっと自然に誰かの心の中にスゥーっと入っていって、包み込むように想いを伝えようとしてるなって思いますね。職場の先輩がガムシャラに頑張ってる後輩の肩にポンと手を置いて、「うん」と頷いて何かを伝えてくれるみたいな。そんな優しさを歌で出せたらいいなと思っていたので。ただ、悪い歌もあるんですけどね! 彼に「私ってあなたの何なのよ!」とは言わなくなったけど、じわじわ刺しにいく感じの曲もある(笑)。

--あと、傳田真央を長年追っている身としては、今作の収録曲「一冊のラブストーリー」をフィーチャーしない訳にはいきません。コーラスで「Happy Ever After」と歌われていますよね、この曲。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

傳田真央:あ! 気付きました!?

--気付きましたよ。

傳田真央:初めて気付かれたかも!

--個人的には「Happy Ever After」の十数年後、あの曲の未来なんだろうなと感じながら聴かせて頂きました。

傳田真央:そうなんですよ! そうやって「気付いてくれる人がいるかな?」と思いながらひとりの部屋で歌録りしました。作った当時は知らなかったんですけど、「Happy Ever After」って海外の結婚式とかで使われる言葉らしくて、ウェルカムボードに書かれる言葉みたいな。海外の結婚式へ行っていた友達のインスタか何かで知ったんです。そんなことも知らずに「Happy Ever After」では未来への愛を歌っていたんですけど、あれから17,8年の中で傳田さんの人生にもいろいろあったので(笑)、思いっきり悲しい方向へ振り切った曲を歌うようになっていて。でも今回いろいろ曲作りしていく中で、悲しいだけの私からひとつ階段を上れたところがあったんです。周りの友達たちはほとんど結婚していたり、子供を生んだり、違うリアリティの中にいて、そういう姿を見ていたりすると「切ないところにいるだけの自分って子供だったんだな」というか、そのドラマの中にいるだけの自分だったんだなって。結婚しても「その先がまだある」という現実も見たし、幸せと向き合っていくことのほうがよっぽど大変なんですよ。だから私も幸せとちゃんと向き合いたいと思ったんです。

--なるほど。

傳田真央:あと、そういう幸せになっていく友人たちをちゃんと祝福したい。っていう風にも思えるようになっていて。以前は、Facebookとかで「結婚しました!」っていう投稿を見つけても、会ったときは「おめでとう!」って言うんだけど、なかなか「イイネ!」は押せなかったり(笑)「新婚旅行、行きました」みたいな投稿を見る度に「リア充め!」って思ったりする自分がいて。そういう方ってたくさんいると思うんですよ!

--世の8割はそうだと思いますよ(笑)。

傳田真央 / 泣きたくなるけど
傳田真央 / 泣きたくなるけど

傳田真央:でも本当に「おめでとう!」ってちゃんとお祝いできる素敵なお姉さんになりたいなと思って。それは自分の友達に対してだけじゃなく、自分の音楽を聴いてくれているファンの人たちに対しても思うんです。ライブでサイン会とかやってると、こんな傳田真央のヒストリーの中にも「結婚式でかけたんですよ」と言ってもらえる曲があったりして、それは「Happy Ever After」とか「あなたとふたりで ~Be with me all day long~」とか限られてはいるんですけど、遠距離恋愛を経て結婚したからって「耳もとにいるよ…~Ring the bells~」を使ってくれたファンの人もいて。それもあって、悲しい曲ばかり歌ってきた時期を経て、やっぱり皆さんが幸せになる楽曲を歌いたいと思ったんです。で、私がウェディングソングとして作った曲って「泣きたくなるけど」だけなんですけど、「何故か泣きたくなるけど Maybe this is love」ってひねくれてるんですよ(笑)。

--こじれてますね(笑)。

傳田真央:それで幸せな「一冊のラブストーリー」という曲を作ったんですけど、傳田的には挑戦でしたし、こんなにハッピーな祝福の歌を作れたのは自分でも嬉しかったですね。この曲も自分の部屋でひとりでレコーディングしてるんですけど、歌録りしてコーラス入れをしていく中で気持ちが高まっていって……「Happy Ever After」のイメージとリンクしてくる部分があって。あの曲はファンの皆さん、デンダリアンの中でもレジェンドな1曲になっていて、ライブでも2回ぐらいしか歌ったことがないんですよ。それでも「Happy Ever After」を大事に聴き続けてくれている皆さんに、今の、2017年の「Happy Ever After」として聴いてもらえたらなという想いも出てきて。それであのコーラスをイタズラで入れたの(笑)。この曲を聴いてみんなが「あぁ!」って思ってくれたらいいなって思います。

--これもラブソングを歌い続けてきた傳田真央ならではのストーリーですよね。ただ、傳田さんのこの18年間の中には、長い空白期間もあったりしたじゃないですか。それでも何度でも必ずシーンに戻ってきて、我々にその時代その時代のラブソングを届けてきた傳田真央の凄み。

傳田真央:不死身の妖怪みたい。ゾンビ(笑)。

--もうちょっと良い表現ありますよね(笑)? 美空ひばりさん的な感じで言えば、不死鳥みたいなイメージも個人的にはあるんですけど、ここまで音楽活動を継続できた要因って自分では何だと思います?

傳田真央:多分ね、毎回毎回どん底まで落ちきるからだと思う。「もう無理!」って何度も思ったし、ここまで長く歌わない期間があるシンガーさんって他にいないと思うんですけど、歌わない時間って何もなくなるし、誰とも繋がらないし、その中で自分をキープするのってすごく難しいし、大変だし、そういう引き篭もっているときってめっちゃ荒れてるし、もう廃人のようになりながら……それでも外に出るときは“傳田真央”として居なきゃいけないし、本当にツラい時間なんですけど、でもそうやって振り切ったときに曲って生まれるんです。今回の「Love for Sale」1曲にしても何十パターン考えたかって感じなんですけど、夢の中でも作ってるんですよ。ずっと追われている。そこまで追い込んで追い込んで、それでも出来なくて一回手離して、そこからまた時間をかけて……やっと辿り着く。だから約4年かかったんです。でもそこまで時間をかけさせて頂いたから、今回もこうして再び這い上がれたところはあると思います。アルバム毎に違うキャラクターとして毎回復活してる感じはありますね。同じようなアルバムが1枚もないし、それを私は気に入ってるし、こういうスタンスでやってこれて良かったなって、今になっては思えます。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

--実際に落ちてる真っ最中は、這い上がれるかどうかも分からない訳ですもんね。

傳田真央:そうなんですよ!「どうなるんだろう?」って思ってるんで。でもその闇の中にいる時間が何かを生成している部分はあって、やっぱり毎回歌える喜びというものもあるし、だからこそひとつひとつのライブをちゃんとやりたいと思うし、そういうものをお客さんに届けていきたいなとも思えるんですよね。どんなに短いライブでもちゃんと自分の意思を持って届けたいと思える。

--この周期でじっくりラブソングアルバムを創ってる人っていませんよね?

傳田真央:海外のロックバンドみたいですよね(笑)。それぐらい毎回じっくり作らせてもらっているので、それが出来ている環境にも本当に感謝してます。

--ということは、次のアルバムも4年後とかになるんですか?

傳田真央:そんなにかからないとは思うんですが……(笑)。でもこの4年間での生まれ変わり方ってすごく大きかったので、今回の10曲に入りきっていないけど、まだまだ出したいものが結構あるんですよ。だからそれも出したいなって思ってます。

--4年ぶりのアルバム『Love for Sale』を世に打ち出す2017年、どんな1年に出来たらいいなと思っていますか?

傳田真央:ここ数年【傳田会】っていうアコースティックライブをやっていて、外でピアノを弾くこと自体が初めてで……「なんで今までピアノ弾けるのに気付かなかったんだろう?」って感じなんですけど(笑)。

--元々クラシックの子ですからね(笑)。

傳田真央:忘れてたのかな? なので、音源の中でしか弾いてなかったんですけど、ライブでも怖れずに弾くようになって。そのライブの中で育ってきた曲たちがやっと『Love for Sale』で音源化されたので、この曲たちをより多くの皆さんに聴いてもらった上で、歌詞も手元で見て理解してもらった中でライブが出来る喜び。それを噛み締めながら歌っていく1年にしたいなと思っています。

傳田真央『Love for Sale』インタビュー

--最後に、18年目にして傳田真央を知っていく人たちへメッセージをお願いします。

傳田真央:悲しいラブソングをたくさん歌ってきたヒストリーがあるんですけど、ここでまた一歩、大人女子として、この時代に皆さんに聴いてほしいラブソングを作らせて頂きましたので、ぜひ一度、傳田ワールドに触れてもらえたら嬉しいなと思います。

Interviewer:平賀哲雄
Photo:Jumpei Yamada

傳田真央「Love for Sale」MUSIC VIDEO
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傳田真央「Love for Sale」

Love for Sale

2017/03/08 RELEASE
CRCP-40499 ¥ 2,800(税込)

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Disc01
  1. 01.口紅
  2. 02.Love for Sale
  3. 03.たったひとつの夢
  4. 04.愛逢い傘
  5. 05.幸せの診断書 ~Check List~
  6. 06.卒業
  7. 07.大人の階段
  8. 08.一冊のラブストーリー
  9. 09.Bitter Sweet (’17 Piano session)
  10. 10.耳もとにいるよ…~Ring the bells~ (’17 Unplugged live)

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傳田真央「Love for Sale」
2017/03/08
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¥2,800(税込)
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2013/02/13
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¥3,086(税込)
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2012/09/05
[CD]
¥2,160(税込)
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「いくつになっても、いつ聴いても、好きなものは変わらないんだなあと思います。」
ウォーク・ザ・ムーン『ホワット・イフ・ナッシング』発売記念特集 ~天と地を見たシンセ・ポップ・バンドの復活を辿る
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彼らに訪れた試練と復活とは?

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